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実験計画法とは:実験計画法の基礎知識1

実験計画法の基礎知識

更新日:2021年7月20日(初回投稿)
著者:大阪大学 大学院 情報科学研究科 教授 森田 浩

仮説や理論が実際に当てはまっているかを検証するために、さまざまな条件の下で実験を行い、データを測定します。では、仮説を検証するためには、どのような実験をすればいいのでしょうか。また、得られたデータはどのように解析すればいいのでしょうか。これらに応えるのが、実験計画法です。本連載では8回にわたり、実験計画法の考え方や使い方を解説します。

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1. 実験計画法の考え方

実験計画法とは、必要なデータを効率よく取るために計画し、適切な解析方法を与えることを目的とする統計学の応用分野です。私たちが扱うデータには、さまざまな種類があります。大別すると、データには、実態を把握するために取られたデータと、仮説を検証するために取られたデータがあります。前者の場合、全体の様子を知るために、まんべんなく多くのデータを取る必要があります。一方、後者では、実験などにより、検証に必要なデータを取ります。これらのデータが解析の目的に合致していない場合、誤解を生む結果を示すこともあります。そのため、どのようなデータを取るかは重要です。

データを解析するときに重要なのが、ばらつきの考え方です。データに誤差が含まれていると、ばらつきが生じます。データを比較するときには平均がよく用いられます。この場合、ばらつきの扱いには注意が必要です。

ここで、3つの水準でデータを取り、誤差が大きい場合と小さい場合における平均を比較してみましょう。図1の左図は誤差が大きく、3つの水準間に違いはなさそうに見えます。一方で、右図は誤差が小さく、A2水準で最大となるように見えます。実は、両図の各水準の平均は同じで、異なっているのは誤差の大きさです。つまり、水準間に違いがあるかどうかは、誤差の大きさと比較して決まることが分かります。

図1:3つの水準によるデータ分布と誤差

図1:3つの水準によるデータ分布と誤差

2. 実験の計画と解析

実験計画では、効率よく適切に解析するために、特性や要因を決定します。ここで、用語の説明をしておきましょう。実験の対象となり、測定の対象となるものを特性といいます。その特性に影響を及ぼしていると考えられるものを、因子といいます。また、因子が特性にもたらす効果を、要因といいます。要因には、因子単独の効果である主効果、複数の因子間の組み合わせによる効果である交互作用、取り上げた因子で表すことのできない誤差があります。主効果や交互作用の有無は、誤差と比較して判断します。

・フィッシャーの3原則
データを取るときに、誤差を正しく見積もることが大切になります。誤差を正しく見積もるためには、気を付けるべき3つの原則があります。それがフィッシャーの3原則と呼ばれているものです(図2)。フィッシャーの3原則とは、イギリスの統計学者ロナルド・フィッシャーにより確立されました。

図2:フィッシャーの3原則(反復、無作為化、局所管理)

図2:フィッシャーの3原則(反復、無作為化、局所管理)

まず、1つ目が、反復の原則です。同一条件下の実験を繰り返すことで、誤差の大きさを見積もります。また、反復が多くなると、推定の精度も高くなります。2つ目は、無作為化の原則です。実験の順序をランダムに決めることで、想定していない条件の偏りをなくすことができます。3つ目は、局所管理の原則です。実験条件を全体にわたって均一にするのが難しい場合に、ブロックに分けることで実験条件を均一にしようとするものです。

3. 要因配置実験と部分配置実験

実験計画法の主なものとして要因配置実験と部分配置実験について紹介します。

・要因配置実験
要因配置実験とは、取り上げた因子の組み合わせを全て実験し、主効果と交互作用を調べるための基本的な方法です。1つの因子を取り上げた一元配置実験、2つの因子を取り上げた二元配置実験があります。さらに、局所管理の原則を適用して、より効率化を図った乱塊(らんかい)法も有効です。次回以降の連載で詳しく説明します。

・部分配置実験
部分配置実験とは、一部の組み合わせで実験する方法です。全ての交互作用を調べるのではなく、取り上げるべき交互作用を特定することで、実験回数を抑えることができます。このときに用いられるのが直交配列表です。特性に影響を及ぼすと考えられる因子が多くある場合、要因効果があるものを絞り込むときに用いられます。これについては、第6回から第8回の連載で説明します。

一般に、特性に影響を及ぼすと考えられる因子はたくさんあります。これらを全て取り上げて要因配置実験を行うと、実験しなければならない因子の組み合わせは非常に多くなってしまいます。そのため、多くの因子を取り上げるときは、直交配列表を用いた部分配置実験を計画し、特性に影響を及ぼす因子を絞り込んだ後に要因配置実験を用いるようにします。

4. バランスの取れた実験

部分配置実験のように、限られた回数での実験を行う場合は、バランスの取れた実験をすることが重要です。物事を比較するときは、条件をそろえておく必要があります。例えば、ある焼結部品の強度を高めようとしたとき、焼結温度は何度にすればよいか、焼結時間はどれくらいにすればよいか、原材料の成分比率はどうすればよいかなど、いくつかの要因が考えられます。この場合、焼結部品の強度を高めるための最適な焼結温度を得るには、焼結温度を何通りかに設定して比較する必要があります。しかし、焼結時間や成分比率がまちまちの場合、単純に比較しても最適な焼結温度は分かりません。

焼結温度を3通り(高、中、低)、焼結時間を2通り(長、短)、原材料比率を2通り(1、2)に設定して、どのように設定するのが最適かを考えるとき、組み合わせの総数は12通りあります。全ての組み合わせで実験を行うのが要因配置実験です。

では、実験を8回しか行えないとしたら、どの組み合わせで実験すればいいでしょうか。表1の組み合わせを考えてみましょう。

表1:焼結温度、焼結時間、成分比率の組み合わせ(実験回数8回)
  焼結温度 焼結時間 成分比率
1 1
2 2
3 1
4 2
5 2
6 1
7 2
8 1

焼結温度を高にした実験は4回あります。中、低は2回しかなく、バランスが悪いように見えるかもしれません。しかし、この4回における焼結時間と成分比率を見ると、長、短が2回、1、2が2回です。2回しか実験していない中、低の焼結温度では、長、短、および1、2が1回ずつになっています。つまり、どの焼結温度でも、焼結時間と成分比率の設定は同じなので、焼結時間と成分比率の違いによる効果は焼結温度には影響しません。従って、3つの設定温度で比較することで、どの焼結温度のときに最大となるかが分かります。

もし、8番目の実験の設定温度が低であったら、高と低で焼結時間の設定回数が異なってしまいます。つまり、強度の違いは、焼結温度の高低が影響しているのか、焼結時間の長短が影響しているのか判断できないため、設定温度で比較しても、どの焼結温度のときに最大となるかは分かりません。この場合、たった1回の実験の設定を間違えるだけでも、解析ができなくなります。

では、9回の実験ができるとしたら、どんな水準で実験すればいいでしょうか。表2は、バランスの取れた組み合わせの一例です。1と3は同じ組み合わせで実験を行うため、バランスが悪いように見えます。しかし、それぞれの設定温度では3回の実験を行っています。焼結時間は、長が2回、短が1回です。成分比率も、1が2回、2が1回とそろっています。従って、焼結温度による違いを見たときに、焼結時間や成分比率の違いによる影響が含まれないようになっています。

表2:焼結温度、焼結時間、成分比率の組み合わせ(実験回数9回)
  焼結温度 焼結時間 成分比率
1 1
2 2
3 1
4 2
5 1
6 1
7 1
8 1
9 2

表1、表2ともに、焼結温度に注目して説明しました。これは、焼結時間や成分比率に注目しても同じことがいえます。他の要因の影響を受けずに、比較ができているということです。これらの実験は、一部の組み合わせで実験を行う部分配置実験です。

一方、要因配置型の実験では、全ての組み合わせで実験を行います。そのため、常にバランスの取れた実験を行うことができます。部分配置型の実験では一部の実験を省くことになるので、このように適切な実験を計画する必要があります。

なお、今回示した実験では、複数因子の組み合わせによる効果である交互作用は検出できていません。検出したい要因が増えると、実験回数も増えてしまうため、実験をより効率化するための工夫が必要となってきます。

いかがでしたか? 今回は、実験計画法の考え方を紹介しました。次回は、一元配置法を取り上げます。お楽しみに!

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