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日本の脱炭素化戦略:脱炭素化の基礎知識5

脱炭素化の基礎知識

更新日:2021年10月1日(初回投稿)
著者:東京大学 教養学部 環境エネルギー科学特別部門 客員准教授 松本 真由美

前回は、アメリカの脱炭素化戦略について解説しました。今回は、日本の脱炭素化戦略を紹介します。菅義偉前首相(2020年9月16日~2021年9月30日)は、2020年10月26日、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と表明しました。また2021年4月22日、政府の地球温暖化対策推進本部の会合で、2030年度に、「温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と新たな温室効果ガスの削減目標を発表しました。2015年7月、日本が国連に提出した「2013年度に比べて26%削減する」という目標に対し、政治主導で大幅に引き上げたものとなりました。

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1. 日本の温室効果ガス排出量の推移

日本が目指すカーボンニュートラルは、二酸化炭素(CO2)だけに限らず、メタン、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスを含む温室効果ガスを対象としています。2020年12月、2019年度の温室効果ガス排出量(速報値)が公表され、2019年度の総排出量は12億1,300万トンで、前年比2.7%減となり、2013年比14.0%減から6年連続の減少となりました(図1)。温室効果ガスが前年度から減少した要因として、電力の低炭素化に伴うCO2排出量の減少や、省エネなどが挙げられています。このように、温室効果ガス排出量は減少傾向にあるものの、あと9年でさらに32%削減しなければなりません。これはかなり厳しい目標であり、目標実現に向けた具体的な政策をできるだけ早く打ち出し、実行に移していく必要があります。

図1:日本の温室効果ガス排出量(引用:環境省、2019年度速報値、P.2)

図1:日本の温室効果ガス排出量(引用:環境省、2019年度速報値、P.2

ちなみに、日本の温室効果ガス排出量の85%を占めるのは、エネルギー起源のCO2の排出です。エネルギー起源CO2は、主にエネルギー転換部門(発電)、産業部門(製造業)、運輸部門(旅客・貨物)、業務その他の部門、家庭部門からの排出となります(図2)。2019年度のCO2排出量は、2013年比で16.0%(2億1,060万トン)減少しています。

図2:日本のCO<sub>2</sub>排出量(引用:経済産業省、資源エネルギー庁、令和2年10月13日、P.81)

2. 長期目標と革新的環境イノベーション戦略

2016年11月、187の国や地域が参加する2020年以降の温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」が発効しました。2019年6月11日、政府は「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(以下、長期戦略)を閣議決定しました。2050年までに80%の温室効果ガス(GHG)排出削減(当時の目標)という長期目標の実現に向けて大胆に施策に取り組み、長期戦略の最終到達点として脱炭素社会を掲げています。日本の考え方や取り組みを世界に共有し、1.5℃の努力目標を含むパリ協定の長期目標の実現に貢献することを明記しました。

2020年1月には、長期目標に基づき、2050年までの具体的な行動計画「革新的環境イノベーション戦略」が策定されました。同戦略は、
1:エネルギー転換(再エネ主力電源化、低コストな水素開発など)
  GHG削減量:約300億トン~
2:運輸(車、航空機、船舶の電化や燃料の脱炭素化の技術開発など)
  GHG削減量:約110億トン~
3:産業(カーボンリサイクル技術によるCO2の原燃料化など)
  GHG削減量:約140億トン~
4:業務・家庭・その他・横断領域(スマートシティの実現など)
  GHG削減量:約150億トン~
5:農林水産業・吸収源(農林水産業の再エネ活用など)
  GHG削減量:約150億トン~
の5分野16技術課題などについて、コスト目標や開発内容、実施体制、基礎から実証までの工程などを整理した「イノベーション・アクションプラン」を提示しました。(※GHG削減量(CO2換算値、重複を含む)は、内外の関係者が目指すべき共通のイメージを共有するために、政府の戦略や国際的な約束による試算、国際機構などのレポートで示されている数値の他、導入量として期待されている数値や、一定の前提を置いた試算など、異なる前提の下での推計値。)

また、産官学の関係者による協議会を設置し、産業技術総合研究所内のゼロエミッション国際共同研究センターを核に、アメリカやヨーロッパ各国などと共同研究を進める計画が盛り込まれています。2030年頃までに、東京湾岸エリアをゼロエミッション実現に向けたイノベーション創出の世界的拠点にする予定です。

3. グリーン成長戦略で2050年カーボンニュートラルを目指す

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