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火災や爆発と防爆電気設備:爆発・防爆の基礎知識1

爆発・防爆の基礎知識

更新日:2020年2月6日(初回投稿)
著者:工学院大学 工学部 電気電子工学科 准教授 市川 紀充

作業者が安全に作業するには、火災や爆発の危険性を排除することが必要になり、爆発・防爆の基礎知識を身につけて実施することが求められます。火災や爆発が起こる原因を知り、防爆電気設備を用いて災害を防止することは、尊い作業者の命を守るための手段となります。火災や爆発災害を未然に防止し、作業者の命を守って下さい。本連載では、6回にわたり爆発・防爆の基礎知識について解説します。第1回は、火災や爆発と防爆電気設備について解説します。

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1. 火災や爆発の発生と防止

フランスのパリにあるノートルダム大聖堂の一部が、2019年4月15日に火災が原因で焼失しました。続いて、世界遺産の首里城が、2019年10月31日に同じく火災が原因で焼失しました。火災が発生すると、このような木造建築物は焼失してしまいます。木造建築物の火災が起こる理由は、着火源となる物が存在するからです。

火災や爆発が起きる原因となるものとして、身近なものではタバコの不始末、ストーブによる引火、漏電の他、工場ではアーク溶接機の使用による発火などがあります。また、大気が乾燥した冬場になると、静電気が火災や爆発を引き起こすこともあります。火災の防止には、着火源をなくすことや不燃物を使用すること。爆発を防止するには、可燃性雰囲気(可燃性のガス、蒸気、粉じんが混合した状態の空気)を排除することが挙げられます。酸素がなければ、着火源があったとしても火災や爆発が起こりません。着火源となるところの酸素を取り除き、窒素パージ(ある空間内に不活性ガスである窒素を送り込み、その空間に滞留していたガスを窒素に置き換えること)することも火災や爆発防止に有効な方法といえます(図1)。

図1:火災や爆発の原因、防止方法

図1:火災や爆発の原因、防止方法

電源がオンの状態であるパソコンなどの電子機器のプラグは、コンセントへ差し込む際に小さな電気火花(火花放電)が発生します。これは、可燃性雰囲気であれば、火災や爆発を引き起こす原因になります。明かりの付いている白熱電球に触れたときに熱いと感じるように、白熱電球でも火災は起こります。いずれ普及する燃料電池車で使用する水素は、コロナ放電という、ビリッとこない静電気の放電でも火災や爆発が起こる可能性があるといわれています。電気設備内ではスイッチのオンやオフの切り替えで、小さな電気火花が発生するため、可燃性雰囲気の着火源とならないように、防爆電気設備を使用することが必要になります。

2. 着火源の電気設備

自動車のバッテリーを充電するとき、バッテリーにつないだプラス極のケーブルをマイナス極のケーブルと接触させると、バチバチと電気火花が発生します(図2)。この電気火花は、ケーブルのプラス極からマイナス極に電流が流れることで起こります。電圧の差がある二つの導体を接触させるとき、あるいは取り外すときに電気火花が起こります。そのような火花放電は、静電気で帯電した人体がドアノブなどの金属に触れるときにも発生します。

図2:自動車のバッテリー充電で起こる電気火花(イメージ)

図2:自動車のバッテリー充電で起こる電気火花(イメージ)

電流は流れ続けようとするため、高電圧で大電流が流れる変圧器や遮断器は、接続部を切り離そうとすると、アーク放電が発生します(図3)。

図3:電気工学実験によるアーク放電

図3:電気工学実験によるアーク放電

静電気が原因で起こる火花放電は、エネルギーが小さくとも、水素やガソリンを着火させることができます。コンセントをプラグに差し込むときに生じる電気火花は、静電気の火花放電のエネルギーと比べて大きくなります。高電圧・大電流で発生するアーク放電は、100 Vや200 Vで生じる電気火花とは比べられないほどの大きなエネルギーになります。

身の回りにある家電製品は、電源がオンの状態のままコンセントを抜き差しすると、容易に電気火花が発生して着火源になります。電線の接続部が緩んだときや接触不良のときに、その接続部が高温になり電気火花を発生させることもあります。可燃性雰囲気では、アーク溶接機から生じるアーク放電は火災や爆発を引き起こす着火源となります。

このように身の回りには、可燃性雰囲気になったときに着火源となりうる設備が複数あります。可燃性雰囲気では、一般に使われるほとんどの電気設備は、火災や爆発を引き起こす着火源になる可能性があると思った方がよいでしょう。

3. 防爆電気設備

防爆電気設備とは、電気設備が可燃性のガス・蒸気・粉じんに対して火災や爆発の点火源(電気的火花や発火高温)とならないよう考慮した電気設備です(図4)。工場などで防爆電気設備を使用せずに作業を行うと、可燃性ガスや粉じんに着火し、火災や爆発を引き起こす可能性が高くなります。防爆電気設備は、主にガソリンスタンドの他、工学的分野の現場でよく利用されています。

図4:防爆電気設備(電気機器用防爆ボックス)

図4:防爆電気設備(電気機器用防爆ボックス)

感電災害では、2人以上の作業者が同時に死亡することはほとんどないにもかかわらず、火災や爆発災害では、その規模が大きくなるほど、複数の作業者が同時に死亡することになります。

ガス器具は、ガスに電気火花で着火して炎を出します。ガスと電気火花と酸素があれば、火災が起こることはよく知られています。しかし、火災や爆発を防止することを目的とした防爆電気設備があることはあまり知られていないのが現状です。防爆電気設備は、作業者の命を守るためには、欠かすことのできない設備です。可燃物がガス蒸気であるときはガス蒸気防爆電気設備、粉じんであるときは粉じん防爆電気設備が使用されます。粉じん防爆電気設備は、ガス蒸気防爆電気設備と比べて施設例は少ないようです。一般に防爆電気設備というと、ガス蒸気防爆電気設備を指すことが多くなります。ガス蒸気防爆電気設備は、粉じん防爆電気設備とは原理が異なり、相互に代用したり、兼用することはできません。

電気設備(電源を内蔵または電力を消費する機器など)については、日本の「電気機械器具防爆構造規格」に従って、登録型式検定機関で行う国家検定に合格したものでなければ使用することはできません。ただし、端子箱のような単に配線などに使用される器具については電気設備とは見なされないため、国家検定の対象にはなっていません。従って、輸入品をそのまま使用することが可能です。

いかがでしたか? 今回は、火災や爆発と防爆電気設備について解説しました。次回は、ガスや粉体の使用と危険な場所について解説します。お楽しみに!

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