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オールドセラミックスとニューセラミックス:セラミックスの基礎知識4

セラミックスの基礎知識

更新日:2020年10月2日(初回投稿)
著者:東海大学 工学部 材料科学科 教授 松下 純一

前回は、単体セラミックスと化合物セラミックスを紹介しました。今回は、オールドセラミックス、ニューセラミックスを取り上げます。オールドセラミックスは、天然原料を、ほぼそのままの状態で用いて人為的に作られるセラミックスです。ニューセラミックスは、天然原料に含まれる特定成分を高純度化し、精度よく配合した人工原料を用いて、高度に制御された製造プロセスを経て作られるセラミックスです。このほか、ファインセラミックスと窯業(ようぎょう)という言葉についても解説します。

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1. オールドセラミックスとニューセラミックス

本連載では、人為的に作り出された無機固体材料を、広義のセラミックス(セラミック材料)として扱っています。その無機固体材料を作るために、天然に産出する粘土や鉱石などをほぼそのままの状態で用い、高度に制御された製造プロセスを経ずに作られるセラミックスを、オールドセラミックス(Old Ceramics)と呼びます。まれに、伝統的セラミックス(Traditional Ceramics)、古典的セラミックス(Classic Ceramics)と呼ぶこともあります。オールドセラミックスの製造過程では、高純度化や、所定の粒度分布を有する微粒子(粒径)制御など、高度な技術的処理はほとんど行われません。

オールドセラミックスに対して、ニューセラミックス(New Ceramics)という呼称もあります。ニューセラミックスには、天然原料に含まれる特定成分を高純度化した、人工の単体原料や合成原料が用いられます。これらの原料を、所定の割合に精度よく配合した混合物や化合物など、高性能な人工原料を用い、高度に制御された製造プロセスを経て作られます。

ただし、任意のセラミックスを、オールドセラミックス、あるいはニューセラミックスと明確に区別することはできません。例えば、かつて生産されたセラミックスを評価したとき、現在の技術に比べれば、それは当然、初歩的な技術によって作られたオールドセラミックスといえるでしょう。しかし、当時の技術レベルとしては、最先端の技術によって作られたセラミックスと思われるものもあります。

主原料に、粘土、ケイ石、長石(ちょうせき、Feldspar)、方解石(ほうかいせき、Calcite)、石灰石(せっかいせき、Limestone)などの天然材料を用いて作られた土器や陶器、瓦(かわら、Roof Tiles)や煉瓦(れんが、Brick)などはオールドセラミックスに分類されるでしょう。

図1に、オールドセラミックスの一例として、産業革命の時代に作られた、イギリスのロイヤル・ウースター社製の磁器3点セット(トリオ)を示します。18世紀後半に、イギリス国内で市販されていたボーンチャイナ製のトリオは、持ち手(Handle)の有無と形状が異なる2種類のカップ、そしてコーヒーソーサーの3点セットが主流だったようです。

図1:オールドセラミックスの一例、イギリスのロイヤル・ウースター社製トリオ(18世紀後半製のボーンチャイナ)

図1:オールドセラミックスの一例、イギリスのロイヤル・ウースター社製トリオ(18世紀後半製のボーンチャイナ)

ソーサーの使用方法は、18世紀後半の当時では、カップの受け皿としてよりも、熱冷ましが主だったようです。なお、ボーンチャイナ(Bone china)の呼称は、ケイ酸アルミニウムが主成分であるカオリンの代替材料として、リン酸カルシウムが主成分の骨(ボーン)を含有した骨灰の磁器(Porcelain、俗称でchina)に由来します。骨灰の読み方は、セラミックスの分野では、一般的に「こっかい」で、石灰(せっかい)と同様です。灰(かい)の語源は、カルシウム(Ca)の意味で、動植物などの燃焼後の残滓(ざんし:灰、Ash)の意での読み方は「こつばい」です。当時は、牛骨灰が用いられていました。牛骨灰は、他の骨灰に比べて鉄成分が少なく、焼成後の磁器表面に黒色班が発生する確率が低いためです。現在、市販されているボーンチャイナと明記された製品類は、人工の工業原料を用いて製造されています。

図2に、ニューセラミックスの一例として、市販のセラミックナイフ、セラミックハサミを示します。

図2:ニューセラミックスの一例、セラミックナイフ、セラミックハサミ

図2:ニューセラミックスの一例、セラミックナイフ、セラミックハサミ

これらセラミックス製品の材質は、二酸化ジルコニウムZrO2(特に工業分野ではジルコニアと呼称)です。また、次回以降に概説する部分安定化(例えば、酸化イットリウムY2O3を3mol%添加)したジルコニア製の人工骨や、最適な焼結助剤である酸化アルミニウムAl2O3やY2O3などを添加した窒化ケイ素Si3N4製のベアリング、および半導体基板製造のための単結晶育成用(CZ法による単結晶引き上げ用)の石英ガラスSiO2製容器である坩堝(るつぼ、Crucible)などは、ニューセラミックスといえるでしょう。

一方で、化学実験で広く用いられている耐熱性ガラスビーカーや、試験管、あるいは住宅に広く用いられている屋根瓦、外壁タイルなどは、古くて新しいセラミックスといえます。これらは、通常、オールドセラミックス、ニューセラミックスのどちらかに分類することはできません。なぜなら、今から約1,000年前にハンドメイドされたガラス製品と、現在、工業的に大量に作られているガラス製品では、品質も特性も同一ではないからです。ただし、製品群を、あくまでも、オールドかニューに二分する必要があるとすると、磁器、耐火物、ガラス、およびセメントなどは、ニューセラミックスに近いオールドセラミックスに分類できるのではないでしょうか。

2. ファインセラミックス

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3. 窯業

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