メニュー

新サービス・市場創出型DX:デジタルトランスフォーメーション(DX)の基礎知識3

デジタルトランスフォーメーション(DX)の基礎知識

更新日:2021年5月21日(初回投稿)
著者:一橋大学 イノベーション研究センター 教授 市川 類

前回は、イノベーションの観点から見たDXの位置付けを整理し、DXを3つに分類した上で、それぞれの概要を解説しました。今回は、3分類のうち、DXの中でも特に重要となる、新サービス・市場創出型DXの基本的な方向性と、具体的な進め方、およびシステム構築に当たっての留意点を解説します。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 新ビジネスモデルと顧客への新たな体験(付加価値)の創造

DXの3分類の一つ、新サービス・市場創出型DXは、デジタル技術を利用して、新たな製品・サービスを提供し、顧客への付加価値・市場を創出すべく、新たなビジネスモデルを構築するパターンのDXです。DXの中でも中心的な取り組みとして位置付けられます(第2回、表1)。

このパターンのDXは、デジタル技術を活用した新規ビジネス創出に関わる取り組みです。従って、通常の新規ビジネス創出の検討プロセスと同様に、自社のビジネスの競争優位性を意識しつつ、誰に対して、どのような付加価値を提供するかを明確化して、提供する製品・サービスに関わるビジネスモデルを立案します。図1に、新サービス・市場創出型DXに関わるビジネスモデル検討の流れを示します。

図1:新サービス・市場創出型DXに関わるビジネスモデルの検討

図1:新サービス・市場創出型DXに関わるビジネスモデルの検討

まずは、商品(製品)・サービスを巡る今後の社会環境、市場・技術動向の変化を分析することにより、企業としての戦略を立案します。その中には、業界・バリューチェーン・ポジショニングの変化や、商品・サービスに関わる社会・技術上のトレンドなどが含まれます。その上で、既存の商品・サービスに関わるビジネスモデルを踏まえつつ、近年のデジタル技術の進展の中で、どのようなビジネスモデルの構築が可能かを検討します。

一般的に、新たなビジネスモデルの方向としては、プロダクト・サービスイノベーションに相当するデジタルサービス提供型(デジタルエコノミー型)と、マーケティングイノベーションに相当する顧客接点の強化型(高度化・多様化)(カスタマーエンゲージメント型)があります。実際には、両方を組み合わせて、ビジネスモデルを構築することになる場合も多いでしょう。

・デジタルサービス提供型
デジタルサービス提供型は、デジタル技術に基づく新たなサービスを提供するパターンです。具体的には、サービス化の進展の中で、製品へのIoTの組み込みによるサービス価値の提供や、オンライン・遠隔サービスの提供などが相当します。また、デジタル技術によるプラットフォーム構築により、顧客に対する仲介などのサービスを提供するパターン(シェアリングエコノミー、マッチングなど)もあります。

・顧客接点強化型(高度化・多様化)
顧客接点強化型(高度化・多様化)は、顧客サービスのデジタル化の中で、顧客データなどを活用したサービスの高度化・多様化を図るパターンです。具体的には、AI技術やチャットボットなどを利用した個々の顧客に対応するカスタマイズ・パーソナライズ化や、ネットとリアルなど複数のチャネルを組み合わせた顧客へのサービスを提供するパターンなどがあります。

このようなビジネスモデルを検討するに当たっては、まずは、顧客に対してどのような付加価値を提供するかという観点から行います。特に、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上という視点が重要です。すなわち、顧客に対して商品やサービス自体の価値のみを提供しているという発想から転換し、顧客が企業の商品やサービスを利用した際に感じる心理的・感覚的な価値観を含めた顧客体験という観点から、デジタル技術によってどのような付加価値を提供できるかという視点でビジネスモデルを検討することが重要になります。

2. 新たなビジネスモデルの構築に向けた進め方

上述の考え方の下で、新サービス・市場創出型DXとして新規ビジネスモデルを構築するには、具体的にどのような手順で進めていくべきでしょうか。図2に、その大まかな概念図を示します。

図2:DXに関わるビジネスモデルの検討の進め方

図2:DXに関わるビジネスモデルの検討の進め方

まずは、現状のビジネスの優位性を踏まえつつも、ビジネスモデルに関わるサービス企画(ビジネスプラン)として、ターゲットとなる顧客(利用者)、解決すべき課題、解決策、および利用する技術を明確化することから始めます。実際には、両者を検討し、試行錯誤しながら定めていくことになります。

顧客(利用者)と課題の明確化では、既存の顧客でなく潜在的な顧客として、どのような層(こだわり利用者、価格感受的利用者など)を想定するのか、また、当該層におけるどのような課題を解決するのかを明確化します。

解決策と利用する技術の明確化では、当該課題を解決すべく、どのような商品・サービス(顧客体験価値)をビジネスモデルとして提供するのか、また、そのためにどのようなデジタル技術を活用するのかを特定します。

その上で、ビジネスモデルの詳細な設計として、事業戦略・計画を策定することになります。すなわち、どのような商品・サービスを、いくらで、どのように売り、どのようにして収益を確保するかという観点を含め、ビジネスモデルの精緻(せいち)化を図ります。収益の確保という観点からは、デジタルによって可能となるさまざまな価格モデル(無料モデル、ダイナミックプライシング、サブスクリプションモデルなど)を考慮する必要があります。また、実現性の検討においては、自社内のリソースだけではなく、場合によってはパートナー企業との連携などを含め、戦略的に進めていくことも必要です。

併せて、具体的に開発すべきITシステムに関わるサービス要件の定義として、技術的・システム的な可能性などを踏まえつつ、その機能の明確化を図ります。その場合、顧客の拡大、プラットフォーム戦略によるサービス提供内容拡大の検討の可能性も含め、事業戦略・計画と並行しながら検討を進めます。

3. 新ビジネスモデル構築に向けたシステム開発の方向

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

ピックアップ記事

tags