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顧客の価値:顧客管理(CRM)の基礎知識4

顧客管理(CRM)の基礎知識

更新日:2021年7月16日(初回投稿)
著者:東京大学 大学院 経済学研究科 マネジメント専攻 経営講座 教授 阿部 誠

前回は、デシル分析やRFM分析など、優良顧客を識別するためのさまざまな分析方法を紹介しました。RFM分析は、既に起こった顧客の購買履歴を3指標で表します。一方、顧客との長期的な関係を重視するCRMでは、将来的な購買行動と維持コストを考慮に入れ、1人の顧客から生涯にわたって得られるであろう収益を最大化することが有効です。今回は、そうした顧客の価値について解説します。

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1. 顧客生涯価値

顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)とは、顧客から生涯にわたって得られる収益のことをいいます。基本的な概念は、平均マージン×購買頻度×生涯期間-顧客維持の総投資額です。

厳密には、
1:既存顧客はまだ生存しており、生涯期間は観測されていないため、過去の離反率から推測する必要がある
2:将来得られる利益は、現在価値(Net Present Value)に換算する必要がある

という2点から、毎年顧客から得られるであろう収益-顧客維持コストを離反率と期待収益率で割り引いて、生涯期間にわたって合算したものになります。毎年の離反率は、定期購読や有料会員の場合であれば解約率に該当します。

しかし、年会費などの支払い義務がなく契約に基づかない関係では、離反する顧客は単に購買をやめるだけなので、解約率が分かりません。このような場合、企業は独自の経験則に基づいて、例えば顧客が3カ月購買しなければ、離反したと判断したりします。ただし、同じ3カ月のリーセンシーでも、購買間隔が長い顧客は離反の心配がない一方で、購買間隔が短い顧客は離反している可能性が高いといえるでしょう。より精緻な方法では、RF(Recency:直近に購入、Frequency:購入頻度)指標を用いて顧客別に離反確率を算出するため、図1のように、より的確に離反・休眠予備軍である顧客(Problem Child)を識別することができます。

図1:契約に基づかない関係でのRF分析(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、[図解]大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

図1:契約に基づかない関係でのRF分析(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、[図解]大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

2. 顧客資産

顧客資産とは、潜在顧客をも含めた顧客の長期的価値のことをいいます。CRMでは、どれだけ顧客維持に投資をしても、離反・休眠を完全に防ぐことはできません。企業が成長し、継続的に収益を上げるためには、同時に新規の顧客も獲得していく必要があります。そこで重要なのが、潜在顧客1人当たりの長期的価値であるカスタマー・エクイティ、あるいは顧客資産と呼ばれる概念です。大まかにいうと、初年度の新規顧客として得られる利益(=収益-獲得コスト)と、次年度からの既存顧客としての生涯価値を、適切な割引率で合算したものになります。

図2は、潜在顧客の状態を時系列で表したもので、潜在顧客1人当たりの収益が右側に、必要な投資額が左側に、そして顧客として維持される確率が中央に示されています。

図2:カスタマー・エクイティ(顧客資産)(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

図2:カスタマー・エクイティ(顧客資産)(引用:阿部誠、株式会社KADOKAWA、大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる)

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