大型重量品は設計から始まり、製缶、加工、塗装、組立など、それぞれの工程で複数の業者を調整しながらの製造が一般的です。そもそも、大型ワークを生産できる企業が少ないことや、多くの企業が各工程ごとの専業となっていることから、そのような形が広く浸透しています。しかし、それぞれの工程で高い技術を有し、それらすべてを一社で完結できるとしたらどうでしょう?いわゆる「大型ワークの一括対応」です。発注側の管理を楽にし、よりスムーズな案件進行に寄与する、日本でも数少ないこの業態。その先頭を走る、株式会社蔦木(浜松市)に話を聞きました。
今回紹介する技術と製品
大型重量品の一貫生産システム
蔦木では重厚長大産業をはじめ、多種多様な製造業界の方々へ産業用機械装置の大型フレーム等の製缶、溶接、機械加工ならびに、産業用装置の設計、組立完成品まで、ご要望に応じた製品を一貫生産で提供。これにより「コストダウン」「品質管理」「短納期」といった付加価値を提供しています。
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納期、品質、コスト管理などすべてを一社で完結。だからスムーズ。
代表取締役社長 蔦木 薫 氏
当社は1946年に浜松で創業し、創業当初はいわゆる「溶接」を手がけていました。浜松には地元に根付いた加工業者や溶接業者などが数多くあり、当社もまたそのうちの一社という位置付けでした。
多くの企業が専業分野で事業を展開する中、とある取引先から「加工機械を入れてみたらどうだ?」と言われることがありました。つまり「溶接と加工」、この2つを当社でまとめて行うということです。時は高度経済成長、これが多くのお客様のニーズに応える形となりました。
「溶接と加工」の2つの工程とはいえ、納期や品質、コスト、案件管理など、複数業者にわたって調整が必要だったものが、当社一社でできる。お客様は楽になります。そこから、当社の業態のキーワードである「一括対応」がスタートしました。
ワークの大型化、量産化に応える。マザーマシン級の設備の数々。
オークマ製(特注) MCR-BII 35×120E-A (3.5m×12mの加工機)
「一括対応」をキーワードに、様々なお客様の要望に応えていきました。その結果、当社独自のビジネスモデルとなったのが『大型重量品の一括対応』です。
周知の通り、時代が進むにつれ、ワークの大型化・量産化への要求は高まっていきました。もちろん、それに対応できる企業は絞られていきます。とはいえ、案件を受けてから大型加工機を準備していては、生産開始は1年以上先になってしまいます。お客様の要求に応えられません。したがって当社はそれらのニーズに先んじる形で大型加工機を導入しています。いわゆる「ニーズの先読み」です。
溶接・加工に始まった当社の「一括対応」は、業態問わず幅広い案件への参画につながり、多くの情報・ニーズを得られる土壌を作りました。そこから次のマーケットを予測し、それに応えられる投資や教育、設備導入を行う。こういったサイクルが当社には息づいています。結果当社は、『大型重量品の一括対応』にあたって、マザーマシン級の装置の数々を保持することになりました。
例えば、オークマ製の3.5m×12mの大型加工機。これは特注で作っていただいたものです。一介の加工業者が持つようなものではありません。しかし、このような加工機でなければ作れないものがあります。G8-G10クラスの液晶製造装置のフレームなどその最たるものです。
「この機械でしか削れない、この機械でしか作れない」。そのような装置を保持することで、お客様の要求に応えられます。
「こんなところを探していた!」。ぜひ一度、工場見学に来てほしい。
アセンブリや出荷も手がける。床面積167㎡、高さ3m、ISO-7(クラス10000)相当の組立用クリーンルームも。
当社では、2004年(平成16年)に工場を移転し、その際、作業環境を一新しました。社屋はもちろん、各作業場についても「広く、明るく、クリーン」なものになっています。前述の大型加工機などの設備を実際に見ていただき、また当社の一括対応の幅広さをお客様に理解していただく上で、ぜひ「工場見学」にお越しいただきたいと思っています。実際、毎週数社様にお越しいただいています。
当社の導入設備の数々を見ていただくことで、大型ワークについてその対応幅をご理解いただけることはもちろん、アセンブリまで実際にやっていたり、大型ワークに付随する小物の製作をやっていたり、それらの作業を目の当たりにすることで、「想像以上のことをやっている!」「こんなところを探していた!」というご感想をいただけています。
また、大型ワークの発注先を「遠方の業者から、より近距離に変えたい」というニーズについても、浜松という立地から高い利便性を感じていただき、実際に多くの案件を移行いただいています。関東、関西圏のお客様については、当社の自社便での輸送ができることも大きなメリットかと思います。
製缶品で最適な提案を。大型+高精度の要請に応える。
広く明るくクリーンな工場で、大型重量品の製作手配、納期管理、品質管理、出荷までのすべてを一括対応
当社はいわゆる製缶品を手がけています。その中で数多く目にするのが「製缶品を使えば、もっと低コストで、もっと効率的に作れるのに…」というものです。例えば、鋳物を使っているために設計変更にコストがかかってしまうようなものを製缶品に変えれば、設計変更や改造がよりかんたんに行えるようになります。これはとてももったいないことです。
このようなもったいないケースを目にするのも、当社の対応範囲の幅広さ故かと思います。それぞれの製造品には最適な製造方法があります。特に製缶品においては、そのための提案をきっちり行っていくことが、当社の使命の一つと考えています。
今後は自動車はもちろん、電気自動車を背景とした電池系の大量製造分野、また「大型ワーク」だけでなくそこに「高精度」が求められる航空・宇宙分野などへの対応も視野に入っています。引き続き、「ニーズを先読みした一括対応」で、多くのお客様の要求に応えていきたいと思っています。