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生産技術部門による理想加工費の追求:原価管理の基礎知識4

原価管理の基礎知識

更新日:2018年7月11日(初回投稿)
著者:株式会社MEマネジメントサービス マネジメントコンサルタント 技術士(経営工学) 田村 孝文

製品原価を見直す場合、部門別に取り組むべき内容が違います。前回は、研究・開発部門による製品の理想材料費の追求を解説しました。今回は、生産技術部門による理想加工費の追求を取り上げます。生産技術部門は、改善促進型製品(限界利益率が低く付加価値率は高い製品群)に対して、工程改善を行います。注目するのは、加工費のロスです。

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1. 加工費のロス

開発・設計部門が製品設計で心掛けることは、より安価な材料を用いることと、材料の使用量を極力抑えることです。しかし、製品標準化の欠如、悪いデザイン、不適正な材料や部品の使用、まずい設計などにより、製品設計のロスが発生します(図1)。これらのロスは、主に直接材料費に影響します。開発・設計部門は、製品や部品に使用する直接材料費の低減に大きな責任を持っています。

この直接材料費と比較されるのが、加工費です。加工費とは、直接材料費以外の製造原価の総称です。生産技術部門は、開発・設計部門が設計した製品を、より短い時間で生産できる工程や製造方式を設計・準備します。また、製造に必要な設備を整え、金型や工具などの部品を選択します。作業手順やレイアウト、人員の配置など、作業の標準方法の決定も重要です。これらにより、標準時間、標準原価が設定され、標準加工費が決まります。しかしここでも、不適切な工程設計、悪いレイアウト、設備標準化の欠如、非能率な標準作業方法などにより、製造方法のロスが発生します(図1)。この製造方法のロスは、加工費に影響します。生産技術部門は、生産のロスを最小限に抑えた加工費、そのための理想加工費の追求、実現に責任があります。

図1:加工費に影響するロスの内訳

図1:加工費に影響するロスの内訳

原価の管理活動には、主として、開発・設計部門や生産技術部門が行う製造方式のロスを低減する改善活動(Cost Reduction)と、管理部門や製造部門が行う実施効率のロスを低減する管理活動(Cost Control)の2つがあります。この2つを両立させることが重要です(図2)。各部門は、自らに与えられたコストダウンに対する役割を十二分に理解し、ふさわしい手法や技術を活用します。ロスの少ない製造方式を採用し、運用時に高い実施効率(パフォーマンス)を発揮すれば、全社的にレベルの高いコストダウン活動を展開できます。

図2:ロスの種類と改善を担当する部門、活動の種類

図2:ロスの種類と改善を担当する部門、活動の種類

2. 基本機能の加工作業とは

モノづくり生産現場の仕事は、購入した材料や部品に付加価値を付けることです。付加価値を生むことに直結する作業を、基本機能と呼んでいます。しかし、各工程の設備や作業者の仕事内容を詳細に観察すると、付加価値を高める働きには直接関係していない補助的な作業や無駄な動きが多く見られます。

手を洗うときの水道の蛇口を例に、基本機能の要素作業について考えてみましょう。汚れた手がインプットで、きれいな手がアウトプットです。洗うという作業は、複数の要素作業(作業を分割したときの単位要素)で構成されます。しかし、手がきれいになるという付加価値が生まれるのは、手を洗う要素作業だけです(図3)。

図3:水道の蛇口の種類と発生する要素作業

図3:水道の蛇口の種類と発生する要素作業

Aタイプは、水と湯の2つのねじ栓を備えた蛇口です。栓の開閉に、それぞれ3回の栓をひねる作業と、2回の持ち替え作業を要します。これを、ツインレバー式のBタイプに替えると、Aタイプでの2回の持ち替え作業が無くなります。また、栓をひねる作業が左右の動きになって、水を出す単位が簡素化されます。

次に、Bタイプから、水と湯の栓が結合されたシングルレバー式のCタイプに替えると、1回栓をひねれば温水が出るようになり、2回の持ち替え作業が無くなります。また、水と湯を止める作業が1つになります。さらに、Cタイプから、手をかざすだけで温水が出るセンサ式のDタイプに替えると、栓を開ける作業と栓を止める作業が不要になります。これにより、手を洗うという目的に直結する要素作業のみを行えばよいことになります。

3. 加工費の改善余地

加工費には、直接労務費、直接経費、製造間接費が含まれます。ここでは加工費の主要素である直接労務費について、理想を追求してみましょう。直接労務費を詳細に分解すると、基本機能の加工費用、補助機能の加工費用、ロスに分けられます。基本機能の加工費は、切る、削る、組み立てるなど、加工、変形、変質を伴う作業の費用です。補助機能の加工費は、取り置き、運搬、治具の設置、検査など、基本機能の作業を補助する作業の費用です。ロスは、アイドルや手待ち、空歩行など、不十分な製品設計や製造方式によって発生します。

先ほどの水栓の例のように、製造現場の作業には、多くの補助機能やロスが含まれています。例えば、過剰な仕掛品や在庫、それに伴う無駄な運搬や歩行、そして、流れ作業のバランスロス(各作業のサイクルが合わないことで発生する遊び時間)や設備作業の干渉ロス(人や機械が一緒に行う作業で、干渉し合うことで発生する手待ち時間)などです。生産技術部門はこれらのロスのない、工程設計やレイアウト、設備などを研究することで、安い設備を選択して加工単価を下げ、加工費を改善します。

4. 理想加工費の追求方法

理想加工費を追求する際の考え方を2つ紹介します。まずは、要素作業ごとにかかった時間を実測するタイムスタディです。図4に、ある組立作業の要素作業のタイムスタディを行った結果を示します。

図4:要素作業ごとのタイムスタディ

図4:要素作業ごとのタイムスタディ

この組立作業は、部品を取る、部品を持ち替える、部品を組み立てる、部品を置くという4つの要素作業で構成されています。それぞれの要素作業に要した時間は、4秒、2秒、8秒、4秒で、合計18秒でした。作業の目的は組み立てなので、この作業が基本機能の加工になります。また、部品を取る、部品を置く作業は、これらを行わない場合、組み立てる作業が成り立たないため、補助機能の加工としています。部品の持ち替えは必要のない動作なので、ロスと見なします。我々コンサルタントの経験から、理想加工時間は、基本機能加工時間+補助機能加工時間÷2によって求めます。この例では、理想加工時間は8+(4+4)/2=12秒です。タイムスタディの結果と比較すると、18-12=6秒の改善余地のあることが分かります。改善は、取り組みやすい簡単なロスをなくすことから始め、補助機能の加工作業、基本機能の加工作業の順序で改善していきます。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

5. 加工費レートの計算方法

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