メニュー

もったいない!FMEA/FTAの実態:FTA/FMEA再入門の基礎知識1

もったいない!FMEA/FTAの実態:FTA/FMEA再入門の基礎知識1

更新日:2016年3月14日(初回投稿)
著者:安信経営工学研究所 柴田 義文

今回から6回にわたり、FTA/FMEA再入門の基礎知識をお届けします。自動車業界を中心に取り入れられているFTA(故障の木解析)とFMEA(故障モードと影響解析)。FMEAとFTAの順序が逆と思った方も、いるのではないでしょうか? 実は意味があるのです。今回は、FMEA/FTAが生かされていない実態を解説します。さあ、この機会にFTA/FMEAを改めて学びましょう!

1. FMEA/FTAの実態

FMEA/FTAの意義と本来の役割を考えてみましょう。1982年発刊の日本で最初の教本をひも解くと、その背景が次のように述べられています。これは、今でも十分通じる背景です。

製品が複雑かつ高度化になり、また大型化が進み、ひとたび故障が起きた場合にはその影響が大きく、経済的、社会的にかなりの損害がこうむる事態に直面するようになった。従来のように故障個所がすぐ発見できて、部品を交換すれば済むと言うことが少なくなり、故障の原因が判明したときは相当の日時が経過していたとうことが稀でない。製品に対する信頼性要求がとみに厳しくなり、さらに開発期間の短縮、コスト低減の要請が加わり、信頼性問題がますます重要性を増してきた。(引用:鈴木 順二郎、FMEA・FTA実施法―信頼性・安全性解析と評価)

製品開発の環境は、今も昔もそんなに変わっていないと感じるのは私だけでしょうか。むしろFMEA/FTAによる安全と信頼性の解析は、現在の高度化・複雑化した製品にますます重要になっています。さらに読み続けると、次の記載があります。

設計者の関心は性能、機能に集中し、故障については関心が薄かった。故障問題については、製品開発の最終段階で、使用の安全性や作動の耐久性の試験を行うのみで、故障が発生した場合は、固有技術及び過去の類似故障の経験を参考に、再発防止策と事後処理を実施した。(引用:鈴木 順二郎、FMEA・FTA実施法―信頼性・安全性解析と評価)

図1:市販のテキストやセミナーは医者いらずの効能?

図1:市販のテキストやセミナーは医者いらずの効能?

今の設計者は故障モードに関心があるでしょうか? FTA/FMEAは、その故障モードがはじめにありきなのです。その後、 FMEA/FTAの効能が手前味噌のように書かれています。あまたの市販のテキストやセミナーも同様です。まるで温泉の効能をとうとう述べる、医者いらずの温泉のようです。どれも共通して、FMEA/FTAは安全や信頼性問題の未然防止手法だと強調しています。

故障解析に関する製品をチェック!(イプロス製造業)

2. FMEA/FTAに対する本音

しかし、FMEA/FTAの現状を見てみましょう。皆さんは、最初にFMEA/FTAと出会ったとき、どのように感じましたか? 品質管理技術者なのか設計技術者なのか、立場や役割の違いで受け取り方は大きく異なることでしょう。

品質管理や品質保証部門の技術者ならば、この手法が設計された製品を評価する、夢のような素晴らしいものと感じたと思います。もし、専門技術の塊である製品の評価方法を悩んでいたら、すぐにDR(デザインレビュー・設計審査)で使うべきだと設計部門に提案したでしょう。しかし、設計者は迷惑顔。そこで、社内セミナーを開き、啓蒙し、効能を熱心に講義します。しかし、結果はとても満足いく内容ではなかった。そんな状況ではないでしょうか。

図2:品質管理や品質保証部門の技術者のFMEA/FTAに対する本音

図2:品質管理や品質保証部門の技術者のFMEA/FTAに対する本音

一方、あなたが設計部門の技術者だったら、準備する書類が増えるだけと感じませんでしたか? しかし自動車関係を中心としたメーカーからは、必ずFMEAの実施を要求されます。書き方を身に着けるためのセミナーを受けてみても、なかなかうまく行かない。手間をかけても、本当に自分たちの設計内容が向上しているのか自信がない。そんなことは、ありませんでしたか?

過去30年以上、たくさんのFMEA/FTAのセミナーが開催され、たくさんの人が受講してきました。皆さんは、その効果を実感しているのでしょうか。私は、FMEAとFTAは、本来の役割が十分に理解されておらず、活用もされていないと感じています。そこで、原点に戻り、FMEAやFTAのあるべき姿を考えてみます。

3. FMEA/FTAの問題点

セミナーや書籍では、はじめにFTAではなくFMEAが出てきます。なぜでしょうか? その理由は、まずFMEAで故障モードや原因を抽出し、FTAでさらに深堀りをして活用することが、提唱されているからです。

最初にFMEAで、下位の故障モードからさかのぼって上位システムへ波及する影響を検討し、次にFTAで、各故障モードが発生する原因を追及する順序の方が、全体の説明がしやすいからです。しかし、この考え方では、FMEAとFTAの真価が発揮されません。

FMEAの問題点

まずFMEAから説明します。FMEAは、Failure Mode and Effect Analysisの略で、日本語では故障モードと影響解析と呼ばれます。FMEAを実践すると、まず次のような混乱が起こります。実際の故障原因から故障モードに至るプロセスは、いろいろな不具合原因・現象を経るため、FMEAフォーマットの故障モード欄に入れる原因の切り出し方が、人によってばらついてしまうのです。

そして、最初からシステムの影響の大きさから対策を考えるので、近視眼的になり、全体構造から根本的な対策を打つ発想が忘れ去られがちになります。次の問題として、実施時期の難しさがあります。FMEAは、対策を打つための設計変更ができる時期までに実施することが原則です。

しかし、設計の初期段階であるほど、部品が決まっていなかったり、決まっていても選択理由が不明確です。部品選定や信頼性試験結果を待っていると、設計変更の時間がなくなります。

以上の2つの問題点があるため、従来のFMEAは、大部分の設計が決まっているマイナーチェンジ製品、つまり問題点が明確に分かっている既存製品の改善設計に活用されていただけと思われます。モデルチェンジである新規製品に有効活用されているかは、大いに疑問です。

FTAの問題点

FTAは、Failure Tree Analysisの略で、日本語では故障の木解析と呼ばれます。 FTAの問題点は、本来の設計の進め方が考慮されていないことです。一般的には、FTAよりFMEAを先に実施すべきと理解されています。したがって、事故やクレームが起こったときに、慌てて故障解析のツールとしてFT展開を行い、対策を打っているのが現状ではないでしょうか? 

しかし本来、FTAは新規設計には打って付けの手法です。最初から良品解析のツールとして、FTAで懸念点を対策しておけば、未然に防げたトラブルは多いことでしょう。FTAは企画の段階から実施でき、必要な部品や構造のあるべき姿を考えることができます。

FTAの本来の狙いは、故障に関する因果関係を論理的・視覚的に理解し、対策の検討時に構造的に強いシステムに通じる並列の考えを取り入れることです。再発防止の先を行く、未然防止のために重要な手法です。

つまり、FTAはFMEAより先に実施すべきなのです。製品開発のあるべき姿としては、FTAは企画の段階で実施され、出された懸念点を設計・評価・製造・品質管理に反映させて、詳細設計でFMEAを行い、開発サイクルをスムーズにすることです。

図3:製品開発のあるべき姿

図3:製品開発のあるべき姿

4. 本連載の狙い

ここまで、FMEAのFTAの本来の役割と問題点を見てきました。FMEA/FTAの効能を発揮させるには、4つの関門があります。また、FTA/FMEAはその目的と効能を意識して、それに向かって展開しないと、温泉と同様な効能を引き出すことができません。

FMEAとFTAが共に十分に理解・活用されていないことは、大変もったいない状況です。そこで、従来の意義に異議を唱え、基本的な狙いから考え直して、もう一度理解を深めてほしいと願って、この連載を始めました。次回は、第1関門の機能展開を視野に入れて、未然防止につながる使い方を解説します。お楽しみに!

故障解析に関する製品をチェック!(イプロス製造業)

  • セミナー1月
  • 販促_無料出展

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー1225_01
  • 特集バナー1225_02
  • 特集バナー1225_03
  • 特集バナー1225_04
  • 基礎知識一覧