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カーボンナノチューブの応用上の問題・課題:カーボンナノチューブの基礎知識5

カーボンナノチューブの基礎知識

更新日:2022年8月3日(初回投稿)
著者:名古屋工業大学 大学院 工学研究科 つくり領域 教授 川崎 晋司

前回は、カーボンナノチューブの分析と評価を紹介しました。教科書には、カーボンナノチューブの美しい構造と素晴らしい物性が示されています。しかし、実際の試料には、さまざまな問題があります。カーボンナノチューブの応用を目指す場合、どうすればこれらの問題を克服することができるのでしょうか。今回は、カーボンナノチューブの応用上の問題や課題について解説します。カーボンナノチューブの精製法、分散手法、および金属・半導体分離法を理解しましょう。

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1. カーボンナノチューブの精製

購入したカーボンナノチューブ試料を分析し、不純物の量や試料の質を確認すると、次に行うのは精製処理です。精製処理には、酸処理、空気中での高温処理や過酸化水素水での処理、真空下での高温アニーリング処理があります。

・酸処理

多量に含まれている金属触媒を除去する方法として、多くの読者は、酸処理を思い付くでしょう。実際に、酸処理で触媒量を減らすことは可能です。しかし、熱重量分析(TG)で確認すると、多くの場合、数%の金属触媒が残ってしまいます。これは、既に述べてきたように、金属触媒がカーボンでコートされたような状態になっていると、酸処理がよく効かなくなるためです。

・高温処理、過酸化水素水処理

空気中での短時間高温処理や、過酸化水素水を使用した処理は、コートされたカーボンを取り除くのに効果的です。この処理を行ってから酸処理することにより、触媒金属を溶解除去することができます。カーボンの酸化処理により、金属触媒と並んでよく含まれる不純物であるアモルファスカーボンも除去できることがあります。

このように、カーボンを酸化処理して精製する手法は多くの場合効果的です。しかし、この酸化処理により単層カーボンナノチューブ(SWCNT)自体も酸化し、劣化させてしまうことがあるので、十分に注意して行う必要があります。六角網面が発達したSWCNTは、アモルファスカーボンなどに比べて耐酸化性が高いため、うまく実験条件を制御すれば、SWCNTを劣化させずに不純物のみを除去することが可能です。一方、低品質のSWCNTでは、精製をしているつもりでチューブを傷ませることがあるため、この場合も注意が必要です。

・高温アニーリング処理

酸処理や過酸化水素水処理などを行っても完全に金属触媒を除去できない場合、真空下での高温アニーリング処理が有効です。高温アニーリング処理は、1,300℃に近い高温で高真空にすることで、触媒金属の除去を行います。試料から除去された触媒金属は、反応管の低温部に蒸着されます。これは酸洗いで簡単に除去できます。また、このアニーリング処理は、精製過程で除去できなかった官能基の除去や、欠陥の修復などの目的でも行われます。ただしこの場合も、SWCNTの結晶性をよく見極めながら温度や真空度の制御を行わないと、試料を傷ませてしまうことがあります。また、うまく品質を向上できた場合でも、副作用として、チューブ端がフラーレンのハーフキャップで閉じられることがあります(図1)。キャップの有無は、窒素ガスの吸着実験などで確認することが可能です。

図1:SWCNT試料に含まれる不純物や欠陥と真空アニーリングによってSWCNT試料に起こる変化

図1:SWCNT試料に含まれる不純物や欠陥と真空アニーリングによってSWCNT試料に起こる変化

2. カーボンナノチューブを分散する

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3. カーボンナノチューブの金属・半導体分離

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