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接着の原理とは?高信頼性・高品質接着とは?:接着の基礎知識1

接着の基礎知識

更新日:2017年10月5日(初回投稿)
著者:株式会社原賀接着技術コンサルタント 原賀 康介

接着剤を用いた接合・組立は、精密部品から自動車まで、さまざまな産業で用いられるようになりました。用途が拡大する一方で、接着に関する品質不具合は増加しています。本連載では、高信頼性・高品質な接着を行う上で理解しておくべきことを、8 回にわたり解説していきます。第1回では接着の原理と、高信頼・高品質な接着とは何かについて説明します。

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1. 接着の種類と原理

接着とは、接着剤と被着材料(接着される材料)の表面との間に何らかの力が働き、結合している状態をいいます。接着の結合の原理は、大別すると3種類です。

1:分子間力による結合

接着剤と被着材料は、電気的に正と負に分かれた分子の集まりでできています(図1)。これを分極しているといいます。分子間力とは、分子同士が電気的に引き合う力のことです。接着では、接着剤の分子と被着材料表面の分子が電気的に引き合って結合します。分極の強度は分子の構造によって異なります。弱い(極性が低い分子)、強い(極性が強い分子)、正負が全く分かれていない(無極性の分子)などがあり、極性が高い方が強く結合します。無溶剤型(被着材料の表面が溶融しない)接着剤による接着のほとんどが、分子間力による接着です。

図1:分子間力による接合状態

図1:分子間力による接合状態

2:分子が絡み合うことによる結合

2つの被着材料が溶剤に溶ける場合は、溶剤系の接着剤を用いることができます。表面付近が溶融した被着材料同士を押し付けることで、溶融した分子同士が絡み合います。その後、溶剤が揮発すると固体状になり、結合します。塩ビ同士やアクリル樹脂同士の接着に、よく用いられます。未加硫ゴムは、重ねて置いておくだけで結合することがあります。これは自着と呼ばれ、表面付近の分子同士が相互に拡散するために起こります。なお、加熱溶融させた材料同士を押さえ付けて接合する熱融着は、接着剤を使わないため、一般には接着に分類されません。

3:接着剤固化による機械的結合

エッチングや化成処理された金属表面、多孔質材料などでは、細かく入り組んだ凹凸や種々の結晶構造が形成されます。この凹凸や結晶の間に接着剤が流れ込み、接着剤が固化することで抜けなくなって結合します。この手法を活用して、エッチングで凹凸にした金属にプラスチック成形材料を射出成形し、接着剤を用いずに直接接合する方法が実用化されています。

工業的に多用されている接着結合は、分子間力によるものです。以降は、分子間力結合による接着について述べていきます。

2. 接着の特徴

接着剤による接合・組立は、他の接合にはない多くの特徴を持つ反面、欠点や課題も有しています(表1)。異種材料を容易に接合できる点は接着の大きな利点です。しかし、接着部の健全性検査が難しい点や設計基準が不明確な点は、接着の信頼性・品質に関わります。接着のように、完成後の検査で不良品を排除できない技術は特殊工程の技術と呼ばれ、工程内での検査が極めて重要です。

表1:接着剤による接合の長所・得られる効果と短所・課題
長所 得られる効果
異種材料の接合ができる 適材適所の材料選定ができる
接合に高温を要しない 熱に弱い材料を接合できる
接合歪みが小さい 歪みや変形を防止できる
平坦度が確保できる
接合に大きな力を要しない 部品の高精度位置合せができる
面での接合である 薄板の高強度接合ができる
薄板の剛性を向上できる
隙間充填性がある 部品加工精度の吸収・低減ができる
電食防止、シール性、振動吸収性がある
熟練技能が不要 マニュアル化が容易である
大がかりな設備が不要 少ない初期投資で行える
少量多品種に対応しやすい
接合に要するエネルギーが小さい 組立工程の省エネルギー化が見込める
火気レス工法である 溶接、ロウ付けの代替として使える
稼働状態でも工事が可能である
部品の表面での接合である 製品の小型化、高密度化ができる
短所 課題
界面を有する接合である 被着材料や表面状態で接着性が異なる
接着特性のばらつきが大きい
接着強度のベースが、化学的な反応や結合である 機械系技術者に扱いづらい
検査が難しい
接着剤の選定が難しい
温度で特性が変化しやすい
耐久性が不明確である
構造設計が難しい 設計強度の基準が不明確である
構造設計の指針が不明確である
作業面、設備面に課題がある 特殊工程の管理が必要である
液体を用いる接合である
手離れが悪い
接着後の修正が難しい

3. 高信頼性・高品質接着とは

高信頼性・高品質接着とは、強度などの接着特性や耐久性に優れるだけでなく、接着特性のばらつきが小さく、不良率が低く、生産性に優れている接着のことです。特に重要なのは、ばらつきが小さいことと、不良率が低いことです。接着は他の接合方法に比べ、ばらつきが大きい接合法です。しかし今後は、ばらつきを排除して信頼性や品質を担保した接着が求められます。

4. 高信頼性・高品質接着の基本条件と目標値

1:凝集破壊率

図2は、2つの被着材料を接着剤で接合した断面図で、外力が加わった時にどこが壊れるかを示しています。最も一般的なのは、界面破壊です。しかし、界面破壊を起こす接着は、強度のばらつきが大きく、信頼性・品質が低い接着といえます。一方、接着剤の内部で破壊する凝集破壊は、接着剤の物性で強度が決まるので、ばらつきが小さくなります。凝集破壊を起こすことが、信頼性・品質に優れた接着には重要です。接着面積全体を100%として、どのくらいの面積が凝集破壊したかを表す指標として、凝集破壊率があります。筆者の長年のデータと経験から、凝集破壊率が再現性を持って40%以上あれば、信頼性・品質の高い接着ができているといえます。

図2:接着部の断面図と破壊の種類

図2:接着部の断面図と破壊の種類

凝集破壊率を上げるには、被着材料の表面を最適化する必要があります。図3は、空気中に置かれた金属表面付近の模式図です。表面付近には接着特性に影響する多くの因子があり、これらの条件を最適化しなければ界面での結合が弱く、強度がばらつきます。表面を最適化して界面結合を強化できれば、凝集破壊しやすくなります。界面の結合力を強くする方法の詳細は、次回以降に述べていきます。

図3:接着特性に影響する因子(金属表面付近)

図3:接着特性に影響する因子(金属表面付近)

2:接着強度のばらつきを表す変動係数Cv

接着強度のばらつきを表す指標として、変動係数Cv(接着強度の標準偏差σ/平均値μ)を用います。高信頼性・高品質接着は、Cv値が0.10以下であることが必要で、最近では0.06程度を要求されることもあります。Cv値の小ささと凝集破壊率の高さは高い相関があるため、界面での接着性を強化して凝集破壊率を高くすれば、Cv値は小さくなります。ちなみに、Cv値が0.10の場合、1,000万個のサンプルでデータを取ると、最低値は平均値の約50%になります。Cv値が0.06では、1,000万個のサンプルの最低値は、平均値の約70%になります。

3:接着面の表面張力

結合力には、被着材料表面の表面張力が大きく影響します。一般に、表面張力が高いほど結合は強くなり、凝集破壊率が高く、変動係数Cvは小さくなります。表面張力の検査法は、JIS K 6768 プラスチック−フィルムおよびシート−ぬれ張力試験方法にて標準化されています。滴下法では、市販されているぬれ指数標準液を接着面に微量滴下し、液が広がるかどうかを判定します(図4)。では、どのくらいの表面張力があれば、高信頼性・高品質な接着ができるのでしょうか。筆者のこれまでのデータと経験から、滴下法では36mN/mから38mN/m以上あれば、高信頼性・高品質な接着ができると考えられます。空気中にある一般の材料の表面張力は30mN/m前後の物が大半で、接着には適していません。また、接着が困難なテフロンの表面張力は18mN/mしかありません。

図4:滴下法による表面張力の測定

図4:滴下法による表面張力の測定

いかがでしたか? 今回は、接着の原理と、高信頼性・高品質な接着に必要な条件について解説しました。次回は、接着の最適化について学びましょう。お楽しみに!

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