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セラミックスとは:セラミックスの基礎知識1

セラミックスの基礎知識

更新日:2020年6月23日(初回投稿)
著者:東海大学 工学部 材料科学科 教授 松下 純一

セラミックスに関しては、学術的な専門書や教科書をはじめ、この分野を専門としない一般の方々向けの書籍など、さまざまな良書が世界中で出版されています。本連載では、筆者が在職している大学の授業内容を基に、セラミックスの基礎知識という切り口で、入門的な内容を中心に解説します。読者の皆さんがセラミックスという分野に少しでも興味を持ち、より専門的な領域に入るきっかけとなれば幸いです。また本稿では、重要な専門用語には英訳を併記しています。将来、原著論文を読んだり、国際会議などで研究発表を聞いたりする際の手助けになればとの思いです。

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1. セラミックとセラミックス

セラミック(Ceramic)の語源は、陶器(Pottery)を作るための粘土(Clay)、または粘土で焼き固めたもの(レンガや陶器など)を意味する古代ギリシャ語のケラモス(keramos)といわれています。英語のCeramicに対応する和名はセラミックで、新漢語に対応する語句はありません。古くは、出土した土器(土器片)や土偶、埴輪から、日常、私たちがご飯を食べたりお茶を飲んだりする茶碗まで、土や粘土、鉱石などを主原料に用いて高温で焼き固めたもの、すなわち、焼き物全般がセラミックスであるといえます。図1に、伝出土品(明治時代に東京近郊にて出土)の縄文土器片を示します。

図1:縄文土器片(撮影:松下純一)

図1:縄文土器片(撮影:松下純一)

縄文土器は、今から約16,000~3,000年前の縄文と区分される時代に作られた土器の総称です。縄文という呼称は、アメリカのエドワード・シルヴェスター・モース:Edward Sylvester Morseが大森貝塚(現在の東京都品川、大田両区周辺)から出土した土器を英文で学術報告した際に記したCord Marked Potteryの和訳です(かつては、索紋土器、縄紋土器などの和訳も存在しました)。

図1の土器片は、形状や紋様、かさ密度測定、走査型電子顕微鏡による微構造観察、化学成分分析などの評価結果から、今から約7,000~5,500年前の、縄文前期の時代に作られたものと推定されます(年代測定は未実施)。大人の手のひらに収まるような小さな土器片です。焼き固める前に、土器の表面全体に縄のような紋様が丁寧に施されているのが分かります。これらの土器などを用いて、縄文人は食材を煮炊きしたり、湯を沸かしたりして、豊かな食文化生活を営んでいたのではないでしょうか。

セラミックという外来語は、セラミックスのように複数形で使われることがあります。筆者は、セラミック、セラミックス、セラミック材料、セラミックス材料などの語彙が、それぞれ厳格に違うものであるとか、どれが間違っているということはないと考えています。いい意味で、日本的な取り扱いがなされているのではないでしょうか。我が国の国名、日本の読みは正式に定められておらず、「にほん(Nihon)」と「にっぽん(Nippon)」のどちらも問題なく使われているのと同じです。

ただし、本稿では、英語の単数名詞(イギリスでは不可算名詞として扱われる場合もある)、または形容詞のCeramicと、複数名詞、または不可算名詞のCeramicsに準拠して、セラミックとセラミックスを区別しています。これは、厳格な可算・不可算名詞、あるいは単数・複数形を区別するのではなく、セラミックはある種類、ある特定の無機固体材料を表現するときに用い、セラミックスは金属材料を除いた無機材料全体を言い表すときに用いています。そのため、セラミックという材料の分野やグループ全体を表現し取り扱うときにセラミックスを使用します。セラミック、あるいはセラミックスに関連する漢語として、窯業(Ceramic Industry)という用語があります。この窯業の詳細については、次回以降で解説します。

2. 狭義のセラミックスと広義のセラミックス

セラミックスは、狭義的には、人為的に焼き固められて作りだされた無機質固体(Inorganic Solid)と定義することができます。また、セラミック材料とは、セラミックという材料の意です。狭義的と記した理由は、人為的に焼き固められていない無機繊維や、無機ガラスなどの無機質の固体材料も、広義的なセラミック材料として取り扱われる場合があるからです。

図2に示す磁器の茶碗と急須は、中国・江西省の景徳鎮(Jingdezhen)地域で、現在広く販売されている磁器です。無機ガラスが釉(ゆう)薬として用いられ、硬質で透水性がないだけでなく、外表面には染付(青絵付け)が施されています。そして、内表面は茶の色が映える純白に近い色を呈した、透明感を有する白磁器です。この染付磁器様式は14世紀ごろの完成と推測されます。

図2:磁器製品(撮影:松下純一)

図2:磁器製品(撮影:松下純一)

景徳鎮(旧晶南鎮から北宋・景徳年間に改称)は、世界で初めて磁器が生産された場所です(紀元後6世紀から7世紀には陶器を生産し、11世紀には磁器生産と推測)。景徳鎮磁器の原料は、カオリン(Kaoling)という黄土色を呈した低可塑性の天然粘土です。景徳鎮磁器の主成分(約70質量%以上)は、カオリナイト(Kaolinite)/カオリン石(高陵石)です。化学式(成分組成)は、Al4Si4O10(OH)8で、アルミニウムを含む含水ケイ酸塩鉱物(蛇紋岩)の一種です。

景徳鎮磁器の原料、カオリンは、江西省の高嶺(カオリン)に由来しています。この呼称が初報告されたのは、1869年、ドイツ人学者のフェルディナント・フォン・リヒトホーフェン:Ferdinand Freiherr von Richthofen(1833-1905年)によるとされています。図3にその説明がされている石碑を示します。石碑は、景徳鎮市内の高嶺山麓に公的設置されています。

図3:中国・景徳鎮市内の高嶺山麓の石碑(撮影:松下純一)

図3:中国・景徳鎮市内の高嶺山麓の石碑(撮影:松下純一)

フランス人宣教師のフランソワ・グザヴィエ・ダントルコール:Francois Xavier d’Eantrecolles(1664-1741年)は、1727年、景徳鎮磁器の製造技術などについて、世界で初めて詳しく報告しました。

このようなセラミック材料だけでなく、無機ガラス(ガラスの一般的な呼称)や、人造の黒鉛(英語名のままGraphiteグラファイトとも呼ばれる)、人工のダイヤモンド(Diamond)の無機材料(Inorganic Material)なども、セラミックスの呼称で取り扱われる場合があります(ただし金属材料を除く)。図4に、研磨剤や砥石(といし)などの工業製品に利用されているダイヤモンド粒を示します。

図4:人工ダイヤモンド粒の試料(撮影:松下純一)

図4:人工ダイヤモンド粒の試料(撮影:松下純一)

キンバーライト鉱などから天然に産出される、透明無色、あるいは透明有色のダイヤモンド単結晶は非常に高価です。一方で、人工的に製造されるダイヤモンドは、高品質ながらも、大量に生産することが可能なセラミックスです。ダイヤモンドに関しては、次回以降で詳しく解説します。

なお、前述したように、国際共通語として用いられている英語では、単数形扱いのセラミックと、複数形扱いのセラミックス、あるいは形容詞としてのセラミック、不可算名詞としてセラミックスを区別する場合もあるものの、通常、英語圏で広義にセラミックスというと、焼き物(陶器Potteryと磁器Porcelain(いわゆる新漢語の陶磁器Pottery and Porcelain))など、人為的に焼き固められたものを意味します。このPottery、およびPorcelainを、陶器、および磁器の意で用いる場合は、いずれも不可算名詞として扱われます。ただし、英語の文法上、同格の構文では、名詞を連結させて1つの名詞形として扱うことは少なく、例えばCeramicsという名詞を単独で用いずに、Material(s)という名詞をあえて連結させる場合は、通常、前置詞を用いて連結させるため、Material(s) of ceramicsが一般的で、Ceramics material(s)は一般的ではありません。形容詞のCeramicであれば、Ceramic material(s)と表記することは可能です(不定冠詞、定冠詞は省略しています)。

3. セラミック材料の性質

セラミックス、すなわちセラミック材料という無機固体材料は、構成原子同士がイオン結合、共有結合、ファンデルワールス力などの化学結合(通常結合と略す場合あり)をしています。しかし、セラミック材料の原子は金属結合をしていません。なぜなら、原子が金属結合をしていれば、その物質は金属材料だからです。なお、セラミック材料を含めた全ての物質を形成している材料(材質)の最小の構成単位は原子(Atom)です。そして、それぞれの化学結合には原子間の強弱があり、物質を化学結合別に区別することはできず、複数の化学結合によって作られている物質が多数あります。

一般的にセラミック材料は、高硬度、高強度、耐熱性、耐腐食性、耐酸化性、絶縁性などの優れた特徴を有します。逆の特徴としては、低靭(じん)性、低熱伝導性、低熱膨張性、低電気伝導性などが挙げられます。ただし、これらの特徴は、あくまでも、金属材料や有機材料と比較した一般的な性質です。例えば、陶器や磁器などは絶縁性を示すものの、セラミック材料には、例外的に、純鉄と同程度の107S/m(10-5Ωcm)の導電性(電気伝導性)を有するものも存在します。これらのセラミック材料については、次回以降に詳しく解説します。

いかがでしたか? 今回は、セラミックの語源や、セラミック材料の性質などを紹介しました。次回は、セラミックスの化学組成と結晶構造を取り上げます。お楽しみに!

参考文献:
松下純一、セラミック材料入門、培風館、2002
Junichi Matsushita、Materials Chemistry of Ceramics、Springer、2019

※本稿では、材料固有の特徴は性質(Property/Properties)と表記し、ある任意に作られた材料の特徴は特性(Property/Properties)と表記しています。

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