クルマづくりで培った技術をライセンス提供。日産の新たな挑戦
掲載開始日:2012-06-02 00:00:00.0
自動車は、素材・材料から加工、機械、エレクトロニクス、ソフトウェアにいたるまで製造業の技術の粋を集めた結晶。そこで使われている技術は品質も信頼性も安全性も高いレベルでクリアしたものばかりです。 他社が持つ技術やリソースを有効活用し、自社に役立てるオープンイノベーションが進むなか、日産自動車(神奈川県横浜市、カルロス・ゴーン社長)は、自社が保有する技術をライセンスで提供し、業界問わず導入できるビジネスをスタートさせています。自動車業界では類を見ない新たなチャレンジについて、経営企画本部テクノロジービジネス部 岩田 耕一 部長に話を聞きました。
自動車業界は技術の宝庫
いち早くオープンイノベーションに取り組む
テクノロジービジネス部 岩田 耕一 部長
自動車は2ー3万点もの部品を組み上げて作る製品で、技術分野は化学や機械、電気、素材、材料など製造業のほぼすべてに広がり、しかも基礎研究から応用技術まで揃っています。技術の宝庫であり、技術の種類も数も質も、とても高いポテンシャルを持っている業界です。
電子機器やIT・通信などの業界では、自社の技術を他社にライセンス提供する、逆に他社の強みを自社に取り入れるオープンイノベーションが進んでいますが、自動車は自前主義の傾向が強く、技術をオープンにするということはほとんどありませんでした。最近になってようやくアウトソースできるところは他社に任せる、逆に使えるものがあれば積極的に取り入れる流れが出てきましたが、まだ遅れているのが実情です。
そのなかで当社は、自社の技術をライセンスとして外部に提供してビジネスにつなげようという取り組みを、業界の他者に先駆けて2004年からスタートさせました。
技術力がビジネスになる大きなチャンス
すでに同業種・異業種含め多数の会社に技術提供の実績
自社の技術を出すメリットとして、大きく3つの面で効果があると考えています。ひとつは開発を通じてできた技術をライセンス販売することで定期的な売上げが見込めること。2つめは、その技術が広がることで開発費が下がり、コスト競争力が強められること。3つめは、当社の技術がさまざまな場所で使われ、社会に貢献していることが広がることで技術の日産としてのブランドイメージが向上すること。
またこれ以外にも、その技術を開発した技術者にとっても、自分の技術が認められた、役に立った事実はものすごいモチベーションアップにつながり、さらに技術開発を頑張るようになるといった副次的な効果もあると思っています。
例えば、高級車のフーガのアームレストに採用されている「ソフィレス」は、赤ちゃんの肌のような柔らかく心地よい触り心地を実現した合成皮革ですが、寝具メーカーの大東寝具のクッションに採用されるなど、実績が上がっています。このほか、NTTドコモの携帯電話に傷がつかない塗料が採用されたり、自動車を俯瞰的な視点で見ながら駐車をアシストする技術「アラウンドビューモニター」を、共同開発したクラリオンにライセンス提供なども行っています。
スタート当初は異業種に限って技術提供を行っていましたが、いまは同じ自動車業界内でも要望があれば、検討した上で、できる限り対応するようにしています。
便利な技術は広くオープンに提供することで良い製品づくりをサポートしていく
複雑な手続きは不要。簡単に使えるようにして技術の流通を促進する
業界内では前例のない取り組みですが、優れた技術は囲い込むのではなく、オープンにして他社に使ってもらうことで技術が普及し、社会に良い製品を提供できるようになると考えています。本業の自動車で採用した技術はもちろんですが、採用にはならなかった優れた技術も社内にはたくさんあり、それを埋もれさせておくのではなく、他の分野で使える可能性を見つける、そんな役割・使命もあります。
資源のない日本が世界で戦うためには技術力が重要となります。すでに高い技術力を持っている日本にとって、技術そのものがビジネスになると証明できれば、日本のものづくりに気づきや勇気を与えられると考えています。それをたくさんの技術を持っている自動車メーカー自らがやることに意義があると考えています。
なるべく多くの方に使っていただきたいので、ライセンスの提供はできる限りお客様の要望に沿えるように検討をしています。ご興味がありましたら、まずはお気軽にお問合わせいただければと思っています。
日本のものづくりに気づきや勇気を与える
日産ライセンスビジネスで提供している技術の一部
取扱会社
日産が、クルマづくりや日常業務で培った技術やノウハウを、さまざまな業種のお客様にライセンス展開し、新たな製品やサービスの開発をめざす事業です。 夜間走行中のクルマが歩行者を検知する技術が、体表面の温度計測センサーになったり。傷からクルマを守る塗装が、携帯電話を美しく包みこんだり。 多くの分野で日産の知的財産が活かされ、製品開発のスピードアップや、新たな価値づくり、そして、さらなる日産ファンの獲得へとつながっています。 ライセンス先の企業様、その先のお客様、日産。すべての人々のWin-Winを実現し、ゆたかな社会を築くため、私たちの挑戦はつづきます。