メニュー

腐食とは?:腐食の基礎知識1

腐食の基礎知識

更新日:2017年10月19日(初回投稿)
著者:化学工学会SCE・Net 装置材料研究会 鈴木 紹夫

車のボディ、ドアのヒンジ、ねじやボルトなど、私たちの身の回りには、数えきれないほどの金属製品があります。金属製品は使用環境や経年によって、さびなどの腐食が生じ、重大な事故災害に直結することがあります。腐食に関するコストは、GDPのおよそ3%(約15兆円)に達するという調査結果もあり、腐食対策は製造業・建設業にとって重要な課題です。本連載では6回にわたり、技術者が知っておくべき腐食の基礎知識を解説します。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 腐食とは?さびの正体は?

腐食とは、金属材料が化学的なプロセスによって、劣化・損傷する事象です。鉄を例に、腐食について考えてみましょう。鉄は、鉄鉱石(酸化鉄)として自然界に存在します。鉄鉱石は、水と酸素が十分にある地球上では、最も安定した状態です。材料としての鉄(製鉄)は、溶鉱炉の中でコークスなどの還元剤を用いて、鉄鉱石から酸素を無理やり引き離したものです。この工程を精錬といいます。取り出された金属単体の鉄は、自然環境中では非常に不安定なので、常に酸化鉄に戻ろうとします。この反応が腐食反応で、さびが生成されます。化学的には、さびは鉄鉱石と同じです。腐食と精錬は逆方向を示しながらも、同じ反応系にあります(図1)。

図1:鉄の酸化反応と還元反応

図1:鉄の酸化反応と還元反応

鉄を塩酸などの強い酸に入れると、水素ガスを発生しながら鉄イオンとなって水溶液中に溶け出します。この反応は、鉄のイオン化反応(酸化反応)と、環境中の水素イオンの還元反応(水素ガス発生反応)の組み合わせで起こり、次のような電気化学式で表されます。

1:Fe→Fe2++2e

2:2H++2e→H2(水素ガス発生)

1式と2式を足し合わせると、通常の化学式による表記となります。

3:Fe+2H+→Fe2++ H2

自然環境中で鉄がさびる反応も、2式に相当する反応が酸素の還元反応になっただけで、同様に電気化学式で表されます。

4:O2+2H2O+4e→4OH

1式を2倍し、4式と足し合わせると、鉄の酸化反応式が得られます。

5:2Fe+O2+2H2O→2Fe(OH)2

生成された水酸化鉄 Fe(OH)2から、一部の水分子が取り出されたり、空気中の酸素による酸化が起こったりすると、酸化鉄 Fe2O3あるいはFe3O4となります。これが、さびの正体です。鉄が酸性溶液中でイオン化して溶解する現象も、中性環境中で腐食してさびる現象も、本質的には同じ腐食反応です。いずれも電気化学反応式によって表すことができます。

2. 局部電池モデルによる腐食の理解

腐食の局部電池モデルとは、図2のようなモデルで腐食を表記したものです。図2は酸性溶液中の鉄の腐食を表し、水素イオンが還元され水素ガスが発生する場所はカソード部、鉄がイオン化して溶け出す場所がアノード部です。アノード部で発生した電子がカソード部に移動し、水素ガスの発生反応によって消費されます。電子の流れと電流は逆向きです。

図2:腐食の局部電池モデル

図2:腐食の局部電池モデル

実際には、これらの電気化学反応が起こる場所(アノード、カソード)は固定された特定の場所ではなく、時々刻々変動し、結果として全面が均等に腐食します。この現象を、全面腐食、あるいは均一腐食と呼びます。金属のアノード溶解反応と、環境中の酸化剤のカソード還元反応は、必ず同じ量起こります。また、酸化性物質が存在しないと、腐食は発生しません。

3. 環境の腐食作用

酸化還元性(電位)とpHは、水溶液中の金属腐食に影響する基本的な環境因子です。腐食反応が酸化還元反応であることと、金属およびその酸化物の溶解性(溶解度と溶解速度)がpHに大きく影響されるためです。電位を縦軸、pHを横軸として、どの化学種が安定かを概念的に示した図を、電位-pH図、あるいはプールベ図といいます(図3)。化学種とは、イオン、原子、元素など、化学反応に影響を与える物質の総称です。

図3:電位-pH図(プールベ図)

図3:電位-pH図(プールベ図)

電位-pH図の各領域における金属の反応傾向は、各領域によって異なります。

・不活性態領域:極限の還元性環境。単体金属が安定で、腐食は起こらない。

・腐食(活性態)領域:酸化性が高い領域。低pH側は金属イオンが安定なので、腐食が起こる。

・不動態領域:pHが中性付近の領域。金属酸化物が安定で、腐食速度は低下する。

・腐食(アルカリ腐食)領域:pHが高い(アルカリ性)領域。金属酸イオンが安定で、腐食が起こる。腐食速度は一般的に腐食(活性態)領域より遅い。

・腐食(過不動態)領域:酸化性が高い領域。金属酸イオンが安定で、腐食が起こる。

これらは基本的な反応傾向で、この他に、腐食に副次的・特異的に影響する環境因子があります。ステンレス鋼に対する塩化物イオン、銅に対するアンモニアなどです。これらについては、次回以降で解説します。

4. 不動態とは

不動態とは、酸化性環境に置かれた金属の腐食速度が極端に小さくなる(耐食性が向上する)腐食現象です。金属は酸化性の環境に置かれると酸化(腐食)が進行します。このとき溶けた金属イオンが緻密な薄い酸化物皮膜となって析出し、金属表面を覆うことで生じます。酸化物皮膜は数nmの厚さで、常に溶解と再生を繰り返す動的な状態にあります。不動態の耐食性は、金属溶解と酸化物皮膜再生の速度が極めて遅いために生じます。ステンレス鋼によく起こり、耐食性に優れた実用金属(チタン、ジルコニウム、アルミニウムなど)は、不動態によって耐食性を得ています。

5. 腐食の形態と発生要因

腐食にはさまざまな形態があります。それぞれの腐食が起こる理由を学ぶことで、適切な対策を取ることができます。10種類の腐食形態の特徴と発生原因をまとめました。

・全面腐食(均一腐食)

全面腐食とは、鉄が強い酸で腐食するときなどに見られる腐食形態で、比較的均一な腐食面となります。ステンレス鋼が不動態化できず、活性態で腐食するときにも見られます。

・異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)

異種金属接触腐食とは、異なった金属同士を接触させて腐食環境にさらした際に生じる腐食形態です。貴な金属(イオン化傾向の小さい金属)に引っ張られて、卑な金属(イオン化傾向の大きい金属)の腐食が促進されます。
イオン化傾向は、次のようになっています。

K>Ca>Na>Mg>Al> Zn>Fe>Ni> Sn>Pb>(H) >Cu>Hg>Ag>Pt>Au
※水素は金属ではありませんが、金属と同じく陽イオンとなるため、参考に入れています。

左側はイオン化傾向が大きく(卑)、右側に行くほど小さい(貴)金属となります。「貸そうかな、まぁあてにするなひどすぎる借金」と覚えましょう。同じ金属であっても、不動態状態外部が貴、局部アノードの内部が卑となり、ガルバニック腐食機構で局所腐食が起こることがあります。

・孔食

孔食とは、海水や食塩水溶液など、塩化物イオンを含む環境にあるステンレス鋼などに見られる腐食です。特定部の皮膜が破壊され、ピット状に腐食が進行します。ある程度強い酸化性を有するときのみ起こり、還元性環境では孔食は起こりません。ピットの中では、溶けた金属イオンの濃縮が起こり、加水分解により水素イオン(酸)が生成されて腐食性がさらに強くなる、という悪循環が生じます。

・すきま腐食

すきま腐食とは、同じ金属同士を重ね合わせたり、表面に異物が付着したりすることで、不動態皮膜が破れて生じる腐食形態です。孔食と同じような機構で、ステンレス鋼などに生じます。酸化性環境でなくても生じるため、孔食よりも起こりやすく、腐食問題として重要です。

・応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)

応力腐食割れは局部腐食の一つで、引張応力が加えられた状態の金属が塩化物環境にさらされると起こります。ステンレス鋼などに生じ、主な応力源は溶接や機械加工などで生じる残留応力です。応力除去焼なましで残留応力を除去することで、防止できます。

・腐食疲労

腐食疲労とは、腐食性環境中で生じる金属疲労による割れなどです。大気中でも繰り返し応力が加えられると、金属疲労が生じます。腐食性環境中では割れが一層加速され、極めて低い応力でも割れます。一般的な金属疲労の対策は、応力集中が起こりやすい切欠き形状をなくし、丸みを付けることです。

・粒界腐食

粒界腐食とは、結晶粒界が選択的に腐食され、結晶粒がバラバラになる腐食です。ステンレス鋼によく生じます。溶接などで鋭敏化(鋼中のクロムが炭素と結合して結晶粒界に析出し、近くのクロム濃度が低下して粒界の耐食性が低下する現象)が起こることに起因します。粒界腐食の防止には、鋼中の炭素を下げる低炭素鋼の採用や、溶体化熱処理(析出したクロム炭化物を熱処理で粒内に戻す)が効果的です。

・脱成分腐食

脱成分腐食とは、合金中のある成分のみが選択的に腐食する腐食形態です。典型例は、銅合金(黄銅)の脱亜鉛腐食や鋳鉄の黒鉛化腐食です。銅合金の脱亜鉛腐食では、銅-亜鉛合金から溶出した銅イオンと亜鉛イオンのうち、貴な銅のみが再析出し、銅層が残されたようになります(再析出説)。鋳鉄の黒鉛化腐食では、鉄のみが選択的に溶出して不溶性の黒鉛層が残されます(選択溶解説)。

・水素ぜい化

水素ぜい化は、腐食などにより生じた水素の一部が鋼中に侵入し、鋼材の強度(延性またはじん性)が低下する腐食形態です。 腐食の他に、溶接、酸洗い、電気めっきなどによる水素吸収が原因とされています。遅れ破壊とも呼ばれ、高張力鋼などによく見られます。

・高温腐食(乾食)

高温腐食は、高温下にある金属が、酸素などの酸化剤と直接反応して起こる腐食です。高温腐食は、生成した酸化物層を通してイオンが拡散する電気化学反応により発生します。水溶液中の湿食と同じ反応機構によって進行します。鉄の高温腐食時の化学反応式は、4Fe+3O2→2Fe2O3となります。

いかがでしたか? 今回は腐食の仕組みと、腐食の種類を解説しました。次回は、アルミニウム、ステンレス鋼、銅の水溶液が関与する腐食について説明します。お楽しみに!

腐食の技術資料・検査装置をまとめてチェック!(製造業)

腐食の技術資料・検査装置をまとめてチェック!(建設業)

  • セミナー3月
  • 販促_無料出展

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0304_01
  • 特集バナー0304_02
  • 特集バナー0304_03
  • 特集バナー0304_04
  • 特集バナー0304_05
  • 基礎知識一覧