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鍛造材料の種類と性質:鍛造加工の基礎知識3

鍛造加工の基礎知識

更新日:2018年5月9日(初回投稿)
著者:名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 機械工学分野 教授 北村 憲彦

前回は、鍛造の加工工程、鍛造で生じる欠陥の種類、新しい鍛造加工法を紹介しました。今回は、鍛造加工で用いられる材料の種類と、鍛造材料の選定に重要な変形抵抗や塑性異方性を取り上げます。

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1. 鍛造材料の種類と熱処理

鍛造加工でよく用いられる材料には、鉄鋼、機械構造用合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などがあります。それぞれの使用用途や特徴を解説します。

・鉄鋼

鉄鋼(スチール)は、代表的な鍛造材料の一つです。大きな力が繰り返し作用する環境で、高い安全性・信頼性が求められる量産部品に用います。例えば、自動車のシャシーや、エンジン周辺のクランクシャフト・コンロッド・エンジンバルブ・トランスミッションなど変速機のギア部品、ボルトやナットなどの工業用ファスナー部品などです。JIS(日本工業規格)の分類では、機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼が多く、特殊な用途では軸受鋼やばね鋼も採用されています。また、これらの材料をベースに、製品の特性に合わせた改良鋼が開発されることもあります。鉄鋼にはさまざまな種類があり、S40C、S53Cのように、JISで固有記号が付けられています。例えば、S40Cの最初のSは材質の鋼(Steel)を、次の40Cは、0.40%の炭素(Carbon)を含有していることを表しています(図1)。数字が大きいほど炭素含有量が多く、鉄と炭素が結び付いた硬いセメンタイトが増えるので、より硬い材料となります。

図1:鉄鋼材のJIS記号

図1:鉄鋼材のJIS記号

鉄鋼を表す記号は、日本ではJIS規格がよく用いられます。海外では別の規格で規定された材料記号を用います。主な国で用いられている材料記号をまとめました。

表1:炭素鋼の材料記号
 国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
C15 S15C Ck15 1015 15
C25 S25C Ck25 1025 25
C45 S45C Ck45 1045 45
表2:軸受鋼の材料記号
 国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
B1または100Cr6 SUJ2 100Cr6 52100
(ASTMにて)
Gcr15
表3:ばね鋼の材料記号
 国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
55Cr3 SUP9 55Cr3 5155 55CrMnA

クランクシャフトやコンロッドには、S40CからS48Cなどの機械構造用炭素鋼が、等速ジョイントには少し硬いS48CからS53Cなどが用いられます。なお、冷間鍛造では、より軟らかいS35C、S25C、S15Cなども使われます。これらの製品では、800MPa以上の引張強度を保証する必要があり、鍛造後に焼入れ・焼戻しの熱処理を施します。焼入れで硬くすると、じん性が低下して割れやすくなるため、焼戻して粘さを取り戻します。熱処理後、特に10μm以下の高精度な部分には、切削や研磨加工を行い、製品に仕上げます。材料がS45Cの場合は、820℃~870℃に加熱した材料(少し明るい橙色)を水で急冷して焼入れし、その後、550℃~650℃(暗い場所でほんのり赤みを帯びる)まで温度を上げてから、放冷して焼戻します。

かつては、熱間鍛造のために材料を約1,000℃まで加熱し、鍛造後に室温で冷ましてから、熱処理のために再び加熱していました。しかし最近では、これらの部品のほとんどは、非調質鋼で作られています。非調質鋼とは、熱処理(焼入れ・焼戻し)が不要な特殊な鋼で、炭素や微量のバナジウムVなどが添加されています。非調質鋼では、一度冷ました材料に再び熱処理を施さなくても、熱間鍛造後の自然な放冷だけで、焼入れ・焼戻し並みの製品強度が得られます。再加熱に必要なエネルギーや、二酸化炭素の排出量を削減するだけでなく、コスト削減にも貢献しています。

・機械構造用合金鋼

機械構造用合金鋼は、ギアやスプラインなどの歯形部分のある部品や、高強度のボルトなどに使われます。摩耗しないように表面を硬くする必要があり、炭素以外にもクロムCr、モリブデンMo、ニッケルNiなどを添加して、鋼の焼入れ性を高めています。焼入れ性が高い材料は、高周波焼入れや浸炭焼入れ・焼戻しなどによって製品の表面だけを硬くし、歯の芯の部分は粘さを残すように工夫します。

・ステンレス鋼

鍛造で使われる代表的な鉄鋼材料には、ステンレス鋼やばね鋼SUP6(別称:ばねろく)、軸受鋼SUJ2などの種類があります。ステンレス鋼の鍛造では、成形時に割れの原因となる介在物の偏析(もろい化合物が材料内部に集まる現象)を抑える必要があります。そのため、清純度を高めた素材に連続鋳造・連続圧延を開始する段階から、注意を払って製造されています。

・アルミニウム合金

鉄鋼以外の鍛造材料として多く用いられているのは、アルミニウムです。アルミニウム合金は、純度の高い1000番系(純アルミニウム)から、高い強度を有する7000番系まで、含まれる元素によって分類されています。製品の用途に応じ、材料と熱処理が選定されます。熱処理の種類には、 高温の製造工程から冷却後、自然に硬化させたT1処理や、6000番系のアルミ合金に焼入れ・焼なましを行うことで強度を向上させるT6処理などがあります。

2. 変形抵抗と引張強さ

鍛造加工の材料で重要なパラメータの一つに、変形抵抗(降伏応力、塑性流動応力)があります。変形抵抗とは、外力に対して変形しないように抵抗する強さのことです。材料に小さな荷重を加えても、塑性変形しません。材料が外からの力に対して変形しないように抵抗して、その瞬間の形を維持しているためです。 変形抵抗は、真応力で表します。真応力とは、引張試験のように材料が均一に変形しているときの荷重を、変形中の瞬間ごとの断面積で割った値です。実際の鍛造において、変形している材料の中に生じている内力を、単位面積当たりで表すのも真応力です。真応力を使うことで、複雑な材料内部の力の分布状態を表現することができます。

変形抵抗に似たパラメータに、引張強さがあります。材料の引張強さは、ミルシート(圧延材料の機械的特性が記載された書類)に示されています。引張強さは、材料を引張試験したときの最大荷重を、試験する前の断面積で割った値で、公称応力で表します。引張強さと変形抵抗は同義ではないものの、引張強さが大きい材料は、変形抵抗も大きい傾向にあります。

図2に炭素鋼S15C(ひずみ速度30s-1)の、各材料初期温度における、ひずみと変形抵抗の関係を示します。材料初期温度が0℃と200℃の場合、変形して大きなひずみになると変形抵抗は大きくなり、硬度と強度が高くなります。この現象を、加工硬化(ひずみ硬化)といいます。

図2:ひずみと変形抵抗との関係

図2:ひずみと変形抵抗との関係

焼なましを施すと、加工硬化は取り除かれ、軟化します。そのため、材料の初期温度が高い場合、変形しても材料が硬くなることはありません。図2の材料初期温度800℃では、変形が進んでも、変形抵抗は小さいままです。中間に位置する400℃、600℃は、0℃、200℃と比べて変形特性が単純でないことが分かります。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

3. 割れの原因

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. 塑性異方性

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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