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キャラクタリゼーションの基礎:触媒の基礎知識6

触媒の基礎知識

更新日:2020年5月28日(初回投稿)
著者:北海道大学 触媒科学研究所 触媒表面研究部門 教授 朝倉 清高

前回は、不均一触媒の代表的な反応例を紹介しました。今回は、触媒の構造や表面の電子状態を分析する手法、キャラクタリゼーション法について解説します。

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1. キャラクタリゼーションとは?

新しい触媒を作るには、触媒が反応している最中の触媒の構造を知り、反応メカニズムの詳細を議論する必要があります。かつては、触媒の構造を知ることは難しく、再現よく高活性触媒を作ることは職人技でした。触媒調製は科学よりもアートに近い世界だったといえるかもしれません。

今では、さまざまな実験手法が開発され、触媒の構造がはっきりしてきました。理論計算やシミュレーションが発達し、コンピュータを用いた触媒メカニズム解明のための研究も進んでいます。このように、触媒の構造や特徴を調べることを、キャラクタリゼーションといいます。

一般的に、物質の構造を知る究極の手段は、単結晶構造解析法です。触媒の結晶ができれば、触媒の構造を原子レベルで知ることができます。実際に均一系触媒では、反応を途中で止め、反応中に生成した触媒である有機金属と反応物を単離・結晶化して、その構造を一段階ずつ決めていく方法でのメカニズム解明研究が行われています。X線構造解析では、電子の密度が分かるため、電子状態や価数など、反応を理解する上で重要な情報を得られます。

しかし、溶液中の構造と、結晶化した後の構造は本当に同じかという疑問が残ります。また、固体表面では、触媒活性中心のみの単離・結晶化はできません。単結晶表面を使ったとしても、表面にできる活性構造が必ずしも周期的である保証はありません。そのため、時々刻々と変化する中間状態の構造を原子レベルで決めることは、現状ではほぼ不可能です(ただし、レーザのように高い干渉性を持つX線を用いた回折イメージング法では、原理的には可能です。10年後には実現しているかもしれません)。そこで、研究者たちはさまざまな手法を組み合わせることで、触媒の構造や電子状態を特定しようとしています。それにより得られた情報を多面的に分析し、触媒とはどういう構造になっているかを推測するのです。

さらに、触媒反応が起こる前と後との触媒を抜き出しただけでは、必ずしも触媒の構造が分かったことにはなりません。なぜなら、触媒は反応中、構造を常に変化させているからです。触媒は反応前後で変化しないというのはそのとおりです。しかし、反応中の構造は反応前後の構造に近いかもしれないとはいえても、反応中も変化しないというのは、正しくありません。そこで、反応が実際に起こっている最中に調べる手法が有効です。こうした手法をその場観察とかin situ手法とか最近ではオペランド手法と呼んでいます。

キャラクタリゼーションで気を付けるべき点は、キャラクタリゼーションの結果と最初に考えたモデルを客観的に比較して考えるところにあります。一見、結果がモデルどおりであった場合も、よく原理を考え、見直してみると、モデルとキャラクタリゼーションの結果が合わないことがあります。これにいろいろな理由を考え、つじつまを合わせるのも一つの方法です。一方で、そうした合わないところを謙虚に見直すことで、モデルを否定し、よりよいモデルを探すのも一つの方法であり、重要です。

キャラクタリゼーションが、触媒の正しい姿を知り、よりよい触媒を作り上げる手立てであるとすれば、苦しくても後者の道を選んだ方が良いかもしれません。そのためには、各手法の原理を知り、その特徴をきちんと理解した上で、得られた生の情報をよく観察し、先入観を入れずに構造を推測していくことが必要です。

本稿では、全てのキャラクタリゼーション手法を取り上げることはできません。主なものを表1にまとめました。

表1:主なキャラクタリゼーション手法

表1:主なキャラクタリゼーション手法

2. オペランド手法と階層的なキャラクタリゼーション

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