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食品への異物混入対策の基礎知識

食品への異物混入対策の基礎知識

著者:株式会社フーズデザイン 代表取締役 加藤 光夫

近年、報道により食品への異物混入が取り上げられることが増え、消費者もより敏感になりつつあります。異物混入が発覚した場合、大手の食品メーカーは、問題の拡大防止や企業イメージの悪化を恐れ、自主回収に動くケースも多くなりました。食品業界での異物混入対策は、喫緊の課題といえるでしょう。

しかし、現実的には、食品工場で発生する製品への異物混入を完全に無くすことは不可能です。いくつかのメーカーは、目標値を1ppm(100万分の1)以下、つまり100万個に1個以下に抑えるとしています。1日あたり、数十万個以上の製品を製造する工場は全国各地にあり、実際はより小さい数値を目標にしたいところです。

そのために、食品メーカーは、何をしたらいいのでしょうか? まず、異物には、物理的なものだけではなく、細菌、ウイルス、カビ、化学物質も含まれます。すべてに、そして同時に、対策を打つ必要があります。簡単に思いつくのは、「何をしてはならない」「この手順でなければならない」といったルールの強化です。しかし、ルールは多ければ多いほど、すべてを徹底しづらくなるというジレンマに陥ります。

そこで、本連載では、食品への異物混入対策を継続・強化するための仕組みと、即効性のある具体的な対策を、各回2項目ずつ、合計10項目を解説します。

第1回:なぜ、異物混入が注目されるのか?まず、何をすべきか?

1. 「プロダクトゾーン」に注目

プロダクトゾーンとは、米国パン協会(AIB:American Institute of Baking)の異物混入対策ガイドラインの中で使われている用語で、「食材食品がむき出しになっている場所」のことです。食材食品がむき出しになっているところで、その上や周囲に異物があれば、食品に入る可能性があります。よって、その場所を特定して、危険なところを無くす、清掃洗浄するという対策を取ります。

プロダクトゾーンは、工場内にそれほど多くはありません。面積にして、工場の2割程度です。つまり、このたった2割の場所を見つけ、集中的に対策を打てば、実に高い効果が得られるのです。

それでは、プロダクトゾーンを正確に特定するには、どうしたいらいいのでしょうか? 工場の製造工程の把握と図面が必要です。漬物工場の例で、説明します。

この漬物工場の製造工程は、原材料受け入れ→冷蔵庫保管→野菜の整形→洗浄→漬け込み→冷蔵→手洗浄→計量包装→仕分け検品(金属探知機)→冷蔵庫保管→出荷となります。この動線を工場の図面上に書き込み、プロダクトゾーンを特定します。現場に入り、抜けているところがないかも確認します。

図1:漬物工場の図面上で、プロダクトゾーンを特定する

図1:漬物工場の図面上で、プロダクトゾーンを特定する

この製造工程の中で、食材食品がむき出しになっているところは、野菜を箱やコンテナから出した後、野菜の整形→洗浄→漬け込み→冷蔵→手洗浄→計量包装のところ(図1に写真で示した場所)です。パウチパックやトレイパックの包装が終われば、その中に異物が入る工程はありません。ざっと見ても、プロダクトゾーンは工場全体の2割にも満たないことが分かります。

皆さんの工場のプロダクトゾーンは、どこでしょうか? ぜひ、一度考えてみてください。

2. パレートの法則で、さらに問題箇所を絞り込む

数多くの食品工場を分析すると、問題の8割は工場の2割の場所で起きている傾向があります。有名なパレートの法則(8:2)が、食品工場の異物混入にも当てはまるのです。そして、この問題が発生する2割の場所は、プロダクトゾーンにあります。問題が起きる可能性の高いプロダクトゾーンを特定していれば、これでさらに問題箇所を絞り込むことができるのです。

図2:漬物工場の異物混入元分析

図2:漬物工場の異物混入元分析

事例の漬物工場の場合、過去の異物混入の工場内発見と顧客クレームの記録を分析したところ、漬け込み工程の異物混入が8割以上を占めていました。

漬け込みの工程では、作業者が上半身を大きな「たる」の中に入れながら、底から上に野菜を並べ塩をかけて、また野菜を積み重ねていきます。まず、作業者の毛髪、作業衣に付着したごみ、また作業者の腹の部分が「たる」の縁に常に当たってこすれるので、縁のささくれが、「たる」の中に入ります。

その後、冷蔵庫内で「たる」を積み重ねて寝かす工程で、上の「たる」から下の「たる」へ、くずやごみが落下していました。さらに、冷蔵庫の空調が古く、吹き出し口からゴミが飛び出して、「たる」の中に落下していたのです。作業場所や冷蔵庫の中が暗いため、異物を発見しにくいということも分かりました。

そこで、まずは、この工程の作業者に「ここは異物が最も入る場所」ということを伝え、認識してもらいました。次に、具体的な5つの対策をとりました。

  • 帽子を頭巾型の毛髪落下防止を強化したものへ、作業衣も最新式のものへ変更した
  • ささくれや傷がある「たる」の修理をした
  • 冷蔵庫の空調の吹き出し口にフィルターを付け、ゴミの飛び出しを防ぐ
  • 「たる」を重ねるとき、「たる」の上にシートをかけてカバーし、異物が入らないようにした
  • 暗い場所の照明を、検査面で500ルクス以上の明るさにし、異物を発見しやすくした

この集中対策により、わずか2ヵ月ほどで異物混入問題が激減し、高い効果がありました。皆さんの工場で、問題が発生する2割の場所はどこでしょうか?

 

第2回:思わぬ物が思わぬところへ&レイアウトのコツ

第1回では、食品がむき出しになっている製造工程「プロダクトゾーン」に注目し、異物が混入しやすい場所の絞り込みと、対策について解説しました。今回は、危険物の除去と、工場内を清潔に保つ工夫について、ご紹介します。

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1. 思わぬところに潜む、異物混入源

工場で日常的に使っている作業用品が、思いもよらない方法で食品に混入し「異物」となることがあります。

ある工場では、食品に「糸くず」が混入していたという事例がありました。調べてみると、混入していた糸くずは作業用エプロンの「ひも」の一部だったことが分かりました。家庭でエプロンを使うとき、エプロンのひもを気にすることはほとんどありません。

しかし、工場では高い頻度で長時間使用されるため、ひもは次第にほつれて、落下し、食品に入ってしまったのです。この工場では、対策として、ほつれないビニール製のひものエプロンに変更しました。

また、ボールペンをポケットに差すフックが欠けて、弁当製品に混入した事例もありました。胸のポケットからボールペンを抜いたときに、力がかかってプラスチックのフックが折れ、食材に落下したと考えられます。最新の食品工場向け作業衣には、腰から上の位置にポケットはありません。これは、ISO22002(食品安全マネジメントシステム)の要求事項です。ポケットそのものを無くすことで、異物混入の可能性を断つことができます。

プラスチックなどの素材は、割れると遠くまで破片が飛ぶことがあります。例えば、床に落ちたボールペンの上をキャスターが通ると、破片が飛び散り、食材に混入することも考えられます。ボールペンを、欠けにくいポリプロピレン製に変更する、または落ちないように首からひもで吊るすなどの対策が有効です。

また、食材をフードカッターに押し込む装置のプラスチック板が割れる事故が、発生したことがありました。プラスチックの破片がフードカッター内に入り込んでしまい、カッター内の食材をすべて廃棄しました。

ところが、破片は、なんと数メートル離れたコンテナまで飛んでいたのです。コンテナには、カバーがされていなかったため、破片は中の食材に混入しました。そして、そのまま次の工程の工場に納入され、使用される前に、食材の上にある破片が発見されました。

この事例では、「発見できてよかった」と、破片を取り除いただけで、食材を使用してしまいました。実際は、食材に埋もれて残っていた破片があり、製品となり、消費者の手に届いてしまいました。このようにプラスチックの破片は、飛び散りやすく、一度混入すると取り除くことが困難なため、破損のあった周辺だけではなく、広範囲の確認と対策が必要です。

これまで見てきたように、ひもなどの繊維やプラスチックは、磨耗や破損により思いがけなく「異物」となります。皆さんの工場内に危険なものがないか、点検してみてください。

異物となった、ひもやボールペン・混入防止グッズ

図1:異物となった、ひもやボールペン・混入防止グッズ

2. 汚れにくく、清掃しやすい、レイアウト

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第3回:清掃洗浄のキホン

前回は、糸くずやプラスチック片などの危険物除去と、工場を清潔に保つレイアウトのコツについて解説しました。今回は清掃洗浄に焦点を絞り、効果的な手順と頻度、そして泡洗浄について解説します。

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1. 清掃洗浄の手順と頻度を検証する

ある生鮮のパック工場では、製品の細菌検査を継続的に行ってきました。そして、一部の製品群で極めて不合格に近いレベルの細菌数が検出されたことがありました。ギリギリ合格でした。そして、これらの製品の加工には、共通してマルチスライサーが使用されていることが分かりました。

このマルチスライサーは、数十枚もの丸刃が並んで取り付けられています。刃と刃の間隔はわずか数mmで、それぞれの刃が通る溝があります。調べてみると、この溝に細菌汚染の原因がありました。食材をスライスし続けると、溝に細菌がたまります。作業時間の経過に伴い、細菌は増え続け、食品が汚染されてしまったのです。

また、すべての丸刃を取り外す分解洗浄は、手間と時間がかかるため、あまり行われていませんでした。これ以上、細菌汚染を悪化させないために、早急な対策が必要でした。

対策はシンプルです。マルチスライサーが、常に清潔に保たれていればいいのです。まず、洗浄作業を「通常の洗浄」と「分解洗浄」の2 段階に分けました。通常の洗浄では、加工部のブロックのみを取り外し、丸刃はセットしたまま洗浄します。このとき、どのような洗浄方法が効果的か検証を行いました。一方、分解洗浄では、すべての丸刃を取り外します。この場合も、どのくらいの頻度で行うべきか、週1 回と月1 回で検証しました。

その結果、通常の洗浄では、高圧水洗浄、スチーム洗浄、泡(フォーム)洗浄の組み合わせが効果的と分かりました。高圧水で刃の隙間にたまったクズを落とした後、スチーム洗浄機で蒸気を吹き付け、最後に泡洗浄を行います。基本的に毎日実施します。加工作業が忙しく、洗浄時間が取れないときは、丸刃一式を洗浄済みのものに交換することにしました。

これにより、細菌検査の結果が飛躍的に改善しました。また、分解洗浄の頻度は月に1 回でよいことも分かりました。検証によって、洗浄の方法と手順と頻度が決まり、細菌汚染の心配は解消されました。

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図1:マルチスライサーの効果的な洗浄手順と頻度を決める

洗浄の頻度について、もう少し詳しく説明しましょう。食品工場では効率よく洗浄を行うため、洗浄の頻度を、毎日、または週・月・年に何回というように、設備や食材によって個々に定めています。

例えば、ある工場では、作業場の床と壁の腰位置から下は毎日洗浄します。壁の腰位置から天井までの高さは、月に1 回です。当然、洗浄頻度は条件によって異なります。イカを加工している工場では、イカの墨が壁の高いところまで飛ぶので、毎日洗浄が原則です。洗浄方法と手順・頻度を決め、チェックリストを作って漏れのないようにすることで、細菌を含めた異物混入は、大幅に防ぐことができます。

皆さんの工場で、清掃洗浄の方法、手順、頻度は決まっていますか?

2. 泡洗浄で、隅々まで清潔に

欧米の食品工場で、泡(フォーム)洗浄は常識です。小麦粉などの粉原料を使用するパン工場や麺工場では、全面的な泡洗浄はできませんが、それ以外の工場において、泡洗浄は、細菌を含めた異物混入対策に抜群の効果があります。

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第4回:ゾーニングと装置の活用

前回は、清掃洗浄の効果的な手順と頻度、そして泡洗浄について解説しました。今回は、工場の製造動線とゾーニング、そしてさまざまな検査機器と除去装置について解説します。

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1. 製造動線とゾーニング

工場の製造動線を短くシンプルにすることで、コストダウンと安全性を両立できます。作業者の移動距離や、製造時間を短縮できるだけでなく、食材がむき出しになる距離や時間も短くなり、異物混入の危険が減少します。

しかし、ただ短ければいいというわけではありません。原材料が入った段ボール箱を開け、すぐ横で下処理を始めたらどうでしょう。箱に付いたごみやほこり、虫などが食材に混入し、危険なのは明らかです。これを防ぐには、箱を開ける場所と下処理の作業場所の間に「仕切り」を設ける必要があります。仕切りがあれば、製造動線が短くても、下処理場所に汚染が侵入する危険は少なくなります。

交差汚染の防止です。これを工場全体で考えたとき、工場のどこに仕切りを設けるべきか、すなわち、「ゾーニング」の方法が問題になります。ゾーニングとは、作業場を「汚染ゾーン」「準清潔ゾーン」「清潔ゾーン」のように、その衛生レベルによって区分けすることです。

製造工程順に、ゾーニングの方法を確認してみましょう。まず、原材料は工場外から入ってきます。原材料が入った段ボール箱を保管する倉庫は、工場外と接しているので「汚染ゾーン」です。次に、倉庫内で原材料だけを取り出し、下処理室に移動させると安全です。下処理室は「準清潔ゾーン」です。下処理を終えると、食材を加工室に移動し、調理、冷却処理(加熱した場合)、パッケージまでを行います。

この工程は、最も高い衛生レベルが求められる「清潔ゾーン」です。この「清潔ゾーン」でインナーパックを含むあらゆる加工が完了するので、その後は新たにパッケージ内の食品に異物が混入することはありません。

加工を終えた食品は、金属探知機やX線検査機による検査工程を通過して、次のゾーニングに入ります。出荷側の「準清潔ゾーン」です。ここで外箱やコンテナに入り、出荷倉庫に運ばれます。最後に、プラットフォーム(トラックに荷詰めするスペース)を経由して、工場外へと出荷されます。出荷倉庫、およびプラットフォームは外と接しているため「汚染ゾーン」です。

食品の製造動線と、3段階のゾーニング

図1:食品の製造動線と、3段階のゾーニング

以上、3 段階のゾーニングを見てきました。ただし、ISO22000(食品安全マネジメントシステム)の要求や、アメリカ合衆国またはEU 諸国への食品輸出認証で、ゾーニングは2 段階とされています。3 段階の方が工場外からの汚染を高いレベルで防ぐことができるため、より安全です。

ISO22000の技術仕様書ISO22002 には、ゾーニングについて「物理的な隔離の例には壁、若しくは仕切り壁、柵またはリスクを最小にするための十分な距離を含む」と記載されています。ゾーニングの仕切りには、さまざまな種類があります。

隔壁やスライドドアは最も頑丈です。しかし、改修が必要な場合、多大な費用がかかります。スライドドアの代わりに、スイングドアを採用してもいいでしょう。肘やキャスターで押して簡単に開けられるだけでなく、ドアノブに触れることがないので、手のひらの汚染が拡散しません。 

ビニールカーテンは、さらに低コストで設置でき、移設も容易です。透明なので見通しがよく、お互いの作業を確認できるというメリットもあります。

また、同技術仕様書では、空気は「原材料区域から清浄区域に流れたりしないように」要求しています(陽圧構造)。また、建物全体を外気に対して陽圧にすることで、空気が内部から外に逃げるため、外部からの汚染の侵入を防ぐことができます。

さらに工場内でも、ゾーニングのレベルによって気圧が異なります。「清潔ゾーン」は最も高い気圧に調整され、「準清潔ゾーン」「汚染ゾーン」に向かうにつれ低くなります。これにより、「清潔ゾーン」の安全を保つことができるのです。

皆さんの工場では、製造動線の管理、ゾーニングは行われていますか?

ゾーニングのさまざまな仕切り

図2:ゾーニングのさまざまな仕切り

2. 検査機器、除去装置を活用する

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第5回:データによる見える化&人材育成

前回は、工場の製造動線とゾーニング、そしてさまざまな検査機器、除去装置について解説しました。今回は検査・測定データの見える化と人材育成について解説します。

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1. データの検証と傾向の監視(データベースセーフティー)

食品工場では、作業環境の衛生度や、食品の安全性をチェックするために多くの検査が行われています。この章では、拭き取り検査をはじめとした各種検査方法の紹介と、データの見える化による危険予測について解説します。

工場内を清潔に保つことで、異物混入の危険は減少します。作業環境の清潔度を検証するには、工場設備や調理器具に付いた細菌や微生物など、目に見えない汚染を検出できる「拭きとり検査」が効果的です。

ある工場では、拭き取り検査の一種である「ATP検査(すべての生物の細胞内に存在するATP(アデノシン3リン酸)を酵素などと組み合わせて発光させ、その発光量を測定する方法)」を定期的に行い、結果をグラフ化して傾向を監視しています。

検査を始めた当初は、工場内のあちこちで実施した検査の結果が悪く、一つ一つの洗浄手順などを検討し、改善に取り組みました。その結果、数か月後に数値は安全レベルに落ち着くようになりました。

そして、全体の平均値をグラフ化し、傾向の監視を始めました。しばらくの間、グラフは安全圏を動いていたものの、あるとき突然、危険域に入りました。このような場合、元データを見れば原因を解明できます。特定の製造機器の洗浄結果に問題があることが分かりました。

普段、洗浄を担当しているベテラン作業者が病欠したため、新人が代わりに洗浄していたのです。そこで、仕事のローテーションをバランスよく配置して、解決しました。後述する「力量制」を導入したのです。このように、全体と個別の検査データの傾向を監視することで、危険の検知と分析が可能になります。

次に、温度と湿度などの傾向監視を行う最新システムを紹介します。温度と湿度は、製造現場の安全性に関係します。高温多湿の環境では、カビや虫、バクテリアが増殖し、製品に混入する危険が高まるからです。温度に関しては、多くの工場で測定されているようです。

しかし、決められた時間に作業者が温度計を見て、紙にボールペンで記録し、傾向をグラフ化するには一層の手間がかかります。また、湿度を測定している工場は少数です。温度を自動監視し、コンピューターで傾向を見ることのできるシステムは以前からありましたが、高価なため導入が困難でした。

しかし最近、温度と湿度の両方を非常に小型のユニットで監視し、パソコンに無線送信するシステムが低価格で購入できるようになりました。このシステムでは、16台のユニットを同時に管理できます。これを束ねれば、監視する場所が増えても対応でき、全体の傾向を見ることができます。

加熱調理を行う工場では、加熱した食品の中心温度がCCP(重要管理点:Critical Control Point)となります。中心温度が75℃以上になると食中毒菌は死滅するため、安全を確保できます。これまでは、中心温度計を使い測定した値を手書きで記録していましたが、最近ではタブレットを使って測定値を入力・転送します。さらに最新の中心温度計は、測定後にボタンを押すだけで、データをパソコンにWi-Fi で送信できるものもあります。

<関連記事>3章で肉のおいしさと安全の調理について解説
新鮮なものは本当に安全?:食品を科学する・リスク分析連続講座2

また、最新の細菌検査ユニットでは、10分ごとに細菌数の測定・報告をできるものがあります。米国の同時多発テロ後、郵便を装った細菌テロを監視するために開発された技術を応用しています。このユニットを、製造現場の重要なチェックポイントに設置し、細菌数の傾向を監視することで、どの製品を作っている時に、誰が、何人で作業している時に細菌が増えるのか状況把握ができ、改善につなげることができます。

最後に紹介するのは「HACCP 会計(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析重要管理点による会計)」です。洗剤や殺菌剤、粘着ローラーのテープといった衛生管理資材の使用量を測定し、傾向を監視する方法です。欧米の工場では実施しているところが多いようですが、日本ではまだあまり知られていません。衛生管理に使う資材の使用量を監視することで、工場内の衛生管理が正しく行われているかを確認します。

衛生管理を適切に行っていれば、資材は従業員数や生産量に比例して増減するはずです。例えば、ある工場では毛髪混入対策として、3回使ってから剥がしていた粘着ローラーのテープを、1回で1枚使うように変更しました。これが定着すると毛髪の混入事例は減り、一方でテープの使用量が3倍になりました。

問題はその後です。しばらくすると、作業者数に変動がないにもかかわらず、テープの使用量が徐々に減少しました。これは、作業者が次第に粘着ローラーを使わなくなったことを示しています。そこで、作業者に、粘着ローラーの使用を徹底するよう再指導し、安全を確保しました。

この他にも、さまざまな検査・測定の傾向を監視する仕組みがあります。複数の仕組みを取り入れ、統合運用することを当社では「データベースセーフティー」と呼んでいます。皆さんの工場でもデータベースセーフティーの導入を検討してみませんか?

図1:データベースセーフティーの一例

図1:データベースセーフティーの一例

2. 作業者の衛生教育と力量制

最新の工場設備や、高性能な検査システムを導入しても、それらを管理・ 運用するのは「人」です。この章では、工場従事者に対する衛生教育と、 力量制に基づく評価方法を解説します。

続きは、PDF資料に掲載しています。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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