直交配列表実験の解析:実験計画法の基礎知識7
投稿日:
- 2022年01月27日
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前回は、2水準系直交配列表を用いた実験の計画を紹介しました。今回は、そこで得られたデータの解析方法を解説します。まず、取り上げた要因の中から効果のある要因を特定し、それらの最適水準を決定します。次に、そのときの母平均の推定やデータの予測をします。多くの因子を取り上げているものの、基本的な考え方は二元配置法における推定と予測と同じです。
1. 要因効果の解析
前回、4つの因子A、B、C、Dを取り上げ、交互作用A×B、B×Cを考慮する実験を計画しました。因子Aを第3列、因子Bを第5列、因子Cを第1列、因子Dを第2列に割り付け、交互作用A×Bは第6列、交互作用B×Cは第4列に現れます。そのときの観測データを表1に示します。
列ごとに平方和を計算します。各列には、第1水準のデータが4つ、第2水準のデータが4つあるので、一元配置実験と同じ方法で平方和を計算します。第1水準の合計をT1、第2水準の合計をT2とすると、平方和の定義式から、以下のように計算できます。
つまり、第1水準と第2水準の差を2乗して、データ数で割ります。要因の平方和は、割り付けた列の平方和となります。要因が割り付けられていない列の平方和は、誤差平方和となります。誤差列が複数あれば、それらの合計が誤差平方和となります。表1では、列平方和を計算しています。
各列には2つの水準があります。そのため、平方和の自由度は1です。これが対応する要因の自由度になります。誤差自由度は、誤差列の自由度の合計です。以上をまとめると、表2の分散分析表ができます。
要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | P値 | F境界値 |
---|---|---|---|---|---|---|
A | 162.0 | 1 | 162.0 | 20.3 | 0.139 | 161.4 |
B | 18.0 | 1 | 18.0 | 2.25 | 0.374 | 161.4 |
C | 288.0 | 1 | 288.0 | 36.0 | 0.105 | 161.4 |
D | 8.0 | 1 | 8.0 | 1.00 | 0.500 | 161.4 |
A×B | 72.0 | 1 | 72.0 | 9.00 | 0.205 | 161.4 |
B×C | 2.0 | 1 | 2.0 | 0.25 | 0.705 | 161.4 |
E | 8.0 | 1 | 8.00 | |||
T | 558.0 | 7 |
どの要因も有意にはなりません。しかし、どれも要因効果がないというわけではありません。直交配列表実験では実験回数を絞っているため、誤差の自由度が小さくなり、要因効果の検出力が小さくなってしまいます。そこで、要因効果がないと考えられる要因は誤差と見なして、これらを誤差に合算することで誤差の自由度を高めます。これをプーリングといいます。
プーリングする要因の目安は、F値が2以下、あるいはP値が20%以上の要因とします。ただし、交互作用をプーリングしないときは、その主効果は有意でなくてもプーリングしません。数値例では、主効果B、Dと交互作用B×CはF値も小さいので、プーリングの対象となります。交互作用A×Bが存在しているため、主効果Bはプーリングしません。表3に、プーリング後の分散分析表を示します。主効果A、B、Cと交互作用A×Bだけを考えることになります。プーリング後の分散分析で重要なのは、誤差分散の大きさです。これを用いて、推定や予測が行われます。
要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | P値 | F境界値 |
---|---|---|---|---|---|---|
A | 162.0 | 1 | 162.0 | 27.0 | 0.014 | 10.1 |
B | 18.0 | 1 | 18.0 | 3.00 | 0.182 | 10.1 |
C | 288.0 | 1 | 288.0 | 48.0 | 0.006 | 10.1 |
A×B | 72.0 | 1 | 72.0 | 12.0 | 0.041 | 10.1 |
E | 18.0 | 3 | 6.00 | |||
T | 558.0 | 8 |
2. 最適水準における推定と予測
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3. L16(215)直交配列表実験の解析例
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