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鍛造の金型材料・型コーティング・潤滑剤:鍛造加工の基礎知識4

鍛造加工の基礎知識

更新日:2018年7月12日(初回投稿)
著者:名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 機械工学分野 教授 北村 憲彦

前回は、鍛造材料を紹介しました。今回は、鍛造に用いられる金型の材料、型コーティング、潤滑剤を解説します。鍛造の金型材料には、加工時の高圧力にも耐えうる強固な素材を選定します。また、型コーティングは型寿命を向上させ、潤滑油は材料と型との焼付きを防ぎ、型摩耗を防ぐ役割があります。

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1. 鍛造の金型材料

鍛造の金型には、加工時に高い圧力が加わるため、割れや欠け、変形が発生しにくい、強固な材料を用いる必要があります。表1に、代表的な鍛造型の鋼種(工具鋼)の規格記号を示します。

表1:代表的な工具鋼の規格
国際規格
ISO
日本
JIS
ドイツ
DIN
アメリカ
AISIまたはSAE
中国
GB
SKD11 X153CrMoV12 D2 Cr12MoV
40CrMoV5 SKD61 X40CrMoV51 H13 40CrMoV5
HS-6-5-2 SKH51 S-6-5-2 M2

JIS(日本工業規格)におけるSKD11は、冷間工具鋼です。据込みや押込みなど、汎用的に利用されます。SKD61は、熱間鍛造に用いられます。冷間用より硬度が低く、割れにくいため、押出鍛造用ダイスの補強リングにも使われます。SKH51は、冷間から温間まで、広く用いられる標準工具鋼です。SKD11よりも高価で、高い強度を有します。

SKH51とSKD11は、どちらも焼入れ処理で硬度を増し、焼戻し処理で粘さ(じん性)を与えます。しかし、SKH51をSKD11と同じ炉で熱処理してしまうというミスが起こった場合、SKH51の硬度が十分に高くなりません。そこで、焼入れ温度220℃、焼戻し回数3回、焼戻し温度580℃、硬度62~64HRCのように、加工条件を図面上で明確に指示することで、ミスを防ぐことができます。

・工具鋼の硬度と強度

図1に、代表的な冷間鍛造用の工具鋼の硬度と、じん性の分布を示します。SKS3、SKD11、SKH51、粉末ハイス、超硬合金の順に硬度が高くなることが分かります。このうち、粉末ハイスとSKH51の基本成分は同じです。ただし、粉末ハイスは粉末状の素材(炭化物)を使うため、溶製ハイスよりも高い硬度を示します(62~70HRC)。粉末ハイスは、用途に応じて配合比率の調整が可能です。

図1:冷間鍛造用の代表的な工具鋼

図1:冷間鍛造用の代表的な工具鋼

工具鋼に求める粘さ(じん性)や硬さによって、工具鋼の成分や、熱処理条件が異なります。一般的には、硬い工具鋼ほど粘さがなくなり、もろくなります(図2左)。一方、曲げ強さは、ある硬度において最も高くなり、それ以降は低くなります(図2右)。

図2:工具鋼の基本特性(左:粘さ、右:曲げ強さ)

図2:工具鋼の基本特性(左:粘さ、右:曲げ強さ)

工具鋼は、高温になると強度が低下します(図3)。そのため、高温下で加工を行う温間鍛造では、強度が低下しにくい温度域でのみ工具鋼を使用します。鋼種の成分に関係なく、室温での硬度が高い工具鋼ほど、高い強度を示します。

図3:工具鋼の高温強度

図3:工具鋼の高温強度

・超硬合金

超硬合金(超硬)は、工具鋼よりもはるかに硬い材質です。高価で、精密鍛造などに用いられます。図4に、焼入れ・焼戻しした工具鋼(SKH51)と超硬合金の組織の模式図を示します。工具鋼には、炭化物が溶け込んだ母材と、溶けていない炭化物が散在しているのが分かります。これに対し、超硬合金は、柔らかいコバルトCoやニッケルNiなどの金属をつなぎ役として、破砕し角張った炭化物を焼き固めた組織です。

図4:工具鋼(SKH51)と超硬合金の組織

図4:工具鋼(SKH51)と超硬合金の組織

超硬合金は高い圧縮強度を持ち、2~3GPaの圧力にも耐える一方、引張変形には割れやすい弱点があります。そのため、ニブやダイスに使う場合は、外周側から補強リングで強く締め込んで、圧縮残留応力を付加します。また、ヤング率(剛性)も極めて高く(約600GPa)、工具鋼に比べ、弾性変形しにくいのが特徴です。大きな力が作用しても形状が変化しにくいため、設計どおりの鍛造品が得られます。

2. 型コーティングの種類と特徴

高い強度を示す工具鋼でも、鍛造回数を重ね、高い圧力での摩擦が繰り返されると、次第に摩耗が生じます(型摩耗)。このように、形状寸法が許容を越える型摩耗を引き起こす鍛造回数を、型寿命といいます。型摩耗を減らし、型寿命を向上させることは、コストの削減や、精密な量産品の製造には欠かせません。型摩耗を防ぐには、型の表面に、工具鋼よりも格段に硬いセラミックスを被覆します。これが型コーティングです。型コーティングを施す前には、工具を十分に磨いて工具粗さを小さくし、母材の硬度を十分に高くします。これにより、コーティング性能を十分に引き出すことができます。

代表的な型コーティングに、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)によるチタン炭化物TiCや、チタン窒化物TiNがあります。耐熱性をさらに高めた窒化チタンアルミTi-Al-Nや、クロムCr系などのコーティングも実績を上げています。また、熱反応拡散法(TRD:Thermal Reactive Deposition and Diffusion)によるVC(バナジウム炭化物)コーティングは、高い密着性、耐焼付性を示します。ただし、TRDによるVCコーティングは、母材の工具鋼の炭素を使って炭化物層を形成します。そのため、処理後に真空焼入れを行い、炭素を層直下へ拡散させることで、母材の硬度を戻す必要があります。また、TRDでは高温処理を施すため熱処理ひずみが生じやすく、寸法変化を予測した型寸法での製作が必要です。

近年では、耐焼付性と耐摩耗性に優れた、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン:Diamond-Like Carbon)による型コーティングが注目を集めています。DLCでは、DLC層と母材との密着性を高めるために、中間層を設けるなどの工夫が必要です。

熱間鍛造用の型は、表面に窒化処理を施すことで硬度を高め、型寿命の向上を図ります。ただし、これらの窒化層も、鍛造回数が増えるにつれて、徐々に軟化します。

3. 潤滑剤

潤滑剤は、鍛造の量産を実現する上で欠かせません。冷間鍛造では、ビレット(塊状の鍛造素材)に潤滑剤を塗布します。これにより、材料をスムーズに流動させ、材料と型との焼付きを防ぎます。一方、温間・熱間鍛造では、金型に潤滑剤を塗布します。温間・熱間鍛造の金型表面は、高温に加熱されたビレットを成形するため、高温にさらされています。潤滑剤は金型を冷やし、熱上昇を抑制して工具鋼の熱軟化を遅らせ、材料と型との焼付きを防ぐだけでなく、型摩耗も防ぎます。以下に、冷間鍛造、および温間・熱間鍛造に用いる潤滑剤について、詳しく解説します。

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