メニュー

掃除理論と方程式:掃除学の基礎知識1

掃除学の基礎知識

更新日:2019年8月29日(初回投稿)
著者:クリーンプロデューサー 兼 ベスト株式会社 代表取締役 植木 照夫

掃除は、大人から子供まで、誰もが行う身近な行為です。一般的に掃除とは、対象となる場所のごみやほこりやその他の汚れを取り除いてキレイにすることです。誰もが行う掃除ですが、掃除についての理論はまとめきれていないのが現状です。本連載では、掃除の理論を掃除学として体系的にまとめて解説していきます。第1回目は、掃除理論と掃除の方程式について解説します。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 掃除と清掃

日本における掃除は、歴史的に見ると宗教と密接な関係にありました。現代でもその名残ともいうべき年末大掃除があります。大掃除は、新しい年を迎える清めの日、「スス払い」が由来とされています。正月を迎えるに当たり、武家だけでなく民家でも、多くは12月13日をスス払いの日としていました。それは、単に掃除をして衛生的に正月を迎えるという目的よりは、年神祭の準備としての信仰的な行事でした。

そんな掃除を理論的に考え始めたのは、イギリスの産業革命を機に生まれた公衆衛生といえます。公衆衛生学とは、集団の健康の分析に基づく、地域全体の健康への脅威を扱う学問です。建築物衛生に関しては、公衆衛生の向上および増進を目的とし、昭和45年に「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(略称:建築物衛生法)」が制定されました。これにより、多数の者が使用し、または利用する建築物の維持管理に関して、環境衛生上必要な基準が定められました。掃除に関する厚生労働大臣認定の国家資格、「建築物環境衛生管理技術者」や「ビルクリーニング技能士」なども、建築物衛生法が定められたことによりできた資格です。その中で掃除は清掃という名称で表されています。

これらは、国が一定の基準を定めて衛生管理を行っているため、ある程度の理論はまとまっています。しかし、適応範囲が広く、それに伴う知識と情報も多くなり、専門性も高いため、全ての内容を理解し実践で役立たせるのは困難です。つまり、多くの知識を有する清掃に関しても、数学のように知識や理論の指標的役割を果たす公式のようなものはなく、清掃も学問としてはまとまりきれていないともいえます。

図1は公衆衛生と個人衛生を比較した図です。ここから清掃と掃除の違いについて考察してみます。例えば、公衆衛生学が社会水準で健康を扱うのに対して、臨床医学は個人水準で健康を取り扱います。公衆衛生のように、社会水準で健康を考えるときは基準を定めます。臨床医学は、患者それぞれに違う体質や環境などがあり、個々に合わせていくので、一定基準を設けにくいといえます。

清掃が社会水準で衛生を考えるのに対し、掃除は個人水準の衛生を考えています。そのため、一定の基準はありません。住まいや環境の違いの他、ライフステージの変化もあります。そもそも、キレイや汚いという感覚は、人それぞれ異なるものです。従って、個人レベルのさまざまな掃除問題の対策も、基準のある清掃に比べて複雑となり、昔も今も掃除は大変という意見はなくなりません。

図1:公衆衛生と個人衛生

図1:公衆衛生と個人衛生

2. 掃除学の可能性

継続して使用し維持するものは、掃除・メンテナンスをしなければなりません。そして、掃除を行うということはさまざまな問題に直面します。掃除問題には、掃除の労働力問題、衛生性や健康性の問題、維持管理の問題、その他の問題があります。掃除学とは、さまざまな掃除問題を改善するための学問です。2006年、掃除方法決定の指標的役割を持つ掃除の方程式(うえきの方程式)を考案したことで、さまざまな掃除問題の改善対策をできるようになりました。

掃除問題の一つである衛生性や健康性の改善策は、公衆衛生とも繋がりの深い予防医学の一つともいえます。例えば、日本人の2人に1人はアレルギーといわれていますが、吸入性アレルギー患者のQOL(クオリティーオブライフ)向上を考慮した対策として、抗原(アレルゲン)回避における自己管理手法の確立が求められています。掃除学においては、抗原除去のための掃除をラクにする方法の提案などが期待できます。

また、掃除学は、新たなビジネスの創出や新規市場開拓も期待できる技術・事業シーズにもなります。例えば、家の掃除が大変なのは、建物やさまざまな製品を作った後に掃除を考えるからであり、企画・設計の段階から掃除を考えて作れば、今までよりも掃除はラクになります。掃除のラクな家は付加価値となり、他社との差別化や競争力の一つにもなります。その際、しっかりとした掃除理論に基づく対策が必要となるのです。

掃除の方程式の考案は基礎理論の集約でもあり、掃除学は多くの可能性を秘めた新しい学問といえるのです。

3. 掃除の方程式

掃除の基礎理論、掃除の方程式の概要についてお話しします。

掃除方法を決めるときは、「どんな汚れ?」が、「どこに?」あるのかを理解して、「何を使って?」、「どのように?」掃除をするのか考えます。この時、予防についても考えると次回の掃除はラクになるのです。いわれてみれば当たり前のことです。しかし、この中に掃除理論の全てが集約されているといっても良いほどなのです。掃除の方程式は以下のようになります。

掃除方法の決定=現状分析×作業法

図2は、掃除の方程式で必要となる情報と知識の展開図です。ここに、掃除方法を決定するための掃除理論が集約されています。

図2:掃除の方程式の展開図

図2:掃除の方程式の展開図

掃除方法を決定するためには、はじめに現状分析の情報が必要です。付着しているのは「どんな汚れ?」なのか、「どこに?」付着しているのかを理解します。「どんな汚れ?」では付着している汚れについて。「どこに?」では付着している場所や素材についての情報や知識が必要となります。この時、汚れが付着して現状の状態になるまでのプロセスも考慮して分析を行います。

次に、分析結果をもとに「何を使って?」、すなわち汚れを落とすための除去力の選出を行います。除去力には、物理的な除去力と化学的な除去力があります。物理的な除去力としては、掃除用具などの情報や知識が必要とされます。化学的な除去力としては、洗剤などの情報や知識が必要とされます。そして除去力の活用法として、作業方法の情報や知識が必要とされます。この時、汚れ付着のプロセスを考慮して予防についても考えることで、次回からの掃除の負担を軽減することができます。

先ほどの展開図から、簡略図に変えて考えると分かりやすくなります。それぞれの項目に、目的の掃除を行うための情報を当てはめていき、知識については本やインターネットで調べることもできます。

図3:掃除の方程式の簡略図

図3:掃除の方程式の簡略図

まず現状分析として「どんな汚れ?」、「どこに?」について考えてみます。この時「どんな汚れ?」、「どこに?」は、どちらを先に考えるという順番はなく、相互の情報を共有しながら同時に考えていきます。例えば、ほこり汚れがリビングにある家具の上を汚染しているので、その掃除方法を考えます。「どんな汚れ?」はほこり汚れ。「どこに?」はリビングおよび家具の上となり、知識としてはほこり汚れの知識と、付着している家具の場所(位置)や表面素材などについての知識が求められます。この時「なぜ汚れが発生し付着したのか?」などのプロセスについても考えることで、予防対策を行いやすくなります。

次に、作業方法を考えます。こちらも「何を使って?」、「どのように?」は、どちらを先に考えるという順番はなく、汚れや素材の分析情報をもとに相互を同時に考えていくことになります。「何を使って?」については、除去力として掃除用具や洗剤などの選出を行います。「どのように作業を行うのか?」については、除去力の活用法を考え掃除方法を決定していきます。そして、掃除方法を決定する際に予防についての対策も考えることで、次回の掃除がラクになります。

いかがでしたか? 今回は掃除理論と掃除の方程式について解説しました。次回は、汚れの知識について解説します。お楽しみに!

  • セミナー2月
  • カタログバナー
  • 販促_無料出展

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0210_01
  • 特集バナー0210_02
  • 特集バナー0210_03
  • 特集バナー0210_04
  • 特集バナー0203_01
  • 特集バナー0203_02
  • 特集バナー0203_03
  • 特集バナー0203_04
  • 特集バナー0203_05
  • 基礎知識一覧