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危険物とは:危険物管理の基礎知識(安全な取り扱いのために)1

危険物管理の基礎知識

更新日:2022年2月17日(初回投稿)
著者:日本大学 理工学部 機械工学科 准教授 飯島 晃良

ものづくりの現場において、火災などの災害につながる危険物を取り扱うことは、珍しいことではありません。これらの危険物は、取り扱いを誤ると重大な災害を招く恐れがあります。危険物の正しい取り扱い方法を理解することは、ものづくりに関わる全ての方にとって重要な事項といえます。本連載では、6回にわたり危険物管理の基礎知識を解説します。第1回は、消防法上の危険物について、その定義と種類・特性、そして取り扱い方法を説明します。

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1. 消防法上の危険物とは

ものづくりの業界で危険物と聞くと、ガソリンなど可燃性の物質をイメージするのではないでしょうか。その他にも、火災や爆発の危険性がある物質としてアセチレンガス、水素、都市ガス、液化石油ガスなど、さまざまなものが思い浮かぶと思います。しかし、これらが全て消防法上の危険物という訳ではありません。まず初めに、消防法上の危険物とは何かを理解しましょう。

消防法において、危険物は消防法第2条第7項において、次のとおり定義されています。
「危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう」

具体的には、危険物は第1類から第6類に分別されます(表1)。

表1:危険物の分類(引用:飯島晃良、らくらく突破甲種危険物取扱者合格テキスト+問題集(第2版)、技術評論社、2022年、P.21)
種別 性質 状態 特徴 具体例
第1類 酸化性固体 固体 ・それ自体は不燃物
・酸素を出して可燃物を燃焼させる
塩素酸塩類、
硝酸塩類
第2類 可能性固体 固体 ・低温で引火・発火しやすい固体 硫黄、赤リン、
金属粉
第3類 自然発火性物質
および禁水性物質
固体
液体
・空気や水と激しく反応し発火もしくは可燃性ガスを発生する カリウム、
ナトリウム、
黄リン
第4類 引火性液体 液体 ・引火しやすい液体 ガソリン、
軽油、重油
第5類 自己反応性物質 固定
液体
・低温で発熱し爆発的に反応が進行する 有機過酸化物、
ニトロ化合物
第6類 酸化性液体 液体  第1類と同様(ただし液体) 過酸化水素、
硝酸

第1類:酸化性固体

それ自体は不燃物であり、単独では燃焼しません。しかし、分解して酸素を放出するため、酸素供給源として可燃物の燃焼を促進します。そのため、第1類の危険物は、可燃物との接触を避けなければなりません。

第2類:可燃性固体

硫黄、鉄粉、金属粉など、火種によって容易に着火する危険物です。その他、固形アルコールなどの引火しやすい固体も含まれます。

第3類:自然発火性物質および禁水性物質

空気中で自然発火する危険性があるものや、水と激しく反応して可燃性ガスを放出する危険物です。例えば、カリウムやナトリウムは水と反応して水素を生成します。黄リンは、空気中において50℃程度で自然発火します。このため、第3類の危険物は、空気や水などとの接触を避けて貯蔵する必要があります。

第4類:引火性液体

火種によって引火しやすい、液体状の危険物です。ガソリン、エタノール、灯油、軽油、重油、潤滑油など、危険物の中で最も多く使用されているのが、第4類の危険物です。

第5類:自己反応性物質

自己反応性物質は、分子の内部に酸素を含有しているため、外部から酸素を供給しなくても燃焼する危険物です。よって、外部からの空気との接触を遮断するだけでは消火できません。爆薬の原料に使われるなど、燃焼が爆発的で急激に進行することから、一般に消火をするのが困難です。

第6類:酸化性液体

第1類(酸化性固体)と同様に、酸素供給源として可燃物の燃焼を促進する危険物です。過酸化水素、硝酸など、液体の酸化性物質がこれに該当します。

表1に示したように、消防法上の危険物は、常温常圧(20℃、1気圧)において、固体か液体です。常温常圧で気体のものは、消防法上の危険物ではありません(図1)。液化石油ガス(LPG)、水素、圧縮アセチレンガス、プロパン、メタンなどは、可燃性の物質です。しかし、これらは常温常圧では気体のため、危険物には含まれません。これらは、高圧ガス保安法で定められています。つまり、普段はガスボンベに入っているような可燃性ガスは、「消防法上の危険物ではない」と理解しておきましょう。

図1:消防法上の「危険物」と「危険物ではないもの」

図1:消防法上の「危険物」と「危険物ではないもの」(引用:飯島晃良、ポイントチェックで最速合格乙4類危険物試験、オーム社、2016年、P.2)

2. 第1類から第6類までの危険物の品名

第1類から第6類までの危険物の品名を、表2にまとめます。

表2:第1類から第6類までの危険物の品名
品名
第1類
:酸化性固体
1. 塩素酸塩類 2. 過塩素酸塩類 3. 無機過酸化物 4. 亜塩素酸塩類
5. 臭素酸塩類 6. 硝酸塩類 7. よう素酸塩類 8. 過マンガン酸塩類
9. 重クロム酸塩類 
10. その他のもので、政令で定めるもの(過塩素酸塩類 他)
11. 前各号に掲げるものの、いずれかを含有するもの
第2類
:可能性固体
1. 硫化りん 2. 赤りん 3. 硫黄 4. 鉄粉 5. 金属粉
6. マグネシウム 7. その他のもので、政令で定めるもの(未制定)
8. 前各号に掲げるものの、いずれかを含有するもの
9. 引火性固体
第3類
:自然発火性物質
および禁水性物質
1. カリウム 2. ナトリウム 3. アルキルアルミニウム
4. アルキルリチウム 5. 黄りん
6. アルカリ金属(カリウム、ナトリウムを除く)およびアルカリ土類金属
7. 有機金属化合物(アルキルアルミニウムおよびアルキルリチウムを除く)
8. 金属の水素化物 9. 金属のりん化物
10. カルシウムまたはアルミニウムの炭化物
11. その他のもので、政令で定めるもの(塩素化けい素化合物)
12. 前各号に掲げるものの、いずれかを含有するもの
第4類
:引火性液体
1. 特殊引火物 2. 第1石油類 3. アルコール類 4. 第2石油類 5. 第3石油類 6. 第4石油類 7. 動植物油類
第5類
:自己反応性物質
1. 有機過酸化物 2. 硝酸エステル類 3. ニトロ化合物
4. ニトロソ化合物 5. アゾ化合物 6. ジアゾ化合物
7. ヒドラジンの誘導体 8. ヒドロキシルアミン
9. ヒドロキシルアミン塩類
10. その他のもので、政令で定めるもの(金属のあじ化物 他)
11. 前各号に掲げるものの、いずれかを含有するもの
第6類
:酸化性液体
1. 過塩素酸 2. 過酸化水素 3. 硝酸
4. その他のもので、政令で定めるもの
5. 前各号に掲げるものの、いずれかを含有するもの

消火時の注意点としては以下のように挙げられます。

第1類:酸化性固体

分解して酸素を放出するため、可燃物との接触を避けて保存することが重要です。また、火災時には多量の水をかけて分解温度以下まで冷却し、酸素の放出を止めることで消火します。ただし、「3.無機過酸化物」は水と反応して酸素を放出するため、水による消火は厳禁です。

第2類:可燃性固体

それ自体が可燃性の固体です。水と接触して可燃性ガスや有毒ガスを生じるものなどがあるため、消火方法は物品に応じて適切に選ぶ必要があります。

第3類:自然発火性物質および禁水性物質

水と反応して可燃性ガスを放出するものが多いため、それらに対して水系の消火剤を使うのは厳禁です。乾燥砂など、適正な消火方法で消火します。

第4類:引火性液体

水に不溶で水に浮くものが多いため、水による消火は適しません。粉末消火剤、泡消火剤、不活性ガス消火剤、ハロゲン化物消火剤などを用いて消火します。

第5類:自己反応性物質

主に水で消火します。ただし、爆発的に燃焼するため、一般には消火が困難です。

第6類:酸化性液体

通常は、多量の水で消火します。ただし、可燃性物質と混合して燃焼をしているため、燃焼している可燃性物質にも適した消火剤を使う必要があります。

3. 危険物の指定数量と法規制

ここでは、指定数量と、指定数量の倍数とその計算法、さらに指定数量の倍数と法規制の関係の3つについて説明します。

1:指定数量

指定数量とは、消防法の規制を受ける危険物の基準となる量のことです。危険物は、その種類ごとに特性や危険度合いが異なるため、単に貯蔵量を比べても危険度合いを比較することができません。例えば、ガソリン200Lと灯油200Lでは、危険度合いが異なります。灯油は引火点が45℃程度であるのに対して、ガソリンは引火点が-40℃以下であり、極めて引火しやすい危険物です。このように、危険度合いは危険物ごとに違うため、それらを比較できる指標が必要です。そこで、危険物の品名ごとにその危険度合いを勘案して、政令で基準となる数量が定められています。これを、指定数量と呼びます。

第4類の危険物の品名と指定数量の関係を、表3に示します。例として、ガソリンなどの第1石油類(非水溶性)の指定数量は200L、灯油などの第2石油類(非水溶性)の指定数量は1,000Lとなっています。

表3:第4類(引火性液体)の品名と指定数量(引用:飯島晃良、ポイントチェックで最速合格乙4類危険物試験、オーム社、2016年、P.5)
品名 物品名 特徴 指定数量
特殊引火物 ジエチルエーテル
二硫化炭素
アセトアルデヒド
酸化プロピレン
発火点 100°C以下または
引火点 -20°C以下
沸点 40°C以下のもの
50ℓ
第1石油類 非水溶性 ガソリン
ベンゼン
トルエン
引火点 21°C未満 200ℓ
水溶性 アセトン
ビリジン
400ℓ
アルコール類 メタノール
エタノール

プロパノール
C1~C3までの飽和一価アルコール(水溶液は濃度60%以上) 400ℓ
第2石油類 非水溶性 灯油
軽油
引火点 21°C以上70°C未満 1000ℓ
水溶性 酢酸 2000ℓ
第3石油類 非水溶性 重油
クレオソート油
引火点 70°C以上200°C未満 2000ℓ
水溶性 グリセリン 4000ℓ
第4石油類 ギヤー油
シリンダー油
引火点 200°C以上250°C未満 6000ℓ
動植物油類 ヤシ油
アマニ油
引火点 250°C未満 10000ℓ

2:指定数量の倍数とその計算法

「貯蔵・取り扱いをする危険物が、指定数量の何倍なのか」を「指定数量の倍数」と呼び、次の方法で計算されます。

・貯蔵する危険物が1種類(例えば、危険物A)のとき

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・貯蔵する危険物が2種類以上(例えば、危険物A、B、Cの3種類)のとき

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3:指定数量の倍数と法規制の関係

・指定数量以上の危険物を貯蔵、または取り扱う場合

この場合、消防法で規制されます。具体的には、以下のような規制を受けます。

  • (1)製造所等と呼ばれる、市町村長等に許可を受けた専用の施設を設置し、危険物の貯蔵や取り扱いを行う必要がある
  • (2)上記製造所などで危険物の貯蔵、取り扱いをする際に、危険物取扱者が必要になる

・適用除外

航空機、船舶、鉄道または軌道による危険物の貯蔵・取り扱い・運搬の場合、消防法による規制が適用されません(別途、航空法・船舶安全法・鉄道営業法・軌道法で規制されます)。ただし、航空機や船舶に給油をする場合は、消防法による規制を受けます(図2)。

図2:消防法の適用除外

図2:消防法の適用除外(引用:飯島晃良、ポイントチェックで最速合格乙4類危険物試験、オーム社、2016年、P.9)

・指定数量未満の危険物を貯蔵または取り扱う場合

消防法による規制ではなく、表4に示す各市町村の「火災予防条例(市町村条例)」で規制されています。

表4:貯蔵、取り扱いと運搬の規制(引用:飯島晃良、らくらく突破甲種危険物取扱者合格テキスト+問題集(第2版)、技術評論社、2022年、P.29)
危険物取扱の内容 数量 規制の仕組み
貯蔵・取扱い 指定数量以上 消防法等で規制
指定数量未満 市町村条例(火災予防条例)で規制
運搬 指定数量以上 消防法等で規制
(数量に無関係に消防法等で規制)
指定数量未満

・危険物の運搬

車両(自動車やトラックなど)で危険物を運搬する場合、指定数量の倍数とは無関係に、運搬容器、積載方法などが消防法などで規制されています(図3)。例えば、ガソリン携行缶は、消防法に適合した物が流通しています。

図3:危険物の運搬

図3:危険物の運搬(引用:飯島晃良、ポイントチェックで最速合格乙4類危険物試験、オーム社、2016年、P.10)

いかがでしたか? 今回は、消防法で定められた危険物の種類とその特性、取り扱い方法を紹介しました。次回は、消防法による危険物の規制をテーマに、危険物取扱施設や危険物取扱者などについて解説します。お楽しみに!

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