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応力とは?強さとは?:破壊工学の基礎知識1

破壊工学の基礎知識

更新日:2017年9月14日(初回投稿)
著者:NDI Japan 代表 谷村 康行

機械的な製品開発に携わる技術者であれば、ひび・き裂など、破壊のトラブルに直面したことがあるのではないでしょうか? 破壊工学という用語は、普段あまり聞き慣れないかもしれません。しかし、製造業や建設業の技術者には、理解を深めてほしい分野です。全8回で、破壊工学の基礎知識を解説します。

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1. 破壊工学と破壊力学

破壊工学(Fracture Engineering)とは、き裂がある材料の強さに関する工学です。材料や部材の中にき裂と呼ばれるきずがあると、きずがない場合よりずっと小さな力で壊れます。き裂は製造過程で見逃されて残ってしまったり、使用中に発生したりします。

き裂がある部材の強さの研究は、第2次世界大戦後のアメリカで大きく進み、破壊力学という分野が生まれました。さらに、1970年代から航空機の設計・製造では、破壊力学の知見を活用した損傷許容設計の考え方が、適用されるようになりました。損傷許容設計とは、部材の中にき裂が存在する可能性があることを認めた上で、重大な事故を防止する考え方です。原子力発電所や鉄道などの分野にも取り入れられています。

このように、破壊力学の知見は、設計技術だけでなく検査・メンテナンス技術も含めて、工学的に体系化されています。これが破壊工学という分野です。破壊力学は応用理学としての側面があり、やや難解です。今回の基礎知識では、破壊力学をモノづくりに生かす観点の破壊工学を解説していきます。

2. 応力とは

頑丈そうな物体でも、大きな力が加わると壊れます。また、壊れそうな箇所には、なるべく大きな力をかけないようにします。材料力学では、物体が破壊するかどうかを決定するのは、加わる力の大きさではないと考えます。なぜなら、同じ大きさの力をかけても、材料や構造の違いにより、壊れる物体と壊れない物体があるからです。

応力は、外部からの力に対して形を保とうと抵抗する単位面積当たりの力です。ギリシャ文字のσ(シグマ)で表し、以下の式で定義されます。Wは外部の力に抵抗する内力、Aは断面積です。ただし、内力は外力と同じ値になるので、実際は外力(荷重)で計算します。

σ=W/A

内力を理解するには、原子や分子の構成を見る必要があります。固体は、物体を構成している原子もしくは分子が、互いに結合して離れない状態です。原子は、プラスの電荷を持つ原子核と、マイナスの電荷を持つ電子とで構成されています。プラスの原子核とマイナスの電子との間には引き付け合う力が働き、同じ電荷粒子間(プラスとプラス、マイナスとマイナス)には反発する力が働きます。この力をクーロン力といいます。クーロン力は、それぞれの電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例します。固体はクーロン力で、共有結合、イオン結合、金属結合を行い、外力に抵抗して形を保っています(図1)。

図1:固体の結合の種類

図1:固体の結合の種類

3. 強さとは

内力が、外力に抵抗するにも限界があり、その限界を強さ(強度)といいます。材料の強さは、あらかじめ破壊試験を行って確認します。最も基本的な破壊試験は、引張試験です。材料を引っ張り、破断するまでのデータを取ります。グラフの縦軸に加えた力(荷重)、横軸に変形量(伸び)とすると、図2の左のような荷重-伸び線図になります。荷重-伸び線図は、同じ材料でも太さや長さなどのサイズを変えて試験をすると、破断する力や破断時の伸び量が異なります。縦軸を応力、横軸をひずみ(元の長さに対して伸びた量の割合)とすると、図2の右のような応力-ひずみ線図になります。試験片の太さや長さの違いにかかわらず、同じグラフになります。材料に力が加わり破壊に至る特徴的なプロセスが、この応力-ひずみ線図によって浮き彫りになります。応力-ひずみ線図で、最大応力の値が強さです。応力が強さの値を超えると、材料は壊れます。

図2:荷重-伸び線図と応力-ひずみ線図

図2:荷重-伸び線図と応力-ひずみ線図

4. 応力の種類と応力計算の目的

応力には、曲げ応力・ねじり応力・フープ応力など、さまざまな種類があります。どの応力も、引張応力・圧縮応力・せん断応力がベースになっています。引っ張る力に抵抗するのが引張応力、押す力に抵抗するのが圧縮応力、切れるように作用する少しずれた力に抵抗するのがせん断応力です。引張応力と圧縮応力はイメージしやすいでしょう。せん断応力は、はさみで切られる寸前の紙の内部をイメージするとよいかもしれません。引張応力の限界値が引張強さ、圧縮応力の限界値が圧縮強さ、せん断応力の限界値がせん断強さです。

材料力学では、たくさんの公式と係数を使って、部材に発生する応力を計算します。応力計算の最大の目的は、物体が使用中に壊れないかを確認することです。そのために、部材の中で最も応力が大きくなる箇所に着目します。そこが部材の弱点であり、破壊が始まる箇所だからです。応力という概念が確立し、さまざまな手法で応力計算ができるようになって、合理的な強度計算に基づく設計が可能になりました。

いかがでしたか? 今回は、破壊工学の理解に欠かせない応力や強さを中心に説明しました。次回は応力ひずみ線図と破壊に至るプロセスについて取り上げます。お楽しみに!

【製造業向け】面倒な応力計算を支援するツール一覧

【建設業向け】面倒な応力計算を支援するツール一覧

参考文献
谷村康行、絵とき「破壊工学」基礎のきそ、日刊工業新聞社、2009年
Michael Janssenほか、Fracture Mechanics、Routledge、2004年

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