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化学工業の歴史4~石油化学への展開と高分子化合物の発明~:化学工業の基礎知識5

化学工業の基礎知識2:化学工業の歴史1~無機・有機化学工業の基盤成立~

更新日:2016年4月15日(初回投稿)
著者:公益社団法人化学工学会 SCE・Net 山﨑 徹

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20世紀初頭、アンモニア合成の工業化に成功し、化学技術は飛躍的な発展を遂げました。今回は、第2期:化学産業の自立と高度成長の時代の後半です。石油化学の登場、合成樹脂・合成繊維など高分子化合物の発見による化学工業の高度成長について解説します。

1. 自動車が加速?石油化学への展開

1885年、ドイツのダイムラー(Gottlieb Daimler)とベンツ(Karl Benz)は、ガソリンを動力源とする自動車を開発しました。これによりガソリンに対する大量需要が生まれ、動力エネルギーの主役は石炭から石油へ交代します。また石油の生産に随伴する天然ガスや、石油精製で副生される炭化水素ガスが安価かつ大量に得られるようになり、化学産業の炭化水素原料も石炭から石油へと移行しました。その経緯を詳しく解説します。

石油化学の誕生

ガソリンの元となる原油は、沸点が異なるさまざまな炭化水素化合物の混合物です。これを蒸留し、沸点に応じて、ガソリン、灯油、軽油、重油などに分離します。19世紀末から20世紀にかけて自動車が普及し、ガソリンの需要が増えると、単に原油を蒸留しただけではガソリンの生産が追い付かず、また灯油より沸点の高い留分(蒸留によって得られる各成分)が余ってしまうというアンバランスが生じました。

そこで、原油からさらに多くのガソリンの得るための技術が開発されました。この技術は、ガソリンより沸点の高い留分を蒸発させ、粒子状の個体触媒層(シリカアルミナ触媒)に吹き上げて触媒層を流動化しながら、接触、分解させ、ガソリンを生成するものです。そのため、「流動化接触分解」(Fluidized Catalytic Cracking)、略して「FCC」と呼ばれます(図1)。

図1:FFC(流動化接触分解)装置の概要

図1:FFC(流動化接触分解)装置の概要

FCCの主な生産物はガソリンです。しかし一部では分解が進み、C3留分(プロピレンなど)やC4留分(ブタジエンなど)といった低沸点物となります。これらは、燃やしてしまうしかない無価値な炭化水素、いわゆるオフガスでした。1920年、スタンダードオイル(米国)は、FCCで発生するオフガスに含まれるプロピレンCH2=CH-CH3を水和し、イソプロピルアルコールCH3CH(OH)CH3を製造する技術を開発しました。

また米国は、原油の採掘に随伴して天然ガスを豊富に得ることができました。1920年代、天然ガスに含まれるエタンC2H6を蒸気分解して、エチレンC2H4を生成し、これを出発原料としたエチレンオキサイドC2H4Oや、エチレングリコールC2H(OH)2、エチルアルコールC2H5OHなどエチレン誘導品が製造され、次々と工業化されました。このように、石油精製の工場から副生される分解ガスや天然ガスを化学工業の原料として使用したことから、石油化学工業は始まりました。

高分子化合物の発明と工業化

1930年代から第2次世界大戦を挟み、1940年代にかけて、現在でも幅広く使用されているポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂などの「汎用合成樹脂」や、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの「汎用合成繊維」が発明されました。これらは大型化したリーディングカンパニーの研究室で生まれ、工業化されました。R&D(研究開発)が華々しく成果を上げた時代です。

1950年代に入ると、汎用合成樹脂よりも高い耐熱性や強度を有する「エンジニアリングプラスチック」と呼ばれる高機能の合成樹脂が発明され、工業化が活発に行われました。1970年代には、エンジニアリングプラスチックよりもさらに性能の優れた「スーパーエンジニアリングプラスチック」が発明され、工業化されました。

米国は、欧州や日本とは異なり、石油や天然ガスなどの資源に恵まれていました。そのため、石油精製の工場から副生される分解ガスや天然ガスを利用して、合成樹脂や合成繊維の原料となる化学品の製造が可能でした。

ナフサと石油コンビナートの形成

原油を蒸留して得られるガソリンのうち、比較的沸点の低い軽質ガソリンは、高性能のエンジンを動かすには少々性能が不足していました。そこで、この軽質ガソリンを石油化学製品の原料として利用し、「ナフサ」と呼びました(図2)。

図2:石油化学原料の生産

図2:石油化学原料の生産

ナフサを熱分解すると、エチレンC2H4のほか、プロピレンやC4留分が得られます。また残差油として、ベンゼンC6H6や、トルエンC6H5CH3、キシレンC6H4(CH3)2を多く含む分解ガソリンが得られます。

エチレンC2H4からは、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などを、プロピレンC3H6からは、ポリプロピレン樹脂の製造が可能です。また、分解ガソリン中のベンゼンC6H6からはナイロンのモノマーであるカプロラクタムC6H11NOを、キシレンC6H4(CH3)2からはポリエステル繊維の原料であるテレフタール酸C6H4(COOH)2を製造でき、実に無駄がありません(図3)。

図3:ナフサによる石油化学製品の流れと各成分利用の推移

図3:ナフサによる石油化学製品の流れと各成分利用の推移

こうして、石油精製工場に隣接してナフサの熱分解プラントが建設され、エチレンC2H4やプロピレンC3H6などを原料とする誘導品の化学工場がパイプでつながって立ち並ぶ「石油化学コンビナート」が形成されました。

ナフサは、天然ガスや石油精製工場の副生ガスに比べれば、コスト高です。しかし当時は、原油価格が極めて安かったため、ガソリンなどの石油製品や、石油化学製品を製造するために原油を輸送し、消費しても、経済的に問題はありませんでした。

このように、欧米の巨大化学企業をリーダーとする化学産業は、石油化学工業の誕生とともに、多大な発展を遂げました。また第2次世界大戦後は、世界経済の成長と石油化学製品に対する需要の増加により、さらなる成長を享受しました。しかしこの流れは、1970年代の二度にわたるオイルショックによって、終わりを告げることとなります。

2. 戦前からオイルショックまで:日本における化学工業の発展

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