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工場の事故の原因:工場安全対策の基礎知識1

工場安全対策の基礎知識

更新日:2018年2月2日(初回投稿)
著者:事故分析・コミュニケーション研究所 代表 兼 化学工学会SCE・Net 幹事 竹内 亮

労働災害の発生状況は、長期的には減少傾向です。しかし工場安全の最終目標は、作業者が毎日けがをすることなく家に帰ること。管理者には全ての部下を無事に帰す責任があり、全員で労働災害ゼロ・死傷者数ゼロの実現を目指さなければなりません。この連載では5回にわたり、工場での発生頻度が高い労働災害を取り上げ、対策方法を解説します。第1回は統計データの解析を基に、工場の事故原因を確認していきます。

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1. 統計からひもとく労働災害

まずは厚生労働省の統計から、死傷事故の実態を読み解きましょう。休業4日以上の死傷者数は、2003年頃からほぼ横ばいの12万人程度で推移していることが分かります(図1)。

図1:労働災害発生状況の推移

図1:労働災害発生状況の推移(引用:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課、平成28年労働災害発生状況、P.3。和暦を西暦に変更)

次に、休業4日以上となった死傷災害の発生状況を示す円グラフ(図2)を見てみましょう。発生件数の多い方から、つまずきなどによる「転倒」が27,152人、高所からの「墜落・転落」が20,094人、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が15,081人でした。なお、この2016年のグラフでは発生件数4番目の機械などによる「挟まれ・巻き込まれ」は、前年の2015年は3番目でした。これらのデータから、全体として発生件数上位の4つの事故がかなりの割合を占めており、特に注目すべき対象だといえます。

図2:2016年事故の型別労働災害発生状況(確定値)より休業4日以上の死傷災害の円グラフ

図2:2016年事故の型別労働災害発生状況(確定値)より休業4日以上の死傷災害の円グラフ(引用:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課、平成28年労働災害発生状況、P.2。和暦を西暦に変更)

1:転倒事故

転倒でけがをするのは、高齢者だけではありません。転倒事故の原因には、通路が水や油で滑りやすくなっている、不要な段差や障害物がある、体調が悪いのに出勤している人がいる、ながらスマホをしている、工場内を走るなどがあります。化学工場の中には、緊急時以外は走ることを原則禁止にしているところもあります。走ることは転倒の確率、また転倒時のけがのリスクを高めます。学校の廊下を走ってはいけないという規則を思い出しましょう。

2:墜落・転落事故

墜落事故の大半は、高所作業で適切な墜落防止をしていなかったために発生しています。安全管理のしっかりした工場では、墜落事故はほとんど起きません。しかし工事現場などでは、作業者が安全帯を使用せずに高所作業をしていたり、脚立の使用方法を間違えている光景をしばしば見かけます。脚立の天板上に乗ること、脚立をまたいでの作業は、誤った使用方法です。脚立をまたぐことで安定すると思う人も少なくないようですが、後ろに倒れた時に、後頭部を打って死亡するケースが後を絶ちません。また、はしごや脚立を使用する場合は、欠陥の無いものをしっかりと固定して使用していますか。特に可搬式のはしごは、最初に固定する必要があります。そのためには、まず1人がはしごを手で押さえ、もう1人がはしごを登って固定しなくてはならないので、作業開始時に2人以上の作業者が必要になります。

転落事故の典型は、階段からの転落です。皆さんの工場の階段に、手すりは付いていますか? 階段からの転落事故は、手すりをつかむことでほとんど防ぐことができます。工場の中には、階段で手すりをつかむことを規則にしているところもあります。

3:その他の事故

動作の反動・無理な動作は、エルゴノミクス(人間工学)と呼ばれる分野に属します。機械などによる挟まれ・巻き込まれの多くは、ロックアウト・タグアウトにより、防止できます。これらは次回以降に解説します。

2. 個別に分析するべき事故とは

転倒事故や転落事故など、工場で発生した事故は、分析し、再発しないように対策を取るべきです。しかし、工場の事故は、生死に関わるような大きな事故から、ニアミスと呼ばれるような小さな事故まで発生し、全て分析していてはきりがありません。何を分析すべき事故と見なすかは、その事故で深刻な結果がもたらされるか否かによって判断できます。

例えば、1984年にインドのボパールで発生し、市街地でも多数の死傷者を出した毒性物質放出事故のような大事故は、誰もが原因分析や検証をすべきだというでしょう。身近な例では、棚から軽いものが落ちたと聞くと、大した事故ではないと感じます。しかし、紙の束が棚から落下して人の顔に当たったら、最悪の場合、何が起こるでしょうか? 作業者が失明した事故があったと聞いたら、何か対策が必要だと感じるのではないでしょうか。このように、分析すべき事故とそうでない事故を区別し、大きな事故が再発しないようにする必要があります。

3. 安全対策と人材教育

安全性を考慮して設計された設備で、安全な操業を行っていれば、事故は起こらないはずです。まずは工場やラインの設計の段階で安全対策を十分に組み込み、できる限り安全な設備を作ることが重要です。多くの化学工場では、設計する際に危険源を特定して、それが事故につながらないように対策を講じています。

また、どれだけ安全な設備を作っても、作業方法や工程に危険が潜んでいては意味がありません。安全教育により、安全に関する知識を工場で働く全ての人で共有することが不可欠です。安全教育には、これさえやっておけば大丈夫というものはありません。しかし、必ず押さえるべきポイントがあります。教育する側が、教育を受ける人たちを見下してはならないということです。人として等しく命が大切であることを前提に、「あなたがけがをしないために、こうしてください」というアプローチを取ることです。

また管理者は、まず安全のために必要な設備や装備を用意し、それに基づいた安全教育をしなければなりません。適切な保護具の用意が不十分なのに使用を義務化したり、階段に手すりがないのに手すりの使用を促しても、現場は混乱するだけです。

4. チェックリストのカスタマイズ

事故の未然防止策として、チェックリストの有効性はよく知られています。しかし、職場の状況に合っていないために、使いづらいものもあるようです。図3に、転倒防止のチェックリストを一例として載せました。これを参考に、自分の職場に適したチェックリストを同僚と一緒に作成してみてください。何度か試すうちに、良いアイデアが出てきて、より有効なチェックリストに仕上がることでしょう。職場の改善点も、見つかるかもしれません。

図3:転倒防止のチェックリスト案

図3:転倒防止のチェックリスト案

いかがでしたか? 初回となる今回は、統計データの解析を基に、対応を取るべき工場の事故原因を確認しました。次回は、エルゴノミクスの観点から、工場でできる具体的な安全対策を解説します。お楽しみに!

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