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インフラを巡るマクロ経済学的政策論~フロー効果・ストック効果・財政効果~:土木計画学の基礎知識4

土木計画学の基礎知識

更新日:2022年5月11日(初回投稿)
著者:京都大学 大学院 都市社会工学専攻 教授 藤井 聡

前回は、土木計画の推進に不可欠な、予測ベースとルールベースという意思決定を形作る2種類の要素について解説しました。今回は、インフラを巡るマクロ経済学的政策論の効果を取り上げます。

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1. インフラ政策は、一国の経済にディープインパクトをもたらす

土木計画を実際に策定し実現する段階では、各種のインフラ事業(すなわち土木事業)が、経済や政府の財政に及ぼす影響において重大な意味があります。なぜなら、道路や鉄道などの各種インフラは、多くの場合、政府がその事業主体となり、その事業規模は数百億円から場合によっては数千億円、数兆円という規模に達するためです。それだけ巨額の事業が進められれば、地域や国家全体の経済状況、すなわち人々の所得や支出、企業活動など全てを含んだマクロ経済に少なからぬ影響をもたらします。土木計画がマクロ経済にもたらす、フロー効果、ストック効果、財政効果の3つの効果について説明します(図1)。

図1:政府のインフラ事業がもたらす3つの効果のプロセス

図1:政府のインフラ事業がもたらす3つの効果のプロセス

・フロー効果

フロー効果とは、インフラ事業実施時に生じる直接的な政府支出の増加が、マクロ経済へ短期的な効果をもたらす経済効果です。

・ストック効果

ストック効果とは、道路などのインフラ完成後、インフラの拡充がもたらす民間経済における生産能力の増強や消費と投資の増加が、マクロ経済に中長期的な効果をもたらす経済効果です。それと同時に地域の産業活動や社会活動に影響を与え、マクロ経済状況に影響が及び、経済が活性化していきます。

・財政効果

財政効果とは、フロー効果とストック効果の双方によりマクロ経済状況が活性化され、税収が増加する経済効果をいいます。

従って、インフラ事業を含む土木計画を検討する場合、その土木計画の推進がマクロ経済、すなわち当該の地域や国の国民経済にどのような影響を及ぼすのかを認識しておくことが、極めて重要となります。とりわけ、土木計画の主たる推進主体である政府にとっては、政府自身が行うインフラ事業により政府自身の収入である税収が増加することになります。この点を踏まえれば、政府がインフラ事業などを含む土木計画を検討し推進していく上で、多様なインフラ効果の重大要素の一つとして、マクロ経済へのフロー効果やストック効果、さらには、税収への影響である財政効果を考慮しておくべきであるということになります。

2. インフラ事業のフロー効果(事業効果)

フロー効果は、その施設の機能や質とは無関係に、建設事業などを行うことによってもたらされる経済効果やGDPの拡大効果です。政府から企業を通じ家計に流れる経済効果、家計から企業を通じ政府に流れる経済効果について説明します。

1:政府から企業を通じ家計に流れる経済効果

政府から企業を通じ家計に流れる経済効果には、政府から企業に対しての直接フロー効果と、家計に対しての間接フロー効果があります。

・直接フロー効果

直接フロー効果とは、インフラ事業を行った場合、政府から関連企業に金銭が直接支払われる効果をいいます。企業が所得を得ることでも、GDPは拡大していきます。

・間接フロー効果

間接フロー効果とは、インフラ事業により企業が得た所得が労働者に賃金として支払われ、国民経済の中を駆け巡っていく効果をいいます。政府から支給された金銭は、労働者に賃金として流れます。そうなれば、所得を増やした労働者は消費を増やし、それが再び企業に利益をもたらすことになります。このように、政府から流れ出た資金の流れ・キャッシュフローは、水のようにさまざまなところを駆け巡っていきます。

2:家計から企業を通じ政府に流れる経済効果

国民の消費は、企業を通して政府の収入として戻っていきます。政府は収入を拡大するため乗数効果と消費性向を利用します。

・乗数効果

乗数効果とは、政府の支出自体が最終需要として経済の活性化に結びつくのみならず、個人消費に波及することにより、最終的に国民経済を拡大的に活性化させ、GDPを増加させる効果です。政府の支出は直接フロー効果のみならず、より高次の間接フロー効果を産み出します。従って、政府が支出を行った場合、GDPそれ自身はその支出以上の水準で拡大します。その場合の拡大率は、乗数効果の「財政乗数」あるいは、単に「乗数」と呼ばれます。例えば、乗数が1.5とは、政府の1兆円の支出がGDPを1.5兆円拡大するという意味です。

・消費性向

乗数は消費性向によって決まります。消費性向とは、所得のうち、貯蓄に回さず消費に回す金額の割合(1から貯蓄率を差し引いた数値)です。各家計の消費性向が0.5(=貯蓄率が0.5)である状況で、1兆円の政府支出があった場合を考えましょう。この場合の直接フロー効果は1兆円であり、間接フロー効果は2次的フローが0.5兆円、第3次フローが0.25兆円、第4次フローが0.125兆円・・・となります。これらを全て足し合わせると、2兆円となります。つまりこの場合、乗数は2となるのです。なお、消費性向が高ければ高いほど、この乗数は大きくなり、低ければ小さくなります。

このように、フロー効果は企業や世帯の所得を拡大するということを意味します。表1に分配面、生産面、支出面に分類して具体的に示します。

表1:政府支出によるフロー効果(事業効果)
分配面 生産面 支出面
・労働者の賃金が上がる
・雇用を創出する
・解雇が回避される
・企業の利益が増加する
・倒産が回避される
・起業が増加する
・生産性が向上する
・研究技術開発が進む
・消費・投資が増える

3. インフラ事業のストック効果(施設効果)

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4. フロー効果とストック効果の総合効果と財政効果

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5. インフラ事業のフロー・ストック・財政効果の予測技法

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