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反復的負荷障害とエルゴノミクス:工場安全対策の基礎知識2

工場安全対策の基礎知識

更新日:2018年3月1日(初回投稿)
著者:事故分析・コミュニケーション研究所 代表 兼 化学工学会SCE・Net 幹事 竹内 亮

前回は統計データの解析から、工場において発生頻度の高い事故と対策を確認しました。今回は、身体の一部に物理的な負荷が反復してかかることで起こる腱鞘炎、椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群などの疾病を、エルゴノミクスの観点から解説します。

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1. エルゴノミクスとは

エルゴノミクス(Ergonomics、人間工学)とは、あらゆるハードウェアやソフトウェアを、人間が快適に、より少ない疲労で使えるように、工学的アプローチから設計・デザイン・研究する学問です。イギリス生まれのエルゴノミクスは、出発点や内容が厳密には違うものの、アメリカで生まれたヒューマンファクター(Human Factors)、万人が使いやすいデザインを目指すユニバーサルデザイン(Universal Design)と相通じる考え方です。

1:労働環境におけるエルゴノミクス

労働現場における安全対策分野で、エルゴノミクスは、人間が無理のない自然な動きで効率的に作業できる環境を整えることに活用されています(図1)。これは、事故やミスを減らすことにつながります。人間が仕事に合わせるのではなく、人間(身体)に仕事を合わせるという発想です。現在はエルゴノミクスを活用したマンマシン・インターフェースを持つ設備や機械が設計され、身体にかかる負担軽減と同時に、安全性や作業効率を高められています。特に身体に負荷がかかり続ける作業、身体に無理な動きを強いる作業が改善され、反復的負荷障害の防止につながることが期待されています。マンマシン・インターフェースとは、人間と機械とのやりとりを媒介するキーボード、タッチパネルなどの入力装置のことです。広義では、そのプログラムや仕組みを指すこともあります。ヒューマン・インターフェースと呼ばれることもあります。

図1:正しい作業姿勢のイメージ(デスクワーク)

図1:正しい作業姿勢のイメージ(デスクワーク)

2000年前後の米国では、事業者に対し、反復的負荷障害についての情報を労働者に提供し、問題発生リスクの改善を義務付けるエルゴノミクス規制案をめぐって議論が起こりました。結果的に規制案は否決されましたが、反復的負荷障害を予防する観点からエルゴノミクスの考え方が産業界に広く浸透し、多くの企業が自主的な改善に取り組む契機となりました。業務に起因した疾病・傷病のうち、突発的な要因ではなく、負荷のかかる作業の反復によって発生した疾病を「エルゴノミクス的な疾病」、「エルゴノミクス関連の疾病」などと呼ぶケースもあります。2010年に米国で取られた統計によると、建設現場での休業災害の25%は、エルゴノミクスに関連する傷害だったそうです。

2:設備設計での注意点

人の身体の物理的な強さは、人それぞれです。背の高い人と低い人、体重の重い人と軽い人、筋力の強い人と弱い人、素早く動ける人と動けない人など、さまざまな人がいます。誰にとっても身体に無理のかからない設備を設計しようと、多くのメーカーが努力しています。年齢、性別、人種が異なれば、人の平均的なサイズも異なります。従って、その設備を使用する人の身体的な特徴と振れ幅を知ることが、エルゴノミクスを活用した設備設計の前提条件となります。

2. 反復的負荷障害の主な疾病

長時間、繰り返し体の一部に負荷がかかる作業が原因で引き起こされる反復的負荷障害は、多岐にわたります。今回は、症例の多い代表的な疾病を紹介し、対策法を紹介します。

多くの方が苦しんでいる症状が、腰痛でしょう。椎間板ヘルニアは、その中でも代表的な症例です。仕事で傷めることが多い手にも、腱鞘(けんしょう)炎、手根管(しゅこんかん)症候群、胸郭(きょうかく)出口症候群など、さまざまな疾病があります。また、大きな音による難聴も、エルゴノミクスで対策可能な疾病です。

1:胸郭出口症候群

胸郭出口症候群とは、長時間腕を上げるなど無理な姿勢を続けることで、腕や胸などにしびれや激しい痛みが起こる疾病です。胴体(首)から腕へとつながる神経や血管は、骨や筋肉の隙間を通っています。このうち、前斜角筋と中斜角筋の間、鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙、小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方の3カ所に、長時間の締め付けや圧迫が起こると、発症する可能性があります(図2)。しびれや痛みの他に、肩こり、血行不良、さらに悪化すると耳鳴り、ふらつき感などを起こす人もいるようです。女性に多いとされていますが、胸の筋肉を鍛えている男性の発症もしばしば見られます。最近では、アミューズメントパークで働いていた女性に労災が認められたニュースで話題になりました。

図2:胸郭出口症候群、圧迫により発症原因となりうる3カ所

図2:胸郭出口症候群、圧迫により発症原因となりうる3カ所

長時間腕を上げる作業として、天井の張り替えや照明器具の取り付けなどがあります。適切な休憩を取り、腕を上げずに作業できる器具の使用を検討しましょう。特になで肩の女性は胸郭出口症候群になりやすいので、管理者は作業方法や時間などに十分な配慮をすべきです。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

3. 反復的負荷障害を防ぐには

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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