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原価管理とは?原価の見える化とは?:原価管理の基礎知識1

原価管理の基礎知識

更新日:2018年5月23日(初回投稿)
著者:株式会社MEマネジメントサービス 代表取締役 マネジメントコンサルタント 技術士(経営工学) 小川 正樹

原価とは、製品を作るために使われたお金です。皆さんの会社では、どのように原価を管理していますか? 製品の販売価格を決めるには、原価を正しく理解する必要があります。また、適切な原価管理は、利益の向上にもつながります。本連載では8回にわたり、研究・開発部門、生産技術部門、製造部門、購買部門、間接部門など、さまざまな部門別に、原価管理の考え方・進め方を解説します。

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1. 原価管理とは?

原価管理とは、各部門が管理できる原価を集計し、原価のあるべき姿(標準原価)と比較することで、コストに対して管理や改善を行う活動です。会社で発生する原価は、全て管理できます。ただし、人や部門ごとに管理できる原価の範囲が異なります。図1に、製造業における受注から出荷までの流れを示します。モノづくりは、研究・開発・設計部門による製品設計から始まり、生産技術部門が工程設計を実施し、資材購買部門の材料購入、生産管理部門の生産指示、製造部門の生産活動と続き、品質保証部門で完成品の検査を経て、最後に製品は出荷されます。

図1:製造業の受注から出荷までの流れ

図1:製造業の受注から出荷までの流れ

図1のようなモノづくりを行う企業では、研究・開発・設計部門は製品の材料費を、生産技術部門では製品の加工費を管理できます。各部門で管理できる原価を整理すると、各工程が終了した段階の原価を明確にできます。これが、原価の見える化です。

2. 製品のライフサイクルと原価管理方法

製品を企画してから廃棄するまでの期間をライフサイクルといいます。ライフサイクルの各段階で発生する原価について見てみましょう。JIS C 5750-3-3 ディペンダビリティ管理-第3-3部では、製品のライフサイクルを、概念・定義、設計・開発、製造、据付、運用・保全、廃却の6段階に規定しています(図2)。

図2:製品のライフサイクルコストと原価

図2:製品のライフサイクルコストと原価(JIS C 5750-3-3 ディペンダビリティ管理-第3-3部を基に著者作成)

製品を企画、設計・開発、製造する段階(概念・定義、設計・開発、製造)では、取得コスト(初期投資コスト)が発生します。取得コストの内訳は、R&D(研究開発:Research & Development)原価、設計・開発原価、製造原価などで、製品を生み出すために必要な原価です。製品を販売、使用する段階(据付、運用・保全)では、所有者コスト(運用コスト)が生じます。所有者コストには、販売・流通原価、運用原価などが含まれます。所有者コストの低減は、省資源や省エネルギー化につながります。使用済みの製品をリサイクルしたり、廃棄したりする段階(廃却)で発生する原価は、リサイクル原価、リユース原価、廃却原価です。これらは一般的に、廃却コストと総称されます。

ライフサイクル中の全コストの合計をライフサイクルコスト(LCC:Life Cycle Cost)と呼びます。ライフサイクルコストの内訳で金額的に大きいのは、取得コストと所有者コストです。図2の右に、ライフサイクルコストを管理する代表的な原価管理方法をまとめました。金額の大きい取得コストのうち、製品に直接関係する原価は、原価企画や標準原価管理によって管理します。また、間接的に関係する原価には、ABC(活動基準原価計算:Activity Based Costing)、ABM(活動基準原価管理:Activity Based Management)や、BSC(バランススコアカード:Balanced Score Card)などの管理方法を適用します。

3. 原価の見える化

所属部門によって原価管理の進め方や原価の見える化の方法は異なります。ここでは、技術部門・製造部門と、間接部門の原価管理について解説します。

1:技術部門・製造部門の原価の見える化

技術部門・製造部門で原価管理を進めるためには、それぞれの担当範囲を理解しなければなりません。技術部門は製品別に原価管理を行い、製造部門は部門別・工程別に原価管理を行います。詳しく見ていきましょう。

・技術部門は、製品別に原価を見える化
技術部門が行う原価管理の一つに、原価企画があります。製品の企画や設計・開発を行う段階で、原価を設定する原価管理方法です。原価企画は、製品の製造に必要な原価(目標原価)の設定から始めます。目標原価は、製品の目標売価から目標利益を引いて算出します。実際の原価を目標原価に近づけるには、製品設計や製造方式を改善します。製品設計では、製品の構造をシンプルにしたり、品質がばらつかない条件を設定したりします。こうした改善によるコストダウン活動を、コストリダクションと呼びます。コストリダクションは、品質や機能をおろそかにすることではありません。コストリダクション活動の結果、技術部門では、人・材料・機械設備・エネルギーの最適な組み合わせを作ります。それが現在達成できる最も低い原価(最低原価)となり、製造部門の目標である標準原価となります。原価企画の進め方は、第2回~第4回で解説します。

・製造部門は、部門別・工程別に原価を見える化
製造部門は、技術部門が設定した標準原価を達成するために、部門や工程別のムダを排除し、日々の生産活動を管理します。管理によるコストダウン活動を、コストコントロールと呼びます。コストリダクションにより引き下げられた製品の原価は、コストコントロールを怠ると、あっという間に元の状態に戻ってしまいます。例えば、新人が入ったので作業時間が長くなった、配置が換わったので作業方法が守れなかった、慣れない作業をしたので不良品を作ってしまったなどです。標準原価を維持するには、日常の教育訓練などの管理活動が重要です。

完成した製品は、実際に生じた原価(実際原価)で評価します。実際原価と標準原価がイコールの場合、生産活動は極めて順調に行われています。しかし、実際原価が標準原価を上回った場合、ムダを排除しきれなかったことを意味します。こうした一連の原価管理活動は、標準原価管理と呼ばれ、製造部門の担当です。標準原価管理は、第5回で解説します。

・技術部門と製造部門で異なる原価管理の範囲
技術部門と製造部門で、担当する原価管理の範囲の違いは異なります(図3)。技術部門の担当者は、特定の製品しか担当しない代わりに、その製品の全ての工程を担当します。製造部門の担当者は、特定の部門(工程)しか担当しない代わりに、全ての製品を担当します。同じ原価管理であっても、技術部門によるコストリダクションでは製品別アプローチ、製造部門によるコストコントロールでは部門別アプローチという違いがあります。

図3:技術部門と製造部門で異なる原価管理の担当範囲

図3:技術部門と製造部門で異なる原価管理の担当範囲

技術部門と製造部門の原価管理をまとめると図4のようになります。両部門の原価管理活動を区分するのは標準原価です。

図4:技術部門と製造部門の原価管理

図4:技術部門と製造部門の原価管理

2:間接業務の原価の見える化

製品原価に直接関係しない間接部門の原価管理は、ABC/ABMで行います。ABMは間接部門の業務内容を、付加価値を生むコア業務、コア業務を支援する支援業務、本来必要のない付随業務に区分します。これにより、原価が発生している業務を把握し、経営資源の最適配分を行うことで、付加価値を増やすことができます。また、間接部門の業績は、BSCによって管理します。管理間接部門の原価管理は、第6回~第7回で解説します。また、原価管理を実践するには、原価情報システムが欠かせません。原価情報システムを構築する際の目的や整理ポイントは、第8回で解説します。

いかがでしたか? 今回は、原価管理の全体像と原価の見える化について解説しました。次回は、設計前にコストを作り込む原価企画を紹介します。お楽しみに!

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