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ろ過とは:ろ過の基礎知識1

ろ過の基礎知識

更新日:2019年2月8日(初回投稿)
著者:名古屋大学大学院 工学研究科 化学システム工学専攻 准教授 向井 康人

ろ過とは、液体や気体に固体が混ざっている混合物を、細かい穴がたくさん空いたろ材に通して、固体の粒子を液体や気体から分離する操作です。コーヒーのドリップや空気清浄機などは、ろ過の原理を利用しています。ろ過の技術は、食品・医薬品・バイオ分野の製造工程で利用されています。本連載では6回にわたり、主に液体のろ過を対象として、ろ過の基礎を解説します。初回となる今回は、ろ過の適用分野や種類や特徴について紹介します。

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1. ろ過とは?

ろ過は固液分離操作の一形態であり、液体中に懸濁している固体粒子をろ材によって捕捉して、液体から分離する操作です。子供の頃に理科の時間、ろ過の実験(図1)をした記憶はありませんか。ろ過は、人類が生み出した最も古い技術の一つです。技術が高度に進歩した現代でも、ろ過はさまざまな産業分野の基幹技術であり、重要な役割を担っています。

図1:ろ過の実験

図1:ろ過の実験

2. ろ過の適用分野

ろ過の特徴はシンプルかつ省エネルギーで、化学変化や熱的変化を伴わず、環境への2次汚染の影響が少ないことです。最近は高性能なろ材の開発により、より微細でより多様な物質がろ過の分離対象となっています。化学、食品、医薬品、バイオ、環境、繊維、紙・パルプ、鉄鋼、電池、ガラス、セラミックスなど、多岐にわたる産業分野でろ過技術は適用されています。

特に、環境(水処理)分野において、ろ過は高精度で、低コスト、大量処理が可能なため、欠かせません。水道水製造のための浄水処理では、主要な分離技術として厚い砂層による急速ろ過が使用されています。最近では、より高精度な分離のため、膜を利用した浄水処理や排水処理が盛んに行われています。その代表例は、膜分離活性汚泥法による排水処理です。従来の活性汚泥法は、主要な処理過程となる生物処理槽(曝気槽)の後に、汚泥の固液分離を行うための沈殿槽が設置されています。膜分離活性汚泥法は、生物処理槽の中に浸せき型膜モジュールが投入され、生物処理と同時に吸引ろ過による固液分離が行われます。分離精度が向上し、沈殿槽が不要で省スペース化にもつながっています。

ろ過には、分離される液体や固体の品質を変化させないという特長も持っています。ビールは酵母によるアルコール発酵を経て製造されます。最終製品中に酵母が残存していると発酵が進みすぎてしまうので、これを防ぐために、かつては加熱処理が行われていました。しかし、加熱処理を行うと多少の品質変化が避けられないので、現在はろ過で酵母を完全に除去する処理法が一般的です。生ビールとは、文字通り加熱処理を施していない生のビールであり、世の中のビールの大半が生ビールなのは、ろ過技術の進歩によるところが大きいといえます。

3. ろ過の種類と原理

ろ過は、さまざまな種類があります。効率的にろ過を行うため、方式や操作を正しく選択しましょう。

・ろ過方式の種類

基本的なろ過方式として、ろ過圧力を一定に保つ定圧ろ過と、ろ過速度を一定に保つ定速ろ過の2つがあります。工業的には、変圧変速ろ過、定速から定圧への切り換え、圧力の段階的上昇などのろ過方式が取り入れられる場合もあります。また、ろ過の駆動方式の違いにより、懸濁液の自重を推進力とする重力ろ過、供給液側を高圧にする加圧ろ過、ろ液側を低圧(真空)にする減圧ろ過(真空ろ過)、ろ過器の自転によって生じる遠心力を推進力とする遠心ろ過などに分類されます。加圧ろ過はコンプレッサで圧縮空気圧を作用させたり、ポンプで懸濁液を圧送させ、減圧ろ過は真空ポンプなどを利用します。

・ろ過操作の種類

ろ過操作は、分離機構の違いによって、ケークろ過(表面ろ過)と、清澄ろ過(内部ろ過)に大別されます。ケークろ過(表面ろ過)は、比較的濃い懸濁液をろ紙やろ布のような薄いろ材でろ過する場合に相当し、ろ過の進行とともにろ材の表面上にケークと呼ばれる粒子堆積層が形成されます。そのケークの表面が新たなろ材としての役割を果たします。

清澄ろ過(内部ろ過)は、希薄な懸濁液を砂層のような厚いろ材でろ過する場合を指し、粒子は広大な表面積を持つろ材の内部で捕捉され、深層ろ過とも呼ばれます。また、薄いろ材を用いる場合でも、懸濁液が希薄であれば粒子はろ材の細孔入口や細孔内部で捕捉され、その機構から閉そくろ過と呼ばれます。清澄ろ過の一つです。

4. ろ過装置の種類

ろ過装置を大きく分けると、ケークろ過器、ケークレスろ過器、清澄ろ過器の3種類に分類されます(図2)。

図2:ケークろ過器、ケークレスろ過器、清澄ろ過器

図2:ケークろ過器、ケークレスろ過器、清澄ろ過器

・ケークろ過器

ケークろ過器は、ろ液の流出方向(ろ材面に対して垂直方向)に懸濁液を供給するデッドエンドろ過方式の装置です。ろ過の進行とともにケーク層が成長します。加圧型の装置はバッチ式で操作されることが多く、所定量のケークが形成されたら、ろ過操作を終了してケーク排出が行われます。真空型の装置は連続式で操作されることが多く、ろ過操作を継続しながらケーク層をスクレーパーで削り取るなどの操作が行われます。よく知られる装置として、圧ろ器(フィルタプレス)、葉状ろ過器(リーフフィルタ)、円筒型真空ろ過器(ドラムフィルタ)などが挙げられます。

・ケークレスろ過器

ケークレスろ過器は、ケーク層の堆積を防ぎ、連続使用が可能な装置です。高効率的なろ過操作を行うには、流体力学的な撹乱作用によりケーク層を強制的に排除することができるケークレスろ過(ダイナミックろ過)が有効です。最も一般的なケークレスろ過器は、ろ材面に対して平行に懸濁液を供給してケークを排除するクロスフローろ過器です。その他、回転円板型ろ過器、回転円筒型ろ過器、振動型ろ過器など、さまざまなタイプのダイナミックろ過器が考案されています。

・清澄ろ過器

清澄ろ過器は、砂などの粒状物質を所定の厚さに充填した粒状層に処理対象液を流入させ、層内部の隙間で不純物を捕捉し、層出口から清澄液を回収する装置です。液体の清澄化を目的とした装置であり、古くから飲用水の製造などに利用されてきました。その構造から、砂ろ過器、深層ろ過器とも呼ばれ、緩速ろ過器と急速ろ過器に大別されます。

5. ろ材の種類と特徴

ろ材は、ろ過の際に用いる固液分離用の多孔性の材料です。ろ材の種類には、ろ紙、ろ布、膜などがあります。

・ろ紙

ろ紙は、化学実験や一般家庭で使用されることが多いろ材です。一般的には高分子(セルロース)製であり、ガラス繊維ろ紙のように無機材料でできているものもあります。

・ろ布

ろ布は、織布と不織布のものがあります。織布は繊維を規則的に織り込んだろ材であり、その織り方は平織、綾織、朱子織の3種が基本です(図3)。

図3:ろ布(織布)の織り方

図3:ろ布(織布)の織り方

平織は、最も緻密な織り方なので粒子捕捉性に優れ、耐久性も高く、その反面目詰まりを起こしやすくなります。朱子織は目詰まりが起きにくくケークの剥離性にも優れています。一方、空隙が大きいため粒子捕捉性が悪く、耐久性も低いです。綾織は、良い点も悪い点も平織と朱子織の中間的な性質を持ち、最もよく用いられています。不織布は、繊維を不規則に絡み合わせて接着させ、シート状に成形したろ材です。

・膜

膜は、ろ紙やろ布では分離できない1µm以下の物質を分離できる極めて高性能なろ材です。膜は分離精度の違いから、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜に分類され、この順に分離精度は高くなります。膜の多くは高分子製です。セラミックスやガラス、ステンレスなど無機材料を焼結してできているものもあります。

・その他

金属製のろ材として、金網ろ材や焼結金属ろ材が知られています。清澄ろ過に用いる粒状層やプリコートろ過に用いる珪藻(けいそう)土プリコート層も、ろ材の一つです。

6. ろ過モデルの基礎

ろ過では、分離される液体が、ケーク層やろ材の間を縫うように通過します。図4のようなろ過モデルを考えてみましょう。

図4:ろ過モデル

図4:ろ過モデル

流れの速さ(流速)は、流そうとする圧力(推進力)に比例し、流れを妨げようとする力(抵抗)に反比例します。すなわち、流速=推進力/抵抗で求められます。電気学におけるオームの法則(電流=電圧/抵抗)が、まさにこれに当てはまります。ろ過におけるろ液の流れについても、ろ過速度=ろ過圧力/ろ過抵抗が成立します。ろ過速度、ろ過圧力、ろ過抵抗の3つについて説明します。

1:ろ過速度

ろ過速度q(m/s)は、単位ろ過面積当たりのろ液量v(m)(=ろ液量V(m3)÷ろ過面積A(m2))を時間t(s)で微分したものと定義されます。

ろ過速度q

2:ろ過圧力

ろ過の推進力となる圧力Δp(Pa)は、供給液側の圧力p1とろ液側の圧力p2との差圧(ゲージ圧)p1-p2で与えられます。加圧ろ過ではp2が、減圧ろ過ではp1が大気圧になります。

3:ろ過抵抗

液体が、供給液側からろ液側に流れるとき、液体の粘性による抵抗と固体の物理的な障害による抵抗がそれぞれ生じます。これらを考慮して、ろ過抵抗全体は粘性の指標となる粘度μ(Pa・s)と物理的な抵抗R(1/m)との積で表されます。さらに、物理的な抵抗は、ろ材そのものの抵抗Rm(1/m)、ろ材の閉そくによる抵抗Rb(1/m)、ケーク層の増加による抵抗Rc (1/m) に大別され、これらの和で表されます。

ろ過抵抗

ろ過速度q(m/s)の基本モデルが次式になります。

ろ過速度q(m/s)の基本モデル

効率的なろ過、すなわち低圧で高速のろ過操作を行うには、ろ過抵抗をいかに小さく抑えるかが開発のポイントになります。ろ過抵抗の低減を図るには、ろ材抵抗Rm、閉そく抵抗Rb、ケーク抵抗Rcのいずれが支配的かを特定することが重要です。浸せき型膜分離活性汚泥法を例に挙げると、膜自体の抵抗、溶存有機物による膜細孔の閉そく抵抗、懸濁物質による膜表面上のケーク抵抗の3者が同時に発生します。3者の大きさを個別に評価するために、次の3つの操作を行います。

操作1:ろ材に水を透過します。このときの透過速度をq0とすると、次式が成り立ちます。

透過速度q0

操作2:ろ過対象の懸濁液をろ過します。所定量ろ過したときのろ過速度をq1とすると、次式が成り立ちます。

ろ過速度q1

操作3:ろ材表面のケーク層を洗い流して、再度ろ材に水を透過します。このときの透過速度をq2とすると、次式が成り立ちます。

透過速度をq2

上記の3つの式を連立させると、次の3つの式が導かれます。これにより、Rm、Rb、Rcを個別に求めることができます。

Rm,Rb,Rc

Rmが支配的なら、ろ材自体の選定を見直す必要があり、Rbが支配的なら、ろ材の目詰まりを防ぐ方法を検討する必要があり、Rcが支配的なら、ケーク層の形成をコントロールする方法を検討する必要があると判断することができます。

いかがでしたか? 今回は、ろ過の適用分野や種類や特徴について解説しました。次回は、ろ過の基本モデルを深く掘り下げて、ろ過の過程を記述する具体的なモデルを説明します。お楽しみに!

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