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優良顧客を識別する:顧客管理(CRM)の基礎知識3

顧客管理(CRM)の基礎知識

更新日:2021年6月17日(初回投稿)
著者:東京大学 大学院 経済学研究科 マネジメント専攻 経営講座 教授 阿部 誠

前回は、潜在的な優良顧客の囲い込みに焦点を当てたマーケティングの戦略について説明しました。さて、企業の利益に貢献してくれる優良顧客はどのように見つければよいのでしょうか。今回は、優良顧客を識別するためのさまざまな分析方法を紹介していきます。

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1. デシル分析

デシル分析とは、顧客分類の1つで、デシルの語源はラテン語で10等分を意味します。顧客の購入金額などを上位から10等分して各グループの購入比率や売上構成比などを分析する方法です。実務家の間では、よく用いられます。ポイントカードのようなCRMシステムで顧客別の購買履歴データが保存されているならば、優良顧客を識別するための一番単純な方法は、対象期間内の購買を合算した購買額によって顧客を評価することです。そして、上位2~3位の高額顧客グループに対して、限られたマーケティング資源をDM(Direct Mail)やキャンペーンなどのプロモーション活動として投資します。

しかし、同じ上位顧客にDMを送り続けても、その効果は収穫逓減の法則(飽和)に阻まれるばかりか、過度のプロモーションにうんざりされて逆効果になりかねません。また、前年の購買額が多くても、それが1回の高額商品の購入によるもので、普段は他店で買い物をしている場合や、既に他の地域に引っ越していて当該店舗では購買していない場合もあります。

2. RFM分析

RFM分析とは顧客分類の1つで、Recency(リーセンシー:直近に購入)、Frequency(フリークエンシー:購入頻度)、Monetary(モニタリー:購入額)の3つの指標で顧客を分析する方法です。

デシル分析を一歩進めたRFM分析の手法では、購入額(Monetary)が高いだけでなく、購入頻度(Frequency)が高く、かつ直近に購入した(Recency)顧客ほど優良と判断します。顧客のリーセンシーが低い(最近購買していない)ということは、他社へと離反している可能性が高いと考えることができます。

RFMの3指標に対して、上述のデシル分析を適用します。つまり、顧客を購買額の大きい順にランク10からランク1の等しいグループに分けたように、リーセンシーとフリークエンシーによっても10から1までのランク付けをします。このように、顧客をRFM(10,10,10)からRFM(1,1,1)の1,000に分類して、セグメント別にマーケティング戦略を立てたり、活動を行ったりします(図1)。デシル分析では、グループ数が多すぎる場合には、各指標を3や5のグループに分割します。例えば(5,5,5)と(4,5,5)を優良顧客と見なして、キャンペーンDMを送付したりします。

図1:RFMの3指標にデシル分析を適用した例(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、[図解]大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

図1:RFMの3指標にデシル分析を適用した例(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、[図解]大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

しかし、RFM分析を単なるグループ分けのツールと見なし、3指標を合算したスコアに基づいて上位の顧客セグメントにアプローチするだけでは不十分です。また、RFM指標は現時点での購買行動を表しているため、将来的に優良となりえる潜在的顧客への投資が手薄になりがちです。もともとRFM分析は、効果が薄いと思われる顧客にはカタログを送付しないなど、コスト削減ツールとしてCRMという概念が登場する前から使われていました。

CRMとは、顧客が1人ひとり異なることを認識し、各人にふさわしい対応をとることで継続的な関係性を築いていくことです(第1回)。各指標が意味する顧客の購買状態と、時間軸におけるその変化を理解して、顧客に最適化されたマーケティング活動を行う必要があります。

図2は、RFM分析を使った効果的なCRM施策例です。RFM分析はCRMの現場でよく使われるものの、問題点もあります。1つ目は、RFM3指標間の相関が考慮されていないことです。購買頻度が高ければ、購買金額も高くなる傾向があります。また、同じリーセンシーでも、購買頻度が高い顧客の方が低い顧客より離反している可能性が高くなります。

2つ目は、顧客を利益でなく購買額で評価していることです。各顧客へのマーケティング活動をコストとして考慮することで、より効果的なCRMを施策できます。また、一定の期間中に同じ購買額を支出していても、特売に対して敏感に反応しないロイヤル顧客とバーゲン品のみを購買するチェリーピッカーとを区別できません。

図2:RFM分析を使った効果的なCRM施策例(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

図2:RFM分析を使った効果的なCRM施策例(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

3. 顧客ベース分析、デモグラフィック分析

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