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ルールベースの決定と予測ベースの費用便益分析:土木計画学の基礎知識3

土木計画学の基礎知識

更新日:2022年1月11日(初回投稿)
著者:京都大学 大学院 都市社会工学専攻 教授 藤井 聡

前回は、土木計画学とはインフラ政策学における最適化である、という考え方を紹介しました。今回は、土木計画の推進に不可欠な予測ベースとルールベースという、意思決定を形作る2種類の要素について解説します。

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1. 土木計画は意思決定によって作られる

土木計画すなわちインフラ政策とは、インフラを作ったりそれを運用したりすることを計画立てていく行為を意味します。そして、そうした行為を行う際に必要不可欠なのが、意思決定です。どういうインフラで、どういう町や国を作るのかを考えることは「町づくり」や「国づくり」、あるいは「都市計画」や「国土計画」と呼ばれます。また、どういう道路ネットワーク、鉄道ネットワークを作るのかを考えることは「交通計画」「道路計画」「鉄道計画」と呼ばれ、災害に対してどのように街や地域を守るのかを考えるのは「防災計画」、さらに、さまざまな川をどのように扱っていくのかを考えるのは「河川計画」などと呼ばれます。これらは全て、ひとくくりに「土木計画」と呼ばれており、こうした計画を立てる、つまり、プランを作るという行為には、意思決定が必須です。例えば、都市計画や国土計画では、以下のような意思決定が必要になります。

  • 1:そこに交通インフラを作るのか、作らないのか
  • 2:作るとするなら、それは鉄道か道路か
  • 3:道路だとするなら、高速道路かそうでないのか
  • 4:高速道路を作るとするなら、どのルートにするのか
  • 5:あるルートで高速道路を作るとするなら、4車線にするのか2車線にするのか

こうした、さまざまなレベルの判断――意思決定を組み合わせて、1つの都市計画なり国土計画ができます。

2. 意思決定には予測ベースとルールベースの2種類がある

こうした意思決定は、一般に予測ベースとルールベースという2種類で行われます(図1)。予測ベースとは、選択肢Aと選択肢Bがあった場合、それぞれを選択した時の結果を予測・評価し、より良い方を選択するという方法です。一般に帰結主義(consequentialism)と呼ばれます。例えば、「高速道路よりも新幹線の方が地域経済をより活性化させる」、という結果が予測されるのに対し、「新幹線をつくる」といった意思決定が該当します。

一方、ルールベースとは、そうした予測や評価ではなく、特定のルールに基づいて意思決定を行うという方法です。一般に、非帰結主義(non-consequentialism)と呼ばれます。例えば、「県庁所在地には高速道路を通すようにする」に対し、「東日本と西日本に少なくとも1つずつ、世界最大のコンテナ船が接岸できる港をつくる」などがこれに該当します。 また、「このエリアの自然は開発せずに保存する」や、「この地域の伝統産業は守る」なども、ルールベースの意思決定です。インフラ政策、あるいは、さまざまな土木計画を考える際、私たちはこの両者の方法を多様に組み合わせて意思決定を重ねていきます。

図1:意思決定の分類

図1:意思決定の分類

3. 諸外国で重視される地域間公平性ルールは、
日本では蔑(ないがし)ろにされている

全国的なネットワークや、国土全体のあり方を考えたりする場合、私たちはその都度、細かい予測や評価で予測ベースの意思決定を行うようなことはせず、基本的にルールベースで意思決定を行うのが一般的です。ただし、ルールベースで意思決定する場合には、どういうルールを採択するのかという意思決定が必要となります。その場合は、一般的に政府や議会で、いかなるルールを選択するのかが意思決定されます。

そうした意思決定において準拠するのは、予測値や数理的評価結果などではなく、その地域・国のビジョンや計画思想に基づく質的な議論になります。つまり、意思決定におけるルールの選択で採用されるのも、ルールベースの(非帰結主義的な)アプローチです。例えば、「田舎の町の人口が少ないという理由で、そのインフラ水準を極端に下げるのは不公平である。従って、国民全体の公平性の観点から、全国津々浦々に、最低限の道路・鉄道・防災サービスを提供することが必要だ」といったルールベースで判断されます。

主要先進国では、インフラ整備においてこうしたルールベースが広く採択されており、全国各地にインフラがまんべんなく作られています。一方で、日本ではこうした「地域間の公平性ルール」が採用されておらず、四国や日本海側、北海道東部、九州東部には高速道路がほとんど整備されていないのが実態です(図2)。

図2:ドイツ・アメリカ・日本の高速道路網(時速80km以上)

図2:ドイツ・アメリカ・日本の高速道路網(時速80km以上)

4. 予測ベースの計画決定で頻繁に使われる費用便益分析

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5. 予測は統計学が、便益評価には経済学が活用される

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