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3Dデータとは:3Dプリンタの基礎知識4

3Dプリンタの基礎知識

更新日:2021年8月3日(初回投稿)
著者:有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジー 代表取締役社長 水野 操

前回までは、3Dプリンタにおける造形そのものについて、造形の仕組みと流れ、そして3Dプリンタで使用できる材料などを解説しました。さて、これで3Dプリンタを使って何かを作る準備は十分でしょうか。実は、非常に大事なことをまだ説明していません。それが、造形の元になる情報、すなわち3Dデータです。今回は、3Dデータとは何か、さらにその種類と作成方法について取り上げます。

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1. 3Dデータとは

3Dデータとは、立体的な形状の情報を持つデータのことです。写真やイラストなどの画像情報を持つJPEG、PNGと呼ばれるファイルには、2次元の平面上の情報はあるものの、奥行きの情報は持っていません。見えている部分の裏側がどうなっているのか、という情報もありません。ところが、3Dプリンタでは、それらの情報が必要になってきます。具体的なデータ形式は後ほど示すとして、まず、3Dの形状を表現する主な形式を図1に示します。

図1:3D形状を表現するための主な形式

図1:3D形状を表現するための主な形式

・ワイヤフレーム
ワイヤフレームは、立体の稜線(りょうせん)のみで形を表現する、最も簡単な形式です。ただし、面を表現できないという欠点があります。

・ポリゴン
ポリゴンは、後で説明する3D CGなどに使われている形式で、立体を多角形の集合体で表現します。この方式の欠点は、正確な形状を表現できない場合がある、ということです。

・サーフェス
サーフェスは、正確な形状を表現できる形式です。ただし、表現できるのは、あくまでもその表面の形状に限られます。

・ソリッド
ソリッドは、主に機械系CADなどで使用される形式です。形だけでなく体積を持たせることができ、さらに、プロパティとして質量密度を与えることで重量なども表現できます。

3Dプリンタでプリントするものは立体なので、立体形状が必要です。そのため、単に立体的に見える絵や2次元の図面データでは、3Dプリンタでの造形はできません。3Dプリンタで何かを作るのであれば、必ず立体形状の情報を持つデータ、すなわち3Dデータを用意する必要があります。

通常のプリンタで、資料や写真などを印刷するためには、その元になるデータが必要です。紙のプリンタの場合には、それがWordやPDF、あるいはJPEGなどのファイルになります。これらのデータには、文字や絵を印刷する際に、紙のどこに何色で印刷するのか、という情報が含まれています。この元になるデータがなければ、プリンタは無用の巨大な文鎮になってしまいます。同じことが、3Dプリンタについてもいえます。

2. 3Dデータの種類とそれらを作る方法について

3Dデータが主に使用されるのは、製造・建築・土木などのものづくりの業種か、あるいはアニメ・映画といった映像作品の制作現場です。そして、ものづくりと映像制作、その両方で活用される3Dデータもあります。例えば、フィギュアなどです。映像の中で美少女フィギュアのデータを扱うことができ、一方でこの3Dデータを使って、実際に販売されるフィギュアを造形することも可能です。映像などで使用する3Dデータの場合は、その用途は実物(もの)ではなく、あくまでも映像としての活用です。しかし、これは元々3Dの情報を持っているデータであるため、実は3Dプリンタで出力することが可能です。では、これらの業種で仕事をしている人たちは、どのようにして3Dデータを作成しているのでしょうか。

そのための道具が3D CAD、あるいは3D CGと呼ばれるソフトウェアです。たとえ趣味であっても、3Dプリンタで出力するためには、これらの道具を使うことが必要になります。一般に、これらのソフトを使うことは難しいという印象があります。もちろん、商品として売り物になるような造形物を作るには、それなりの技量が必要です。しかし、自分で使用するためのものを作るとか、趣味でフィギュアを作ってみるというレベルであれば、それほど難しいものではありません。3Dデータを作るための道具である3D CADと3D CGのそれぞれの特徴を紹介します。

・3D CAD
3D CAD(Computer Aided Design)を使ったモデリングでは、まず2次元(平面)のスケッチを行い、それをもとに3次元(立体)にしていくという流れで3Dデータを作っていきます。これは、3Dプリンタを使って実物を作る前に、コンピュータの画面上でバーチャルに3D形状を作っていく感覚です。

私たちの身の回りにある工業製品の設計において3D形状を作る場合は、基本的には3D CADを使用します。工業製品は、寸法や角度を正確に規定し、直線や数学的に定義された曲線、曲面などで作られています。このような形を作るのに向いているのが3D CADです。もし、3Dプリンタの用途が、オリジナルの小物を作りたい、あるいは家で使っている製品の取っ手やつまみが壊れたので補修部品を作りたい、といった目的であれば、3D CADが適しています。

多くの3D CADは、製造業における設計などで使用する業務用のソフトであり、価格帯が高く設定されています。一方、最近は個人でも使える価格、あるいは個人の趣味での利用(非商用利用)であれば無償でありながら、高度なモデリング機能を備えたソフトが登場してきています。代表的なものとして、アメリカのオートデスク社のFusion 360が挙げられます(図2)。

図2:Fusion 360で作成した機械部品の例

図2:Fusion 360で作成した機械部品の例

多くの3D CADがWindowsのみの対応となっているのに対し、Fusion 360ではMac版の用意もあります。このソフトは、個人での非商用利用であれば、無償で使用することができます。この場合、業務で使用される高度な機能は利用できないものの、自分の趣味でモデリングをして3Dプリンタで出力するためならば十分な機能が備わっています。その他、iPadでApple Pencilを使ってモデリングをするShapr3Dというソフトもあります。

・3D CG
3D CADは、正確に決まった寸法がある物体のモデリングに用いるのが適切であるのに対し、3D CG(Computer Graphics)は、曖昧で、感覚的なモデリングに用いるのが適切です。例えば、人や動物、植物といった自然の造形物、あるいはフィギュアに代表されるバーチャルな人物などです。これらのモデリングでは、正確な寸法でモデリングすることが難しい曖昧な形であるだけでなく、局所的な修正なども感覚的に行う必要があります。

CGでは、形状をポリゴンと呼ばれる多角形の集合体として表現しています(図3)。そのため、例えば、顔などをモデリングしていて、頬(ほお)を微妙に膨らませたい、といった修正も容易に行うことができます。ポリゴンの形状は多角形であるため、例えば、球は厳密にいえば球ではなく多面体になります。しかし、ポリゴンが十分に細かければ、人の目には球に見えるのです。また、3Dプリンタにデータを渡す際の形式もSTLと呼ばれるポリゴンの形状であるため、3D CGのモデリングでも3Dプリンタに対応することができます。

図3:ポリゴンで表した球

図3:ポリゴンで表した球

3D CGも、プロが映画製作などで使用する高価なソフトから、無償でありながら非常に高機能なものまで存在しています。無償で高度な機能を備えたものの代表格がBlenderと呼ばれるソフトです(図4、5)。筆者も、3D CGを使ったモデリングの業務などで、よく使用するツールの1つです。無償であるものの決して機能が少ないわけではなく、プロの現場でも使用されています。

販売されているものでは、人気のあるツールとしてZbrushがあります。このソフトでは、液晶タブレットとペンを使い、モデリングというよりはPCの画面上で粘土をこねるような、感覚的な造形も可能です。Zbrush自体の価格は10万円を超え、廉価版のZbrush Coreは2万円位になります。

図4:Blenderで作成したアヒル

図4:Blenderで作成したアヒル

図5:図4のアヒルと同じもの(一見滑らかに見えるが実際にはこのようにポリゴンでできている)

図5:図4のアヒルと同じもの(一見滑らかに見えるが実際にはこのようにポリゴンでできている)

3. 3Dスキャナの活用は可能か

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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