硬質系・非粘着コーティング　Aμcoat（R）（エーミューコート）

当社はいわゆる「フッ素樹脂コーティング」のメーカーです。1966年の設立から、今年でちょうど50周年になりますが、もともとは、摺動性を上げる二硫化モリブデンを扱っていた先代の社長（現会長）が、テフロンのフライパンを見てアメリカのデュポン社を訪れたことが事業のきっかけと聞いています。

そこから、日本におけるデュポン社のフッ素樹脂コーティングの認定工場となりました。当初は営業地区割りがなされていたそうですが、もちろん現在はワールドワイドな活動になっています。

従来、フッ素樹脂コーティングは摺動性、離型性などの特性の利用が多かったのですが、当社の事業拡大の転機のとなったのが「耐食性」加工への対応です。フッ素樹脂の「化学的安定性」を活かした加工で、それ以降、防食用途のお客様とのお付き合いが拡大していきました。

また、「帯電防止仕様」のフッ素樹脂コーティングなども事業領域を広げるきっかけになりました。これらも含め、当社のサービスは「お客様の声」に応える形で生まれたものが数多くあります。

フッ素樹脂コーティングの工程は、ご支給いただいた基材にフッ素樹脂原料を塗装し、焼成炉に基材ごと入れて熱をかけて焼き付ける、というものです。この際、フッ素樹脂原料の密着力を高めるためにブラスト処理を行いますが、例えば基材が薄い板の場合、ブラスト処理によって板が歪んでしまうことが課題として存在していました。

また、そもそもフッ素樹脂は「樹脂」であり、硬度は高くありません。したがって傷がつきやすい。「傷がつかないものを」というニーズも長年にわたってありました。『フッ素樹脂の離型性を有しながら、基材を歪ませず、高い硬度のコーティング』が求められていたわけです。

さらに、ディスプレイ向けのフィルムなどの製造工程においては、フィルムが通るラインに多くのロールが使用されます。このロールには離型性が求められることがありますが、その表面を粗くしてしまうとフィルムに傷が入り品質異常に直結します。したがって、ロールに対しては『鏡面に近い表面と離型性の両立』が求められます。

このような、従来のコーティングでは難しい用途への要望を数多くいただく中で生まれた、当社からの提案の一つが、非フッ素樹脂コーティング『Aμcoat^®（エーミューコート）』です。

　 Aμcoat^®は高い離型性はもちろん、９Ｈ以上の高硬度や膜厚約１μmという薄さ、低温焼成、そして加工にあたってのショットブラストも不要という、多くの優れた特性を備えています。

低温焼成によるゴムや樹脂へのコーティングはもちろん、ショットブラスト不要という特性を活かしてのセラミックスやメッキ母材に対しての施工もできます。精密ロールや高精度金型への利用など、Aμcoat^®を使うことで、従来は施工が難しかった基材も含め、コーティングで付与できる機能が大きく広がりました。

例えば、容器を製造する際に使用する金型。離型性が重視されますが、「より透明な容器」を求めれば、金型の表面粗さを抑える必要が出てきます。そういった場面で、ショットブラストが不要なAμcoat^®が活躍できると考えています。「離型性＋表面を荒らさない」という特性は、フィルムを送るロールの表面処理でも同様に重宝されています。

おかげさまでAμcoat^®は、フッ素樹脂コーティングで従来からお付き合いがあったお客様はもちろん、各所から旺盛なお引き合いをいただいています。採用、不採用のご判断にあたって、特に「離型性」については各社様が「どこまで許容できるか」が重要かと思います。そういったことも含め、ぜひ一度、「お試し」いただくことを強くおすすめさせていただきます。お気軽にご相談ください。

お客様からの多くのニーズにお応えする形で誕生したAμcoat^®ですが、ありがたいことに「色調を持たせたい」「親水性にしてほしい」「反射をしないようにしてほしい」など、早速追加のご要望をいただいています。すでに技術的に目途がついているものもあり、順次リリースしていく予定です。

当社は「お客様のニーズに応え、業界をリードする」という姿勢で、サービス・技術開発に取り組んできました。前述の耐食・帯電防止対応や、今回のAμcoat^®についても同様です。「こんな表面処理、コーティングはできないか？」「こんな機能をつけられないか？」などのご要望があれば、ぜひお寄せいただきたく思います。次の世代のコーティングを、業界に先駆けて開発してまいります。