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鍛造に関する力学:鍛造加工の基礎知識5

鍛造加工の基礎知識

更新日:2018年8月23日(初回投稿)
著者:名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 機械工学分野 教授 北村 憲彦

前回は、鍛造に用いられる金型の材料、型コーティング、潤滑剤について紹介しました。今回は鍛造の力学的な近似解析や、変形シミュレーションに必要な力学の基本的事項を紹介します。鍛造に関する力学の知見は、鍛造に必要な荷重を予想することや、欠陥(欠肉・まくれ込み)や成形性(表面割れ・内部クラック)の原因解明、対策立案に役に立ちます。

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1. 鍛造荷重

鍛造に必要な荷重は、主に、材料の大きさ、材料強さ、材料流動の拘束、型と材料との間の摩擦抵抗の4項目によって決まります。

表1:鍛造荷重の4項目
項目 説明
材料の大きさ 上型やパンチなどで押す、材料の断面積および変形領域の大きさ。
材料強さ 変形抵抗、降伏応力、流動応力など、材料が持つ機械的特性。
加工硬化、ひずみ速度、異方性などにより変化するため、その点も考慮する必要がある。
材料流動の拘束 自由鍛造、型鍛造、押出など、鍛造方法の違いによる流動する材料の拘束度。
型と材料との間の摩擦抵抗 クーロンの法則による摩擦力の他に、摩擦せん断法則による摩擦力も関係する。

2. 体積一定

塑性加工の一種である鍛造では、加工の前後における材料体積は変化しないという、体積一定の原理があります。均一な圧縮による円柱の変形前後の例を図1に示します。

図1:圧縮前と圧縮後の円柱の高さと直径の関係

図1:圧縮前と圧縮後の円柱の高さと直径の関係

高さがH0、直径がD0の円柱を圧縮して、高さがH1になったとします。元の断面積をA0、圧縮後の断面積をA1とすると、A0=3.14×(D0/ 2)2となり、体積一定の原理によりA1= A0×(H0/H1)が成り立ちます。

体積一定の原理は、3方向の垂直ひずみの合計が0という説明も可能です。例えば、変形前の直方体の各辺の長さがX0、Y0、Z0であったものが、鍛造後にX1、Y1、Z1に変化したとします。この時、真ひずみ(対数ひずみ)をεx、εy、εzとすると、εx = ln (X1/X0)、εy=ln (Y1/Y0)、εz=ln (Z1/ Z0)となります。3方向のひずみの合計は、εxy+ εz=ln (X1/X0)+ln(Y1/Y0)+ln(Z1/Z0) =ln [(X1・Y1・Z1)/(X0・Y0・Z0)]となります。体積一定なので、変形後の体積X1・Y1・Z1 と変形前の体積X0・Y0・Z0は等しい値となります。よって、εxyz=ln(1)=0となり、この両辺を微分すれば微少量に対しても、体積一定の原理は成立します。時間で微分すれば、ひずみ速度でも同様に合計が0となり体積一定の原理を説明することができます。

3. 変形抵抗と真ひずみ

圧縮変形における材料の高さと圧縮時の荷重のデータを利用することで、材料の変形抵抗を簡易的に見積もることができます。圧縮時の型と材料との摩擦による影響を、潤滑剤などの作用により小さくした場合、圧縮時の荷重をその時点での断面積で割った値は、材料の降伏応力(変形抵抗)と見なせます。この時、圧縮時の瞬間の高さにおける塑性ひずみは対数ひずみεで表します。弾性範囲では、断面積の変化が小さく初期断面積、初期長さを基準とした公称応力、公称ひずみが用いられます。鍛造のように塑性変形するような応力の場合、断面積が大きく変化するので真応力、真ひずみ(対数ひずみ)が用いられます。元の高さがH0で変形後の高さがH1ならば、その時の対数ひずみはε=ln(H1/H0)となります。均一変形では、これが真ひずみであり、広い範囲で物理的に正しく扱うことができます。

例えば、直径30mm、高さ50mmの円柱を圧縮して、高さ25mmに均一に据込み鍛造した場合、体積一定の原理により、断面積は15×15×3.14×50/25=1,413mm2となり、その時の真ひずみはln (25/50)≒-0.693となります。この時の荷重が500 kNとすると、その瞬間の材料の変形抵抗は、500kN÷1,413 mm2=354 MPaと算出することができます。この時、材料の変形抵抗はひずみに応じて、だんだん大きくなります。これは冷間加工による材料の強化機構で、加工硬化(ひずみ硬化)と呼ばれます。

4. 加工硬化のモデル式

ひずみの増加と変形抵抗(降伏応力、流動応力)を数式で関係付けておけば、力学的に解析する時に大変便利です。代表的な材料の加工硬化モデル式とグラフを図2に示します。γは材料の変形抵抗、Fは塑性係数、nは加工硬化指数です。

図2:代表的な材料の加工硬化モデル式とグラフ

図2:代表的な材料の加工硬化モデル式とグラフ

加工硬化モデル式には指数型(Hollomon型)、Ludwik型、Swift型などがあります。指数型は、小さいひずみの時にはモデリング精度が低く、正確な解析値が得られません。それに対してLudwik型では、塑性変形開始付近の値を降伏点として与え、それ以降の加工硬化で変化していく部分を指数型で与えています。Swift型は、予ひずみ(予め与えた塑性変形)を与えた場合に相当するモデル式になります。引抜加工で少し寸法調整する場合などが当てはまります。これらの式の中で塑性係数Fは、弾性変形のヤング率に相当します。弾性変形において、材料の強さとひずみは正比例の関係にあり、ヤング率はその比例定数となります。弾性変形と異なり、塑性変形において材料の強さ(変形抵抗)とひずみとは、1.0乗以下の加工硬化指数で表されます。塑性変形による加工硬化は、塑性係数Fと加工硬化指数nの両方が大きい値の時に大きくなります。

5. 平均垂直応力・各応力成分・相当応力と降伏条件

応力成分は1つの面について、垂直方向とせん断方向の2方向に生じます(図3)。X、Y、Zの3つの面を合わせて、計6成分の応力が生じます。

図3:1つの面についての応力成分

図3:1つの面についての応力成分

これらの垂直応力とせん断応力、または主応力(せん断応力成分が0となるように座標系を取ったときの垂直応力)から計算されるスカラー量の応力を相当応力と呼びます。相当応力でよく用いられている式に、フォンミーゼス(Von-Mises)の相当応力の式があります。相当応力をσeq、垂直応力成分σx、σy、σz、せん断応力成分τxy、τyz、τzxとすると、σeq = {(1/2)×[(σxy)2+(σxy2+(σxy)2+ 6(τxy2yz2zx2)]} 1/2となります。

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6. 材料流動の基本と摩擦の影響

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7. 材料流動

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