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ダイカストの基礎知識

ダイカストの基礎知識

著者:ものつくり大学 技能工芸学部 総合機械学科 教授 西 直美

ダイカストは、精密な金型(キャビティ)に溶融金属を高速で注入し、高圧をかけて冷やして固める鋳造方式です。高い精度の鋳物を短時間で大量に生産でき、自動車関連部品などに多く使用されています。本連載では技術者に必要なダイカストの基礎を解説します。第1回では、ダイカストの特徴と、ダイカスト鋳造法が発明された近代から現在までの歴史を紹介します。

第1回:ダイカストとは?

1. ダイカストとは?

ダイカストは、金型(Die)による鋳物(Cast)の意味で、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金などの溶融金属を、精密な金型(キャビティ)に高速で充填し、高い圧力をかけて鋳造する金属加工法です。溶融金属とは、溶かして液体状態にした金属や合金のことで、鋳造では溶湯(ようとう)といいます。また、同方法により得られる製品もダイカストと呼ばれます。

ダイカストは寸法精度が高く、滑らかな鋳肌を持つ鋳物を短時間で大量に生産できます。また、強度に優れ、機械による仕上げ工程が少ないといった特徴があり、自動車関連を中心にOA機器、家電用品、建築用品などの構造部品、機能部品として広く使用されています。

2. ダイカストの特徴

他の鋳造加工製品と比べたダイカスト製品のメリットは、高い寸法精度、美麗な鋳肌、薄い肉厚、微細な鋳造組織、高い強度、高い設計自由度、鋳込み金具が使用できる、ニアネットシェイプ化(材料を最終形状にするための仕上げ作業をほとんど必要としないこと)などです。それぞれについて解説します。

・高い寸法精度

ダイカスト製品は、高い寸法精度を有します。図1に、ダイカスト、精密鋳造、金型鋳造、砂型鋳造の寸法精度を示します。

図1:鋳造品の寸法公差の例

図1:鋳造品の寸法公差の例(JIS B 0403鋳造品−寸法公差方式及び削り代方式を基に著者作成)

JIS B 0403鋳造品−寸法公差方式及び削り代方式には、鋳造品の寸法精度を示す交差等級CT1~16が規定されています。数値の小さい方が精度に優れ、アルミニウム合金ダイカストはCT5~7の等級に相当します。砂型鋳造のCT9~12、金型鋳造のCT6~8と比較して寸法精度が高く、精密鋳造のCT4~6に近い精度であることを示しています。また、亜鉛合金ダイカストの交差等級はCT4~6で、アルミニウム合金ダイカストよりも高い寸法精度が得られます。

・美麗な鋳肌

ダイカストは、溶融金属を金型キャビティに充填した後に、30~70MPaの高い圧力をかけるため、美麗で平滑な鋳肌が得られます。

・薄い肉厚

ダイカストの肉厚は、小物ダイカストで0.8~3.0mm、大物ダイカストで2.0~6.0mmです。ただし7mm以上になると、鋳巣などの内部欠陥が多く発生します。

・微細な鋳造組織

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3. ダイカストの歴史

ダイカストの歴史は、1838年にアメリカのデビッド・ブルース(David Bruce)が手動式の活字鋳造機を発明したことに始まります。鋳物の起源は、紀元前4,000年頃のメソポタミア地方とされるので、ダイカストの歴史は新しいといえるでしょう。図3に、ブルースが1838年に特許出願した活字鋳造機の一部を示します。ピストンを下に移動させることで、ポット内で溶解した活字合金(Pb-Sb-Sn)を鋳型に射出、充填する機構を有しています。

図3:デビッド ブルースが発明した活字鋳造機の一部

図3:デビッド ブルースが発明した活字鋳造機の一部

1905年に、アメリカのハーマン・H・ドーラー(Herman H. Doehler)は、活字鋳造機の原理を応用して、プランジャー式ダイカストマシンを開発します。これが、世界初のダイカストの商業生産となりました。1907年には、アメリカのジョセフ・ソス(Joseph Soss)が、手動式横型トグル型締めプランジャー式ホットチャンバーマシンを開発し、世界で初めてダイカストマシンを市販しました。

1915年、ドーラーは世界で初めて、移動グースネック式ダイカストマシンでアルミニウム合金ダイカストの商業生産を開始します。しかし、この方式は空圧式のため、高い鋳造圧力をかけることができず、必ずしも良い品質とはいえませんでした。

1926年、チェコのジョセフ・ポーラック(Josef Polak)は、横型締め、縦射出の水圧式コールドチャンバーダイカストマシンを開発しました。これは、溶解ポットと加圧チャンバーを切り離したコールドチャンバー方式によるもので、高い鋳造圧力をかけることが可能でした。アルミニウム合金ダイカストの品質が向上し、自動車部品や航空機部品などにおいて、今日と遜色ない品質が得られました。その後も、油圧式の横型締め、横射出のダイカストマシンが登場し、今日のダイカストへと発展しました。

日本では、1917年9月にダイカスト合資会社が設立されました。日本でダイカストの工業化が進展したのは1930年頃です。アルミニウムを中心とする軽金属が注目を集め、……

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4. ダイカストの現況

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第2回:ダイカスト合金の種類と特徴

前回は、ダイカストの特徴と歴史を紹介しました。今回はダイカストに使われる合金を取り上げます。JISに規定されているダイカスト合金は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金の3種類です。その他に、銅合金、スズ合金、鉛合金なども用いられます。これらの合金の特徴や用途を解説します。

1. アルミニウム合金ダイカスト

アルミニウム合金ダイカストは、軽量で耐食性に優れ、経年寸法変化が少ないことから、ダイカスト合金の中では最も多く用いられています。ダイカスト合金全体の97%以上を占め、多くの産業分野で使用されています。経済産業省が発表している生産動態統計によると、2017年のアルミニウム合金ダイカストの用途は、自動車用が89.3%、一般機械用が3.1%、自動二輪用が2.7%、電気機械用が1.6%です。ダイカスト用のアルミニウム合金地金は、JIS H 2118 ダイカスト用アルミニウム合金地金に規定されています。また、JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカストには、20種類のアルミニウム合金ダイカストと、その化学成分などが規定されています。

・アルミニウム合金ダイカストの種類と特徴

アルミニウム合金は、大きく分けてAl-Si系合金と、Al-Mg系合金の2種類があります。またAl-Si系合金は、Al-Si系、Al-Si-Mg系、Al-Si-Cu系に分類されます。日本で現在使用されている合金の多くはAl-Si-Cu系のADC12合金です。アルミニウム合金ダイカストの機械的性質、物理的性質を表1にまとめました。表1の機械的性質 (引張強さ、伸び、衝撃強さ、せん断強さ)は、ASTM(旧米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials)規格で定められた試験片を理想的な条件で鋳造し、試験測定したものです。そのため、実際のダイカストの機械的性質よりも高い値を示しています。実体強度はASTM試験片の約7割といわれています。

表1:主なアルミニウム合金ダイカストの機械的性質・物理的性質(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストの標準 DCS M<材料編>を基に著者作成)
JIS記号 ADC1 ADC3 ADC5 ADC6 ADC10 ADC12 ADC14
縦弾性係数(GPa) 71 ー  71 81.2
引張強さ(MPa) 290 320 310 280 320 310 320
伸び(%) 3.5 3.5 5  10 3.5 3.5 <1
衝撃強さ(kJ/m2) 79 144 202 316 85 81 38
せん断強さ(MPa) 170 180 200 190
比重 2.65 2.63 2.57 2.65 2.70 2.68 2.73
比熱(J/kg・℃) 963 963 963
熱膨張係数(×0-6/℃)
(20~200℃)
22 22 25 25 22 21 18

1:ADC1(Al-Si系)
ADC1は耐食性が良く、金型内での溶湯の流動性が高く鋳造加工しやすい(鋳造性が良い)ものの、耐力はやや低く、自動車のメインフレーム、フロントパネル、屋根瓦に用いられます。

2:ADC3(Al-Si-Mg系)
ADC3は衝撃強さと耐食性が良いものの、鋳造性に劣ります。自動車のホイールキャップ、二輪車のクランクケース、自転車のホイール、船外機のプロペラに用いられます。

3:ADC5(Al-Mg系)
ADC5は耐食性に非常に優れ、高い伸びと衝撃強さを示すものの、鋳造性に劣ります。農機具のアーム、船外機のプロペラ、釣り具のレバー・スプール(糸巻き)に用いられます。

4:ADC6(Al-Mg-Mn系)
ADC6は耐食性はADC5に近く、鋳造性はADC5より優れているものの、Al-Si系に比べると劣ります。二輪車のハンドレバー、ウインカーホルダー、ウォーターポンプ、船外機のプロペラケースに用いられます。

5:ADC10、ADC12(Al-Si-Cu系)
ADC10、ADC12は機械的性質と鋳造性に優れています。また、ADC10は被削性にも優れます。どちらも、アルミニウム製品のほとんど全てのものに用いられます。例えば、シリンダブロック、トランスミッションケース、シリンダヘッドカバー、農機具用ケース類、ハードディスクケース、電動工具、ミシンアーム、ガス器具、床板、エスカレータ一部品などです。

6:ADC14(Al-Si-Cu-Mg系)
ADC14は耐磨耗性に優れているものの、伸び、衝撃強さに劣ります。自動車のエアコン、シリンダブロック、ハウジングクラッチ、シフトフォークに用いられます。

・アルミニウム合金ダイカストの化学組成と金属組織

ダイカストの物理的性質は、合金の化学組成に影響します。ケイ素 Siは熱膨張係数を低下させることから、Al-Si系の合金ではケイ素 Siの量が多いほど熱膨張係数が小さくなります。また、Al-Mg系の合金はケイ素 Siの含有量が少ないため、……

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2. 亜鉛合金ダイカスト

亜鉛合金ダイカストは、薄肉で複雑な形状の鋳物が製造可能です。寸法精度が高く、優れた機械的性質を示します。特に衝撃に強く、めっきなどの表面処理性にも優れています。2017年の亜鉛合金ダイカストの用途は、自動車用が約56%を占めています。

・ダイカスト用亜鉛合金の種類と特徴

ダイカスト用亜鉛合金地金はJIS H 2201 ダイカスト用亜鉛合金地金に規定されています。また、JIS H 5301 亜鉛合金ダイカストには、Zn-Al-Cu系のZDC1と、Zn-Al系のZDC2の2種類が規定されています。使用されている合金の多くがZn-Al 系のZDC2です。なおJIS合金以外ではわずかに、金型用合金3種、ベリックなどの亜鉛合金ダイカストが使用されています。

表2に、亜鉛合金ダイカストのASTM規格試験片による、機械的性質および物理的性質を示します。機械的性質では、室温での伸びや衝撃強さが高いことが特徴です。特に衝撃強さは、ADC12の約20倍の値を示します。ただし、0℃以下の環境では、伸びや衝撃強さは低い値を示すため、寒冷地での使用には注意が必要です。-20℃での伸びは室温の1/2、衝撃強さは1/10になります。

表2:亜鉛合金ダイカストの機械的性質・物理的性質(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストの標準 DCS M<材料編>を基に著者作成)
JIS記号 ZDC1 ZDC2
縦弾性係数(GPa) 90 90
引張強さ(MPa) 328 283
伸び(%) 7 10
衝撃強さ(kJ/m2) 1610 1440
せん断強さ(MPa) 262 214
比重 6.7 6.6
比熱(J/kg・℃) 419 419
熱膨張係数(×10-6/℃)
(20~200℃)
27.4 27.4

1:ZDC1(Zn-Al-Cu系)
機械的性質および耐食性に優れています。ステアリングロック、シートベルト巻き取り金具、ビデオ用ギア、ファスナーつまみなどに用いられます。

2:ZDC2(Zn-Al系)
鋳造性およびめっき性に優れています。自動車のラジエターグリルカバー、モール、ドアハンドル、ドアレバー、PCコネクタ、自動販売機のハンドル、業務用冷蔵庫のドアハンドルなどに用いられます。

・亜鉛合金ダイカストの特性

亜鉛合金ダイカストを使用する上で注意しなければならないのが、……

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3. マグネシウム合金ダイカスト

マグネシウム合金ダイカストは、比重が約1.8と非常に小さいことから、携帯電話やノートPCなど、IT機器の本体カバーとして使用されます。ダイカスト用マグネシウム合金地金は、JIS H 2222 ダイカスト用マグネシウム合金地金に規定されています。また、JIS H 5303マグネシウム合金ダイカストには、マグネシウム合金ダイカストの種類や化学成分などが規定されています。

・マグネシウム合金ダイカストの種類と特徴

マグネシウム合金ダイカストは、MDC1D(Mg-Al-Zn系合金)、MDC2B(Mg-Al-Mn系合金)、MDC3B(Mg-Al-Si系合金)、MDC4(Mg-Al-Mn系合金)の4つがあります。表3に、主なマグネシウム合金ダイカストの機械的性質および物理的性質を示します。マグネシウム合金ダイカストは、アルミニウム合金や亜鉛合金と比べ機械的性質が劣り、縦弾性係数、引張強さは低い値を示します。ただし、伸びはアルミニウム合金ダイカストよりも高い値を示します。また、物理的性質では、比重が約1.8と非常に小さいのが特徴です(ADC12の約2/3、ZDC2の約1/4)。

表3:主なマグネシウム合金ダイカストの機械的性質・物理的性質(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストの標準 DCS M<材料編>を基に著者作成)

表3:主なマグネシウム合金ダイカストの機械的性質・物理的性質

1:MDC1D(Mg-Al-Zn系合金)
Mg-Al-Zn系合金のMDC1Dは、機械的性質、耐食性に優れ、一般的に広く使用されています。ASTM記号ではAZ91Dと表記します。クラッチカバー、インテークマニホールド、シリンダヘッドカバー、チェーンソーケース、デジタルカメラ本体ケース、ノートPC本体ケース、フライ用リール、その他汎用部品に用いられます。

2:MDC2B(Mg-Al-Mn系合金)
MDC2Bは Mg-Al-Mn系合金であり、伸びとじん性に優れるものの、鋳造性はやや劣ります。ASTM記号では、AM60Bと表記します。MDC2Bはエアバッグ部品、シートフレーム、ステアリングメンバーなどに用いられます。

3:MDC3B
Mg-Al-Si系合金のMDC3Bは、高温強度が良いものの、鋳造性はやや劣ります。ASTM記号では、AS41Bと表記します。ステーター、オートトランスミッションケース、クラッチピストンなどに用いられます。

4:MDC4
Mg-Al-Mn系合金のMDC4は、伸びとじん性に優れるものの、鋳造性はやや劣ります。ASTM記号では、AM50Aと表記します。エアバッグケース、エンジンコントロールユニットケース、ステアリングメンバー、シートフレーム、洋弓アームなどに用いられます。

マグネシウム合金ダイカストは、比強度(密度当たりの強度)や圧縮強さ、エネルギー吸収特性に優れています。亜鉛合金ダイカストと同様にクリープ変形が起こりやすいので、130°C以上での使用には注意が必要です。最近では、……

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4. その他の合金

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第3回:ダイカストマシンの構造

前回は、ダイカストに使われる合金を紹介しました。今回は、ダイカストマシンの構造と原理、種類を解説します。ダイカストマシンには、コールドチャンバーダイカストマシン、ホットチャンバーダイカストマシンなどの種類があります。

1. ダイカストマシンの構造

ダイカストマシンは、金型を開閉する型締装置、溶湯(ようとう)を金型内に射出・充填するための射出装置、ダイカストを金型から押し出すための押出装置で構成されます(図1)。

図1:ダイカストマシンの構造

図1:ダイカストマシンの構造

1:型締装置

型締装置には、2つの役割があります。1つは、固定盤と可動盤に取り付けた金型を開閉する役割です。もう1つは金型を締め付ける役割です。金型には、溶湯を圧入する際、金型を開こうとする極めて大きな力(型開力)が発生します。そのため、型締装置により、型開力よりも大きな力で金型を締め付けます。金型を締め付ける力を型締力といいます。

型締装置には、油圧シリンダで直接金型を締め付ける直圧式と、油圧シリンダとトグル機構を組み合わせたトグル式があり、現在では後者が主流です。トグル機構は、AリンクとBリンク、BリンクとCリンクの2対のリンクで構成され、クロスヘッドが前進することでAリンクとBリンクが180°になる際に最大の力を得ることができます。最近では、油圧シリンダの代わりにモータとボールねじを使用する電動トグル式や、モータとボールねじで可動盤を移動させ、油圧によって型締力を発生させる複合式などがあります。

2:射出装置

射出装置は、射出スリーブ内に注湯された溶湯を金型キャビティに射出・充填するための装置です。射出スリーブ、射出プランジャー、射出シリンダ、アキュムレータなどで構成されます。アキュムレータは、溶湯を大流量・高圧で射出・充填するための畜圧装置です。ダイカストでは、金型キャビティでの凝固が速いので、……

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2. コールドチャンバーダイカストマシン

コールドチャンバーダイカストマシン(以下、コールドチャンバーマシン)とは、射出部(チャンバー)が溶湯中ではなく、空気中にあるダイカストマシンのことです(図2)。溶湯は1ショットごとに射出部に供給され、プランジャーを動作させて金型に射出・充填します。一般的なコールドチャンバーマシンの型締力は、300kN~40,000kNで、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金などの鋳造に使用されます。

図2:コールドチャンバーダイカストマシンの構造例

図2:コールドチャンバーダイカストマシンの構造例(引用:一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストって何、2003年、P.14)

コールドチャンバーマシンでは、鋳物を1つ作る(1ショット)ごとに溶湯を射出するため、ショットサイクルはホットチャンバーマシンより長く、1時間当たりのショット数(鋳造回数)は30~150回です。また、鋳造圧力は20~120MPaで、ホットチャンバーよりも高く設定できます。

・コールドチャンバーマシンの射出

図3に、コールドチャンバーマシンの射出系の模式図を示します。射出スリーブに注湯された溶湯は、射出プランジャーが移動することで、ランナー、ゲートを通って金型キャビティに射出・充填されます。

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3. ホットチャンバーダイカストマシン

ホットチャンバーダイカストマシン(以下、ホットチャンバーマシン)は、射出部(チャンバー)が溶湯中に浸せきされたダイカストマシンのことです。射出部は常に加熱されています。専用の炉と一体になっており、射出装置、型締装置、押出装置などで構成されます(図7)。一般的なホットチャンバーマシンの型締力は50~8,000kN で、特に150~1,000kNクラスが多く使用されています。主に亜鉛合金、マグネシウム合金などの鋳造に使用されます。

図7:ホットチャンバーマシンの構造例

図7:ホットチャンバーマシンの構造例(引用:一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストって何、2003年、P.16)

・ホットチャンバーマシンの射出

ホットチャンバーマシンの射出部には、スリーブから射出された溶湯を金型に導く通路の役割があります。耐熱鋳鉄や鋳鋼でできており、形状がガチョウ(英語でGoose)の首に似ていることから、グースネックと呼ばれています。給湯する必要がないため、鋳造サイクルが早く、1時間当たりのショット数は100~1,000回です。さらに、鋳造圧力が7~35MPaと低いため、小さな型締力で大きな製品の鋳造が可能です。

・ホットチャンバーマシンの一連の動作

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第4回:ダイカスト金型

前回は、ダイカストマシンの構造と原理、種類を解説しました。今回は、ダイカスト用金型の構造と材質、種類を紹介します。ダイカスト金型は、ダイカストの3要素(鋳造合金・ダイカストマシン・金型)の中で最も重要です。金型の損傷は生産性の低下、コスト増につながり、金型の完成度はダイカストの品質に大きな影響を与えます。

1. ダイカスト金型の構造と材質

ダイカスト金型には、主に2つの役割があります。1つは、溶融金属への製品形状の付与、すなわち、ダイカスト製品の形状決定です。金型には、製品形状および鋳造方案が彫り込まれていて、金型の寸法精度は、製品の寸法精度を左右します。鋳造方案とは、ゲートからの溶湯(ようとう)の流入やガス抜きなどに関わる設計で、鋳巣や湯回り性の良しあしを左右します。ダイカスト金型のもう1つの役割は、鋳造合金の熱抽出です。金型キャビティに充填された溶湯の顕熱(温度変化に必要な熱)・潜熱(固体から液体など、相変化に必要な熱)を抽出し、冷やして固めます。金型は、溶湯からの熱伝達による厳しい温度条件に耐えて、長い寿命を保持しなければなりません。

ダイカスト金型は、固定型と可動型で構成され、それぞれ固定盤と可動盤に取り付けられています(図1)。また、固定型には、溶湯を金型キャビティに注入するための鋳込み口ブッシュが取り付けられています。可動型は、型締め装置により開閉され、製品を取り出すための押出機構が取り付けられています。

図1:ダイカスト金型の構造

図1:ダイカスト金型の構造(引用:日本ダイカスト協会、ダイカストの標準D1・金型編、2008年、P.4)

製品の形状が、金型の移動方向に対して平行に抜けない場合は(アンダーカット形状)、引抜中子が使用されます。引抜中子は、一般的にコアプラー(油圧シリンダ)や傾斜ピンなどで動作させます。図2に、コアプラーの例を示します。コアプラーは、油圧シリンダで中子を金型の中に出し入れし、ダイカストマシンの油圧回路によって制御されます。

図2:引抜中子を駆動するコアプラー

図2:引抜中子を駆動するコアプラー

ダイカスト金型の内部には、金型の温度を一定に保つための冷却回路、または加熱回路が設けられています。キャビティ内の空気やガスを抜くためのガス抜き装置が設けられる場合もあります。表1に、ダイカスト金型の主要な部品と、その役割、材質を示します。一般的に、固定型および可動型は、入子と主型で構成されています。

表1:金型の主要な部品と役割
金型部品 役割 材質
主型 入子などをはめ込み、金型をダイカストマシンに保持する FCD450、500、550、SC460、490、SCCrM1、3
入子 製品部(キャビティ)を構成する SKD6、61
引抜中子 製品部のアンダーカットを形成する
鋳抜きピン 製品の凹部や鋳抜き穴を形成する
ダイベース 可動型をダイカストマシンの可動盤に取り付ける S35C、S40C、S45C、FC250
ガイドピン
ガイドピンブッシュ
固定型と可動型の位置を合わせる SKS2、3、SK3、4、5、SCM435、440、SUJ2
押出ピン ダイカストを金型から押し出す SKD6、61、SKS2、3、SKh3、SACM1
押出板 S55C、SS330、SS400
リターンピン 押出板を引き戻す SK120、105、95、85、SKS2、3、SUJ2
冷却穴、冷却管 金型を冷却する SKD6、61

入子は、製品となるキャビティを構成するブロックです。固定型および可動型それぞれに入子があります。主型は、直接溶湯が接しないため、S45CからS50Cなどの炭素鋼や、SC450からSC480などの鋳鋼、FCD450からFCD600などの鋳鉄が用いられます。これに対し、入子、引抜中子、鋳抜きピンなどは、高温の溶湯に接するため、……

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2. ダイカスト金型の種類

ダイカスト金型は、ダイカストマシン、構造、取り数(1つの金型から成形される製品の数)に応じて分類されます。

・ダイカストマシンによる分類

ダイカストマシンの種類には、コールドチャンバーダイカストマシンとホットチャンバーダイカストマシンがあります。ダイカスト金型の構造は、基本的には両者とも大きくは異なりません。ただし、図3に示すように、鋳込み口(スプルー)の形状が異なります。

図3:ダイカストマシンにより異なる鋳込み口の形状

図3:ダイカストマシンにより異なる鋳込み口の形状(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストって何、2003年、P.14、P.16を基に著者作成)

コールドチャンバー用金型の鋳込み口は、固定型側の鋳込み口ブッシュと可動型側の分流子で構成されます。鋳込み口ブッシュと分流子は、ダイカストマシン側のノズルから流入した溶湯をランナーに導く部分です。鋳込み口ブッシュはプランジャーチップが摺動するため、円筒形形状をしています。また、分流子の上部には、ランナーに溶湯を導く流路が設けられています。ホットチャンバー用金型の鋳込み口は、コールドチャンバー用と同様に鋳込み口ブッシュと分流子で構成され、円すい形状をしています。

・金型構造による分類

金型構造による分類は、直(じか)彫り型、入子型、共通主型、ユニット入子型の4つです。

1:直彫り型金型
直彫り型金型は、主型にキャビティ、ランナー、オーバーフローなどを直接彫り込む金型です(図4)。主に小型ダイカストマシンの金型、短納期で生産数が限定されている金型に適用されます。大きな金型では熱処理ひずみが大きく、寸法精度の確保が困難です。

図4:直彫り型金型の構造

図4:直彫り型金型の構造(引用:日本ダイカスト協会、ダイカストの標準D1・金型編、2008年、P.8)

2:入子型金型

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第5回:ダイカストの製品設計

前回はダイカスト用金型を紹介しました。今回はダイカストの製品設計を取り上げます。ダイカストの製品設計では、製品図や要求仕様を基に、合金材料の選定、鋳造法の選定、ダイカストマシンのサイズ、取り数、製品部の詳細形状、後加工・後処理への対応を検討します。

1. ダイカスト合金材料の選定

ダイカスト合金には、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金などの種類があり、それぞれ特性が異なるため、製品の要求仕様や用途などによって使い分けます。顧客から合金が指定されている場合、設計者は合金材料の特性を考慮して、製造過程や性能に問題がないかを検討します。表1に、ダイカスト合金材料の選定例として、主なアルミニウム合金の評価例を示します。

表1:アルミニウム合金ダイカストの選定評価の例(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストって何、2006年、P.19を基に著者作成)

表1:アルミニウム合金ダイカストの選定評価の例

2. 鋳造法・ダイカストマシンのサイズ・取り数の決定

ダイカスト合金の選定が完了したら、鋳造法・ダイカストマシン・取り数を決めます。鋳造法は製品品質、ダイカストマシンは製品サイズを考慮して選定します。取り数は、多数個取りのメリット・デメリットを考慮した上で決定します。

・鋳造法の選定

ダイカスト鋳造法には、高速・高圧で鋳造する普通ダイカスト法と、高品質な製品が得られる特殊ダイカスト法(高真空ダイカスト・層流充填ダイカストなど)があります。多くのダイカスト製品は、普通ダイカスト法で生産されます。ただし、自動車の足回り部品のように、高強度かつ延性やじん性が求められる部品には、特殊ダイカスト法を用います。

特殊ダイカスト法の選定には、顧客の要求仕様(機械的性質、内部品質、製品形状・寸法、肉厚、後加工との関係、鋳造のしやすさ、経済性など)を総合的に判断する必要があります。また、特殊ダイカスト法の合金材料には、通常のJIS規格品ではなく、特殊な合金が用いられることが多いため、適正な合金材料の選定が必要です。

・ダイカストマシンのサイズの選定

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3. ダイカスト製品部の詳細形状設計

ダイカスト製品の詳細形状設計は極めて重要です。適切に行われないと、製品の要求仕様を満足できないだけでなく、生産性も損なわれます。製品部の詳細形状には、寸法公差、肉厚、抜勾配、リブ、隅・角R、アンダーカットなど、さまざまな要素があります。

・寸法公差

寸法公差とは、図面で指定された寸法から許容される誤差の範囲です。ダイカストを含む鋳物の寸法公差は、JIS B 0403 鋳造品-寸法公差方式及び削り代方式に規定されています。鋳造公差にはCT1~16の等級があり、鋳放し品(鋳型から取り出し、湯口などの不要部を除去した状態の鋳造品)の基準寸法に対して、それぞれ公差が設けられています。ダイカストの場合、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽合金ではCT5~7等級が、亜鉛合金にはCT4~6等級が指定されています(図1)。

図1:ダイカストの寸法公差

図1:ダイカストの寸法公差(JIS B 0403 鋳造品-寸法公差方式及び削り代方式を基に著者作成)

・肉厚

ダイカストの肉厚は、最終製品としての強度・剛性、合金の湯流れ性、製品の各部分の肉厚分布、製品の形状や大きさなどで決まります。肉厚で重要なことは、均肉化(肉厚を均一にすること)です。肉厚が不均一で駄肉(余計な部分)がある場合、肉厚部は薄肉部よりも凝固が遅れるため、ひけ巣や外部のひけが発生します。駄肉は、リブ(補強材)や中子を使用することで除去が可能です(図2)。

図2:リブによる均肉化

図2:リブによる均肉化

・鋳肌

……

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4. ダイカスト製品の後加工・後処理

ダイカスト製品は、鋳放しで顧客に納入されることは少なく、何らかの後加工や後処理が行われます。表2に、ダイカストの工程で行われる代表的な後加工・後処理を示します。

表2:代表的な後加工・後処理(引用:西直美、絵とき「ダイカスト」基礎のきそ、日刊工業 新聞社、2015年、P.103)

表2:代表的な後加工・後処理

鋳仕上げは、ランナー、オーバーフロー、鋳バリを除去する作業です。その後、研磨仕上げや機械加工を行います。要求仕様によっては、……

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第6回:ダイカストの鋳造方案設計

前回は、ダイカストの製品設計を解説しました。今回は、ダイカストの鋳造方案設計を取り上げます。鋳造方案設計では、金型の溶湯流路や空気排出通路などを設計します。鋳型の中を溶湯で十分に満たし、凝固・収縮の過程を経ても、欠陥のない優れた品質のダイカストを作ることが求められます。

1. 鋳造方案とは

鋳造方案とは、金型に溶湯を供給するための流路や、金型キャビティ内の空気を排出する通路など、金型の各要素を設計することです。鋳造方案を適切に行うことで、溶湯が凝固・収縮しても鋳物の内部に空洞が生じず、優れた品質のダイカストを作ることができます。ダイカストの鋳造方案の対象は、金型キャビティの射出スリーブ、ランナー、ゲート部(フィード、ランド、ゲート)、オーバーフロー、エアベントです。図1に、ダイカストの模式図と金型断面の各部名称を示します。

図1:ダイカストの模式図(左)と金型断面(右)

図1:ダイカストの模式図(左)と金型断面(右)

2. 射出スリーブ

射出スリーブとは、ダイカストマシンの射出装置と押出装置をつなぐ、溶湯の流路です(参考:第3回)。射出スリーブの設計では、スリーブ径、スリーブ充填率(射出スリーブに注湯される溶湯の量とスリーブ容積との比率)、可鋳質量(鋳造可能な質量)などを考慮します。射出スリーブ径Dは、下記の式を用いて計算・選定します。

射出スリーブ径D

ここで、Fは射出力、 P1は鋳造圧力です。スリーブ充填率は40~60%が望ましく、少ないと射出スリーブ内で溶湯の冷却が進行し、破断チル層(凝固片が製品に混入してできる層)などの初期凝固層が発生しやすくなります。スリーブ充填率を高くしすぎると、……

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3. ランナー

ランナーとは、溶湯が鋳込み口から製品部まで流れるための通路です。一般的なランナーの断面形状は台形で、幅Wは厚さDの1.6~4倍です(図2)。これ以上の大きさになると、……

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4. ゲート部

ゲート部は、ランナー部と製品部とをつなぐ部位です。フィード、ランド、ゲートで構成されます(図3)。フィードは、ランナーとランドを結ぶ傾斜状の部位で、その傾斜角θをフィード角と呼びます。ランドは、フィードからゲートまでを結ぶ部位です。ゲートは、ランドと製品部が接する断面部分のことです。

図3:ゲート部の形状と名称

図3:ゲート部の形状と名称(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.136)

ゲートランナーは、フィードとランドで構成されます。ゲートランナーの形状は、金型キャビティ内の流れに大きく影響します。フィード角θが大きく、ランドが短いと、断面積が急激に絞られるため、溶湯は噴霧状に広がって金型キャビティに流入します(図4の左)。また、フィード角θが大きく、ランドが長いと、溶湯は渦巻き状に広がってキャビティに流入します(図4の中)。フィード角θが小さく、ランドが長いと、溶湯は安定した湯流れでキャビティに流入します(図4の右)。

図4:ランナーの形状とゲートから流出する溶湯の形態

図4:ランナーの形状とゲートから流出する溶湯の形態(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.136)

ゲートに接続するランドの厚さは、一般的にはアルミニウム合金で0.5~4.0mm、亜鉛合金で0.3~1.0mmです。ランドが薄いと、ゲート速度(溶湯がゲートを通過する速度)が速くなるため、薄肉品や外観製品に適します。ただし、ゲート抵抗(ゲート通過時に生じる流体抵抗)が大きくなるため、金型が侵食しやすくなります。逆に、ランドが厚いと、……

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5. オーバーフロー

オーバーフローは、酸化物、チップ潤滑剤や離型剤の残留物、ガスを製品外に排出する部位です。最終充填部や溶湯のよどむ場所などに設置されます。金型の温度分布を均一にするため、金型温度が低い場所に設置される場合もあります。一般的に用いられるオーバーフローの幅は15~50mm、厚さは3.5~6mmです。総体積は製品肉厚により異なり、肉厚が約1mmでは製品体積の50~75%約2mmでは25~50%、それ以上の場合は20%が目安となります。

図6に、オーバーフローの大きさと位置の例を示します。オーバーフローは、大きなものを少数設置する(図6の左)より、……

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6. エアベント

エアベントは、金型キャビティの空気やガスを金型の外に排出するための部位です。通常は、オーバーフローと一緒に設置されます。エアベントの寸法は、総断面積がゲート総断面積の50%以上、溶湯が金型から飛散するのを防止するため、厚さ0.1~0.2mmとするのが一般的です。ただし、製品によっては、……

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第7回:ダイカスト金型の設計

前回は、ダイカストの鋳造方案設計を紹介しました。今回は、ダイカスト金型の設計を取り上げ、キャビティ部や金型分割面、金型サイズなどを解説します。ダイカスト金型の出来栄えは、製品の生産性・品質を8割決めるといわれています。金型設計では、製品の品質・生産性の確保と、金型の製作コスト・耐久性・作りやすさ・製作納期・メンテナンスのしやすさなどを考慮する必要があります。

1. キャビティ配置の設定

キャビティとは金型のへこみ部のことです。金型キャビティの設計では、鋳造方案や金型分割面の設定と、製品の形状を金型内にどのような姿勢で配置するかを検討します。これを、キャビティ配置といいます。キャビティ配置では、ダイカストの湯流れ性やガス抜け性など、品質に関わる点を優先して決定します。例えば、製品を縦に配置すると、……

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2. 金型分割面の設計

金型分割面(パーティングライン面、PL面)は、固定型・可動型や中子が合わさる面のことです。ランナー、ゲート、オーバーフロー、エアベントなどは金型分割面に設置され、その設置位置は製品品質に大きく影響します。金型分割面は、品質(湯流れ性、ガス抜け性、寸法精度など)や経済性(生産性、仕上げ性、製作・整備コストなど)、製品の最大投影面積を考慮した、平面で単純な構造が求められます。

金型キャビティで冷却されたダイカスト製品は、熱収縮によって金型にくっ付きます(抱き付くといいます)。その場合、固定型側の形状が可動型側より深いと、固定型側に抱き付く力が大きくなり、型開きの際に固定型側に製品を取られてしまいます(図2の左)。そのため、製品の抱き付く面積が可動型側に多くなるように設計します(図2の右)。

図2:製品を可動型に抱き付かせる型分割面

図2:製品を可動型に抱き付かせる型分割面(引用:日本ダイカスト協会、新版ダイカスト技能者ハンドブック、2012年、P.83)

また、ダイカストではアンダーカット(金型開き方向では抜けない凹部や穴)を作らない設計が重要です。型分割面の角度を変更することで、製品内側に生じたアンダーカットを回避することができます(図3)。

図3:型分割面の変更によるアンダーカット対応

図3:型分割面の変更によるアンダーカット対応(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.150)

金型を構成する部品間(固定型と可動型、可動型と引抜中子など)のクリアランス(隙間)が大きいと、型分割面で形状が食い違い、寸法がばらつきます。また、図4に示すように、引き抜き方向と型開き方向での寸法ばらつきが生じます。引き抜き方向の寸法は、引抜中子が鋳造時の衝撃圧で後退する(図4の上方向)場合があり、その分寸法がばらつきます。引抜中子の後退止めはあっても、長年使用していると摩耗してガタつくことがあります。型開き方向の寸法は、型締力や鋳造圧力などの影響によって大きくなる傾向です。高い寸法精度が要求される部分は、同じ金型要素内に入れるといった工夫を施します。例えば、……

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3. 金型サイズの設定

金型のサイズは、使用するダイカストマシン、製品のサイズ、キャビティ配置、金型分割、鋳造方案(ランナー、オーバーフロー、エアベント)などから設定します。ダイカストマシンに取り付ける金型の外形は、4本のタイバー(可動盤と固定盤を支える軸)の間隔(内のりの距離)より小さくします(図6の左)。また、固定型と可動型を合わせた金型厚さの最大値と最小値は、……

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4. 縮み代の設定

金型設計および製品設計で注意すべき点に、ダイカストの縮み代があります。縮み代とはダイカスト製品が凝固する際に生じる寸法収縮のことで、ダイカストと金型の線熱膨張係数の違いにより発生します。目的の寸法の製品を作るには、適正な縮み代を設定して、製品図面の指定寸法より縮み代の分だけ大きい金型を作ります。例えば、……

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5. 押出ピンの配置

押出ピンは、可動型に抱き付いたダイカスト製品を押し出して離型する役割を持ちます。バランス良く、十分な押出力を発生できるように、適切な大きさや本数、配置で設計します。また、金型から製品を離型するときに生じる離型抵抗や、……

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6. 内部冷却回路の設計

金型温度の目安は、合金の鋳込み温度の1/2です。低すぎると、湯回りの低下や水残り(離型剤が乾かず水分が残ること)が発生し、鋳巣の原因となります。高すぎると、離型剤の付着が阻害され、焼付きが発生します。薄肉ダイカストや小物ダイカストは、金型温度が上昇しにくいため、ヒータやオイル温調機で金型を加熱することがあります。しかし、一般的には、……

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第8回:ダイカストの鋳造工程

前回は、ダイカストの金型設計を紹介しました。今回はダイカストの鋳造工程から、特に重要な溶解・溶湯処理、鋳造作業、後処理作業、検査の4つを取り上げます。溶解・溶湯処理では、鋳造合金を溶解し、溶湯を製造します。鋳造作業で、溶湯を製品の形状に加工し、後処理作業で不要部の除去や表面処理を施します。検査では、仕様や品質基準と照らし合わせて良品・不良品を選別します。まずは、合金の溶解から見ていきましょう。

1. 合金の溶解と溶湯処理

ダイカストの鋳造工程は、ダイカストマシンに注入する溶湯の製造、すなわち、鋳造合金の溶解から始まります(図1)。合金の溶解は、ダイカストの品質に直接影響するため、溶湯の品質に十分な注意が必要です。溶湯の材料には、新塊(純アルミに各種元素を添加した合金)、再生塊(荒バリや不良品など)、工場内の切粉、スクラップなどがあります。水蒸気爆発を防ぐため、十分に予熱・乾燥した後、溶解炉に材料を投入します。溶解した合金は、化学成分や溶湯清浄度などをチェックしてから鋳造に用います。不適切な場合は、金属ケイ素(Si)やAl-Cu母合金による成分調整や、脱ガス・脱酸処理などを行います。

図1:原料の種類と溶解工程

図1:原料の種類と溶解工程(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.167)

合金の溶解には、集中溶解炉方式(図2)と、溶解兼保持炉方式(図3)があります。

図2:集中溶解炉(タワー型急速溶解炉)

図2:集中溶解炉(タワー型急速溶解炉)(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.168)

集中溶解炉方式は、工場内で使用する全ての溶湯を、ダイカストマシンと離れた場所で集中的に溶解します。原料は上部から投入され、炉の排熱により予熱・溶解します。溶湯の保持機能は無いため、ダイカストマシン近くに設置されている保持炉を併用します。取鍋(溶湯を搬送するための容器)を用いて、溶解炉から保持炉へと溶湯を供給します。

図3:溶解兼保持炉の構造

図3:溶解兼保持炉の構造(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.170)

溶解兼保持炉方式では、溶解機能と溶湯保持機能を備えた炉がダイカストマシンの横に設置されます。溶解兼保持炉は溶解室、保持室、汲出口(出湯口)が備えられていて、少量生産に対応可能です。

溶解工程では、溶湯の温度と品質に注意します。アルミニウム合金の溶湯温度は、……

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2. 鋳造作業

鋳造作業には、金型の清掃、離型剤・潤滑剤の塗布、型締、注湯、射出・充填、キュアリング、型開き、離型・取り出しの工程があります(図6)。

図6:鋳造作業の工程の例

図6:鋳造作業の工程の例(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.176)

鋳造作業では、まず、金型に残った鋳バリや離型剤の残りかすをブラシやエアブローで清掃します。その後、キャビティ表面に離型剤を、プランジャーチップと射出スリーブに潤滑剤を塗布し、金型を閉じます。コールドチャンバーマシンでは、溶湯を保持炉から射出スリーブに注ぎ、金型キャビティに射出・充填します。ホットチャンバーマシンでは、注湯作業は不要です。金型キャビティに充填した溶湯が凝固し、ダイカストが取り出し可能な温度になるまで、金型は閉じたままにします。これをキュアリングといい、この時間をキュアリングタイムといいます。キュアリングが終了すると金型を開き、引抜中子がある場合は引き抜きます。最後に、押出ピンによって金型からダイカストを離型し、取り出し装置やロボットなどで金型からダイカストを取り出します。

この一連の作業をサイクルと呼び、1サイクルに要する時間をサイクルタイムといいます。サイクルタイムは、……

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3. ダイカストの後処理作業

鋳造後の製品には、後処理を施します。後処理には、トリミング、鋳バリ取り、ひずみ取り、熱処理、寸法安定化処理、機械加工、含浸処理、表面処理などがあります。

・トリミング

トリミングとは、金型の構造上、製品に付随して成形される不要な部分(ビスケット、ランナー、オーバーフローなど)を、ハンマーやプレス、ロボットなどで除去する作業です。

・鋳バリ取り

鋳バリ取りとは、金型分割面や中子の合わせ面、押出ピン、鋳抜きピンに発生する薄い鋳バリを除去する作業です。やすりなどによる手作業のほか、バレル研磨・ショットブラスト(図7)などの機械や、ロボットを用いることもあります。バレル研磨とは、研磨材と工作物の入ったバレル容器を振動させて研磨する手法で、ショットブラストとは、メディア(研磨材)を工作物に吹き付けて研磨する手法です。

図7:ショットブラストによる鋳バリ取り

図7:ショットブラストによる鋳バリ取り

・ひずみ取り

ひずみ取りとは、熱収縮による変形や、型から押し出した際の不良による変形やひずみを、木製ハンマーや液圧プレスなどで修正する作業です。

・熱処理・安定化処理

熱処理・安定化処理とは、時効硬化(焼入れ後の金属が時間経過で硬くなる現象)による強度向上や、寸法の安定化などを目的に行われます。表2に、アルミニウム合金ダイカストの熱処理法をまとめました。

表2:アルミニウム合金ダイカストの熱処理(引用:一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストの標準 DCSP1<作業編・アルミニウム合金ダイカスト>、2005年、P.192)

表2:アルミニウム合金ダイカストの熱処理

・寸法安定化処理

……

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4. ダイカストの検査

検査は、ダイカスト製品が仕様や品質を満たしているか調べ、良品・不良品を選別する重要な作業です。検査には、全数検査と抜取検査があります。全数検査は、不良品が混入すると重大な影響が生じる場合に行います。抜取検査は、ロットの中から決められた個数を抜き取り、不良品の基準数と比較することで良否を判定する方法です。

検査項目には、化学成分、寸法、外観品質、内部品質、表面処理、機械的性質などがあります。ダイカストは、ひけ巣やブローホールなどの内部欠陥により、機械的性質や耐圧性が悪化することがあるため、さまざまな検査が行われます。検査方法には、……

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第9回:ダイカストの品質と欠陥

前回は、ダイカストの鋳造作業を解説しました。今回は、ダイカストの品質を取り上げます。ダイカストは、溶湯を高速・高圧で金型キャビティに充填します。これにより、他の鋳造法では得られない優れた組織と強度が得られます。その一方で、ダイカスト特有のさまざまな欠陥が発生するため、特性をよく理解した上での対策が必要です。

1. ダイカストの組織

ダイカストの組織は、表面層と内部で大きく異なります。表面層には、微細な組織が集まったチル層と呼ばれる領域が形成されます(図1)。チル層は、溶湯が急冷されることで生じる、緻密で非常に硬い領域です(ビッカース硬さ約110HV)。肉厚が薄く、金型温度が低いほど、厚いチル層が形成されます。

図1:ADC12合金ダイカストの表面層の組織

図1:ADC12合金ダイカストの表面層の組織

一方、内部は冷却速度が遅いため、粗大な組織が形成されます(図2)。鋳巣(いす)などの欠陥が多く、硬度の面でもチル層に劣ります(ビッカース硬さ85~90HV)。

……

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2. ダイカストの強度

ダイカストの強度は、一般的に、ASTM(旧米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials)規格で定められた試験片で、測定します。ASTM引張試験片は、平行部に鋳巣などの欠陥が極めて少ないため、理想的な引張特性が得られます。これに比べ、実際の製品の強度(実体強度)は低い値を示します。表1に、主なアルミニウム合金ダイカストの実体強度特性とASTM試験片による強度特性の比較を示します。引張強さはASTM試験片の約7割、伸びは約5割です。

表1:実体とASTM試験片による機械的性質の比較例(引用:一般社団法人日本ダイカスト協会、一般社団法人日本アルミニウム合金協会、合同研究報告、アルミニウム合金ダイカストの実体強度と顕微鏡組織、2003年、P.189)
JIS記号 引張強さ(MPa) 伸び(%)
実体 ASTM 比率(%) 実体 ASTM 比率(%)
ADC1 250 290 86 1.7 3.5 49
ADC3 279 320 87 2.7 3.5 77
ADC5 213 310 69 >6.8 5.0
ADC6 266 280 95 6.4 10.0 64
ADC10 241 320 75 1.5 3.5 43
ADC12 228 310 73 1.4 3.5 40
ADC14 193 320 60 0.5 <1.0 >50

※比率=(実体/ASTM)×100

また、図4に、ダイカスト製品から切り出した引張試験片によって得られたADC12の、破断伸びと引張強さの関係を示します。

図4:ADC12の破断伸びと引張強さの関係

図4:ADC12の破断伸びと引張強さの関係(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.215)

試験結果のうち、最も引張特性が高いものは、……

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3. ダイカストの欠陥

ダイカストは極めて短時間に凝固するため、さまざまな欠陥が発生し、それらは品質を阻害する要因となります。ダイカストに発生する欠陥は、寸法上の欠陥(表2)、外部欠陥(外観上の欠陥、表3)、内部欠陥(表4)に大別されます。

表2:ダイカストの主な寸法上の欠陥(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.217)
欠陥の種類 欠陥の特徴
欠け込み ゲート、押湯部の除去時に起こる、鋳物の欠肉。
伸び尺違い 縮み代の設定が悪く、寸法不良になるもの。
型逃げ 金型、中子が逃げて余肉となるもの。
はぐみ 分割面で鋳抜きピン・中子がずれたために、ダイカスト表面が食い違う。
変形 応力による変形やゆがみ。ダイカストの熱収縮時に生じる。
鋳バリ 可動、固定分割面、中子分割面などに、溶湯が差し込んでできた駄肉。
表3:ダイカストの主な外部欠陥(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.217)
欠陥の種類 欠陥の特徴
ヒートチェック傷 ダイカスト表面にできる網目状の細かい凸部。金型のヒートチェックが転写されたもの。
未充填 溶湯がキャビティ内に完全に充填されずにできる欠肉部。
湯境 溶湯が合流する箇所で、完全に融合できずにできた境目。
湯じわ 溶湯が融合しないで発生した、溝状の浅いしわ。
湯模様 溶湯の流れ方向の不規則な模様。平面あるいは緩やかな曲面上に現れる。
焼付き傷 金型との焼付きによるくぼみや粗面。ダイカストの鋳肌部に生じる。
型侵食傷 金型が侵食されてできた凹み部が、製品に転写されてできる傷や凸部。
かじり傷 ダイカスト表面の引っかき傷。金型から押し出される際に生じる。
外びけ 厚肉部のダイカスト表面に生じるくぼみ。
逆ばり くさび形のくぼみ、あるいは鋳バリが食い込まれたもの。
入子・中子などのかん合部に、鋳バリが残ったまま鋳造すると生じる。
ふくれ 製品表面に発生する、内部が空洞で山形形状の小さな突起。ブリスターともいう。
はがれ、めくれ 製品の表面が薄くはがれた状態。一部が薄くはがれたものを、めくれという。
打こん ダイカストの運搬中などに発生した打ち傷。
表面偏析 鋳肌の表面に溶質濃化融液が押し出されてできた偏析。逆偏析ともいう。
二重乗り 製品表面にできる二重の薄い層。後から充填された溶湯が融着されずに生じる。
冷間割れ 収縮応力に耐えられず生じる割れ。熱収縮時に生じる。
熱間割れ 凝固中に発生した収縮応力に耐えられず、生じる割れ。凝固割れともいう。
ひけ割れ 凝固収縮により生じた不規則な形の割れ。き裂部分に樹枝状晶が観察される。
ゲート部の巣 ゲートを切断した際に、切断面に現れる空洞。
表4:ダイカストの主な内部欠陥(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.217)
欠陥の種類 欠陥の特徴
ブローホール 金型内の空気、離型剤などの分解ガスが、溶湯内に巻き込まれてできた、さまざまな大きさの穴。丸くて滑らかな壁面を持つ。 ガスホールや巻き込み巣ともいう。
すみひけ巣 凝固収縮による空洞。厚肉部や肉厚段差、立ち壁のあるすみ内側に生じる。
ひけ巣 凝固収縮による溶湯不足で厚肉部に生ずる空洞。不定型な形状で、内面にはデンドライトの突起が観察される。
ざく巣 微細な海綿状の空洞。凝固収縮による溶湯不足で厚肉部に生じる。
金属性介在物 母材と全く異なる成分の金属または金属間化合物の巻き込み。
マクロ偏析 高圧力により、最終凝固部に溶質元素が絞り出されてできる偏析。
破断チル層 射出スリーブ内で生成した凝固層が破砕され、ダイカスト内に巻き込まれたもの。
ドロス巻き込み 溶湯表面に浮遊するドロス、溶湯処理剤の巻き込み。
酸化膜巻き込み 金属酸化物の膜状介在物。局部的に組織を横切っていることがある。
ハードスポット ダイカスト内に巻き込まれた硬い異物や介在物。切削性を阻害する。

発生頻度の高い鋳巣欠陥、湯流れ欠陥、破断チル層の原因と対策を解説します。

1:鋳巣欠陥

鋳巣欠陥は、ダイカストの内部に生じる空洞の総称です。ひけ巣、ブローホールなどがあります。ひけ巣とは、ダイカストの内部に生じる粗い内壁を持った空洞です。主に、溶湯の凝固収縮(溶湯が凝固して固体になる際に体積が減る現象)により生じます。図5に、加工面に現れたひけ巣と、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)観察結果を示します。ひけ巣は不定形な形状をしており、巣の内壁にはデンドライトの突起が観察されます。巣の大きさは比較的大きく、数mmに及ぶものもあり、製品肉厚の中心部や肉厚の変化部によく観察されます。

図5:加工面に現れたひけ巣(a)とSEM観察結果(b、c)

図5:加工面に現れたひけ巣(a)とSEM観察結果(b、c)(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.222)

ひけ巣は、凝固収縮によって発生します。金型キャビティに溶湯が充填されると、すぐに凝固が始まります。ダイカストはゲートが狭いので、製品部より先にゲート部が凝固します。そのため、製品部が凝固するときには溶湯が不足し、内部に空洞が生成して、ひけ巣となります。凝固収縮率は、純アルミニウムAlで約6.5%、純亜鉛Znで約4.7%、ADC12で約4%です。

ひけ巣を防ぐには、……

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第10回:特殊ダイカスト技術

前回は、製品品質を左右するダイカスト特有の欠陥とその特性を解説しました。最終回となる今回は、特殊なダイカスト技術とダイカスト合金を紹介します。これらを用いることで、従来のダイカスト技術では難しかったT6熱処理や溶接が必要な部品にも、ダイカストを適用できるようになります。まずは、特殊なダイカスト技術から見ていきましょう。

1. 低速充填するダイカスト

低速で溶湯をキャビティに充填することで、空気やガスを金型の外に排出し、製品内に巻き込むことを防止できます。この手法は発生するガス量が少なく、熱処理や溶接が可能です。しかし、充填時間が長くなるために薄肉製品には不向きです。そのため、主に厚肉で高品質が要求される部品の生産に適用されます。低速充填するダイカストには、スクイズダイカスト法、NI法(New Injection Die Casting Process)、セミソリッドダイカスト法があります。それぞれ見ていきましょう。

1:スクイズダイカスト法

スクイズダイカスト法は、縦型の射出スリーブを傾けて溶湯を注湯した後に、スリーブを金型部に連結し、厚いゲートから金型キャビティ内へ、溶湯を静かに充填する方法です(図1)。50~110MPaの高圧力で加圧することで、ひけ巣が少なく微細な凝固組織を得ることができます。また、ガスの含有量も1mL/100gAl以下と少ないことから、T6熱処理や溶接が可能です。自動車のホイールやエンジンマウントなど、高強度・高延性を必要とする製品に適用されています。現在では、横型締め・縦射出のスクイズダイカストマシンが主流です。

図1:スクイズダイカスト法

図1:スクイズダイカスト法(引用:安達充、鋳造工学 Vol.71、日本鋳造工学会、1999年、P.131)

2:NI法(New Injection Die Casting Process)

NI法は、エア加圧により直接金型キャビティ内へ溶湯を充填し、加圧子により加圧する手法です(図2)。ランナーやキャビティ表面に粉体離型剤を塗布し、……

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2. 高速充填するダイカスト

高速充填するダイカストには、高真空ダイカスト法、PF(Pore Free)法、局部加圧ダイカスト法があります。それぞれ見ていきましょう。

・高真空ダイカスト法

高真空ダイカスト法は、金型キャビティ内の真空度を 10kPa以下にする方法です。高真空を実現するため、金型合わせ面、押出ピンクリアランス、プランジャーチップなどのシール方法や給湯方法を工夫する必要があります。図6にMuller-Weingartenにより開発されたVacural法を示します。この方法の特徴は、長時間の真空吸引ができ、5kPa以下の真空度が得られる点です。金型キャビティと射出スリーブ内を真空にすると、保持炉内の溶湯はサクションパイプを通り、射出スリーブ内に吸い上げられます。製品内のガス量は1~3mL/100gAlで、溶接やT6処理が可能です。1994年にAudiA8のオールアルミニウムスペースフレームの部品に採用されました。日産自動車では、Vacural法を用いてロアリンク、サブフレーム、ストラットハウジング(図7)など、重要保安部品のダイカスト化を行いました。

図6:Vacural法

図6:Vacural法

図7:ストラッドハウジング

図7:ストラッドハウジング(写真提供:日産自動車株式会社)

・PF(Pore Free)法

PF法は、金型キャビティの空気を酸素で置換する方法です(図8)。置換した酸素とアルミニウム合金溶湯が反応し、……

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3. 新しいダイカスト材料

日本で最も多く使用されているADC12は、金型への焼付きや型侵食防止のため、Feが0.7~1.0%程度添加されています。しかし、Feは Al、Siと金属間化合物のβ-Al9Fe2Si2を形成し、伸び、衝撃値といった延性、じん性が低下する原因ともなります。ここで取り上げた特殊ダイカスト法は、ガス含有量が少なくT6熱処理や溶接が可能な方法です。しかし、Fe含有量の多い合金ではT6処理を行ったとしても十分な強度特性を得ることはできません。

近年、欧州を中心に Fe 含有量を抑えた新しい合金が開発、実用化されつつあります(表1)。……

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