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単体セラミックスと化合物セラミックス:セラミックスの基礎知識3

セラミックスの基礎知識

更新日:2020年9月9日(初回投稿)
著者:東海大学 工学部 材料科学科 教授 松下 純一

前回は、広義のセラミックスとして取り扱うことができる無機非金属固体材料の化学組成と、結晶構造を紹介しました。今回は、合成ダイヤモンドと人造黒鉛を例に、単体セラミックスを取り上げます。また、2種類以上の元素が化学結合してできる化合物セラミックスについても解説します。

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1. 単体セラミックス

単一の元素の原子で構成された物質を、単体(Simple Substance)といいます。単体には、同じ元素から成る単体でありながら、異なる結晶構造(原子の配列が違う)を持ち、異なる性質を持つ物質があります。例えば、ダイヤモンドと黒鉛は、ともに原子番号6の元素、炭素原子C(Carbon)だけで構成される単体の材料です(図1)。ダイヤモンド(Diamond)の鉱物名は金剛石、黒鉛(Graphite)の鉱物名は石墨(せきぼく)です。黒鉛は外来語のまま、グラファイトと呼ばれることもあります。両物質とも、ホウ素やケイ素と同様に、非金属元素である炭素原子のみで構成された単体の無機材料です。そのため、本稿では、広義のセラミックスとして取り扱います。

図1:炭素原子Cだけで構成される結晶構造((a)ダイヤモンド、(b)グラファイト、(c)フラーレン)

図1:炭素原子Cだけで構成される結晶構造((a)ダイヤモンド、(b)グラファイト、(c)フラーレン)

ダイヤモンドと黒鉛のように、同一の単一成分(組成式C)でありながら、結晶構造が違い、異なった性質を示す単体のことを同素体(Allotrope)と呼びます。本稿では、ダイヤモンドや黒鉛など、炭素材料を例に、単体セラミックスについて解説します。なお、ホウ素やケイ素などの化合物については、次回以降、酸化物セラミックス、および非酸化物セラミックスを取り上げる際に、詳しく解説します。

無機材料の分野では、炭素材料というよりも、外来語のカーボン材料という方が一般的ではないでしょうか。同様に、ケイ素材料という呼称は、有機化学や有機材料の分野では一般的であるものの、無機材料の分野ではシリコン材料と呼ぶのが一般的です。ただし、元素名を正確に和名で取り扱う場合、公式な周期表上の元素記号C、およびSiの呼称は、それぞれ炭素、ケイ素です。

冒頭に元素と記したのは、元素には、同位体(Isotope)の原子を有する場合があるためです。例えば、炭素元素には、質量数12の炭素原子(12C)以外に、質量数13の炭素原子(13C)や、質量数14の炭素原子(14C)などが存在します。炭素14は、存在比率と半減期の算出から、動植物の年代を推測することができます(放射性炭素年代測定)。

2. ダイヤモンドと黒鉛

人工的に製造されるダイヤモンドと黒鉛は、工業材料として幅広い分野に利用されています。天然のダイヤモンドは、キンバリー岩(キンバーライト)などの母岩中から産出し、特に無色透明、あるいは有色透明で、大きな単結晶は、希少性の高い宝飾品(宝石)です。図2に、ロシアで産出されたダイヤモンド原石(母岩中)を示します。この原石を高精度に研削研磨加工することにより、宝飾品としてのダイヤモンドになります。

図2:キンバーライト中のダイヤモンド原石

図2:キンバーライト中のダイヤモンド原石

ダイヤモンドは、図1(a)に示すとおり、炭素原子が3次元的に共有結合したダイヤモンド構造を有し、地球上で、最も硬く、かつ最高の熱伝導性を有します(常圧室温下)。ダイヤモンドは、現在、高温高圧法などにより、商用ベース(採算ベース)で人工的に多量に製造されています。これを、合成ダイヤモンド(Synthetic Diamond)といいます。

天然、および合成のダイヤモンドは、含有する窒素の不純物量などにより、4種類のタイプ(Ia、Ib、IIa、IIb)に分類されます。ダイヤモンドは、黒鉛とはほぼ正反対の性質を有し、無色透明(有色透明や不透明なものもあります)、高融点(3,600℃)、高沸点(4,800℃)であり、低電気伝導性(10-11S/m)、高電気抵抗(1013Ωcm)の性質を持つ絶縁体です。また、物質の中で最大級の屈折率を有します。

工業的には高硬度な特徴を生かし、工具、砥粒(とりゅう、Abrasive Grain)、および砥石(といし、Grinding Wheel)などに幅広く利用されています。身近な例としては、切削工具(バイト、チップ)、ボーリング(掘削)用切岩器のビット、切断・研削・研磨加工用のホイール(ブレード)・ドレッサーなどがあります。地球上には、ダイヤモンド以上に硬い工業材料がないため、当然のことでしょう(現在研究されている、六方晶窒化炭素(β-C3N4)などの非工業材料を除きます)。最近では、ダイヤモンドの優れた絶縁性や、熱伝導性といった性質を利用し、半導体材料(半導体基板)などに応用する試みもあります。

出発原料から製造プロセスまで、高度に制御して人工的に得られる高機能なダイヤモンドを、ニューダイヤモンドと呼びます。ダイヤモンドに次ぐ高硬度な性質を有する立方晶(Cubic)の窒化ホウ素c-BNをニューダイヤモンドとして取り扱うこともあります。この立方晶BNの略称であるc-BNを、cBN、あるいは工業的呼称でCBNと称する場合もあります。なお、アメリカ化学会(American Chemical Society)などが発刊している学術論文誌上では、一般的にc-BNが用いられています。しかし、日本工業規格(JIS)のファインセラミックス関連用語中では、cBNが用いられます(JIS R 1600 : 2011、ファインセラミックス関連用語)。このファインセラミックスに関する日本工業規格については、次回、詳しく解説します。

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3. 化合物セラミックス

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