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空調設備とは:空調設備の基礎知識1

空調設備の基礎知識

更新日:2021年2月12日(初回投稿)
著者:関東学院大学 建築・環境学部 建築・環境学科 教授 遠藤 智行

空調設備は、建物内の温熱環境・空気環境を調節するための設備です。人間の活動が主となるオフィスや、品質管理が求められる生産工場、クリーンルームなど、その制御対象は多岐にわたります。省エネルギー化や執務環境向上への要求などが高まる中、近年ではさまざまな種類の設備が登場し、システムも複雑になっています。本連載では、空調設備の基礎知識について、代表的な方式や構成機器、近年の動向や維持管理などを解説していきます。第1回では、空調設備とは何か、その種類や計画・設計手順、冷暖房の考え方などを解説します。

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1. 空調設備とは

空調設備(空気調和設備)とは、建物空間の空気の温度・湿度・気流速度・清浄度(二酸化炭素・粉じん・臭気など)・圧力を、その利用目的に応じて調節する設備です。その対象と目的によって、保健用空調設備(以下、保健空調設備)と産業用空調設備(以下、産業空調設備)に大別されます。

2. 保健空調設備

保健空調とは、オフィスで仕事をしている時に行う冷房・暖房や換気など、その空間に在室する人の快適性や健康の維持を目的に行う空調です。一般に空調といえば、こちらの保健空調を思い浮かべると思います。一定の条件を満たす施設(百貨店、図書館、美術館、博物館、事務所、旅館、学校などに使用される建築物で、主に延床面積が3,000m2以上のもの。学校では8,000m2以上)では、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)により、保健空調の実施時に表1に示す基準が定められており、この基準を満たすような運用が公衆衛生向上のために求められています。ただし、換気設備のみが設置されている場合は、温度と相対湿度は適用外となります。

表1:建築物環境衛生管理基準における室内空気環境の基準(厚生労働省ウェブサイト、建築物環境衛生管理基準について、https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/を参考に作成)

表1:建築物環境衛生管理基準における室内空気環境の基準

在室する人たちが健康で快適に過ごせるための室内環境を調整することが、保健空調の役割です。近年では、オフィスなどで知的生産性(プロダクティビティ)向上のための快適な空間が求められている一方で、この空調設備に関連するエネルギーがオフィスビルの一次エネルギー消費量の約半分となっており、省エネルギーを実現しながら室内の快適性を維持していくことが大きな課題となっています。

3. 産業空調設備

産業空調とは、精密機器工場のクリーンルームなど、産業用途に用いられている空調をいいます。近年の機械製品は、非常に精密な部品などで作られています。これらを製造する過程では、厳密な温度・湿度の管理と、極めて清浄な空気環境が求められます。また、工場で作業する人たちはその労働量に比例して代謝量も多くなり、夏季などはとても暑くなるため、空調によって適切な環境を維持する必要があります。このように、産業空調は、工場で生産される製品の品質維持や作業する人たちの労働環境の維持、研究施設における検査や分析精度の安定化などを目的としています。このため、制御対象や用途によって、要求される空調条件の目標値や精度は、保健空調とは異なります。

4. 空調設備の計画と設計手順

一般に、空調設備の計画・設計は、図1に示すように、企画、基本計画、基本設計、実施設計の流れで行われます。

図1:空調設備の計画・設計手順

図1:空調設備の計画・設計手順

・企画
企画は、建物や予算規模などを決定していく段階で、建築の計画が主となります。それに加え、近年では地球環境問題や省エネルギー化、快適な室内環境形成への意識の高まりを受けて、この時点から平面計画などとともに環境設備的手法を考えていく必要があります。

・基本計画
基本計画の段階では、対象である空間に対して、目標とする温熱環境・空気環境の程度を想定し、どのような空調方式(対流式、放射式など)で制御を行うか、また、その範囲はどの程度までとし、何台で分担するかなどを決めていきます。最近では、建物の利用開始後に利用空間の用途・レイアウトの変更が必要となる場合もあり、空調設備機器の移動や設置なども、これらに対応できるように自由度を持たせた計画が必要とされています。

・基本設計
基本設計の段階において、夏季や冬季の概略熱負荷計算を実施し、主要な空調設備機器の容量や風量の概略値を求め、機器の設置スペースやダクト・配管の設置位置などを検討します。

・実施設計
実施設計において、詳細な熱負荷計算を実施し、空調機、ポンプ類、送風機などの仕様やダクト寸法、配管寸法を決定します。また、建築の実施図面に基づき、機器の設置スペースやダクト・配管の設置位置なども決定していきます。空調設備の発停や運転状況、異常時・故障時の警報などを司(つかさど)る中央監視装置もこの段階で決定し、仕様書などの作成を行います。

5. 冷暖房の考え方と熱負荷計算

熱負荷とは、所定の温度を保つとき必要とする熱量、水分の総量をいい、熱負荷計算とは、それぞれの目的にあった空調を実現するために必要な熱負荷を計算することをいいます。夏季は、温度差や日射により、外壁や屋根、窓などを介して、熱が外部から室内へ入ります。さらに、換気によって外気を取り入れることで、熱も同時に入ってきます。また、室内の照明やさまざまな機器からの発熱、在室者そのものからの発熱などによっても、室内に熱が溜(た)まっていきます。これらも熱負荷の一つです。熱には、室温変化に影響する顕熱と、室内湿度変化に影響する潜熱があります。

これらの熱が室内に溜まることによる室温と室内湿度の上昇を防ぎ、一定の温湿度を維持するため、機器を用いて流入する熱量と同じ量の熱を屋外などに放出します。これが、冷房の役割です。冬季の暖房では、逆に室内から屋外へ流出してしまう熱量と同じ量を室内に供給することで、室温や室内湿度を一定に保ちます。

空調設備の容量や風量を決定するためには、夏季の流入熱量と室内発生熱量、冬季の流出熱量を把握する必要があるため、熱負荷計算が必要となります。一般に、空調設計の場合は夏季(一部、秋季含む)と冬季において、それぞれ特定の日の1時間、もしくは1日における熱負荷を求める最大熱負荷計算を実施し、冷房と暖房に必要な空調機の容量や風量を決定します。

いかがでしたか? 今回は、空調設備について、その分類と計画・設計手順、冷暖房の考え方を解説しました。次回は、空調設備の種類とそれぞれのメリット・デメリットを説明します。お楽しみに!

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