空間を利用する新発想のワーク搬送機。安全かつレイアウト自在
掲載開始日:2018-05-14 00:00:00.0
「ワークの搬送」は、生産効率を語る上で無視できない要素の1つ。従来の搬送機器は据付型のものが多く、作業内容の変更やラインの増設時に柔軟な対応が難しいのが課題でした。岐阜県・関市の装置メーカー、中洲電機の搬送装置『ランマスター』は様々な種類のユニットを組み合わせて自由にラインを構築可能。また、ワークを吊下げて搬送する「空間搬送」により、搬送時間の大幅短縮も実現します。今回、同製品の開発背景やメリットについて話を聞きました。
今回紹介する技術と製品
吊下げ式搬送装置『ランマスター』
『ランマスター』は、床上の空間を利用したワーク搬送を実現するシステムです。長さや機能が異なる様々なユニットを組み合わせてラインを構築でき、既存ラインへの導入やレイアウト変更を簡単に行えます。足元が広くなるため、より快適な作業スペースが実現するほか、迂回が必要な搬送経路の大幅短縮などが可能です。
この記事で紹介した製品の関連資料がダウンロードできます。
「途切れないラインを作りたい」。自社の課題解決から始まった製品開発
代表取締役社長 宇野 強 氏
当社は1970年創業の装置メーカーです。吊下げ型低推力搬送装置「ランマスター」は、自社工場内のワーク搬送を改善するために開発した装置がベースとなっています。一般的な製造ラインでは、加工や組み立て、検品、出荷までの各工程間で製品が流れていく中で、作業スキルにバラつきなどがあるために、ワークがうまく流れないという問題が発生していました。そこで考案したのが、吊り下げ式でレイアウトを自由に構成できる搬送システムです。
本製品は直線、スライド、旋回などのユニットを組み合わせて、ワークの供給口や排出口を設定したり、ワーク自体を降ろさない状態で作業を行うことが可能です。作業者の進捗に合ったワークを自動で供給し、手待ち時間の軽減やサイクルタイムの調整、工程間での作業時間の管理も可能になります。
「ランマスター」での搬送の考え方は、ワークを滞りなく動かし、効果的に自動搬送と供給をすることにあります。停滞させずに常に”仕事を動かす”ことで、台車による有人運搬作業や台車上に載せられたままの仕掛り品を軽減でき、生産性向上につながります。
「ランマスター」でサイクルタイムに応じた作業レイアウトを最適化することで、作業の分配・ワークの供給を自動供給できるほか、急ぎのワークが生じた場合にも優先供給させることで、管理者の現場指示の負担軽減と時間管理も可能となります。
既存ラインにも導入しやすい吊下げ&ユニット式。
意外と多いデッドスペースを解消
「ランマスター」の特長は大きく分けて、“吊り下げ式”“ユニット式”“低推力”の3点です。一般的なラインでは、床上の空間がデッドスペースとなっているケースが多く見られますが、ワークを吊り下げれば足元が広くなり、より動きやすい作業環境が実現できます。
従来の搬送機器は据付型のものが多く、作業内容が変わったり、ラインを増設したりした際の対応に苦労します。これに対し「ランマスター」は状況に応じて各ユニットを組み合わせられるため、レイアウトを自由に変更でき、既存ラインへの導入も容易です。
「低推力」は安全面に直結するポイントです。「ランマスター」ではモーター制御の工夫などにより、秒速200mm 70N以下という低推力を実現しています。そのため、万が一運搬中のワークと作業者が衝突しても大きな怪我につながりにくいのです。
ランマスターが実現する「空間搬送」。生産性アップのカギに
「ランマスター」紹介動画。吊下げ式のメリットがよくわかる
近年、日本の産業界における生産性が課題に挙げられていますが、製造業では工場に原材料を仕入れて、それを製品として出荷するという基本の仕組みは変わりません。そのため、いかに出荷までの時間を短くするかが重要となるわけですが、生産技術の高度化はもちろん、工程間搬送の効率化も決して無視できないポイントです。
マテリアルハンドリングにおいてスペースを立体的に使うことの重要性は広く知られている一方で、実践できている企業は意外と少ないようです。例えば、床にコンベアがあると、工程間搬送のためにワークを台車に乗せて迂回する必要がありますが、本製品を使用してコンベアの上を通過させれば搬送時間を大幅に削減できます。
「ランマスター」のような“空間搬送”を実現する機器は他にほとんどありません。今後は本製品を多くの企業に提供していくとともに、安全性と搬送作業効率の両面を高め、さらに画期的な搬送システムへの進化を目指して開発を継続して参ります。