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流体とは:流体力学の基礎知識(内部流れ編)1

流体力学の基礎知識(内部流れ編)

更新日:2019年2月15日(初回投稿)
著者:防衛大学校 システム工学群 機械システム工学科 教授 西海 孝夫

流体は、定まった形を持たず、形状を自由に変化させて流れを生む物質で、気体と液体が相当します。機械には少なからず流体が介在し、流体の特性が機械の性能に影響を及ぼしたり、不可解な流動現象を引き起こすことがあります。流体力学に関する知識の必要性を実感している設計者も、多いのではないでしょうか。本稿では、流体の性質に始まり、機器内部で生じる流体の漏れ、流れの絞り、静圧軸受、流体力、また、水や油に代表される液体の内部流れなど、流体力学の基礎知識を解説します。

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1. 流体とは?流れとは?

物質の状態は、固体・液体・気体の3相に分類されます(図1)。固体は、分子が規則正しく並び、互いに強い分子間力で結びついた状態です。そのため、決まった形状と体積を持つのが特徴です。一方、液体と気体の分子間力は固体より弱く、各分子は自由に位置を変えることができます。気体は圧縮されやすく、形状や体積を容易に変え、密閉した容器の中で充満します。これに対し、液体は圧縮されにくく、容器形状にならい変形します。

図1:物質の状態

図1:物質の状態

・流体

流体は、定まった形を持たず、形状を自由に変化させて流れを生む物質で、気体と液体が相当します。流体の重要な性質は、圧縮性と粘性です。圧縮性は、圧力を受けることで、体積や密度が変化する性質です。一般的に、気体は圧縮性流体、液体は非圧縮性流体として取り扱われます。粘性は、物質の運動に伴い変形し、抵抗を生じる性質です。流体の粘さの度合いを表します。粘性が支配的な流体を粘性流体、粘性がないと仮定した流体を非粘性流体といいます。また、粘性も圧縮性もない仮想の流体を、理想流体といいます。理想流体は、数式での取り扱いが容易です。

流体の流れや熱移動などをコンピュータで計算し、解析することを流体解析といいます。本稿では、流体解析の詳細は割愛します。しかし、流体解析を行う際は、本稿で取り上げる内部流れの現象などを理解することが不可欠です。

・流れ

流れは、内部流れと外部流れに分類できます。内部流れは、境界壁で囲まれている流れです。管路やダクト内の流れ、ターボ機械や油空圧機器など流体機械内の流れなど、多岐にわたります。一方、外部流れは、流体が境界壁で覆われていない流れです。特に、車両や船舶、航空機などにおける、円柱、球、翼などの物体周りの流れを指します。

全ての流れの状態は、厳密には3次元流れです。自動車、航空機、船舶、建造物の周りの流れや、回転するボールの動きを十分に調べるには、3次元流れとして扱う必要があります。しかし、コンピュータの計算能力が向上したとはいえ、数値計算は複雑で、実験的にも3次元流れの挙動を計測することは困難です。そこで、翼幅が一様で長い翼や、煙突のような円柱物体は、両側の端部付近を除き、2次元流れに近似して考えます。

これに対して、1つの座標のみによって定められる流れの状態を、1次元流れといいます。水道パイプや排気ダクトの実際の流れを考えると、管の壁面近くでは流体の粘性によって流速は遅く、管の中央部になるにつれて壁面摩擦の影響が減り、流速が増します。しかしながら、図2に示すように、s軸方向に沿って管路の断面や方向が穏やかに変わる流速は、巨視的に管路断面にわたって平均流速vであると考えることができます。この場合、流速vは、位置座標sと時間tのみの関数として、すなわち、準1次元流れとして取り扱います。この流れは、理論的な扱いが簡単なので、実用上の設計計算などに幅広く用いられています。準1次元流れでは、流速vを断面平均流速として取り扱うだけではなく、圧力pや、密度ρも、断面にわたって平均値と見なすことができます。

図2:準1次元流れ

図2:準1次元流れ

流れは、空間的な分類だけではなく、時間的に分類することも可能です。時間とともに状態が変化する流れを非定常流れといい、変化しない流れを定常流れといいます。流れの状態を知るために、流線と流管の定義を用いて考えてみましょう(図3)。流線とは、定められた時刻において、それぞれの点での流体粒子の持つ速度ベクトルが接する曲線です。また、流れ場に任意の閉曲線を考え、この閉曲線を通る無数の流線で囲まれた管を流管と呼びます。任意の瞬間を捉えた場合、流線は互いに交わることはないため、流管に流れ込んだ流体は、あたかも閉曲線で囲われた面を管路壁面のように通り、流管内の流体粒子は、流線に沿って流出します。

図3:流線と流管

図3:流線と流管

2. 流体を表す物理量

流体を表す物理量として、密度と比重、粘性、圧縮性を解説します。

・密度と比重

流体の単位体積当たりの質量を、密度ρ(kg/m3)といい、質量をm、体積をVとすると、次式で表すことができます。図4は、質量と体積のイメージです。

密度ρ

図4:質量と体積のイメージ

図4:質量と体積のイメージ

流体の密度は、その圧力や温度によって変化します。ただし、液体は気体に比べて変化を受けにくく、高圧下や特別な状況を除き、密度は一定であると考えることができます(ρ=const.)。水の密度は、標準大気圧1atm(101.3kPa)、4℃において、ρw=1000kg/m3です。比重とは、この状態での水の密度ρwに対する物質の密度ρの比をいい、以下の式で定義されます。

比重s

比重sは、ガソリン・潤滑油・油圧作動油など油類では0.73~0.9、アルコールでは0.79、海水では1.02、水銀では13.6です。

・粘性

流体に力を作用させると変形し、抵抗を示します。この性質を粘性といいます。隙間hだけ離れ、平行して対面する面積Aの壁の間には、流体が満たされている場合を考えてみましょう(図5)。

図5:クエット流れ

図5:クエット流れ

このとき、下の面を固定し、上の面に力Ftを右方向へかけると、上の面は速度Uで移動します。両面に接する流体要素は、壁面に付着して滑りがないと仮定すると、力Ftは、面積Aと速度Uが大きく、隙間hが小さいほど大きくなると考えられ、次の関係式が成り立ちます。

ここで、μ(Pa・s)は粘度で、比例定数です。よって、せん断応力τは、以下の式で表されます。このような流れをクエット流れと呼びます。

せん断応力τ

また、壁面間の流れが層状をなして流れる状態(層流)の場合、壁の隙間の流速uは直線的に変化します。この変化割合u/y=U/hを、速度勾配du/dyで表せば、図5のように、速度勾配が直線的でないとき、流体中の仮想面に働くせん断応力τは、以下の式で表すことができ、この式をニュートンの粘性法則と呼びます。

速度勾配が直線的でないとき、流体中の仮想面に働くせん断応力τ

図6は、壁面付近の速度分布です。速度が遅い壁面近くの領域を、境界層といいます。

図6:壁面付近の速度分布

図6:壁面付近の速度分布

これに対して、両者の比例関係が成立しない流体を非ニュートン流体といいます。図7は、ビンガム流体、ダイラタント流体、擬塑性流体について、速度勾配du/dyに対するせん断応力τの特性を示したものです。

図7:速度勾配に対するせん断応力の関係

図7:速度勾配に対するせん断応力の関係

流体が流れている状態で粘性の影響を考えるときには、次式のように、粘度μを密度ρで除した動粘度ν(m2/s)で表現することが有効です。

粘度μを密度ρで除した動粘度ν

・圧縮性

一般に、液体は非圧縮性流体として取り扱われます。ただし、液体の圧力が高く、圧力変化が急激で無視できない状態では、圧縮性を考慮しなければなりません。流体の圧縮性を表す物理量に、体積弾性係数があります。ピストンが取り付けられた密閉の剛体容器を考えてみましょう(図8)。

図8:剛体容器内の体積と圧力の変化

図8:剛体容器内の体積と圧力の変化

ピストンに力Fを与え、剛体容器の中で体積Vの液体をΔVだけ減少させると、Δpだけ圧力が増加して、容器内の圧力がpからp+Δpになります。このとき、体積弾性係数K(Pa)は、次の関係式で与えられます。

体積弾性係数K(Pa)

この体積弾性係数Kは、気泡を完全に除去した状態です。しかし、実際には、容器内の液体に気泡(空気)が混入しています。容器内の液体を大気圧poから圧力pまで上昇させるとき、気泡の混入を考慮した液体の有効体積弾性係数Keは、以下の式で表されます。

気泡の混入を考慮した液体の有効体積弾性係数Ke

ここに、εvは、大気圧下での空気の体積Voと、液体の体積Vfの比で、εv=Vo/Vfが成り立ちます。Kは気泡混入のない状態での、液体の体積弾性係数です。また、nはポリトロープ指数であり、空気の状態変化はポリトロープ変化であると仮定しています。図9は、圧力変化が急激な場合を断熱変化(n=1.4)と考え、体積弾性係数K(Pa)の式を用いて、有効体積弾性係数Keを正規化して算出した結果です。

図9:気泡を考慮した体積弾性係数

図9:気泡を考慮した体積弾性係数

液中を圧力変化が波として伝播する速度、すなわち音速aは、液体の体積弾性係数Kと密度ρで決まり、以下の式となります。

液中を圧力変化が波として伝播する速度

このとき、直径がd、管壁厚さがδの薄肉管路の弾性変形があると見なせば、その音速aoは、以下の式で与えられます。Eは管材料の縦弾性係数であり、鉄鋼の場合、E≒206GPaです。

直径がd、管壁厚さがδの薄肉管路の弾性変形があると見なすao

今回は、流体と流れの概論と、流体の基礎式について解説しました。次回は、流れを表す公式を取り上げます。

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