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建築製図とは:建築製図の基礎知識1

建築製図の基礎知識

更新日:2019年12月20日(初回投稿)
著者:日本文理大学 工学部 建築学科 教授 西村 謙司

建築物は、設計者による図面をもとに建てられます。その図面を作成することを製図といいます。図面は、誰もが共通の建築像を想像することができるように、一定のルールを前提として作成されています。本連載では、製図を行うための基本となる図面のルールを説明するとともに、全6回にわたって、建築製図の役割、内容、動機、意義に触れ、その基礎知識について解説していきます。

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1. 日本産業規格による製図規格

建築製図とは、立体的な構築物である建築物を平面的な図面に投象して、作図することをいいます。製図には、建築製図の他、機械製図、電気製図などがあります。基本的には、画法幾何学(図法幾何学)を活用して作図され、各分野によって異なる特徴があります。ここでは、各分野を含めて製図のルールを集約した日本産業規格(JIS)による製図規格の概要をもとに、各分野の共通事項と建築製図の特徴について解説します。

製図には、作図者と読図者が図面の内容を共通に理解するためのルールが必要です。そのルールは製図規格として、1930年に日本で初めて、日本標準規格製図(JES119号)として制定されました。その後、1949年に日本工業規格(JIS)が国家規格となるに当たり、以前の製図規格が継承されるとともに改定されました。そして、令和元年にJISが日本産業規格と名称変更される現代まで、規格内容の改変を繰り返しながら継続されています。その間、国際標準化機構(ISO)規格との擦り合わせを行うなど、国際的な整合性を調整しながら内容が見直されています。

こうした改定作業の中で、建築特有の製図法を含めた建築製図通則がJIS A 0150として制定されています。この他に建築分野特有の製図法を適用した規格はいくつもあります。それらは、JIS番号の頭文字にA表記することによって分別されています。また、同様に機械特有の製図法に関するものはB表記、一般的な製図規格はZ表記で記されています。例えば、機械製図はB 0001、製図総則はZ 8310です。

表1:JISによる製図規格の事例

表1:JISによる製図規格の事例

2. 図面の目的と役割

図面の目的は、JIS Z 8310 製図総則に「図面使用者に要求事項を、確実に伝達することにある」と端的に記されています。特に、建築製図の場合、図面は、建築主、設計者、施工者をつなぐ重要な媒体(メディア)として各関係者の共通認識を構築します。そして、関係者相互の意思疎通が確実になるように、一定の共通ルールを前提とし、伝達内容を明確に伝えることが図面の重要な役割です。

製図規格では、図面の作図方法のみならず、図面自体のフォーマットや整理方法まで、規格が定められています。それが守られることによって、図面の保存、検索、利用という第二の目的が達成されます。製図規格で最も重要なのは、図面の対象となる製作物の内容を正確に図示することです。そのため、対象物の図形、寸法、位置、材料が正確に伝達されるように作図することが求められます。その際、あいまいな解釈が生じないように、表現と解釈の間で一義性を持つことが大切になります。そのため、規格の整備と遵守が重要になります。しかし、規格内容が専門特化し、複雑多岐にわたると、他分野間との交流に支障が生じるので、その内容が、できるだけ広い分野にわたる整合性、普遍性を持つことも課題とされています。

3. 製図規格の一般事項

製図総則には、以下のような項目が規定されています。

・用語および定義

・図面の目的

・図面の大きさおよび様式

・製図に用いる線・文字・記号

・図形の表し方(投影法、尺度)

・寸法

製図総則によって、製図の重要項目を確認することができます。先述したように、製図の対象は製作物のため、図面の要件として、対象物の図形、寸法、位置が大切になります。それらを表示するのが、図形を構成する線や寸法の他、図形の内容を表記する文字、記号、尺度です。この線、寸法、記号、尺度に関しては、次回で詳しく解説します。

図面の対象物は、その多くが立体的な製作物です。そのため、立体物を平面媒体の図面に書き表すための図法が、製図において重要な役割を担います。現在では、その図法は、投象法(投影法)として確立されています。作図も読図も投象法の理解なしには困難です。第3回では、建築製図に関する投象法について解説します。

JIS Z 8311では、「製図-製図用紙のサイズおよび図面の様式」に関して詳細が記されています。先述のように、図面の整理法も製図の重要課題です。そのため、用紙も規格化されています。さらにZ 8312以降では、製図規格の一般事項が項目ごとに細則として定められています。その具体的内容は、日本産業標準調査会のウェブサイトのデータベース検索によって確認することができます。

表2:用紙のサイズ(引用:JIS Z 8311 製図―製図用紙のサイズおよび図面の様式、1998年、P.2)

表2:用紙のサイズ(引用:JIS Z 8311 製図―製図用紙のサイズおよび図面の様式、1998年、P.2)

4. 建築製図の特徴

建築製図は、機械、電気分野による製作物と異なり、人が生活する場所として、内部空間を有する建築物が製図の対象となります。そのため、建築物の内部を表示する平面図や断面図が主要図面となります。これらは、作図対象となる建築物の一部を切断し、その断面を描くもので、作図や読図の方法にも特徴があります。

建築物は、他分野の製作方法と異なり製作物の規模が大きいため、設計時に実寸模型を作成し、その試作を繰り返しながら製作されることは、ほぼありません。そのため、重要なのは、最終的な製作物である建築物が施工される前の段階で行われる、構想や計画です。その構想や計画を支える設計活動のより所となるのが、製図による建築図面です。建築図面は、構想、計画、設計、施工の時間軸をつなぐ縦の媒体ともいえます。同時に、建築主、設計者、施工者をつなぐ横の媒体ともなり、縦糸と横糸をつないでできる織物のように、図面を媒体として、さまざまな模様が紡がれて最終的な建築物が形象化されていきます。その編目の模様の意味をしっかり確認できるように、建築製図の基礎知識を学ぶことが大切です。

いかがでしたか? 今回は日本産業規格(JIS)による製図規格の概要をもとに、各分野の共通事項と建築製図の特徴について解説しました。次回は、製図規格の基礎項目について解説します。お楽しみに!

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