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個別空調方式について:空調設備の基礎知識4

空調設備の基礎知識

更新日:2021年7月9日(初回投稿)
著者:関東学院大学 建築・環境学部 建築・環境学科 教授 遠藤 智行

前回は、中央空調方式を構成する冷凍機や冷却塔などについて示しました。今回は、個別空調方式を構成する主要な機器を解説していきます。

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1. 個別空調方式の熱の流れ

個別空調方式は、各室に天井埋め込みカセット型エアコンのような小型の空調機を設置し、各室や各ゾーンでの空調の発停・温度調節を可能とした方式です(第2回)。住宅の各室に設置されているエアコンのようなイメージです。住宅のエアコンは、1台の室内機と1台の屋外機が配管で接続されています。

近年のオフィスビルなどでは、図1のように、1台の大きな屋外機に対して、複数の室内機を接続するビル用マルチエアコンが採用される例が増加しています。ビル用マルチエアコンは、冷房時には室内機で室内空気の熱を除去し、配管内の冷媒がその熱を屋外機まで運び、外気と熱交換を行うシステムが代表的なものとなります。空気は室内と室内機の間を循環し、外気を取り込む機能がないため、室内の空気質を良好に保つためには、換気設備が別途必要となります。

図1:代表的な個別空調方式(ビル用マルチエアコン)

図1:代表的な個別空調方式(ビル用マルチエアコン)

2. ヒートポンプ式空調機の仕組み

ヒートポンプとは、空気中の熱を集め、くみ上げて移動させる構造です。気体は圧縮すると温度が上昇し、膨張させると温度が下がります。その性質を利用し、冷媒を圧縮したり膨張させたりして温度を上昇・低下させ、熱を移動させることができます。個別空調方式の代表的なビル用マルチエアコンでは、主にヒートポンプという技術を利用して熱を運んでいます。熱は温度の高いところから低いところへ向かって流れるため、温度の低いところから高いところへ熱を運ぶためにはヒートポンプが必要となります。

現在は、圧縮式冷凍機の原理を用いた圧縮式ヒートポンプが最も普及しています。圧縮式冷凍機では、蒸発・圧縮・凝縮・膨張の冷凍サイクルが1台の冷凍機の中で行われます(第3回)。また、空調機内の冷却コイルで空気と熱交換することで温度が上がった冷水から熱を奪い、冷水の温度を下げています。

一方、ヒートポンプ空調機は、冷凍サイクルを、室内機と屋外機に分けて行っています(図2)。また、室内空気から熱を奪うことで、空気の温度を下げています。ここでは、ビル用マルチエアコンを例に、ヒートポンプ式空調機について説明します。

図2:ヒートポンプの熱の流れ(冷房時)

図2:ヒートポンプの熱の流れ(冷房時)

・冷房時におけるヒートポンプの熱の流れ
図2をもとに、冷房時の熱の流れを見ていきましょう。夏季、温度が上がった室内空気を、室内機の蒸発器に取り込みます。蒸発器では、室内空気の熱によってフロン系の冷媒が蒸発します。熱を奪われて温度が低くなった空気は、室内機の吹き出し口から室内へ吹き出されます。蒸発した冷媒は、配管を通って屋上などに設置されている屋外機へと移動し、圧縮機で高温高圧の気体に圧縮されます。その後、ファンによって屋外空気にさらされることで気体の冷媒は冷やされ、液体へと凝縮します。このとき、熱は気体の冷媒から屋外空気へと移動し、大気へと放出されます。液体となった冷媒は、再び室内機へ移動し、膨張弁で低圧の液体に戻された後、蒸発器へと向かいます。このサイクルを繰り返すことで、室内空気の熱を屋外へ放出しています。

・暖房時におけるヒートポンプの熱の流れ
冷房時には、室内空気の熱を屋外空気へ運びました。この回路を切り替え、熱の流れを変更することで、冬季には屋外空気から熱を奪い、室内空気へ熱を運ぶことができます。こうして、ヒートポンプ式空調機1台で、冷房と暖房を行うことが可能になるのです。図3に、暖房時の熱の流れを示しています。冷房時に蒸発器・凝縮器の役割を果たしていた機器が、暖房時には反対に、それぞれ凝縮器・蒸発器の役割を果たします。冬季は、温度が低い屋外空気でも蒸発するように冷媒を調節し、屋外空気から熱を奪います。その後は、冷房時の考え方と同様に室内空気に熱を運び、温度が高くなった空気が室内に供給されます。これが暖房となります。

図3:ヒートポンプの熱の流れ(暖房時)

図3:ヒートポンプの熱の流れ(暖房時)

・COP(Coefficient of Performance:成績係数)
COPとは、空調設備などのエネルギー消費効率の目安として使われる指標です。この数値が高いほどエネルギー消費効率が良く、省エネ性が高いといえます。ヒートポンプでは電気などのエネルギーを、熱の生産ではなく、媒体から媒体へ熱を運ぶことに利用しているため、とても効率が良く、注目を浴びています。そのため、家庭用エアコンや冷蔵庫・洗濯機・自動販売機など、多くの機器に導入されています。ヒートポンプ式空調機のCOPは、定格冷房(暖房)能力(kW)÷定格消費電力(kW)で求めることができます。例えば、COP=6の空調機は、1kWの消費電力で6kWの熱を移動できることを示しています。

3. 換気の方式と種類

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