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膜によるコロイドのろ過:ろ過の基礎知識4

ろ過の基礎知識

更新日:2019年4月9日(初回投稿)
著者:名古屋大学大学院 工学研究科 化学システム工学専攻 准教授 向井 康人

前回は、ケークろ過の解析と評価を説明しました。今回は、膜によるコロイドのろ過特性に及ぼす溶液環境の影響について、平均ろ過比抵抗と平均空隙率を踏まえ解説します。膜は、ろ紙やろ布では分離できない1µm以下の物質を分離する、極めて高性能なろ材です。1µm以下の物質はコロイドと呼ばれています。理論的には、第2回で説明したルースのケークろ過モデルや、ハーマンス-ブレディーの閉そくろ過モデルが適用できます。コロイドのような微細な物質は、pHやイオン強度などの溶液環境によって粒子表面のミクロな特性が変化します。結果として、ろ過特性というマクロな特性の溶液環境の影響を大きく受けます。

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1. 膜の種類と分離性能

膜の種類は、分離する物質によりさまざまな使い分けができます。膜分離法は分離精度の違いから、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透に分類され、この順に分離精度は高くなります(図1)。これまでに説明してきたケークろ過の考え方が適用できるのは、精密ろ過と限外ろ過です。精密ろ過の分離対象は主に粒子(特に粒子径0.01~1µmの微粒子)であり、従来のろ過の延長線上に位置づけられます。一方、限外ろ過の分離対象は主に分子(特に分子量1,000~500,000の高分子)であり、イオンを分離する逆浸透の延長線上にあります。実際には従来のケークろ過の考え方がおおむね適用可能とされています。

図1:膜分離の分類と分離対象

図1:膜分離の分類と分離対象

膜の性能を示す最も基本的な物性値は、細孔径、すなわち膜が持つふるいの目の大きさです。それを正確に評価することが実用上極めて重要です。細孔構造が単純であれば、顕微鏡画像から直接計測できます。実際には、膜の細孔は複雑な形状および立体構造を持つため、実用的には微粒子(高分子)透過法、バブルポイント法、水銀圧入法、純水透過法などの細孔径の決定方法が用いられます。

1:微粒子(高分子)透過法

精密ろ過膜に対しては、粒子径が既知のさまざまな微粒子を透過させ、粒子径と阻止率の関係から細孔径を特定することができます。一般に、阻止率が90%になる粒子径を精密ろ過膜の細孔径と定義します。シュードモナス菌やセラチア菌などの細菌がよく用いられます。一方、限外ろ過膜に対しては、タンパク質、ポリエチレングリコール、デキストランなど、分子量が既知のさまざまな高分子が用いられます。限外ろ過膜の分離性能は、一般に細孔径ではなく分画分子量で評価され、分子量と阻止率の関係から阻止率90%の分子量を求め、これを分画分子量と定義します。

2:バブルポイント法(参照:JIS K 3832精密ろ過膜エレメント及びモジュールのバブルポイント試験方法)

膜の細孔内を水やアルコールのような膜をよく濡らす液体で満たし、膜の片側に空気圧を加えて徐々に昇圧していきます。ある圧力pのときに細孔内の液体が押し出され、もう一方の側で気泡の発生が観察されます。このときの圧力pをバブルポイント圧と呼び、細孔径dに変換することができます。

3:水銀圧入法(参照:JIS R 1655ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法)

測定容器内に膜を入れて真空排気した後、水銀を満たして徐々に圧力を上昇していきます。水銀は初め大きな細孔内に浸入し、より小さな細孔へと順に押し込まれていきます。圧力pは細孔径dに置き換えることができます。さらに、浸入した水銀の容積を圧力pに対して順次検出していくと、細孔の大きさごとにその容積も求めることができます。その結果、細孔径のみならず細孔径分布も測定できます。この原理を利用した装置は、水銀ポロシメータと呼ばれます。

4:純水透過法(参照:JIS R 1671ファインセラミックス多孔体の水透過率及び水力等価直径試験方法)

膜に圧力pで純水を透過させて透過速度qを測定すれば、pとqの値から細孔径dが算出できます。純水を透過させる比較的簡単な操作で、評価データを得ることができる有用な方法です。

2. コロイドの電気二重層とゼータ電位

コロイド粒子は、一般に正か負の電荷を帯びており、粒子間の静電反発によって液中で分散状態を保っています。コロイド粒子を取り巻く溶液は電気的に中性です。そのため粒子表面の電荷を打ち消すように反対符号のイオン(対イオン)が粒子表面に引きつけられます。このとき、粒子表面の電荷に強く引きつけられた対イオンが、粒子の周囲に固定されて固定層を形成します。さらにその外側に自由に動ける対イオンが、その反対符号のイオン(副イオン)とともに広がって拡散層を形成します。粒子を取り囲むこれら2つの層を電気二重層と呼びます。電気二重層内には電位分布が存在し、粒子同士の電気二重層が重なることにより静電反発力が発生します。よって、電気二重層が厚くなるほど粒子間の静電反発力は大きくなります。

電気二重層に電場を印加すると、コロイド粒子は表面電荷と反対符号の電極に向かって移動します。この現象を電気泳動と呼びます。このとき、固定層の影響で粒子と強く結びついた水分子も粒子と同伴して泳動し、その外側の液体と相対運動を生じます。この境界面のことをすべり面と呼び、この面での電位をゼータ電位と呼びます。電気泳動速度の測定データから算出される電位の値はゼータ電位です。粒子同士の相互作用を論じるときには、ゼータ電位が表面電位の代わりによく用いられます。ゼータ電位の絶対値が大きくなるほど粒子間の静電反発力は大きくなります。

図2は、電気泳動速度の測定データから求めたルチル型二酸化チタン(TiO2)微粒子と、タンパク質の一種である牛血清アルブミン(BSA)分子のゼータ電位を、pHに対してプロットしたグラフです。ゼータ電位はpHの影響を大きく受けます。ゼータ電位はpHの増加とともに右下がりの曲線を描きます。コロイドには、広範なpHに対して常に正の範囲で変化するものや、常に負の範囲で変化するものがあります。また、このグラフのように、正電荷から負電荷へとシフトするものもあります。後者の場合、正味の電荷がゼロとなるpHが存在し、そのpHを等電点と呼びます。

図2:ゼータ電位のpHによる変化

図2:ゼータ電位のpHによる変化

TiO2の等電点はpH8.1、BSAの等電点はpH5.1です。このpHより酸性側で正、アルカリ性側で負の電荷を持つことが分かります。等電点から離れたpHに調整すると、TiO2粒子間あるいはBSA分子間には静電反発作用が働きます。pHを等電点に調整すると、静電反発作用がなくなります。TiO2粒子を疎水コロイドの代表例として第4章、BSA分子を親水コロイドの代表例として第5章の解説に用います。

3. コロイドの分散と凝集

コロイドには分散と凝集の2つの状態があります。コロイドの分散と凝集のメカニズムは、DLVO理論によって説明することができます。DLVO理論によると、粒子間には静電反発ポテンシャルVA(正の値)とロンドン-ファンデルワールス引力ポテンシャルVA(負の値)がそれぞれ作用します。コロイドが分散状態にあるか凝集状態にあるかはこれらの和、すなわち全相互作用ポテンシャルVT=VR+VAによって判定することができます。ここでは、VRやVAの具体的な理論式の記述は省きます。VRは電気二重層が厚くなるほど、あるいはゼータ電位が大きくなるほど増大する値であり、VAはこれらの影響を受けない値です。また、VRとVAは、いずれも粒子間距離hの関数形で表されます。よって、VTもhの関数であり、VTをhに対して描いた線図をポテンシャル曲線と呼びます。

図3は、ポテンシャル曲線の例です。VRが支配的となるとき、正のエリアにはポテンシャル曲線の山ができます。この山が粒子同士が接近するのを妨げる障壁となって、コロイドは分散状態を保ちます。一方、VRが小さくなってVAが支配的になると、ポテンシャル曲線は常に負の値となって障壁がなくなり、コロイドは容易に凝集します。また、分散系と凝集系の変遷の間には凝集臨界点が存在します。

図3:ポテンシャル曲線

図3:ポテンシャル曲線
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4. 疎水コロイドの膜ろ過特性

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5. 親水コロイドの膜ろ過特性

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