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鍛造加工の基礎知識

鍛造加工の基礎知識

著者:名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 機械工学分野 教授 北村 憲彦

鍛造(たんぞう)加工は、金属の塊を金型で強くたたいて、目的の形に成形する加工法です。強くたたく(鍛える)ことで、材料に粘り強さ(じん性)を与え、強度を高めることができます。本連載では6回にわたり、技術者に必要な鍛造加工の基礎を解説します。第1回では、鍛造加工の特徴と種類を紹介します。

第1回:鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?

1. 鍛造加工の特徴

鍛造加工は、日本でも古くから用いられてきた金属加工法です。高い強度が求められる刀や鉄砲などの武器や、鋤(すき)や鍬(くわ)などの農具が作られていました。現在では、発電用ローター主軸や航空機の部品といった大型のものから、自動車部品、工具や刃物など身近な製品の製造にも鍛造加工は適用されています。

鍛造加工の長所は、高い生産性と、材質の改良によって得られる高い強度にあります。鍛造加工の製品精度は、鋳造(ちゅうぞう)加工と切削加工の中間といわれています。ただし、近年では精密鍛造技術が進歩し、切削や研削などの後加工を行わなくても使用可能な精度が得られるようになりました。一方、鍛造加工の短所としては、大型の鍛圧機械や丈夫で精密な金型、大きく変形しても割れない延性に優れた材料など、高価な設備や材料を必要とすることが挙げられます。

2. 鍛造加工、鋳造加工、切削加工の違い

鍛造加工、鋳造加工、切削加工による除去加工の仕組みを、図1にまとめました。

図1:鍛造加工・鋳造加工・除去加工の仕組み

図1:鍛造加工・鋳造加工・除去加工の仕組み

鍛造加工は、鋳造(ちゅうぞう)加工と漢字が似ていて、間違えられることがあります。鋳造は、溶かした金属を型に流し込んで成形する加工法で、日本最古の貨幣といわれる和同開珎や、奈良の大仏も鋳造により作られました。鋳造は複雑な形状や、大きな製品の製造に向いています。しかし、生産性、精度、強度に関しては、鍛造の方が優れています。

鍛造や鋳造によって加工された製品は、多くの場合、後工程で加工精度を高めます。後工程として用いられる加工方法の一つに、切削加工があります。切削加工は、工具を使って部品を少しずつ削る加工法です。時間はかかるものの、超精密な製品を作ることができ、多品種少量生産に向いています。近年、切削加工に使われる工作機械は、加工速度が格段に向上し、ITを取り入れるなどシステム化が進められています。

3. 加工方法による鍛造の分類

鍛造加工は、材料をつぶしながら形を作る自由鍛造、金型の凹凸を材料に転写する型鍛造、材料を押し出して形を作る押出の3つに分類できます。

1:自由鍛造

自由鍛造は、一対の平らな工具を用いて材料をつぶして加工する、単純な鍛造法です。材料の高さを縮める据込み(図2)や、材料を引き伸ばす展伸などの種類があります(図3)。

図2:据込みの仕組み

図2:据込みの仕組み

図3:展伸の仕組み

図3:展伸の仕組み

2:型鍛造

型鍛造は、凹凸が彫刻された一対の金型で材料をたたき、金型の形状を材料に転写する鍛造法です。密閉鍛造、半密閉鍛造、閉そく鍛造などの種類があります。

・密閉鍛造
密閉鍛造では、材料を押し切ったとき、上型と下型を隙間なく閉じ、材料が密閉されます(図4)。そのため、鍛造荷重が増大し、金型にかかる負荷が大きくなる危険を伴います。

図4:密閉鍛造の仕組み

図4:密閉鍛造の仕組み

・半密閉鍛造
半密閉鍛造では、型の隙間から余った材料をはみ出させることで(バリの発生)、金型内に材料をしっかりと充満させることができます(図5)。

図5:半密閉鍛造の仕組み

図5:半密閉鍛造の仕組み

・閉そく鍛造
閉そく鍛造は、近年開発・実用化された革新的な鍛造法です(図6)。複雑な型と特別な操作を必要とするものの、材料の無駄と荷重を軽減できます。閉そく鍛造によって、高精度・高強度な自在継手部品(スパイダーなど)や、等速継手部品(トリポートなど)の量産が可能になりました。

図6:閉そく鍛造の仕組み

図6:閉そく鍛造の仕組み

3:押出

押出は、主に精密鍛造で使われる鍛造法です。前方押出(図7)、後方押出(図8)、前後方押出(図9)、側方押出などの種類があり、パンチの進行方向に対して材料がどの方向に押し出されるかによって分類されています。

図7:前方押出の仕組み

図7:前方押出の仕組み

図8:後方押出の仕組み

図8:後方押出の仕組み

図9:前後方押出の仕組み

図9:前後方押出の仕組み

押出では、材料の周囲はコンテナと呼ばれる型で拘束されています。材料の逃げ場が少ないため、通常圧縮する場合の2~5倍もの高い圧力を必要とします。そのため、高圧に耐えられる高強度な工具や、剛性の高い鍛圧機械を用いる必要があります。ブレーキのシリンダや等速継手用容器部品(アウターレース)の製造には、後方押出や前方押出などの鍛造加工が適しています。

4. 鍛造加工の分類

鍛造加工は、加工する金属の温度によって、半溶融鍛造・熱間鍛造・亜熱間鍛造・温間鍛造・冷間鍛造に分類できます(図10)。今回は、使用頻度の高い熱間鍛造・温間鍛造・冷間鍛造の3つを解説します。

図10:加工金属の温度による鍛造加工の分類

図10:加工金属の温度による鍛造加工の分類

1:熱間鍛造

熱間鍛造は、材料を再結晶温度以上に加熱し、軟化することで、変形能を高めた状態で圧力を加えて成型する鍛造法です。十分な圧縮量を与えて、内部の空孔欠陥をつぶし、粗い鋳造組織を細かくして、材質を改善します。

熱間鍛造は、大型製品や高強度材に適用されます。例えば、直径数メートルの巨大な発電用ローター主軸は、鋳造加工で鋳込んだ材料を熱間自由鍛造で鍛錬します。そうすると、材質が改善され、自重による遠心力でも破壊しない強い主軸に生まれ変わります。また、自動車部品に適用される熱間鍛造では、非調質鋼(焼入れ・焼戻し処理や球状化焼なまし処理などの熱処理が省略可能な特殊鋼)を使った制御鍛造が広く使われています。これにより、後工程の熱処理がなくても、細かい結晶粒の頑丈な製品に仕上げることができます。

熱間鍛造の材料には、圧延材が多く用いられます(超大型の製品を除く)。圧延材は、圧延によって結晶粒が長手方向に伸ばされ、緻密で強い繊維組織が形成されます。しかし、除去加工で切削すると、この繊維組織は分断されてしまいます。一方、鍛造では、繊維組織は分断されず、連続した鍛流線として残ります。そのため、鍛造品は、過酷な繰り返し負荷にも高い耐久性を示します。

2:温間鍛造

温間鍛造は、熱間鍛造と冷間鍛造の中間温度で行う鍛造法です。青熱ぜい性(加熱した炭素鋼が塑性変形し、強度が上昇し、延性が低下する現象)が発生する200~500℃を避け、600~900℃の温度域で行います。日本では1980年代に、自動車のFF化(フロントエンジン・フロントドライブ:車の前方にエンジンを搭載する方式)に伴い、精密で高強度な部品が必要となり、本格的な普及が始まりました。

温間鍛造は、熱間鍛造と同様、酸化スケールが発生せず、冷間鍛造よりも小さい荷重で鍛造できることから、高強度材の精密鍛造に適していると注目を集めました。しかし、加工温度域に適した潤滑剤や型材の開発が難航し、実用化には時間を要しました。

3:冷間鍛造

冷間鍛造は、常温で行う鍛造法です。熱間鍛造と比べて、材料の延性が低く、割れやすいため、鍛造前に材料を軟化する熱処理(焼なまし)を施す必要があります。

冷間鍛造の場合も、熱間鍛造と同様に鍛流線は残り、加工硬化による強化も期待できます。また、材料の表面に厚い酸化膜(酸化スケール)がないため、表面は滑らかに仕上がります。表面を顕微鏡で観察すると、表面粗さの山部がつぶれて滑らかになっていることが分かります。また、粗さの谷部はそのまま残り、鍛造品を使用する際の油だまりとして潤滑を助ける効果が得られます。

いかがでしたか? 今回は、鍛造加工の特徴と種類を解説しました。次回は、鍛造加工工程について取り上げます。お楽しみに!

 

第2回:鍛造加工の工程と欠陥

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前回は、鍛造加工の特徴と種類を紹介しました。今回は、鍛造の加工工程、鍛造で生じる欠陥の種類、欠陥を克服する新しい鍛造加工法について解説します。

1. 鍛造加工工程

鍛造加工工程は、加工法の選定、生産準備、鍛造工程、後工程の順番で進めていきます。それぞれを詳しく見ていきます。

・加工法の選定

製品を設計し、生産を行う際、どのような加工法を採用するか決める必要があります。製品に求められる強度や機能、目標とする生産量など、技術的かつ経済的な観点から検討します(図1)。

図1:鍛造加工を採用する理由

図1:鍛造加工を採用する理由

その結果、鍛造が最適な加工法であることが分かると、使用可能な鍛圧機械や材料搬送装置の性能、仕上げ加工の方法など、具体的な加工工程を検討し、決定します。仕上げ加工は、精密鍛造加工を用いるか切削加工で仕上げるかで、トータルコストが変わります(図2)。目的の品質を担保しつつ、コストを下げられるように選定しましょう。

図2:仕上げ加工とトータルコストの関係

図2:仕上げ加工とトータルコストの関係

・生産準備

鍛造加工の生産準備で検討する事柄は、鍛造機械の種類、型の形状、材質、コーティングの種類、鍛造加工の工程配分、加熱温度(冷間鍛造では、ビレットを加熱しないため不要)、鍛造途中の半製品の搬送方法、型の冷却方法および潤滑方法、潤滑剤に適したビレット前処理などです。

最も悩むのは、型形状と工程配分です。型形状と工程は選択肢が非常に多いため、豊富な設計経験が必要です。最近では、材料の変形をコンピュータでシミュレーションする技術も取り入れられています。これにより、材料内部のひずみや応力、型にかかる応力、温度分布などに関する実用的な情報が得られ、設計者の経験不足を補いつつ、試し打ちの回数を減らすこともできます。

さらに高い精度でシミュレーションするには、さまざまな温度における素材の変形抵抗や、型の弾性変形なども考慮する必要があります。事前に、温度ごとの材料試験を行い、変形抵抗などを測定しておきます。近年では、材料情報に関するデータベースも徐々に整備されています。

・鍛造工程

生産準備が終わると、量産テストを経て、量産に入ります。鍛造の量産工程で注意するのは、過度の加熱による結晶粒の粗大化、異材(指定と異なる材質の材料)混入、工程飛ばしです。製造現場では、これらを鍛造三悪と呼び、発生を防ぐため細心の注意を払います。

・後工程

後工程は、熱間鍛造と冷間鍛造により異なります。

非調質材(焼入れ・焼戻し処理や球状化焼なまし処理などの熱処理が省略可能な特殊鋼)を使った熱間鍛造では、鍛造後に徐冷してから、ショットブラスト(鍛造品表面に小さな鋼の粒をぶつけて、酸化膜を除去する工法)を行います。最後に切削加工で仕上げを行います。最近では、切削加工の代わりに、冷間鍛造を追加する場合もあります。検査工程では、目視や磁気探傷によって、製品の表面に微細なクラックや傷がないことを確認します。また、寸法が目標の公差内に入っていることを確かめます。

冷間鍛造は精密鍛造の一種で、後工程なしでもそのまま製品になるほど、極めて高い精度で加工できます。部分的に切削加工で仕上げを行う場合もあります。冷間鍛造の精度が増せば、切削の費用を削減できます。検査工程では、表面の割れや傷を検査し、寸法を確認します。この後、めっき工程や溶接で、他の部品と接合することもあります。その際、鍛造加工で使った潤滑材の膜が製品表面に残っていると、めっき不良や溶接不良などを生じさせることもあります。

2. 鍛造加工で生じる欠陥

鍛造は、大きな材料の塊(バルク)を3次元的に流動させて任意の形を作る加工法です。材料の流動は、型形状だけでなく、鍛造する前の材料の形状でも変化します。上手く流動させることができないと、ひけ、折込み、まくれ込み、座屈などの流動欠陥が生じます。また、型と材料が接する面積や素材の種類によっては、割れが生じることもあります。ここでは、鍛造によって生じる欠陥の種類を説明します。

ひけは、材料が1カ所に集中して流動し、元の場所の材料が不足することによって生じる欠陥です(図3)。

図3:前方押出によるひけの発生

図3:前方押出によるひけの発生

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3. 新しい鍛造法

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第3回:鍛造材料の種類と性質

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前回は、鍛造の加工工程、鍛造で生じる欠陥の種類、新しい鍛造加工法を紹介しました。­­­­今回は、鍛造加工で用いられる材料の種類と、鍛造材料の選定に重要な変形抵抗や塑性異方性を取り上げます。

1. 鍛造材料の種類と熱処理

鍛造加工でよく用いられる材料には、鉄鋼、機械構造用合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などがあります。それぞれの使用用途や特徴を解説します。

・鉄鋼

鉄鋼(スチール)は、代表的な鍛造材料の一つです。大きな力が繰り返し作用する環境で、高い安全性・信頼性が求められる量産部品に用います。例えば、自動車のシャシーや、エンジン周辺のクランクシャフト・コンロッド・エンジンバルブ・トランスミッションなど変速機のギア部品、ボルトやナットなどの工業用ファスナー部品などです。JIS(日本工業規格)の分類では、機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼が多く、特殊な用途では軸受鋼やばね鋼も採用されています。また、これらの材料をベースに、製品の特性に合わせた改良鋼が開発されることもあります。鉄鋼にはさまざまな種類があり、S40C、S53Cのように、JISで固有記号が付けられています。例えば、S40Cの最初のSは材質の鋼(Steel)を、次の40Cは、0.40%の炭素(Carbon)を含有していることを表しています(図1)。数字が大きいほど炭素含有量が多く、鉄と炭素が結び付いた硬いセメンタイトが増えるので、より硬い材料となります。

図1:鉄鋼材のJIS記号

図1:鉄鋼材のJIS記号

鉄鋼を表す記号は、日本ではJIS規格がよく用いられます。海外では別の規格で規定された材料記号を用います。主な国で用いられている材料記号をまとめました。

表1:炭素鋼の材料記号
 国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
C15S15CCk15101515
C25S25CCk25102525
C45S45CCk45104545
表2:軸受鋼の材料記号
 国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
B1または100Cr6SUJ2100Cr652100
(ASTMにて)
Gcr15
表3:ばね鋼の材料記号
 国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
55Cr3SUP955Cr3515555CrMnA

クランクシャフトやコンロッドには、S40CからS48Cなどの機械構造用炭素鋼が、等速ジョイントには少し硬いS48CからS53Cなどが用いられます。なお、冷間鍛造では、より軟らかいS35C、S25C、S15Cなども使われます。これらの製品では、800MPa以上の引張強度を保証する必要があり、鍛造後に焼入れ・焼戻しの熱処理を施します。焼入れで硬くすると、じん性が低下して割れやすくなるため、焼戻して粘さを取り戻します。熱処理後、特に10μm以下の高精度な部分には、切削や研磨加工を行い、製品に仕上げます。材料がS45Cの場合は、820℃~870℃に加熱した材料(少し明るい橙色)を水で急冷して焼入れし、その後、550℃~650℃(暗い場所でほんのり赤みを帯びる)まで温度を上げてから、放冷して焼戻します。

かつては、熱間鍛造のために材料を約1,000℃まで加熱し、鍛造後に室温で冷ましてから、熱処理のために再び加熱していました。しかし最近では、これらの部品のほとんどは、非調質鋼で作られています。非調質鋼とは、熱処理(焼入れ・焼戻し)が不要な特殊な鋼で、炭素や微量のバナジウムVなどが添加されています。非調質鋼では、一度冷ました材料に再び熱処理を施さなくても、熱間鍛造後の自然な放冷だけで、焼入れ・焼戻し並みの製品強度が得られます。再加熱に必要なエネルギーや、二酸化炭素の排出量を削減するだけでなく、コスト削減にも貢献しています。

・機械構造用合金鋼

機械構造用合金鋼は、ギアやスプラインなどの歯形部分のある部品や、高強度のボルトなどに使われます。摩耗しないように表面を硬くする必要があり、炭素以外にもクロムCr、モリブデンMo、ニッケルNiなどを添加して、鋼の焼入れ性を高めています。焼入れ性が高い材料は、高周波焼入れや浸炭焼入れ・焼戻しなどによって製品の表面だけを硬くし、歯の芯の部分は粘さを残すように工夫します。

・ステンレス鋼

鍛造で使われる代表的な鉄鋼材料には、ステンレス鋼やばね鋼SUP6(別称:ばねろく)、軸受鋼SUJ2などの種類があります。ステンレス鋼の鍛造では、成形時に割れの原因となる介在物の偏析(もろい化合物が材料内部に集まる現象)を抑える必要があります。そのため、清純度を高めた素材に連続鋳造・連続圧延を開始する段階から、注意を払って製造されています。

・アルミニウム合金

鉄鋼以外の鍛造材料として多く用いられているのは、アルミニウムです。アルミニウム合金は、純度の高い1000番系(純アルミニウム)から、高い強度を有する7000番系まで、含まれる元素によって分類されています。製品の用途に応じ、材料と熱処理が選定されます。熱処理の種類には、 高温の製造工程から冷却後、自然に硬化させたT1処理や、6000番系のアルミ合金に焼入れ・焼なましを行うことで強度を向上させるT6処理などがあります。

2. 変形抵抗と引張強さ

鍛造加工の材料で重要なパラメータの一つに、変形抵抗(降伏応力、塑性流動応力)があります。変形抵抗とは、外力に対して変形しないように抵抗する強さのことです。材料に小さな荷重を加えても、塑性変形しません。材料が外からの力に対して変形しないように抵抗して、その瞬間の形を維持しているためです。 変形抵抗は、真応力で表します。真応力とは、引張試験のように材料が均一に変形しているときの荷重を、変形中の瞬間ごとの断面積で割った値です。実際の鍛造において、変形している材料の中に生じている内力を、単位面積当たりで表すのも真応力です。真応力を使うことで、複雑な材料内部の力の分布状態を表現することができます。

変形抵抗に似たパラメータに、引張強さがあります。材料の引張強さは、ミルシート(圧延材料の機械的特性が記載された書類)に示されています。引張強さは、材料を引張試験したときの最大荷重を、試験する前の断面積で割った値で、公称応力で表します。引張強さと変形抵抗は同義ではないものの、引張強さが大きい材料は、変形抵抗も大きい傾向にあります。

図2に炭素鋼S15C(ひずみ速度30s-1)の、各材料初期温度における、ひずみと変形抵抗の関係を示します。材料初期温度が0℃と200℃の場合、変形して大きなひずみになると変形抵抗は大きくなり、硬度と強度が高くなります。この現象を、加工硬化(ひずみ硬化)といいます。

図2:ひずみと変形抵抗との関係

図2:ひずみと変形抵抗との関係

焼なましを施すと、加工硬化は取り除かれ、軟化します。そのため、材料の初期温度が高い場合、変形しても材料が硬くなることはありません。図2の材料初期温度800℃では、変形が進んでも、変形抵抗は小さいままです。中間に位置する400℃、600℃は、0℃、200℃と比べて変形特性が単純でないことが分かります。

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3. 割れの原因

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4. 塑性異方性

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第4回:鍛造の金型材料・型コーティング・潤滑剤

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前回は、鍛造材料を紹介しました。今回は、鍛造に用いられる金型の材料、型コーティング、潤滑剤を解説します。鍛造の金型材料には、加工時の高圧力にも耐えうる強固な素材を選定します。また、型コーティングは型寿命を向上させ、潤滑油は材料と型との焼付きを防ぎ、型摩耗を防ぐ役割があります。

1. 鍛造の金型材料

鍛造の金型には、加工時に高い圧力が加わるため、割れや欠け、変形が発生しにくい、強固な材料を用いる必要があります。表1に、代表的な鍛造型の鋼種(工具鋼)の規格記号を示します。

表1:代表的な工具鋼の規格
国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
SKD11X153CrMoV12D2Cr12MoV
40CrMoV5SKD61X40CrMoV51H1340CrMoV5
HS-6-5-2SKH51S-6-5-2M2

JIS(日本工業規格)におけるSKD11は、冷間工具鋼です。据込みや押込みなど、汎用的に利用されます。SKD61は、熱間鍛造に用いられます。冷間用より硬度が低く、割れにくいため、押出鍛造用ダイスの補強リングにも使われます。SKH51は、冷間から温間まで、広く用いられる標準工具鋼です。SKD11よりも高価で、高い強度を有します。

SKH51とSKD11は、どちらも焼入れ処理で硬度を増し、焼戻し処理で粘さ(じん性)を与えます。しかし、SKH51をSKD11と同じ炉で熱処理してしまうというミスが起こった場合、SKH51の硬度が十分に高くなりません。そこで、焼入れ温度220℃、焼戻し回数3回、焼戻し温度580℃、硬度62~64HRCのように、加工条件を図面上で明確に指示することで、ミスを防ぐことができます。

・工具鋼の硬度と強度

図1に、代表的な冷間鍛造用の工具鋼の硬度と、じん性の分布を示します。SKS3、SKD11、SKH51、粉末ハイス、超硬合金の順に硬度が高くなることが分かります。このうち、粉末ハイスとSKH51の基本成分は同じです。ただし、粉末ハイスは粉末状の素材(炭化物)を使うため、溶製ハイスよりも高い硬度を示します(62~70HRC)。粉末ハイスは、用途に応じて配合比率の調整が可能です。

図1:冷間鍛造用の代表的な工具鋼

図1:冷間鍛造用の代表的な工具鋼

工具鋼に求める粘さ(じん性)や硬さによって、工具鋼の成分や、熱処理条件が異なります。一般的には、硬い工具鋼ほど粘さがなくなり、もろくなります(図2左)。一方、曲げ強さは、ある硬度において最も高くなり、それ以降は低くなります(図2右)。

図2:工具鋼の基本特性(左:粘さ、右:曲げ強さ)

図2:工具鋼の基本特性(左:粘さ、右:曲げ強さ)

工具鋼は、高温になると強度が低下します(図3)。そのため、高温下で加工を行う温間鍛造では、強度が低下しにくい温度域でのみ工具鋼を使用します。鋼種の成分に関係なく、室温での硬度が高い工具鋼ほど、高い強度を示します。

図3:工具鋼の高温強度

図3:工具鋼の高温強度

・超硬合金

超硬合金(超硬)は、工具鋼よりもはるかに硬い材質です。高価で、精密鍛造などに用いられます。図4に、焼入れ・焼戻しした工具鋼(SKH51)と超硬合金の組織の模式図を示します。工具鋼には、炭化物が溶け込んだ母材と、溶けていない炭化物が散在しているのが分かります。これに対し、超硬合金は、柔らかいコバルトCoやニッケルNiなどの金属をつなぎ役として、破砕し角張った炭化物を焼き固めた組織です。

図4:工具鋼(SKH51)と超硬合金の組織

図4:工具鋼(SKH51)と超硬合金の組織

超硬合金は高い圧縮強度を持ち、2~3GPaの圧力にも耐える一方、引張変形には割れやすい弱点があります。そのため、ニブやダイスに使う場合は、外周側から補強リングで強く締め込んで、圧縮残留応力を付加します。また、ヤング率(剛性)も極めて高く(約600GPa)、工具鋼に比べ、弾性変形しにくいのが特徴です。大きな力が作用しても形状が変化しにくいため、設計どおりの鍛造品が得られます。

2. 型コーティングの種類と特徴

高い強度を示す工具鋼でも、鍛造回数を重ね、高い圧力での摩擦が繰り返されると、次第に摩耗が生じます(型摩耗)。このように、形状寸法が許容を越える型摩耗を引き起こす鍛造回数を、型寿命といいます。型摩耗を減らし、型寿命を向上させることは、コストの削減や、精密な量産品の製造には欠かせません。型摩耗を防ぐには、型の表面に、工具鋼よりも格段に硬いセラミックスを被覆します。これが型コーティングです。型コーティングを施す前には、工具を十分に磨いて工具粗さを小さくし、母材の硬度を十分に高くします。これにより、コーティング性能を十分に引き出すことができます。

代表的な型コーティングに、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)によるチタン炭化物TiCや、チタン窒化物TiNがあります。耐熱性をさらに高めた窒化チタンアルミTi-Al-Nや、クロムCr系などのコーティングも実績を上げています。また、熱反応拡散法(TRD:Thermal Reactive Deposition and Diffusion)によるVC(バナジウム炭化物)コーティングは、高い密着性、耐焼付性を示します。ただし、TRDによるVCコーティングは、母材の工具鋼の炭素を使って炭化物層を形成します。そのため、処理後に真空焼入れを行い、炭素を層直下へ拡散させることで、母材の硬度を戻す必要があります。また、TRDでは高温処理を施すため熱処理ひずみが生じやすく、寸法変化を予測した型寸法での製作が必要です。

近年では、耐焼付性と耐摩耗性に優れた、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン:Diamond-Like Carbon)による型コーティングが注目を集めています。DLCでは、DLC層と母材との密着性を高めるために、中間層を設けるなどの工夫が必要です。

熱間鍛造用の型は、表面に窒化処理を施すことで硬度を高め、型寿命の向上を図ります。ただし、これらの窒化層も、鍛造回数が増えるにつれて、徐々に軟化します。

3. 潤滑剤

潤滑剤は、鍛造の量産を実現する上で欠かせません。冷間鍛造では、ビレット(塊状の鍛造素材)に潤滑剤を塗布します。これにより、材料をスムーズに流動させ、材料と型との焼付きを防ぎます。一方、温間・熱間鍛造では、金型に潤滑剤を塗布します。温間・熱間鍛造の金型表面は、高温に加熱されたビレットを成形するため、高温にさらされています。潤滑剤は金型を冷やし、熱上昇を抑制して工具鋼の熱軟化を遅らせ、材料と型との焼付きを防ぐだけでなく、型摩耗も防ぎます。以下に、冷間鍛造、および温間・熱間鍛造に用いる潤滑剤について、詳しく解説します。

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第5回:鍛造に関する力学

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前回は、鍛造に用いられる金型の材料、型コーティング、潤滑剤について紹介しました。今回は鍛造の力学的な近似解析や、変形シミュレーションに必要な力学の基本的事項を紹介します。鍛造に関する力学の知見は、鍛造に必要な荷重を予想することや、欠陥(欠肉・まくれ込み)や成形性(表面割れ・内部クラック)の原因解明、対策立案に役に立ちます。

1. 鍛造荷重

鍛造に必要な荷重は、主に、材料の大きさ、材料強さ、材料流動の拘束、型と材料との間の摩擦抵抗の4項目によって決まります。

表1:鍛造荷重の4項目
項目説明
材料の大きさ上型やパンチなどで押す、材料の断面積および変形領域の大きさ。
材料強さ変形抵抗、降伏応力、流動応力など、材料が持つ機械的特性。
加工硬化、ひずみ速度、異方性などにより変化するため、その点も考慮する必要がある。
材料流動の拘束自由鍛造、型鍛造、押出など、鍛造方法の違いによる流動する材料の拘束度。
型と材料との間の摩擦抵抗クーロンの法則による摩擦力の他に、摩擦せん断法則による摩擦力も関係する。

2. 体積一定

塑性加工の一種である鍛造では、加工の前後における材料体積は変化しないという、体積一定の原理があります。均一な圧縮による円柱の変形前後の例を図1に示します。

図1:圧縮前と圧縮後の円柱の高さと直径の関係

図1:圧縮前と圧縮後の円柱の高さと直径の関係

高さがH0、直径がD0の円柱を圧縮して、高さがH1になったとします。元の断面積をA0、圧縮後の断面積をA1とすると、A0=3.14×(D0/ 2)2となり、体積一定の原理によりA1= A0×(H0/H1)が成り立ちます。

体積一定の原理は、3方向の垂直ひずみの合計が0という説明も可能です。例えば、変形前の直方体の各辺の長さがX0、Y0、Z0であったものが、鍛造後にX1、Y1、Z1に変化したとします。この時、真ひずみ(対数ひずみ)をεx、εy、εzとすると、εx = ln (X1/X0)、εy=ln (Y1/Y0)、εz=ln (Z1/ Z0)となります。3方向のひずみの合計は、εxy+ εz=ln (X1/X0)+ln(Y1/Y0)+ln(Z1/Z0) =ln [(X1・Y1・Z1)/(X0・Y0・Z0)]となります。体積一定なので、変形後の体積X1・Y1・Z1 と変形前の体積X0・Y0・Z0は等しい値となります。よって、εxyz=ln(1)=0となり、この両辺を微分すれば微少量に対しても、体積一定の原理は成立します。時間で微分すれば、ひずみ速度でも同様に合計が0となり体積一定の原理を説明することができます。

3. 変形抵抗と真ひずみ

圧縮変形における材料の高さと圧縮時の荷重のデータを利用することで、材料の変形抵抗を簡易的に見積もることができます。圧縮時の型と材料との摩擦による影響を、潤滑剤などの作用により小さくした場合、圧縮時の荷重をその時点での断面積で割った値は、材料の降伏応力(変形抵抗)と見なせます。この時、圧縮時の瞬間の高さにおける塑性ひずみは対数ひずみεで表します。弾性範囲では、断面積の変化が小さく初期断面積、初期長さを基準とした公称応力、公称ひずみが用いられます。鍛造のように塑性変形するような応力の場合、断面積が大きく変化するので真応力、真ひずみ(対数ひずみ)が用いられます。元の高さがH0で変形後の高さがH1ならば、その時の対数ひずみはε=ln(H1/H0)となります。均一変形では、これが真ひずみであり、広い範囲で物理的に正しく扱うことができます。

例えば、直径30mm、高さ50mmの円柱を圧縮して、高さ25mmに均一に据込み鍛造した場合、体積一定の原理により、断面積は15×15×3.14×50/25=1,413mm2となり、その時の真ひずみはln (25/50)≒-0.693となります。この時の荷重が500 kNとすると、その瞬間の材料の変形抵抗は、500kN÷1,413 mm2=354 MPaと算出することができます。この時、材料の変形抵抗はひずみに応じて、だんだん大きくなります。これは冷間加工による材料の強化機構で、加工硬化(ひずみ硬化)と呼ばれます。

4. 加工硬化のモデル式

ひずみの増加と変形抵抗(降伏応力、流動応力)を数式で関係付けておけば、力学的に解析する時に大変便利です。代表的な材料の加工硬化モデル式とグラフを図2に示します。γは材料の変形抵抗、Fは塑性係数、nは加工硬化指数です。

図2:代表的な材料の加工硬化モデル式とグラフ

図2:代表的な材料の加工硬化モデル式とグラフ

加工硬化モデル式には指数型(Hollomon型)、Ludwik型、Swift型などがあります。指数型は、小さいひずみの時にはモデリング精度が低く、正確な解析値が得られません。それに対してLudwik型では、塑性変形開始付近の値を降伏点として与え、それ以降の加工硬化で変化していく部分を指数型で与えています。Swift型は、予ひずみ(予め与えた塑性変形)を与えた場合に相当するモデル式になります。引抜加工で少し寸法調整する場合などが当てはまります。これらの式の中で塑性係数Fは、弾性変形のヤング率に相当します。弾性変形において、材料の強さとひずみは正比例の関係にあり、ヤング率はその比例定数となります。弾性変形と異なり、塑性変形において材料の強さ(変形抵抗)とひずみとは、1.0乗以下の加工硬化指数で表されます。塑性変形による加工硬化は、塑性係数Fと加工硬化指数nの両方が大きい値の時に大きくなります。

5. 平均垂直応力・各応力成分・相当応力と降伏条件

応力成分は1つの面について、垂直方向とせん断方向の2方向に生じます(図3)。X、Y、Zの3つの面を合わせて、計6成分の応力が生じます。

図3:1つの面についての応力成分

図3:1つの面についての応力成分

これらの垂直応力とせん断応力、または主応力(せん断応力成分が0となるように座標系を取ったときの垂直応力)から計算されるスカラー量の応力を相当応力と呼びます。相当応力でよく用いられている式に、フォンミーゼス(Von-Mises)の相当応力の式があります。相当応力をσeq、垂直応力成分σx、σy、σz、せん断応力成分τxy、τyz、τzxとすると、σeq = {(1/2)×[(σxy)2+(σxy2+(σxy)2+ 6(τxy2yz2zx2)]} 1/2となります。

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6. 材料流動の基本と摩擦の影響

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7. 材料流動

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第6回:鍛造機械の種類と特徴

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前回は、鍛造の力学的な解析に必要な力学の基本的事項を解説しました。最終回となる今回は、鍛造機械の種類と特徴を取り上げます。鍛造機械は、ハンマーによる打撃と、プレスを使うものに分類できます。さらに、プレスによる鍛造は、荷重を発生させる方法により、液圧プレスと機械プレスに分かれます。

1. ハンマーとプレスの違い

鍛造機械には、ハンマーを使うものと、プレスを使うものの2種類があります。まずは、それぞれの構造を見ていきます。ハンマーを用いた鍛造は、重量や圧縮空気で加速させたハンマーを、金敷の上に置いた材料に衝撃的に当てることにより鍛造を行います(図1)。鍛冶屋が槌(つち)で、材料を打つのと同じです。

図1:ハンマーによる鍛造の様子

図1:ハンマーによる鍛造の様子

プレスによる鍛造は、フレームの中でスライドを動かして、材料に荷重をかけて鍛造を行います。(図2)。

図2:プレス(液圧プレス)による鍛造の様子

図2:プレス(液圧プレス)による鍛造の様子

ハンマーによる鍛造では、大きなエネルギーを投入できます。1回で目標の形状に鍛造できない時は、数回の打撃を繰り返します。ハンマーによる荷重の制御は難しく、精度を追求する鍛造には向きません。生産量が少なく、比較的大きな製品を鍛造するのにハンマーは向いています。また、材料と型の接触時間が短いため、材料は熱が奪われにくく、型もあまり熱くならないので、熱間鍛造に向いています。

精密な鍛造を行うには、荷重や型の位置制御のしやすさが求められます。その点で、ハンマーよりプレスが適しています。プレスは、荷重を生み出す仕組みの違いから、液圧プレスと機械プレスに分類されます。一般に低速の液圧プレスは、大きな荷重を必要とする鍛造に向いています。小さい鍛造品を大量かつ精密に生産するには、機械プレスが適しています。

2. 液圧プレス

現在、液圧プレスの主流は、油圧プレスです。フレーム上部に固定された油圧シリンダへ、ポンプで作動油を送り込んで荷重を発生させます。油圧プレスによる荷重は、シリンダのボア径Dから断面積A= 3.14×(D/4)2 を計算して、それに圧力計の指示圧を掛け算することで求められます。油圧プレスの速度は1~10 mm/s程度で、ポンプからシリンダへ送る作動油の流量によって変わります。大きな荷重の時には少し遅くなります。油圧プレスの速度は遅いので、冷えやすい小さな部品の熱間鍛造には向きません。しかし、発電所のタービン用主軸のように、直径1mを超えるような大きな鋳塊などの熱間鍛造には、大型の水圧プレスや油圧プレス機械も使われます。また、スライドの位置が任意に止められるので、試作成形中の材料の変形、充満状態などを確かめるためにも油圧プレスは利用されます。

3. 機械プレス

機械プレスは、モータなどによる回転運動を、クランクやリンクにより直線往復運動に変換して、スライダを移動させることで加工を行います。直線運動の下死点で最大荷重となり、材料が鍛造されます。1行程の圧縮量は決まっていて、圧縮途中で止めることはできません。機械プレスは、ナックルプレス、クランクプレス、スクリュープレスの3つの方式に分けられます。さらに、サーボプレスも開発されています。

・ナックルプレス

ナックルプレスは、回転運動をナックルアームで直線往復運動に変換して鍛造する方式です(図3)。ナックルプレスは、冷間で薄いものを精度よく鍛造するのに向いています。特徴は、下死点付近で、長めに最大荷重並みの力で材料を押せることです。フレームが伸びきったタイミングで材料を押すため、製品を狙った寸法に据込めます。

図3:ナックルプレス

図3:ナックルプレス

・クランクプレス

クランクプレスは、クランクや偏心機構で、直線運動に変換して鍛造する方式です(図4)。冷間から熱間まで、小物の大量生産に向いています。

図4:クランクプレス

図4:クランクプレス

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