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空圧システムの概要と特徴、空気の性質:空圧の基礎知識1

空圧の基礎知識
更新日:2019年5月28日(初回投稿)
著者:東京電機大学 教授 藤田壽憲

空圧システムは、高圧の圧縮空気により空圧アクチュエータを駆動させることで、機械的な仕事を行うシステムです。本連載では、空圧の初学者を対象として、知っておくべき知識について解説します。第1回目は、空圧システムの概要と特徴、ならびに空圧システムを理解するために必要な、空気の性質とボイル・シャルルの法則などについて解説します。

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1. 空圧システムと空圧機器

空圧システムは、自動車、半導体、食品工業などの工場において、省力化・自動化のために使われる組立・搬送といった装置に多く使われています。自動車の生産ラインでは、1ライン当たり約1,000本もの空圧アクチュエータが使用されると言われています。図1は、空圧システムを利用した自動化装置の一例です。

図1:空圧システムを利用した自動化装置の一例

図1:空圧システムを利用した自動化装置の一例

自動化装置では、ワークを持ち上げるピック動作、移動させるトラバース動作、所定の位置に置くプレース動作が多用されます。図1の装置では、エアチャックでワークを掴み、上下動シリンダで持ち上げることによりピック動作を実現しています。コンベア上まで移動させるトラバース動作は、ロータリーアクチュエータでアームを回転させることで行っています。プレース動作は、ピック動作と同じく上下動シリンダ、エアチャックに逆の動作を行わせることで実現しています。各動作は決まった位置間を往復動させるだけなので、その位置間距離と同じ動作範囲を持つ空圧アクチュエータを選定すれば、特別な位置決め装置も必要ありません。また空圧シリンダの中には図2に示すように、トラバース時に便利なように移動テーブルと一体型になったものと、図3に示すように、シリンダ自体を構造体として使用できるようにガイド付きのものなど、利便性を考えた様々な空圧シリンダがあります。このような空圧シリンダにより、電動アクチュエータよりも容易、且つコンパクトに自動化装置を実現することができます。

図2:利便性を考えた様々な空圧シリンダ(ロッドレスシリンダ)

図2:利便性を考えた様々な空圧シリンダ(ロッドレスシリンダ)

図3:利便性を考えた様々な空圧シリンダ(ガイド付シリンダ)

図3:利便性を考えた様々な空圧シリンダ(ガイド付シリンダ)

各動作を空圧アクチュエータに行わせる際には、図4に示すような空圧機器を使用して空圧システムを構成します。空圧システムは高い圧力の圧縮空気を作り出す動力源側と、その圧縮空気を使ってアクチュエータを動作させ、仕事を取り出す装置側に大別されます。動力源側では、電気モータまたはエンジンを使って空気圧縮機(エアコンプレッサ)を駆動し、0.6~0.8MPaの圧縮空気を作り出します。アフタークーラーでは、圧縮に伴い200℃程度になった圧縮空気を冷却させるとともに空気中の水分を分離し、ドレインとして排出します。空気タンク(エアタンク)では、蓄圧して圧力変動を抑制します。メインラインフィルタでは、空気圧縮機で発生した空気中のごみや水滴を取り除き、清浄な圧縮空気にします。アフタークーラーから出た圧縮空気の湿度はほぼ100%ですので、エアドライヤでは圧縮空気を冷やすことにより乾燥させます。

図4:空圧システムの構成

図4:空圧システムの構成

駆動側では、配管内で発生するごみと水分を取り除く空気圧フィルタ、空圧アクチュエータに供給する圧力を一定に保つ減圧弁(レギュレータ)、弁やシリンダに潤滑油が必要な場合は圧縮空気にオイルミストを含ませるルブリケータを設置します。これらは3連で設置されるため3点セット(FRLユニット)と呼ばれます。空圧アクチュエータであるエアシリンダは、3点セットとの間に電磁弁と速度調整弁を設置して駆動します。電磁弁はアクチュエータの移動方向を切換える機能を持っています。一方、速度制御弁はアクチュエータの移動速度を調整する機能を持っています。サイレンサは、電磁弁から空気を排気するときに発生する大きな音を低減するものです。

動力源側は、1つまたは数か所に設けられ、配管を巡らせて分岐することにより、多数の装置側の空圧アクチュエータを駆動する形態を取ります。装置側の残圧抜き手動3ポート弁は、開けると電磁弁側に圧縮空気を供給し、閉めると供給を止めるとともに電磁弁側の圧縮空気を排気することができます。これにより、空圧システムが稼働していない時にシリンダは動作しないため、安全性を確保できます。

2. 空気の性質と基礎法則

空圧システムは油圧システムと同様にパスカルの原理を利用しています。この原理を応用して、力を圧力に変えて伝達すると同時に力を増幅します。油圧と異なる点は、圧力変化とともに空気の体積が大きく変わる点です。圧力に対して体積が変化する性質を圧縮性と言います。圧縮性の性質を表す物理量として、体積弾性係数があります。体積弾性係数で油と空気を比較すると10000倍程度異なり、空気は油に比べ非常に圧縮性が高いです。

体積と圧力がどのように変わるのかを表す法則がボイルの法則であり、「空気の温度が一定のとき体積は圧力に反比例する」となります。図5のようにおもりの個数を増やして圧力をP1からP2に変化させたとき、体積がV1からV2になったとすると、これらにはP1V1= P2V2の関係が成り立ちます。これを密度で考えると、変化後の密度ρ2は変化前の密度ρ1のV2/V1倍であるので、P11 = P2 2 となります。ボイルの法則は「密度は圧力に比例する」と言うこともできます。

図5:ボイルの法則

図5:ボイルの法則

これらの式で使用する圧力は絶対圧力であることに注意してください。圧力計は圧力が掛かっていない大気圧下では「0」を示しています。つまり大気圧が「0」であり、これを基準とした圧力をゲージ圧力と呼びます。圧力は空気の分子運動により生じるため、ある空間内に空気分子が全くない状態(絶対真空と呼ぶ)になれば圧力も「0」になります。絶対真空を基準とした圧力を絶対圧力といい、絶対圧力=ゲージ圧+大気圧(1013hPa=0.1013MPa)となります。空圧システムでは、ゲージ圧の数値が大気圧から0.8MPaまで変化するので、空気の密度は9倍も変化します。

空気は温度によっても体積が変わります。温度と体積の関係を表す法則がシャルルの法則であり、「圧力が一定のとき体積は絶対温度に比例する」となります。図6のように、空気をバーナーで温めて絶対温度をT1からT2に変化させたとき、体積がV1からV2になったとすると、これらにはV1/T1= V2/T2の関係が成り立ちます。絶対温度と密度ではρ1T12T2となります。圧力が温度とともに変わるときはP1V1/T1= P2V2/T2の関係があり、これをボイル・シャルルの法則と呼びます。

図6:シャルルの法則

図6:シャルルの法則

ボイル・シャルルの法則は、圧力変化に伴い体積(密度)と温度が変化することを意味しており、圧力が変化する空圧システムでは空気の温度変化が起こります。図7のように空気を圧縮すると、空気温度が周囲の温度T0より上昇しTになります。空気温度が高くなると、伝熱により周囲に熱Qが逃げ、空気温度は周囲温度に戻ろうとします。熱が逃げるのに十分な時間があるようにゆっくり圧縮すれば、空気温度は周囲温度のまま上がりません。このように温度が一定となる変化を等温変化といいます。逆に熱が逃げる時間がないくらい急激に圧縮すれば、空気温度は最も高くなります。完全に熱が逃げない状態での変化を断熱変化といいます。温度がどの程度変化するかは圧力変化の速度で決まります。

等温変化についてはボイルの法則がそのまま適用できます。断熱変化のときの圧力と体積については、熱力学の第一法則から導かれ、P1V1K=P2V2Kの関係があります。Kは比熱比であり、空気では1対4となります。これをボイル・シャルルの法則を用いて圧力と絶対温度の関係で表すとP1K-1/T1K=P2K-1/T2Kとなります。これを使って20℃の空気を大気圧から0.5MPaまで断熱変化で圧縮すると、そのときの温度は214℃になります。一方、20℃の空気を0.5MPaから大気圧まで放出すると-97℃となります。実際の空圧システムでの空気温度は、200℃近くから-50℃まで変化しながら動作しています。

図7:圧縮したときの空気温度上昇と周囲への伝熱の関係

図7:圧縮したときの空気温度上昇と周囲への伝熱の関係

3. 空圧システムの特徴

空気の持つ性質により空圧システムは次のような特徴を持ちます。

・長所

1)人間に近い作業が得意

使用する圧力は0.5MPa程度であることから、空圧アクチュエータが発生する力は、数ニュートンから人間の10倍程度の数千ニュートンとなります。人間と同じ直線往復運動や回転揺動運動も容易であることから、人間に近い作業を空圧システムで実現できます。

2)取り扱いが容易

減圧弁(レギュレータ)により空圧アクチュエータの発生力を容易に調整できます。また、速度制御弁により速度を無段階で容易に調整することもできます。さらに、特別な専門知識がなくても取り扱え、空圧機器の構成が簡単でメンテナンス性に優れています。

3)小型軽量かつ高速・大出力

使用する圧力は油圧が20MPaであるのに対し、最大でも1MPaなので機器が小型で軽量です。また、空気の圧縮性により、タンクにエネルギーを蓄積できるので、釘打ち機のように短時間であれば大きな仕事をさせることができます。

4)安全でクリーン

空気は地球上のどこでもあり、使用した空気は大気中に放出しても問題がなく、食品工業でも使用できるクリーンなシステムです。空気は引火することもなく、石油プラントなど防爆環境下でも使用できます。過負荷が空圧アクチュエータに掛かった場合でも、圧縮性により吸収され安全性が高いと言えます。

・短所

1)エネルギー効率が低い

空気圧縮機のエネルギー効率が低く、減圧弁によるエネルギー損失や、空圧アクチュエータ自体のエネルギー変換効率も低いため、電気エネルギーから空圧アクチュエータで取り出される機械的エネルギーのエネルギー効率は、非常に低いものとなります。

2)中間停止や厳密な速度制御が困難

空気の圧縮性があるため、空圧アクチュエータの中間停止、その位置での保持は困難です。また、速度調整弁による制御だけでは限界があり、負荷が大きい場合は初期の速度が一時的に大きくなる飛び出しが起こる可能性があります。逆に低速時には、シリンダの摩擦によりアクチュエータが発進停止を繰り返す、スティックスリップが起こることがあります。

油圧アクチュエータや電動アクチュエータとの比較を表1に示します。空圧システムは簡便で省スペース、安価に直線運動を必要とされる場面に向いていると言えます。

表1:空圧・電動・油圧アクチュエータとの比較

表1:空圧・電動・油圧アクチュエータとの比較

いかがでしたか? 今回は空圧システムの概要と特徴、空気の性質について解説しました。次回は、空圧源などについて解説します。お楽しみに!

 

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