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演算増幅器:アナログ電子回路の基礎知識2

アナログ電子回路の基礎知識

更新日:2022年7月21日(初回投稿)
著者:山梨大学 大学院 総合研究部 工学域 電気電子情報工学系 教授 佐藤 隆英

前回は、アナログ電子回路の概論と、その活躍の場について解説しました。アナログ電子回路の最も重要な役割は、増幅です。今回は、広く使用される増幅回路の一つ、演算増幅器を用いた非反転増幅回路と反転増幅回路の解析と設計方法を紹介します。また、実際に演算増幅器を使用する際、気を付けるべき点についても説明します。演算増幅器を用いたさまざまな応用回路も、今回紹介する基本的な回路の組み合わせで実現されるため、非反転増幅回路と反転増幅回路の理解はとても重要です。

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1. 増幅とは

アナログ電子回路の増幅とは、入力信号の振幅を大きくする操作です(図1)。そして、それを行う回路が増幅回路です。増幅回路が増幅する入力信号は、電圧の他、電流や電力があります。ここでは、電圧信号に対する増幅回路を説明します。

図1:増幅回路の動作

図1:増幅回路の動作

増幅回路の入力電圧をvinとすると、出力電圧vout

vout=Avvin …式1

で表されます。ここでAvは、電圧増幅率(倍)です。Avが時間変化せず一定値のとき、ひずみのない出力信号が得られます。実際の増幅回路の電圧増幅率は、入力信号の周波数に依存します。増幅回路の電圧増幅率が、直流(もしくは増幅回路が動作する周波数)の電圧増幅率の大きさから3dB低下する周波数を遮断周波数と呼び、増幅回路が動作可能な周波数範囲の目安として使われます。

2. 演算増幅器を用いた増幅回路

増幅回路の実現には、演算増幅器(またはオペアンプ)と呼ばれる、専用の集積回路が広く用いられます。ここでは、演算増幅器を用いた増幅回路について説明します。図2に、演算増幅器の回路図記号を示します。演算増幅回路は、正負の電源を接続して用いられます。ただし、回路図中の電源端子は、省略されることもあります。

図2:演算増幅器の回路図記号

図2:演算増幅器の回路図記号

演算増幅器の出力電圧vout

vout=Advi=Ad(v+-v)

で表されます。Adは差動増幅率と呼ばれ、通常1万倍以上の非常に大きな値です。しかし、演算増幅器はAd倍の増幅回路として用いられるのではなく、図3のように負帰還(出力の一部を入力に逆相で戻す)回路を構成し、必要な電圧増幅率(増幅器での入力と出力の比)を実現して用いられます。

・非反転増幅回路

非反転増幅回路は入力信号と出力信号の位相が同じになる増幅回路で、演算増幅器を用いた回路の中で最も基本的な回路です。図3を例に解析方法を説明します。

図3:非反転増幅回路

図3:非反転増幅回路

説明を分かりやすくするため、演算増幅器は、表1に示す特性を持つ理想演算増幅器とします。

表1:理想演算増幅器の特性
項目
電圧増幅率(差動増幅率) 無限大
入力インピーダンス 無限大
出力インピーダンス
遮断周波数 無限大

式1のvout=Avvinより、演算増幅器の入力端子間の電圧viはvout/Adとなるはずです。ここでvoutが有限値、かつAdが無限大であれば、演算増幅器の入力端子は等しい電位となることが分かります。入力端子どうしが接続されているわけではないのに同じ電位となることから、これを仮想短絡と呼びます。

図3では、演算増幅器の非反転入力端子の電位がvinなので、反転入力端子の電位はvinとなります。このため、R1を流れる電流iR1はvin/R1となります。演算増幅器は入力インピーダンスが無限大なので、入力端子には電流が流れません。その結果R2を流れる電流iR2もR1を流れる電流iR1と等しくなります。一方、出力電圧vout

vout=vR1+vR2 …式2

です。ただし、vR1とvR2は、それぞれR1の電圧とR2の電圧です。vR1とvR2は、電流は電圧に比例するオームの法則から

です。式2、3、4より、出力電圧vout

となります。よって、電圧増幅率Av

となります。この式により、図3の増幅回路の電圧増幅率が、演算増幅器によらず抵抗値のみで定まることが分かります。つまりR1とR2の値を適切に定めることで、さまざまな電圧増幅率の増幅回路が実現可能になります。

・反転増幅回路

反転増幅回路は、入力信号と出力信号の位相が反転する増幅回路です。非反転増幅回路と同様に、転増幅回路も演算増幅器を用いた基本回路です(図4)。

図4:反転増幅回路

図4:反転増幅回路

図4の回路は、図3で入力端子として用いていた節点Aを接地し、接地していた節点Bを入力端子とした回路です。図4では、演算増幅器の非反転入力端子は接地されているため、反転入力端子も0Vとなります。このため、R1を流れる電流iR1

となります。この電流は全てiR2に流れるためR2の電圧vR2

です。R2の右側の節点の電位voutは、R2の左側の節点の電位(0V)よりvR2だけ低い電圧となるため、

となります。これより、図4の電圧増幅率Av

となります。電圧増幅率が負の増幅回路は、反転増幅回路と呼ばれ、入力電圧の正負を反転した波形を出力します。

演算増幅器を用いて、図3または図4の回路を構成し、抵抗値を適切に選ぶことで、必要な電圧増幅率の増幅回路を簡単に実現できます。演算増幅器の応用回路は、図3または図4の一部の変更や組み合わせで実現されます。そのため、反転増幅回路と非反転増幅回路の動作原理と解析方法をしっかりと理解することが大切です。

3. 実際の演算増幅器の特性と設計時の注意点

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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