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ダイカストの品質と欠陥:ダイカストの基礎知識9

ダイカストの基礎知識

更新日:2018年8月31日(初回投稿)
著者:ものつくり大学 技能工芸学部 総合機械学科 教授 西 直美

前回は、ダイカストの鋳造作業を解説しました。今回は、ダイカストの品質を取り上げます。ダイカストは、溶湯を高速・高圧で金型キャビティに充填します。これにより、他の鋳造法では得られない優れた組織と強度が得られます。その一方で、ダイカスト特有のさまざまな欠陥が発生するため、特性をよく理解した上での対策が必要です。

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1. ダイカストの組織

ダイカストの組織は、表面層と内部で大きく異なります。表面層には、微細な組織が集まったチル層と呼ばれる領域が形成されます(図1)。チル層は、溶湯が急冷されることで生じる、緻密で非常に硬い領域です(ビッカース硬さ約110HV)。肉厚が薄く、金型温度が低いほど、厚いチル層が形成されます。

図1:ADC12合金ダイカストの表面層の組織

図1:ADC12合金ダイカストの表面層の組織

一方、内部は冷却速度が遅いため、粗大な組織が形成されます(図2)。鋳巣(いす)などの欠陥が多く、硬度の面でもチル層に劣ります(ビッカース硬さ85~90HV)。

図2:ADC12合金ダイカストの組織

図2:ADC12合金ダイカストの組織(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.212)

ダイカストにとってチル層は大変重要です。表面のチル層が厚いほど、引張強さ、破断伸びが向上します(図3)。加工によってチル層がむやみに除去されると、機械的性質が悪化するため、注意が必要です。

図3:チル層厚さがADC12の引張特性に及ぼす影響

図3:チル層厚さがADC12の引張特性に及ぼす影響(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.211)

2. ダイカストの強度

ダイカストの強度は、一般的に、ASTM(旧米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials)規格で定められた試験片で、測定します。ASTM引張試験片は、平行部に鋳巣などの欠陥が極めて少ないため、理想的な引張特性が得られます。これに比べ、実際の製品の強度(実体強度)は低い値を示します。表1に、主なアルミニウム合金ダイカストの実体強度特性とASTM試験片による強度特性の比較を示します。引張強さはASTM試験片の約7割、伸びは約5割です。

表1:実体とASTM試験片による機械的性質の比較例(引用:一般社団法人日本ダイカスト協会、一般社団法人日本アルミニウム合金協会、合同研究報告、アルミニウム合金ダイカストの実体強度と顕微鏡組織、2003年、P.189)
JIS記号 引張強さ(MPa) 伸び(%)
実体 ASTM 比率(%) 実体 ASTM 比率(%)
ADC1 250 290 86 1.7 3.5 49
ADC3 279 320 87 2.7 3.5 77
ADC5 213 310 69 >6.8 5.0
ADC6 266 280 95 6.4 10.0 64
ADC10 241 320 75 1.5 3.5 43
ADC12 228 310 73 1.4 3.5 40
ADC14 193 320 60 0.5 <1.0 >50

※比率=(実体/ASTM)×100

また、図4に、ダイカスト製品から切り出した引張試験片によって得られたADC12の、破断伸びと引張強さの関係を示します。

図4:ADC12の破断伸びと引張強さの関係

図4:ADC12の破断伸びと引張強さの関係(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.215)

試験結果のうち、最も引張特性が高いものは、引張強さ320MPa、破断伸び4%です。最も低いものは、引張強さ150MPa、破断伸び0.5%です。ADC12の0.2%耐力は約150MPaなので、弾性変形から塑性変形に移行すると、ほとんど伸びずに破断したことが分かります。このように、ダイカストの実体強度に大きなばらつきが発生する原因は、組織に存在するさまざまな欠陥です。

3. ダイカストの欠陥

ダイカストは極めて短時間に凝固するため、さまざまな欠陥が発生し、それらは品質を阻害する要因となります。ダイカストに発生する欠陥は、寸法上の欠陥(表2)、外部欠陥(外観上の欠陥、表3)、内部欠陥(表4)に大別されます。

表2:ダイカストの主な寸法上の欠陥(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.217)
欠陥の種類 欠陥の特徴
欠け込み ゲート、押湯部の除去時に起こる、鋳物の欠肉。
伸び尺違い 縮み代の設定が悪く、寸法不良になるもの。
型逃げ 金型、中子が逃げて余肉となるもの。
はぐみ 分割面で鋳抜きピン・中子がずれたために、ダイカスト表面が食い違う。
変形 応力による変形やゆがみ。ダイカストの熱収縮時に生じる。
鋳バリ 可動、固定分割面、中子分割面などに、溶湯が差し込んでできた駄肉。
表3:ダイカストの主な外部欠陥(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.217)
欠陥の種類 欠陥の特徴
ヒートチェック傷 ダイカスト表面にできる網目状の細かい凸部。金型のヒートチェックが転写されたもの。
未充填 溶湯がキャビティ内に完全に充填されずにできる欠肉部。
湯境 溶湯が合流する箇所で、完全に融合できずにできた境目。
湯じわ 溶湯が融合しないで発生した、溝状の浅いしわ。
湯模様 溶湯の流れ方向の不規則な模様。平面あるいは緩やかな曲面上に現れる。
焼付き傷 金型との焼付きによるくぼみや粗面。ダイカストの鋳肌部に生じる。
型侵食傷 金型が侵食されてできた凹み部が、製品に転写されてできる傷や凸部。
かじり傷 ダイカスト表面の引っかき傷。金型から押し出される際に生じる。
外びけ 厚肉部のダイカスト表面に生じるくぼみ。
逆ばり くさび形のくぼみ、あるいは鋳バリが食い込まれたもの。
入子・中子などのかん合部に、鋳バリが残ったまま鋳造すると生じる。
ふくれ 製品表面に発生する、内部が空洞で山形形状の小さな突起。ブリスターともいう。
はがれ、めくれ 製品の表面が薄くはがれた状態。一部が薄くはがれたものを、めくれという。
打こん ダイカストの運搬中などに発生した打ち傷。
表面偏析 鋳肌の表面に溶質濃化融液が押し出されてできた偏析。逆偏析ともいう。
二重乗り 製品表面にできる二重の薄い層。後から充填された溶湯が融着されずに生じる。
冷間割れ 収縮応力に耐えられず生じる割れ。熱収縮時に生じる。
熱間割れ 凝固中に発生した収縮応力に耐えられず、生じる割れ。凝固割れともいう。
ひけ割れ 凝固収縮により生じた不規則な形の割れ。き裂部分に樹枝状晶が観察される。
ゲート部の巣 ゲートを切断した際に、切断面に現れる空洞。
表4:ダイカストの主な内部欠陥(引用:西直美、絵ときダイカスト基礎のきそ、日刊工業新聞社、2015年、P.217)
欠陥の種類 欠陥の特徴
ブローホール 金型内の空気、離型剤などの分解ガスが、溶湯内に巻き込まれてできた、さまざまな大きさの穴。丸くて滑らかな壁面を持つ。 ガスホールや巻き込み巣ともいう。
すみひけ巣 凝固収縮による空洞。厚肉部や肉厚段差、立ち壁のあるすみ内側に生じる。
ひけ巣 凝固収縮による溶湯不足で厚肉部に生ずる空洞。不定型な形状で、内面にはデンドライトの突起が観察される。
ざく巣 微細な海綿状の空洞。凝固収縮による溶湯不足で厚肉部に生じる。
金属性介在物 母材と全く異なる成分の金属または金属間化合物の巻き込み。
マクロ偏析 高圧力により、最終凝固部に溶質元素が絞り出されてできる偏析。
破断チル層 射出スリーブ内で生成した凝固層が破砕され、ダイカスト内に巻き込まれたもの。
ドロス巻き込み 溶湯表面に浮遊するドロス、溶湯処理剤の巻き込み。
酸化膜巻き込み 金属酸化物の膜状介在物。局部的に組織を横切っていることがある。
ハードスポット ダイカスト内に巻き込まれた硬い異物や介在物。切削性を阻害する。

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