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セル生産方式とは?なぜ使われなくなったのか?:セル生産方式の基礎知識1

セル生産方式の基礎知識

更新日:2017年2月3日(初回投稿)
著者:楽々改善舎 現場改善コーチ 来嶋 一弘

セル生産方式は、バブル崩壊後の1990年代に、日本で急速に進化した生産方式です。日本が生んだ素晴らしい生産方式の一つですが、現在では多くの工場で廃止されています。なぜ、なくなってしまったのでしょうか? 私は、今こそうまく活用できる生産方式であると感じています。今回から7回にわたり、「セル生産方式」について解説します。1回目は、セル生産方式とは、どんな生産方式なのか紹介します。

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1. セル生産方式とは、どんな生産方式?

「セル生産」という名前は聞いたことがあっても、どんな生産方式か説明するのは難しいのではないでしょうか。「コンベヤのないライン」とか、「立ち作業のライン」とイメージされたかもしれません。「セル生産ライン」とは、コンベヤを取り除いた、ワークを手送りするラインのことを指します。その形状から、「U字ライン」や「二の字ライン」と呼ばれています。一人で生産する方式もあり「一人屋台方式」と呼ばれているラインもあります。いろいろな定義があり、私は「セル生産ラインとは、ライン定員の決まっていないライン」であるとしています。

図1:セル生産方式(U字ライン)の事例

図1:セル生産方式(U字ライン)の事例 日置電機株式会社より提供

日本の製造業が急速進化できたのは、コンベヤラインのおかげです。コンベヤラインは、ラインの人数、つまり、定員の決まっているラインです。定員数の変更は不可能ではないものの、非常に難しいのです。コンベヤの作業者が欠勤すると、別のメンバーが必ず入らなければ生産ができないのです。コンベヤラインではIE(Industrial Engineering)改善を行い、どんどん生産性を上げることができ、安い製品を全世界に届けることができました。

しかし、1990年代はじめのバルブ崩壊後、このコンベヤラインは、日本の製造業の重荷になりました。生産数は減少しましたが、消費者の価値観が多様化し、品種は激増しました。コンベヤラインは、大量生産に強いラインだったため、品種切り替えが簡単にできません。例えば、1時間かけて品種切り替えを行って、その生産は10分間で終了という状態になってしまいました。そこで、登場したのが「セル生産方式」で、1990年台に日本で進化しました。その進化の経過を解説します。

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2. セル生産方式は、どのように生まれたのか?

日本で「セル生産方式」と呼ばれるようになったのは、1990年代です。しかし、その前からセル生産方式の一つの形態である「U字ライン」や「二の字ライン」が開発されていたのです。1980年代より、日本では生産の自動化が急速に進化します。産業用ロボットが登場し、FA(Factory Automation)やFMS(Flexible Manufacturing System)と呼ばれた時代です。しかし、自動車などの大物部品の組立ラインでは、自動化が難しく「U字ライン」や「二の字ライン」に進化しました。つまり、トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)やJIT(Just In Time)で、U字ラインの開発が行われたのです。例えば、複数の大型工作機をU字型に並べて、多能工が工作機を渡り歩いて作業を行いました。

1990年前後に、「セル生産方式」と呼ばれる生産方式が出現します。その中心は、「一人屋台方式」つまり、作業者一人で、複数の作業を行う生産形態でした。キヤノンでは、部品が1,000点以上ある高機能コピー機を、一人で生産しました。このように、元々TPSやJITで、「U字ライン」が進化し、その後「一人屋台方式」が登場し、その総称を「セル生産方式」と呼ぶようになったのです。

当時、現場改善のコンサルタントが、いろいろな名称を付けていました。例えば、U字ラインは、Uライン、Uの字ライン、U字型ラインなどと呼ばれています。U字ラインの他には、二の字ライン、フラワーライン、ひまわりラインなどがあります。進化の中で、いろいろな生産形態を考案し、誕生させたのです。

図2:セル生産方式の種類

図2:セル生産方式の種類

この背景には、日本に強力なIEスキルの存在が挙げられます。IEとは、インダストリアルエンジニアリングのことで、作業のムダを削減するためのスキルの一つです。1970年代ごろに、コンベヤラインの生産性向上を行うために、IEスキルが大きく進化していました。このIEスキルとTPS、JITが融合して、U字ラインなどが開発されたのです。

図3:IE(インダストリアルエンジニアリング)の目的

図3:IE(インダストリアルエンジニアリング)の目的

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3. セル生産方式が使われなくなった理由

現在、真の「セル生産方式」を活用しているという工場は少なくなったと感じます。セル生産方式と称して、立ち作業の手送りラインに変更されたケースを多く見ました。広い意味で、セル生産方式といっても間違いではありませんが、「ライン定員の決まっていないライン」ではありません。

「ライン定員の決まっていないライン」とは、例えば、受注に合わせて、ある時は日産1,000台、またある時は日産300台のラインを指します。コンベヤラインや先ほどの手送りラインでは、極めて難しいことです。しかし、受注に合わせた生産は、消費者の価値観が多様化する現在では、重要な要求になります。これにピッタリなのが、セル生産方式なのです。

なぜ、セル生産方式は姿を消しているのでしょうか? その理由は、現在の日本の製造力では、運用が極めて難しくなったからです。セル生産方式を運用するための最も重要な条件は、「多能工」です。多能工とは、多くのモノづくりのスキルを持っている人です。反対に、コンベヤラインでは単能工でも大丈夫なので、生産が急増し作業者が不足する状態では、コンベヤラインは最適でした。

コンベヤラインでは、多くのスキルが必要とされないため、現場力が伸びませんでした。コンベヤを捨て、セル生産方式を導入した工場で、最大の課題になったのは多能工の育成でした。多能工の育成に成功した会社が、セル生産方式をうまく運用することができたのです。

しかし、製造業では請負をはじめとする非正規社員化が急速に進むことになり、現場の多能工が減少してしまいました。セル生産ラインの複数の多能工の中に、一人でも新人が入ると、生産性が激減してしまいます。つまり、セル生産方式はハイリスクなラインになってしまったのです。安定生産のためにコンベヤラインに戻そうとしましたが、コンベヤはすでに廃棄していたため、立ち作業の手送りラインに変えた工場が多かったのです。

非常に残念なことに、この10年ぐらいで組立系のモノづくりは大きく変化してしまいました。今後、どうすれば良いのでしょうか? 次回は、セル生産方式のメリットについて解説します。お楽しみに!

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