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3Dプリンタとは:3Dプリンタの基礎知識1

3Dプリンタの基礎知識

更新日:2020年8月7日(初回投稿)
著者:有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジー 代表取締役社長 水野 操

2012年頃まで、3Dプリンタは主に製造業の限られた領域のみで使用されていました。それが、同年のメイカーズブームとタイミングを合わせたように3Dプリンタブームが始まり、ものづくりの専門家だけでなく一般消費者にまで、普及の広がりを見せています。2020年初頭から始まったコロナ禍では、フェイスシールドの部品などの製造を3Dプリンタで試みる人が出てきました。このようなニュースに触れ、改めて3Dプリンタに興味を持った人も多いのではないでしょうか。本稿では、全6回にわたり、今注目を集めている3Dプリンタについての基礎知識を解説していきます。第1回は、3Dプリンタが「カタチ」を作る仕組みと、さまざまな造形の方式について紹介します。

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1. 3Dプリンタは「材料を積み重ねて」カタチを作る

まず、3Dプリンタがどうやってものを作っていくのか、その基本的な考え方を解説します。指定したあるべき形状(カタチ)を作る方法は1つではありません。その時々に応じた、適切な方法でカタチを作っていきます。工業製品を作る方法で、比較的よく用いられている方法の1つが「切削加工」です。これは材料の塊から自分の欲しい形を、刃物を使って削り出していく方法です。彫刻のようなものと考えれば、分かりやすいかもしれません。ただ、同じカタチのものがたくさん必要な場合には、あまり効率の良い方法ではありません。そのような場合には「型」を使います。型を使う方法にも、板金を強い力で型に沿った形に変形させるプレス成形という方法と、溶けた材料を型に流し込む方法があります。前者で作られる代表格が自動車のボディで、後者はプラスチック製の部品などです。

さて、3Dプリンタが採用している方法は、これらのどれでもありません。3Dプリンタで用いられているのは、材料付加製造技術(Additive Manufacturing)、あるいは積層造形法と呼ばれており、簡単にいうと、薄い層状の材料を積み重ねて作るという方法です(図1)。3Dプリンタの中には方式の異なるものがいくつか存在しています。「材料を積み重ねてものを作る」という根本はどの方式でも同じです。ただ、積み重ねるための技術が異なります。

図1:3Dプリンタの材料付加製造技術(積層造形法)

図1:3Dプリンタの材料付加製造技術(積層造形法)

最近では3Dプリンタという言葉が多用されるものの、業務で3Dプリンタを活用する人は、前述したAdditive Manufacturingという言葉もよく使用します。ヨーロッパやアメリカなどでは既に定着している言葉で、日本語では付加製造技術という訳語を当てることも多いようです。これは3Dプリンタのことを指しているのだということを覚えておきましょう。

2. さまざまな種類の3Dプリンタ

前述したように、3Dプリンタにはいくつかの異なる方式の技術があります。どの方式のものを使用するかで、仕上がりや使用できる材料、あるいは使用における手間が大きく異なります。これから3Dプリンタを使っていきたいということであれば、これらの違いを知っておきましょう。3Dプリンタの代表的な方式である熱溶解積層法、光造形法、インクジェット法、粉末焼結法の4つについて説明します。

・熱溶解積層法(FFF:Fused Filament Fabrication、FDM:Fused Deposition Modeling)

熱溶解積層法は、高温で溶かした樹脂を、造形プレートの上に下から積み上げて造形する方式です。材料は、フィラメントと呼ばれるワイヤ状の形をしています。このワイヤを、高温で熱したノズルで溶かしながら細い糸のような太さにし、一層分を造形していきます。この造形が終わったら、ノズルのヘッドが一層分の高さだけ上がり(造形プレートが下がる場合もあります)、次の層を先ほどの層の上に積み重ねて造形します。この作業を、物体が完成するまで延々と繰り返します。そうすることで、冷えて固まった樹脂が層になり、カタチができていくのです。

家庭用と呼ばれるような小型の3Dプリンタは、多くの場合この方式です。3Dプリンタ本体の価格は、2~3万円台という非常に安価なものからあり、さらに材料も扱いやすいというメリットがあります。一方、同じ方式の製品でも、産業用の大型で高性能なものは数百万円以上の価格になります。

・光造形法(SLA:Stereolithography)

光造形法は、世界で初めて登場した3Dプリンタの方式で、近年急速に普及しています。簡単にいうと、紫外線(可視光を使う場合もあります)で硬化する液体状の樹脂の表面に、レーザ光などを当てて硬化させ、一層分の造形が終わったら、造形プレートが移動してその次の層を造形するという方式です(図2)。

図2:光造形方式の3Dプリンタで出力中の造形物

図2:光造形方式の3Dプリンタで出力中の造形物

現在、よく使用されている光造形法の3Dプリンタでは、液体の樹脂の入ったバットの表面に造形プレートが触れている状態で、下からレーザ光線などの光源を物体の断面の形に動かし、一層分を造形します。作業が進むにつれて造形プレートは上に引き上げられ、造形が終了すると上からつり下がった状態になります。

光造形方式のプリンタは熱溶解積層法のものよりも高価で、また人体に刺激性のある液状の樹脂を材料として扱わなければなりません。さらに、造形後にはIPA(イソプロピルアルコール)での洗浄や換気も必要になるなど、扱いが面倒です。その反面、造形の品質は高く、低価格化も進んでいるため、近年では個人事業など小規模ビジネスでの利用も増えています。ちなみに筆者の事務所では、この方式と熱溶解積層法の2種類のプリンタを業務で活用しています。

・インクジェット法

インクジェット法は、ある種の光造形法といえます。材料は、やはり紫外線で硬化する樹脂を使用します。光造形法との違いは、材料の樹脂をインクジェットヘッドから造形プレートに一層分だけ吹き付け、それを紫外線ランプで硬化させることです。これは、紙に印刷するインクジェットと同じ技術ともいえます。しかし、この方式の3Dプリンタは、一般に数百万円以上と高価な上、機械自体も大型であるため、個人レベルでの使用はあまりありません。ただ、機種によっては二色造形なども可能です。例えば医療目的の臓器模型を、血管部分を色のある樹脂で、それ以外の臓器を透明な樹脂で出力するといった作業ができます。これは、インクジェット法ならではのメリットといえます。

・粉末焼結法(SLS:Selective Laser Sintering、DMLS:Direct Metal Laser Sintering)

粉末焼結法は、材料がパウダー状態になっています。プリントベッドと呼ばれるものの上に薄い粉末の層を広げ、そこにレーザを照射して粉末を焼結させます。レーザのヘッドは、他の方式と同様に、3Dデータから作成された積層の断面の形に沿って動いていきます。材料の形態と固まり方が違うだけで、基本的な造形の方法は他の方式と共通していることが分かります。しかし、扱える材料は、他の方式同様の樹脂だけではありません。近年、話題になっている3Dプリンタ製の金属部品は、この方式の3Dプリンタで製造されています。

粉末焼結法の3Dプリンタは、いわゆる工作機械サイズで大型かつ高価なだけでなく、精密な造形を実現するための高度なノウハウやスキルが必要とされるため、一般的な工作機械同様に産業用途での利用がほとんどです。ただし、入稿した3Dデータからの造形を代行する出力サービスでは、金属での造形が可能な場合もあるため、そのようなサービスを活用することで個人でも金属部品を作ることが可能です。

3. 3Dプリンタの活用に必要なスキル

3Dプリンタの活用には、2つのスキルが必要になります。1つは、3Dプリンタでの出力から仕上げに至るまでの使い方のノウハウで、もう1つが3Dデータを扱うスキルです。

3Dプリンタが従来の工作機械と異なるのは、その利用に際して、高度なスキルやトレーニングが求められないことでしょう。基本的な使い方さえ習得すれば、安価なFFF(熱溶解積層法)方式のプリンタなら子供でも扱うことができます。とはいえ、ノウハウが全く必要ないというわけではありません。プリンタの種類によって必要なノウハウも異なってくるので、これらは追って後の回で解説していきます。

もう1つ必要なのは、3Dデータを作成するスキルです。紙に印刷するプリンタに、文書や写真のデータが必要なのと同じように、3Dプリンタの活用には、3次元の形状を表現する3Dデータが必要です。これは、製造業などに関係がなければ、あまりなじみのないデータかもしれません。しかし、この3Dのデータがあって初めて、3Dプリンタを使うことができるのです。3Dプリンタブームが始まった頃、平面の絵を持って来て、これを3Dプリンタでプリントしたい、という話が時折聞かれました。もちろんこれは、不可能です。2次元の絵には、立体の情報がないからです。

最近は、前述したフェイスシールドの部品や、ドアノブに装着して手で触らずにドアを開けられる部品のデータをはじめ、無料公開されている3Dデータが多数あるので、それらを利用すれば3Dプリンタで出力することができます。ただ、本当に自分が欲しいもの、自分のオリジナルのものを出力したければ、自分で3Dデータを作成するスキルを習得する必要があります。このスキルについても、後の回で解説していきます。いずれにしても、この2つのスキルを身に付けることで、3Dプリンタを用いたものづくりが一層身近なものになっていきます。

いかがでしたか? 今回は、3Dプリンタが「カタチ」を作る仕組みと、さまざまな造形の方式などを解説しました。次回は、実際に3Dプリンタを活用する際の基礎知識を解説します。お楽しみに!

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