メニュー

特殊な空調設備について:空調設備の基礎知識6

空調設備の基礎知識

更新日:2021年9月16日(初回投稿)
著者:関東学院大学 建築・環境学部 建築・環境学科 教授 遠藤 智行

前回は、空調設備の図面の種類や、図面中の表示記号を紹介しました。今回は、特殊な空調設備について説明していきます。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 蓄熱式空調設備

蓄熱式空調設備とは、建物を空調している日中の時間帯に加え、エネルギー需要が少ない夜間にヒートポンプを稼働させて、冷水、氷、湯などで熱エネルギーを蓄えておき、日中に使用する設備のことをいいます。蓄熱式空調設備は、熱を製造する冷凍機などの熱源機と、熱を消費する二次側の空調機が、蓄熱層を介することで別々に切り離された開放回路方式となっています。

第3回第5回で説明したAHUを用いた空調方式では、冷却コイルで空気と熱交換することにより温度が上がった冷水が、すぐに冷凍機に送られ冷却された後、再び空調機の冷却コイルへと送られます。このように、一般的な空調方式は、冷凍機などの熱源機と二次側の空調機とが配管によって直結された密閉回路方式で形成されており、冷凍機での熱の製造(冷却水の冷却も含む)と、空調機での熱の消費が同時に行われています。夏季の気温が高い日には、日中、多くの建物でこの現象が同時に発生するため、冷凍機での冷却に多くの電力が用いられることになります。これに対し、蓄熱式空調設備は、熱の製造と消費を同時に行わない特殊な空調方式として利用が進んでいます。

図1を用いて、蓄熱式空調設備の冷房時を例に解説します。空調機の冷却コイルで空気から熱を奪い温度が上がった冷水は、日中は蓄熱層に運ばれます(a)。蓄熱層に溜まった冷水は、夜間に冷凍機を用いて冷却され(b)、蓄熱層に溜(た)められます(d)。日中は、夜間に冷却された冷水を空調機に送り(c)、冷却コイルで空気を冷やします。このサイクルを繰り返すことで、熱の製造と消費をリアルタイムで行う必要がなくなり、都合の良い時間帯に熱を製造し蓄えておくことが可能になります。

図1:蓄熱式空調設備(冷房時)

図1:蓄熱式空調設備(冷房時)

図2は、ピークシフトを示します。ピークシフトは、夜間から早朝にかけて蓄えた熱を、日中の空調時間の全域において一定の割合で利用し、日中の空調電力をシフトする運転パターンのことをいいます。

図2:ピークシフト

図2:ピークシフト

また、図3は、ピークカットを示します。ピークカットは、蓄熱を空調時間の特定の時間帯に集中して利用し、電力消費のピーク時に空調電力をカットする運転パターンをいいます。

図3:ピークカット

図3:ピークカット

このように、蓄熱式空調設備では昼間の負荷のピークを平滑化できるため、一般に冷凍機容量が小さくなります。また、昼間の負荷変動にかかわらず、夜間に運転する冷凍機などの熱源機は高効率で運転できます。夜間と日中にまたがり運転するため運転時間は長くなるものの、深夜電力が安価に設定されている場合、ランニングコストの低減が可能になります。

2. 地域冷暖房システム

地域冷暖房とは、地域の1か所、または数か所の熱供給プラントで冷水や温水などの熱媒体をつくり、これらを一定地域内の複数の建物に供給して冷暖房や給湯を行う方式のことをいいます。地域熱供給とも呼ばれています。

一般的な建築物における空調設備では、それぞれの建物内に機械室を設けて熱源機などを設置したり、屋上などに屋外機を設置したりします(図4)。これらは、建物ごとに設置・管理を行うため、必ずしも効率良く機器を運転できるわけではありません。また、ピークの需要に対応した設備を建物ごとに設置するため、地域全体の需要に対して過大な設備となりがちです。さらに、機械室や屋上の機器設置スペースなど、建物ごとに多くの設置面積が必要となります。

図4:一般的な建築物における空調設備

図4:一般的な建築物における空調設備

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

ピックアップ記事

tags