SOx・NOx・VOCの特徴や対応法:大気汚染対策の基礎知識3
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- 2016年09月16日
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- 基礎知識
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前回は、環境汚染物質の処理と、その事例として、重油燃料の燃焼における前対応と後対応、炭酸ガス捕集における対応を解説しました。今回は、環境汚染物質への個別の対応技術を解説します。硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)など、大気汚染の原因となる物質の特徴や対応法を紹介します。
1. 大気汚染に関する環境基準と排出基準
環境基準は環境基本法第16条に示されています。人の健康を保護し、および生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準で、工場や事業場に対する規制の基準である排出基準とは異なります。各排出施設において順守すべき硫黄酸化物の排出基準は、大気汚染防止法施行規則第3条に示されている計算式(地域ごとの係数と、排出ガスの拡散に係る補正をした排出口の高さの2乗の積で表される)で算出される硫黄酸化物の量です。環境基準は表1、 硫黄酸化物(SOx)以外の大気汚染物質の排出基準は、主な排出施設の基準を表2にまとめます。
大気汚染に係る環境基準 | |
物質 | 環境上の条件 |
二酸化硫黄SO2 | 1 時間値の1 日平均値が0.04ppm 以下、かつ1 時間値が0.1ppm 以下 |
一酸化炭素CO | 1 時間値の1 日平均値が10ppm 以下、かつ1 時間値の8 時間平均が20ppm 以下 |
浮遊粒子状物質SPM | 1 時間値の1 日平均値が0.10mg/m3 以下、かつ、1 時間値が0.20mg/m3 以下 |
二酸化窒素NO2 | 1 時間値の1 日平均値が0.04ppm から0.06ppm までのゾーン内またはそれ以下 |
光化学オキシダントOx | 1 時間値が0.06ppm 以下 |
有害大気汚染物質(ベンゼンなど)に係る環境基準 | |
物質 | 環境上の条件 |
ベンゼン | 1 年平均値が0.003mg/m3 以下 |
トリクロロエチレン | 1 年平均値が0.2mg/m3 以下 |
テトラクロロエチレン | 1 年平均値が0.2mg/m3 以下 |
ジクロロメタン | 1 年平均値が0.15mg/m3 以下 |
ダイオキシン類に係る環境基準 | |
物質 | 環境上の条件 |
ダイオキシン類 | 1 年平均値が0.6pg-TEQ/m3 以下 |
備考:基準値は、2、3、7、8- 四塩化ジベンゾ- パラ- ジオキシンの毒性に換算した値とする。 |
微小粒子状物質に係る環境基準 | |
物質 | 環境上の条件 |
微小粒子状物質 | 1 年平均値が15μg/m3 以下、かつ、1 日平均値が35μg/m3 以下 |
共通の適用除外事項:環境基準は、工業専用地域、車道その他一般公衆が通常生活していない地域または場所については、適用しない。 |
施設種類 | 規模 | 新設基準値 | ||||
On*1 | ばいじん (g/m3n) | NOx | ||||
(%) | 一般 | 特別 | (ppm) | |||
ボイラー | ガス専焼ボイラー | 4万m3N以上 | 5 | 0.05 | 0.03 | 60 ~100 |
4万m3N未満 | 5 | 0.1 | 0.05 | 130~150 | ||
重油専焼および ガス液体混焼ボイラー | 20万m3N以上 | 4 | 0.05 | 0.04 | 130~150 | |
4 ~20万m3N | 4 | 0.15 | 0.05 | 150 | ||
1~4万m3N | 4 | 0.25 | 0.15 | 150 | ||
1万m3N未満 | 4 | 0.3 | 0.15 | 180 | ||
石炭燃焼ボイラー | 20万m3N以上 | 6 | 0.1 | 0.05 | 200~250 | |
4~20万m3N | 6 | 0.2 | 0.1 | 250~320 | ||
4万m3N未満 | 6 | 0.3 | 0.15 | 250~350 | ||
ガス発生炉 および加熱炉 | ガス発生炉 | 7 | 0.05 | 0.03 | 150 | |
加熱炉 | 7 | 0.1 | 0.03 | 150 | ||
焙焼炉 | 焙焼炉 | 4万m3N以上 | 0.1 | 0.05 | 220 | |
4万m3N未満 | 0.15 | 0.1 | ||||
転炉平炉 | 転炉 | 0.1 | 0.08 | |||
平炉 | 4万m3N以上 | 0.1 | 0.05 | |||
4万m3N未満 | 0.2 | 0.1 | ||||
金属溶解炉 | 金属溶解炉 | 4万m3N以上 | 0.1 | 0.05 | 180 | |
4万m3N未満 | 0.2 | 0.1 | ||||
金属加熱炉 | 金属加熱炉 | 4万m3N以上 | 11 | 0.1 | 0.08 | 100~180 |
4万m3N未満 | 11 | 0.2 | 0.1 | 150~180 | ||
石油加熱炉 | 石油加熱炉 | 4万m3N以上 | 6 | 0.1 | 0.05 | 100 |
4万m3N未満 | 6 | 0.15 | 0.08 | 130~180 | ||
窯業容焼成炉 溶融炉 | 石灰焼成炉のうち土中釡 | 15 | 0.4 | 0.2 | 250 | |
セメントの製造用焼成炉 | 10 | 0.1 | 0.05 | 250~350 | ||
耐火レンガなどの製造用焼成炉 | 4万m3N以上 | 18 | 0.1 | 0.05 | 400 | |
4万m3N未満 | 18 | 0.2 | 0.1 | |||
板ガラスまたはガラス繊維製品 製造用溶融炉 | 4万m3N以上 | 15 | 0.1 | 0.05 | 360 | |
4万m3N未満 | 15 | 0.15 | 0.08 | |||
光学ガラス、電気硝子または フリットの製造用溶融炉 | 4万m3N以上 | 16 | 0.1 | 0.05 | 800 | |
4万m3N未満 | 16 | 0.15 | 0.08 | |||
反応炉および 直火炉 | 反応炉および直火炉 | 4万m3N以上 | 6 | 0.15 | 0.08 | 180 |
4万m3N未満 | 6 | 0.2 | 0.1 | |||
乾燥炉 | 骨材乾燥炉 | 16 | 0.5 | 0.2 | 230 | |
電気炉 | 合金鉄(ケイ素含有率40% 以上) 製造用電気炉 | 0.2 | 0.1 | |||
合金鉄(ケイ素含有率40%未満) およびカーバイト製造用電気炉 | 0.15 | 0.08 | ||||
廃棄物焼却炉 | 廃棄物焼却炉 | 4t以上 | 12 | 0.04 | 0.04 | 250~700 |
2~4t | 12 | 0.08 | 0.08 | |||
2t未満 | 12 | 0.15 | 0.15 | |||
銅、鉛、亜鉛用 各種炉 | 銅、鉛または亜鉛の精錬用焙焼炉 | 4万m3N以上 | 0.1 | 0.05 | 220 | |
4万m3N未満 | 0.15 | 0.08 | ||||
銅、鉛または亜鉛の精錬用焼結炉 | 0.15 | 0.1 | 220 | |||
銅、鉛または亜鉛の精錬用溶鉱炉 | 0.15 | 0.08 | 100~450 | |||
銅、鉛または亜鉛の精錬用転炉 | 0.15 | 0.08 | ||||
銅、鉛または亜鉛の精錬用溶解炉 | 4万m3N以上 | 0.1 | 0.05 | 180~330 | ||
4万m3N未満 | 0.2 | 0.1 | ||||
銅、鉛または亜鉛の精錬用乾燥炉 | 4万m3N以上 | 16 | 0.15 | 0.08 | 180 | |
4万m3N未満 | 16 | 0.2 | 0.1 | |||
アルミニウム用 電解炉 | アルミニウム精錬用電解炉 | 0.05 | 0.03 | |||
鉛蓄電池製造用 溶解炉 | 鉛蓄電池製造用溶解炉 | 4万m3N以上 | 0.1 | 0.05 | 180 | |
4万m3N未満 | 0.15 | 0.08 | ||||
コークス炉 | コークス炉 | 7 | 0.15 | 0.1 | 170 | |
ガスタービン | ガスタービン | 16 | 0.05 | 0.04 | 70 | |
ディーゼル機関 | ディーゼル機関 | 13 | 0.1 | 0.08 | 950~1200 | |
ガス機関 | ガス機関 | 0 | 0.05 | 0.04 | 600 | |
ガソリン機関 | ガソリン機関 | 0 | 0.05 | 0.04 | 600 | |
*1:標準酸素濃度 |
2. 硫黄酸化物(SOx)
硫黄酸化物(SOx)排出防止技術
硫黄酸化物(SOx)は、発電プラントの大型ボイラーと産業用の中・小型ボイラーから多く排出されます。発電用大型ボイラーの排煙脱硫プロセスの主力は、石灰スラリー吸収法(石灰石こう法)です。中小型の排煙脱硫の場合は、水酸化マグネシウムスラリー吸収法(水マグ法)が使用されています。前者は副産品が石こう(CaSO4・2H2O)で、後者は硫酸マグネシウム(MgSO4)です。副産品において、後者は排液中の固形分などの環境上の問題があり、前者にも副産石こうに含まれる炭素分など未燃く物の混入もあり、新たに両者を組み合わせた水マグ石こう法が開発されました。
石灰スラリー吸収法(石灰石こう法)
石灰スラリー吸収法は湿式排煙脱硫法で、硫黄酸化物(SOx)を石灰石(CaCO3)や消石灰(Ca(OH) 2)の水溶液スラリーに吸収反応させ除去する方法です。
反応式:SO2+CaCO3+1/2H2O→CaSO3+CO2+1/2H2O (吸収)
CaSO3+1/2O2+2H2O→CaSO4・2H2O (酸化)
このフローを図1に示します。酸化用空気の吹き込みは、図1のように吸収塔ボトム部に行う場合と、別に設置された酸化槽で行う方法があります。スラリー循環液量は17 l/Nm3‐排ガス量程度必要で、100MWの発電プラントの場合、5,000kl/h弱の吸収液の循環が必要です。
水酸化マグネシウム石こう排煙脱硫法(水マグ石こう法)
最初に、水マグ石こう法のベースとなる水マグ法の説明をします。この方法は石灰石こう法のプロセスフローと似ています。水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2)を吸収剤にし、排液中の固形物を除去するろ過操作を中心とした排液処理部を設置する方法です。この方法の特徴は、吸収液の循環量を小さくできることと、無害で水への溶解度の高い硫酸マグネシウム(MgSO4)が排液であることです。ただし、この方法も排液中にろ過しきれない微量の固形分が混入するので、廃液問題や高価な水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2)消費の問題が発生します。石灰石こう法でも、副産される石こう粒径が小さい場合は、水分除去が不十分であったり、燃焼排ガス中の未燃炭素分などが石こうに付着したまま産出され、ドロドロの石こうや黒色の石こうであったりするため、副産品価値に問題が生じます。そこで、二酸化硫黄(SO2)の吸収能力の高い水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2)と、副産物として有価な石こうを副産できる両方の特徴を持つ「水マグ石こう法」が開発されました。
(吸収工程) SO2+Mg(OH)2→MgSO3+H2O
(酸化工程) MgSO3+1/2O2→MgSO4
(複分解工程) MgSO4+Ca(HO)2+2H2O→CaSO4・2H2O+Mg(OH)2
このプロセスでは、石灰石こう法より大きい結晶サイズの石こうを作ることができます。それは複分解工程で還元再生され吸収塔に再循環される水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)の粒子の滞留時間に比べ、生成する石こうの滞留時間を格段に長く取り、石こうの結晶粒子の成長を図ることができるからです。
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3. 窒素酸化物(NOx)
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4. 揮発性有機化合物(VOC)
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5. 光化学オキシダント
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