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健康経営を使った都市づくり:健康経営の基礎知識5

健康経営の基礎知識

更新日:2022年6月17日(初回投稿)
著者:山野美容芸術短期大学 教授 新井研究室主宰 新井 卓二

前回は、ものづくりと健康経営と題し、ものづくりにおいて重要な産業衛生・安全衛生からの展開を紹介しました。今回は、健康経営の取り組み企業の地域への影響と、自治体が担当地域内で健康経営企業を増やす目的、および都市づくりの取り組みについて紹介します。

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1. 健康経営の地域などへの影響

健康経営の対象となるのは主に企業の従業員なので、その取り組みは企業内にとどまる印象があります。しかし、第1回の図2(「健康経営・健康投資」とは)、で紹介したように、健康経営は企業への効果だけではなく、社会への効果も期待されています。具体的には、国民のQOL(生活の質)の向上、ヘルスケア産業の創出、あるべき国民医療費の実現が掲げられています。

このように期待されている中で、企業は健康経営にどのように取り組めばよいのでしょうか? 図1に、健康経営の対象者と具体的な介入手法を示します。

図1:健康経営の対象者と健康支援の介入手法

図1:健康経営の対象者と健康支援の介入手法

上段3段が、会社内に該当します。また、その下に従業員などの家族、最下段には株主や地域が位置付けられます。前述のように、健康経営は企業内にとどまることはありません。以下に、従業員家族への介入手法、株主、地域の介入手法について説明します。

・従業員家族の介入手法

従業員家族への介入手法としては、組合報や社内報の配布が挙げられます。また、最近では自社の健康増進施策や健康経営についての取り組みをまとめた健康白書を作成し、従業員の家族などに配布している企業も増え、家族への健康支援も積極的に行われています。従業員にとって、家族が不健康で治療などをしていれば、当然不安になり、仕事が手に付かないことも想定されます。元気に生き生きと働いてもらうためにも、家族を巻き込んで健康経営に取り組むことは、従業員のメンタルヘルス対策にもつながることでしょう。

・株主、地域の介入手法

健康経営の取り組みは、株主や地域にも影響を与えます。企業に出資し、株式を保有している株主は、企業の経営に対して株主総会などを通じ、意見を述べることができる立場にあります。業績が傾いたり、経営戦略が正しくないと判断したりすれば、取締役の選任に反対するなど、経営を否定することができます。上場企業における健康経営に取り組む企業数は増え続けています。つまり、企業は株主に否定されることなく、認められる戦略を持つ傾向にあり、これは大変喜ばしいことです。

健康経営は、地域にどのような影響を与えるのでしょうか。例えば、健康経営の施策で、ウォーキングや自転車による通勤を推奨した場合、自動車通勤や電車通勤が減り、排出ガスの削減が期待できます。また、健康経営により、ヘルスリテラシーの向上が図られた従業員は、定年を迎え退職した後も、健康経営の施策を続ける可能性が高いと考えられます。退職後は、地域の国民健康保険に入り、従業員時代の経験から毎年健康診断を受け、地域主催の健康増進施策にも積極的に参加するようになるでしょう。

近年では、健康経営の成果を自社内にとどめるだけではなく、地域に還元する動きもでてきました。これらは、地域に対してCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)活動として受け入れられています。地域におけるCSRは、事業活動の成長と地域や社会が直面する課題の解決に取り組み、持続的な発展を目指すことです。この活動は、地域からの高い評価を得られるだけでなく、企業における採用応募数や離職率などの値から見るリクルート効果も得られることが分かっています。図2に、地域と企業の健康経営の取り組みの関係を示します。

図2:地域と健康経営の関係

図2:地域と健康経営の関係

地域と健康経営の関係には、顧客向けサービスも含まれます。健康経営に取り組んだ結果、自社の健康増進施策を含む健康経営の取り組みを新商品として売り出したり、サービス化したりするケースが挙げられます。例えば、8年連続で健康経営銘柄に選定されているSCSK株式会社は、2020年に「働き方改革・生産性向上」サービスをリリースしました。これは、経済産業省が期待する社会への効果の「ヘルスケア産業の創出」に当たります。

逆に、既に販売している商品や、提供しているサービスを、自社の健康経営の取り組みに転用することも考えられます。ここ4年連続で健康経営銘柄に選定されている日本水産株式会社の「EPAチャレンジ」などが該当します。

このように、健康経営の取り組みは自社内にとどまることなく、顧客を含む地域や株主などに広く波及していることが分かります。

2. 自治体が健康経営を活用した都市づくりへ

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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